OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

昭和43年7月のサイモンとガーファンクル

2009-04-30 08:43:25 | Simon & Garfunkel

サウンド・オブ・サイレンス / Simon & Garfunkel (CBS / 日本コロムビア)

1960年代後半の我が国洋楽シーンは、ビートルズが何でも一番で、その他の歌手やバンドはストーンズやビーチボーイズでさえも十把一絡げ状態だったと思います。つまり今では神格化されたロックスタアでさえも、当時はビートルズに太刀打ち出来なかったというわけですが、そこへ静かに登場し、圧倒的な人気を獲得したのが、サイモンとガーファンクルでした。

ご存じのように、このコンビは最初、ポピュラー系のフォークデュオとしてスタートし、トム&ジェリーと名乗っていた頃には小さなヒット曲も出していますが、その後は泣かず飛ばず……。それが突如としてブレイクしたのは、彼等がシンプルに歌っていた「The Sound Of Silence」の初期バージョンにプロデューサーが勝手にドラムスやエレキギター等々のバック演奏をダビングし、フォークロックに作り直してヒットさせたという逸話は有名すぎます。

これは1965年の事で、その担当プロデューサーはモダンジャズでは極めて良心的なマイナーレーベルだったトランジションを運営、少数ながらもハードバップの大傑作を作っていたトム・ウィルソンでした。しかも、そのダビングセッションに参加したのが、ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」のレコーディングで集まった面々だっというのですから、歴史は怖いほどに真実を求めていますし、その結果として翌年1月にはチャートのトップに輝いたというわけです。

そして我が国では昭和43(1968)年、サイモンとガーファンクルの歌と演奏が大々的に使われたダスティ・ホフマン主演の映画、「卒業」が公開されてからの大ブレイクだったと思います。とにかくその人気は凄まじく、ちょうどビートルズが些かの迷い道に入りかけていたこともありましたから、彼等の力強くて清涼感あふれる歌声と素敵なヒネリが効いた珠玉のメロディは、ちょうどGSブームが爛熟して下火になりかかっていた日本の音楽業界にも救世主だったかもしれません。今となっては、カレッジフォークのブームがフォーク歌謡的な流行へと進化していく、そのきっかけのひとつが、サイモンとガーファンクルの人気沸騰だったという気もしています。

それは少年時代のサイケおやじも、当然夢中にさせられました。

そして本日ご紹介のシングル盤は、私が件の映画「卒業」を観た直後に買ったものです。

実は告白すると、この映画は自発的に観に行ったわけではなく、叔母さんに連れられていったのですが、さて劇場に到着してみると、そこには叔母さんの彼氏が待っていました。つまり私は叔母さんのデートのダシに使われていたわけですが、後で知ったところによると、この2人は当時、会うことも禁止されていた悲恋をやっていたのです。

まあ、そういう理由ですから、映画が終わった後、私は叔母さんから千円貰って帰ることになり、そのお金で買ったのが、このシングル盤なのです。

肝心の映画は優秀な成績で大学を卒業し、将来を嘱望されているダスティ・ホフマンの漠然とした不安やコンプレックスを描いていたようですが、当時は中学生だった私には??? 今では有名なラストシーンでの教会からの花嫁略奪やキャサリン・ロスの知的な美貌よりも、ダスティ・ホフマンを誘惑するアン・バンクロフトの妖艶なエロスが、実は醜悪に見えたほど印象的でした。いやらしい美脚も♪♪~♪

ただ映画公開以前から話題になっていたサイモンとガーファンクルの楽曲には、素直に素敵だと思わされました。このシングル盤を買ったのも、それゆえの事ですが、しかし実際の映画音楽担当は、後にフュージョンの立役者となるデイヴ・グルーシンだったんですねぇ~。如何にもジャズっぽい自作曲の他にも、ポール・サイモンの書いたメロディを相当に濃い味付けにアレンジしたストリングやブラスの使い方は、それらを収めたサントラ音源集で楽しめますが、そのプロデュースをやったのが、マイルス・デイビスでお馴染みのテオ・マセロという因縁も興味深々です。

その中でサイモンとガーファンクルは「The Sound Of Silence」「Mrs, Robinson」「April Come She Will」「Scarborough Fair」等々を歌っていましたが、特に私が気に入ったのが、このシングル盤B面に入っている「ミセス・ロビンソン」でした。

ただし映画で聴かれたバージョンは生ギターをメインにした短いテイクだったものが、このシングル盤ではドラムスやベースも入った力強いフォークロックで軽快に歌われていますから、忽ちサイケおやじをシビレさせたのは言うまでもありません。ウキウキするような生ギターの使い方、絶妙に黒いグルーヴが潜むリズム的な興奮、そして繊細で意外にしぶとい感じの歌とコーラス♪♪~♪

皆様がご存じのように、この「ミセス・ロビンソン」は「卒業」のサントラアルバムに続いて発表された彼等の大傑作盤「ブック・エンド」に完成バージョンとして収録されたもので、アメリカでは先行シングルとしてチャートのトップに輝いていたのですが、我が国での発売はどっちが早かったのでしょうか? とにかくサイケおやじは、このシングル盤で初めて聴いたと記憶しています。そして「サウンド・アブ・サイレンス」よりも好きになりましたですね♪♪~♪

ちなみにシングル盤ですから、両曲ともモノラルミックスです。

ということで、サイモンとガーファンクルは日本でも格別の人気者となり、ラジオの深夜放送では「ビートルズ対サイモンとガーファンクル」なんていうリクエスト合戦の企画もあったほどです。

さて、気になる叔母さんと彼氏のその後ですが、とうとう駆け落ちまがいに結婚してしまいました。う~ん、後から思うと、きっと2人は映画のラストシーンをそれぞれの気持ちで決意しつつ、観ていたのでしょうか? 

それは昭和43(1968)年7月の事でしたが、折しも41年目の今年の7月、久々の来日公演も予定されているらしいですね。あぁ、光陰矢のごとし!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ラスカルズの自由の尊さ

2009-04-29 10:21:19 | Rock

自由への賛歌 / The Rascals (Atlantic / 日本グラモフォン)

ラスカルズは所謂ブルーアイドソウルと呼ばれる白人R&Bグループですが、確かにそのとおりながら、実は洒落たコード進行の名曲、意外にジャズっぽい味付けの演奏、そして基本はオルガンロックという、私の大好きなバンドのひとつです。

近年では山下達郎のお気に入りとしても有名ですよね。

メンバーはエディ・ブリガッティ(vo,per)、ジーン・コーニッシュ(g,vo)、フェリックス・キャバリェ(org,p,vo)、ディノ・ダネリ(ds) という4人で、ニューヨーク出身らしいのですが、名前からしてイタリア系でしょうか?

まあ、それはそれとして、やっていることはソウルミュージックのニューロック的解釈でしょうが、ヒットソングのキモを大切にしながらも、ジャズやラテンミュージックも貪欲にミックスさせた音楽性は実にお洒落で、しかも熱い魂が大きな魅力です。

デビューしたのは1965年で、翌年春にはファンキーロックな「Good Lovin'」を大ヒットさせ、さらに1967年には元祖AORの決定版「Groovin'」を永遠のヒット曲にしているほどですから、今もって人気が高いのも納得される活躍でした。

そういうスタイルを作り出していたのがバンドの中心人物だったエディ・ブリガッティとフェリックス・キャバリェのコンビで、曲作りからアレンジ、さらにボーカリストとしても熱い魂とソフトな黒っぽさを併せ持った、ほんとうに素晴らしいミュージシャンです。

そして皆様ご推察のとおり、このバンドにはレギュラーのペース奏者がいませんから、スタジオレコーディングではセッションプレイヤーを入れていたのですが、そこに参加していたのが、エレキベースではチャック・レイニーやジェリー・ジェモット、またウッドペースではリチャード・デイビスあたりの極めて凄いグルーヴメイカー達ですから、サイケおやじが夢中になる要素が揃っていたというわけです。

さて、本日ご紹介のシングル盤は、ラスカルズ最大のヒット! 原曲名は「People Got To Be Free」、1968年夏から秋にかけて全米チャートのトップを独走しています。

力強いソウルビートに乗って、いきなり歌い出されるサビメロの景気の良さ! たたみかけてくるブラス&ホーンの気持ち良さ! グルーヴしまくるエレキベースとドカドカ煩い8ビートに拘るドラムスは、当時流行していた南部系ソウルミュージックのニューヨーク的展開というか、キメのビートリフも実にカッコイイです。

そしてもちろん、フェリックス・キャバリェのリードボーカルは熱血ですし、エディ・ブリガッティとの掛け合いやコーラスの黒っぽさ、唸るオルガンにジャズっぽいギターのオカズも冴えまくりという、まさに間然することない名曲名演です♪♪~♪ なによりも歌の泣きメロそのものが秀逸ですよっ!

実は告白すると、サイケおやじは最初にラジオでこの曲を聴いた時、黒人のグループかと思ったほどです。う~ん、それにしては洒落ているなぁ~、なんて思っていたのですから、今となっては笑止なんですが。

とにかく私は昭和43(1968)年のクリスマスに買ったという思い出の1枚でもあります。何故って? だって、これを持って従姉のお姉さま達が集まるパーティへ行ったんですから♪♪~♪

そしてラスカルズが大好きになったのは言うまでもありません。しかし当時はLPを買うことが出来ず、それでも執念でコンプリート近くまで収集出来たのは二十代も既に後半に入った頃でした。

ちなみにラスカルズはライブバンドとしても人気があったそうですが、その現場でのベース奏者は誰が務めていたのかも、かなり興味の対象です。

それと、この「自由への賛歌」が収められているアルバム「Freedom Suit」は2枚組で、C面には2曲、そしてD面に1曲だけという、長いアドリブ中心の演奏が聴かれます。そこにはオリジナルメンバーに加えて、ゲスト参加のホーンセクションや蠢きグルーヴ系のエレキベースが大活躍♪♪~♪ キング・カーティスのテナーサックスも出てきますし、メンバーの中ではディノ・ダネリが4ビートまで叩く大奮闘! またフェリックス・キャバリェのサイケオルガンとかジーン・コーニッシュのロックジャズなギターも楽しめますが、もちろん極めてアートロックな色彩が濃厚です。

う~ん、やっぱりラスカルズはライブバンドとしても一流という証明でしょうか!? 正直、今となっては退屈な部分も否定出来ませんが、この路線を1971年頃の解散まで捨てなかった潔さは評価されるべきかもしれません。

またラスカルズは黒人系の音楽志向があった所為で、常に黒人歌手との共演ステージを望んでいたそうですし、黒人公民権運動団体への寄付も行っていたらしく、それゆえに保守的な白人層からは疎まれ、特にアメリカ南部ではレコードの不買運動とかコンサートキャンセルが相次いだ時期もあったと言われています。解散に追い込まれたのも、それがひとつの原因だという噂も!?

そして残念ながら、メンバーのその後はソロ活動や新バンドの結成等々があるものの、やはりラスカルズ時代を上回ることがありませんでした。

しかしラスカルズの素晴らしさは、それで歪められるものではありませんし、こういう素敵なバンドは風化させてはいけません。この曲を聴く度に、サイケおやじは心底、そう思うのでした。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バニラ・ファッジでティム・ボガードを知る

2009-04-28 10:34:28 | Rock

キープ・ミー・ハンギング・オン / Vanilla Fudge (Atlantic / 日本グラモフォン)

サイケおやじが大好きな蠢くエレキベースと唸るオルガン、とくれば、これを外すわけにはまいりません。

ご存じ、ヘヴィロックの歴史に名を刻むバニラ・ファッジは1967年にデビューしたアメリカのバンドで、メンバーはマーク・スタイン(org,vo)、ヴィンス・マーテル(g,vo)、ティム・ボガード(b,vo)、カーマイン・アピス(ds,vo) という、実にアクの強い4人組です。

その演奏はサイケデリックとR&Bを巧みに融合させた元祖ハードロックといって過言ではないと思いますが、それというのも、デビュー前のメンバーは所謂ハコバンとして活動しながら、実験的なサウンド作りを目論んでいたようです。

そして、そこへ目をつけたのが敏腕プロデューサーのシャドウ・モートンで、この人は1964年から女性ボーカルグループのシャングリラスでヒット曲を連続して作っていたのですが、なんと全盛期に契約レコード会社が活動停止に追い込まれ……。

しかし如何にもミエミエの仕掛けがクサイ芝居ギリギリというプロデュースは、ヒット曲作りの必要十分条件として、今日でも評価が高いと言われています。

さて、そんなシャドウ・モートンがバニラ・ファッジに仕掛けたデビュー曲が、本日ご紹介の「キープ・ミー・ハンギング・オン / You Keep Me Hanging On」という、モータウンサウンドを代表するヒット曲のカバーバージョンでした。

これは当時の音楽業界では、イギリスのビートルズに唯一対抗出来た純粋アメリカ産の大衆音楽のひとつで、もちろん本性は黒人R&Bですが、モータウンサウンドの場合はビートルズ以前の白人ポップス、例えばフィル・スペクターあたりが作っていた白人向けのロックンロール系ポップスの味わいを活かしていたミソがありました。

それを今回は再び白人がパクッて、さらにサイケ味で煮詰めようとする目論見だったと、私は独断と偏見で思い込んでいるのですが、実際、この演奏を初めてラジオで聴いた時のショックは忘れられません。

厳かなオルガンのイントロからバタバタドカドカと煩いドラムス、大袈裟で勿体ぶったボーカルとコーラス、叩きつけるようなキメのリフが魅力絶大! そして重た~い全体のノリが実にド迫力の3分間です。

これは昭和43(1968)年秋の事でしたが、実は曲そのものは前年夏にアメリカでヒットしていたものです。それが我が国で1年遅れの発売となったのは、本国でまたまたチャートを再上昇していたからなんですが、それは別にしても、サイケおやじは既に、この曲と同じ味わいの演奏を知っていました。

それは多分、我が国のGSでは最高の実力を誇っていたゴールデン・カップスの生演奏があったからじゃないか? と今は漠然と記憶しているのですが、当時のGSでスイスイとオリジナル曲を自作自演していたのはスパイダースやブルーコメッツぐらいでしたから、他のバンドは如何に新しくてカッコイイ洋楽のカバー曲を探すかが、ライブステージにおける運命の分かれ道でした。それゆえ、もしもそうだとしたら、ゴールデンカップスがこの演奏に目を付けたのは流石! 尤も、そういう部分がバンド自体の演奏力に比重が大きいのは、言わずもがなでしょう。

閑話休題。

で、サイケおやじをまたまた仰天させたのが、この演奏をレコード屋の店頭で聴いた時のことで、そこにはラジオ放送では分からなかった蠢く地底怪獣の如きエレキベースの大暴れが! もちろん、私はすぐにお買い上げ♪♪~♪

しかもさらに私を驚愕感涙させたのが、B面にカップリングされていた「フォー・ア・リトル・ホワイル / Take Me For A Little White」です。

この曲もR&Bのカバーで、オリジナルは黒人女性ボーカリストのパティ・ラベルが1967年にヒットさせていた、当時ピカビカの流行歌ですが、それを徹底してニューロック化! もちろんそのキモはティム・ボガードのエレキベースを主役にしたインタープレイですが、その荒野を這うが如き大蛇のようなウネリには圧倒されましたから、しばらくはB面ばかり聴いていた時期もあったほどです。

ちなみにティム・ボガードは、このバンドの同僚だったカーマイ・アピス、そしてジェフ・ベックと共謀し、BB&Aを結成して時代をリードするはずが、なんとジェフ・ペックが交通事故でそれが頓挫……。それでも1971年になって、ようやく実現したのも後の祭りというイメージしかありません。しかしこの頃から、その強烈な個性はサイケおやじを熱中させたのです。

ジャケ写では右端のメガネのオッチャンがティム・ボカード、その左の髭男がカーマイン・アピスですが、カーマイン・アピスは後にロッド・スチュアートのバンドレギュラーでも活躍していますよね。2人ともルックスはロック系ではありませんが、それが逆に実力者の証という佇まいが憎めません。

ということで、このシングルバージョンも当然ながらモノラルミックスです。しかし日本盤特有のモゴモゴした音質は好き嫌いがあるかもしれません。

ただ、それが当時のAMラジオの洋楽番組ではジャストミートの「音」だったんですねぇ~♪ ですから現在ではデジタルリマスターされた素晴らしい音質で聴くのも、私にとってはなんとなく雰囲気が違うというか……。

それゆえに本日も、このシングル盤を聴いているのでした。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

永遠のふたりのシーズン

2009-04-27 14:46:22 | Rock

ふたりのシーズン / The Zonbies (CBS / ソニー)

キーボードのロックといえば、ゾンビーズが忘れられらません。

近年はソフトロックの人気グループとして その評価も高いイギリスのバンドですが、デビューしたのが1964年7月でしたから、やはりブリティッシュビートの中の有力グループと見なされていたようです。

しかし演じるオリジナル曲は洒落たコード進行とジャズっぽいアレンジが特徴的でしたし、それとロックのビートを融合させた演奏は、なかなか個性的だったと思います。それは当時の代表的なヒット曲「She's Not There」や「Tell Her No」を聴けば、納得するしかありません。

ところが当時は、やはりビートが強く、さらに黒っぽい演奏が業界の主流でしたから、彼等にしてもステージやアルバムではR&Bのカバーあたりも選曲されていたようです。

つまり時代に先んじたオリジナルを自作自演していたメンバーとプロダクション側の意向がズレていたのですから、次第にセールスは伸び悩み……。

しかしそれはイギリス国内の事情でした。

何度か行ったアメリカ巡業での人気は高く、また我が国ではGS時代になって彼等の地味なヒット曲「I Love You」が、カーナービーツによって「好きさ好きさ好きさ」という日本語カバーにされ、昭和42(1967)年に大ヒット! 急遽、ゾンビーズのオリジナルバージョンもシングル盤で再発されるという騒ぎになったほどです。

そして告白すると、サイケおやじは、その曲でゾンビーズを知ったのです。

メンバーは、コリン・ブランストン(vo)、ポール・アーノルド(g)、ロッド・アージェント(key)、クリス・ホワイト(b)、ヒュー・グランディ(ds) という5人組でした。

ところが、それでもイギリスでの状況は悪化するばかり……。2枚目のアルバム用にレコーディングしていた楽曲も宙ぶらりんだったと言われていますが、それでもなんとか纏めて作られたのが、今ではソフトサイケの超名盤「Odessey & Oracle (CBS)」で、そこからの先行シングルが、本日ご紹介の「ふたりのシーズン / Time Of The Season」というわけです。

これはイギリスとアメリカでは1968年の春頃に発売されたと言われていますが、もちろんリアルタイムではヒットしていません。というか、この時、既にバンドは解散していたのが真相です。その原因について、私は知る由もありませんが、経済的な問題だったことは容易に察しがつくと思います。

しかし捨てる神あればなんとやら! ニューロックの立役者にして、当時はアメリカのCBSコロムビアで音楽監修の仕事もやっていたアル・クーパーが、前述の「Odessey & Oracle」を大絶賛したことから、あらためてプロモーションが展開され、ついに翌年春にはチャート3位にランクという、1年越しの大ヒットとなったのです。

もちろん我が国でも、その頃からラジオを中心に、頻繁に流れるようになったのは、言うまでもありません。

ミディアムテンポで抑揚の無いメロディラインが、モード系のジャズビートで、しかもコリン・ブランストンのクールなタメ息ボーカルに加え、サビでの開放感のあるコーラスが印象的に歌われています。さらに間奏ではロッド・アージェントの極めてジャズっぽいキーボードのアドリブが♪♪~♪ 全体のリズムもボサロックのブリティッシュロック的な解釈とでも申しましょうか、なかなかに淡々として、さらに力強さが持続していくのです。

ということで、リアルタイムでも非常に新鮮、かつ斬新な名曲でした。ちなみにサイケおやじは昭和44(1969)年末に、このシングル盤を買っています。

ただし既に述べたように、これがヒットしても本体のゾンビーズは解散しており、中心人物だったロッド・アージェントは新しいバンドとして、アージェントを立ちあげ、これまたサイケおやじにはジャストミートのロックジャズを聞かせてくれるのですが、それは後のお話です。

とにかくゾンビーズの集大成的な「ふたりのシーズン」は近年、テレビCMでも使われたり、また再評価の対象として崇められたりするほどの不変性が、大きな魅力です。

あくまでもサイケおやじ的な括りですが、「キーボードロック」という分野があるとすれば、そのキーポイントのひとつとして忘れられないと思います。

ゾンビーズのクールなジャズっぽさ、最高!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ディープ・パープルのデビュー曲が好き

2009-04-26 15:14:01 | Rock

Hush / Deep Purple (Tetragrammaton / 日本グラモフォン)

ハードロックの王者として今に至るも揺るぎないディープ・パーブルのデビューシングルが、これです。

当時のバンドメンバーは所謂第一期で、ロッド・エバンス(vo)、リッチー・ブラックモア(g)、ジョン・ロード(org)、ニック・シンパー(b)、イアン・ペイス(ds) でしたが、演奏の密度はこれが出た1968年当時としても圧倒的に濃厚、しかもポップサイケな味わいも私にはリアルタイムでジャストミートでしたから、少年時代の乏しい小遣いを顧みもぜす、速攻でゲットさせられた1枚です。

というか、当時のメモを読み返したら、なんと昭和44年のお正月に、お年玉で買ったという事実が判明しましたよ。

肝心の演奏はオルガンが唸り、ギターが歪み、そしてヘヴィなロックビートが交錯する中で、後のバンド全盛期を鑑みればボーカルが些か穏やかなムードでしょうか。しかしそれは今になっての感じ方でしょう。リアルタイムでは、こんな猛烈なロックは驚異的だったんですよっ!

針を落とした直後から、野犬(狼?)でも吠えるSEに被さってガッツ~ンと鳴り響くバンド一丸の音出し、それに続くジョン・ロードのオルガン打楽器奏法によるリズミックなイントロ、さらに当時のヒット曲では当たり前のように使われていたモータウンサウンドをモロにパクった、たたみかける勢いのロックビート!

しかし、いよいよ聞こえてくる曲メロのコーラスが、ナァ~、ナナナァ~ナナ♪♪~♪ という極めてキャッチーなものでした! この適度に力んだボーカルとポップサイケなコーラス、それとは逆にハードロックど真ん中というキメのリフが、実にカッコイィィ~♪

当然ながら、当時のシングル盤ですからモノラルミックスなんですが、日本プレス特有のヌケの悪いモゴモゴ感が逆に結果オーライというか、当時も今も、それが不思議な親近感になっています。

気になるリッチー・ブラックモアのギターは、歌の合の手としては狂おしいばかりのフレーズを弾きまくり、音色そのものが既に特徴的です。

さらに少年時代のサイケおやじを熱狂させたのが、間奏で唸りまくるジョン・ロードのオルガンアドリブでした。う~ん、この頃から私はオルガンが好きだったんですねぇ~、なぁ~んて、今更ながらに思います。

アレンジ全体のタイトなキメも、イアン・ペイスのビシッとしたドラミングを中心に固められていますし、何よりもポップな雰囲気を壊さずに過激を貫いていた明快さが、大きな魅力でした。

ちなみに、この曲は前年にアメリカで大ヒットしたビリー・ジョー・ロイアルのカバーだということが、このシングル盤裏ジャケット解説に載っていましたが、私はこのバージョンが初体験でした。ただし、こういう遣り口は、やはり前年夏頃にヒットしていたヴァニラ・ファッジの演じる「You Keep Me Hanging On」の大成功がありましたから、ディープ・パープルは完全なる後追い体質だったわけです。もちろん件の曲は、オリジナルがシュープリームスというモータウンサウンドを代表していた女性グループによるものという真相は、皆様ご存じのとおりです。

しかしディープ・パープルがヴァニラ・ファッジと決定的に違うと私が感じたのは、同じオルガン主導のアレンジでありながら、メリハリがはっきりとした分かり易さだったと思います。つまりヘヴィロックがハードロックへと進化したのは、このシングル盤のヒットがきっかけじゃないでしょうか? 本日も独断と偏見の独り善がり、ご容赦願います。

それと私にとってこのシングル盤は、曲を書いたジョー・サウスとの出会いでもありました。

この人は白人のシンガー・ソングライターということになっていますが、その守備範囲はカントリー&ウェスタンから南部系ロックがメインらしく、自らも「Games People Play / 孤独の影」なんてヒット曲も歌っていますが、やはり縁の下の力持ち的な活動が多いようです。例えば前述したビリー・ジョー・ロイアルはジョー・サウスがスカウトして育て上げたシンガーですし、スタジオセッションとしてはアレサ・フランクリンのバックでギターを弾いたりする凄腕! さらに多くの素敵なメロディを書いていますから、なかなか要注意でしょうね。

さて、こうしてデビューしたディープ・パープルは、この曲がアメリカで大ヒット! というのは、契約していた「テトラグラマトン」という会社がアメリカのレーベルだったことから宣伝活動も上手くいったのでしょうが、その巡業で渡米したメンバー達は、あまりの歓待ぶりに困惑したり、感激したり♪♪~♪

結論から言えば、それゆえに後の活動が、ある意味で制約され、ついにはメンバーチェンジまでも……。どうやらロッド・エバンスはハリウッドスタアの道に進みたかったという噂まであったそうです。

ということで、皆様ご推察のとおり、ここ数日のサイケおやじはジャズモードに入らなくなってきました。こういうことは実際、これまでも頻繁にあったりします。

そして最後になりましたが、この歌の歌詞の中身は、女にクスリを与え、ヤリまくりたいという欲望剥き出し! 適度なスラングを使っているとはいえ、こんな歌がヒットしてしまうアメリカという国の凄さを痛感しています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エレキベースで聴くフィフス・ディメンション

2009-04-25 15:00:47 | Pops

The Age Of Aquarius / The 5th Diminsion (Soul City)

サイケおやじはエレキベースが好きです。

発端は少年時代、ザ・フーの名曲名演「マイ・シェネレーション」を聴き、ジョン・エントウィッスルの弾く強靭なリードベースに驚嘆させられてからですが、同じく我が国のGSブームではゴールデンカップスのルイズルイス加部、あるいはニューロックではクリームのジャック・ブルースには心底、シビレさせられました。

そんな私の前に新たに登場したのが、本日の主役であるフィフス・ディメンションが1969年に大ヒットさせた「輝く星座~レット・ザ・サンシャンイ・イン」という、これまた名曲名演です。

この曲は本来、1967年のロックミュージカル「ヘアー」の挿入歌でしたが、フィフス・ディメンションのカバーバージョンによって世に知られたといって過言ではありません。洗練されたアレンジと美しいコーラスハーモニー、ソウルフルなボーカルと完璧なバックの演奏が、素敵なオリジナルメロディと一体になって、まさにヒット曲の全ての要素が楽しめます。そしてサイケおやじを尚更にシビレさせたのが、演奏全体で躍動的に蠢くエレキベースでした。

とくに後半の「レット・ザ・サンシャンイ・イン」のパートは、ほとんどエレキベースが主役となっているほどです。

さて、このフィフス・ディメンションは黒人の男女5人組で、現在はソフトロックの範疇で語られることも多いというグループですから、1966年のデビュー当時は、およそ黒人らしく無い、とてもスマートなフィーリングをウリにしていました。

それはご推察のとおり、フォークロックの代表グループとして大人気を集めていたママス&パパスの後追いのひとつという認識だったわけですが、目論見どおり、翌年には「ビートでジャンプ」の大ヒットを出してブレイク♪♪~♪

その勢いで作られたアルバム群は、何れも現在ではソフトロックの名盤扱いにされているほど、そのお洒落なフィーリングは言わずもがなでしょう。

しかしそれゆえに、サイケおやじにはイマイチどころか、完全に???のグループ……。

ところが、この「輝く星座~レット・ザ・サンシャンイ・イン」は、既に述べたように、それまでの私のイメージを覆すほどにソウルっぽく、しかも躍動するエレキベースの真髄が楽しめたのです。

ちなみにそれを弾いていたのは、ジョー・オズボーンというスタジオミュージシャンで、この人は当時のハリウッドポップス界ではトップをとっていたベース奏者! 通常、こういう縁の下の力持ちの名前はレコードジャケットには表記されないのが当時の慣習でしたが、フィフス・ディメンションが登場してきたあたりから、アルバムにはスタジオでの演奏メンバーが記載され始めたのも、今となっては特筆すべきことかもしれません。

で、本日ご紹介のアルバムは、その大ヒット曲をメインにしたフィフス・ディメンションにとっては4枚目のLPですが、なんとこれが現在、紙ジャケット仕様のリマスターCDで復刻中! 本日、発見して、速攻でゲットしてきたというわけです。

なにしろリアルタイムではフィフス・ディメンションなんて、軟弱の代名詞的な扱いが私の周囲にはあり、しかも小遣いも乏しい少年時代ですから、サイケおやじには手を出すことも出来ない……。そこで例によってエアチェックしたテープを聴きまくっていたというわけです。

気になるアルバム収録曲では、「輝く星座~レット・ザ・サンシャンイ・イン」に続いてヒットしたローラ・ニーロ作の名曲「ウェディングベル・ブルース」やメリー・ホプキンで大ヒットしていた「悲しき天使」のカバーバージョンが実に最高♪♪~♪

またニール・セダカの隠れ名曲「愛の星座」、そしてこれもポップスの決定的な名曲「レット・イット・ビー・ミー」というプログラムも楽しいところでしょう。

もちろんバックの演奏はジョー・オズボーンのエレキベースが全篇で大活躍! その意味でクリームの「サンシャンイ・オブ・ユア・ラヴ」をやってくれたのは、全くサイケおやじには御用達です♪♪~♪

肝心のフィフス・ディメンションは、このアルバムを出した頃からソウル度数が上がったというか、それまでのスマートさに加え、ここでの黒っぽいコブシが効いたコーラスワークは、とても魅力的だと思います。

ということで、なんか本日は何時も以上に独り善がりが噴出してしまいましたが、この機会にフィフス・ディメンションを、ぜひ!

繰り返しになりまずか、紙ジャケット仕様のCDで復刻中ですし、中にはボーナストラックの入っているブツもありますから、う~ん、全部買おうかなぁ……、と現在、悩んでいます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タル・ファーロウの必然

2009-04-24 11:33:34 | Jazz

Tal Farlow Quartet (Blue Note)

ジョン・マクラフリンを聴いていると、この人も聴きたくなるのが必然のタル・ファーロウ!

というのは、決してサイケおやじだけの連想ゲームではないでしょう。実際、ジョン・マクラフリンの高速フレーズの元ネタは、タル・ファーロウの十八番と重なりあう印象が打ち消せません。

そこで取り出したのが本日ご紹介の1枚で、ブルーノート吹き込の10インチ盤という事実はヴァーヴの諸作が有名なことを鑑みれば意外な気もしますが、実はタル・ファーロウは同レーベルに、これ以外にもハワード・マギー(tp) のセッションに参加した録音もありますから、これもアルフレッド・ライオンが流石のプロデュースという名盤になっています。

録音は1954年4月11日、メンバーはタル・ファーロウ(g)、ドン・アーロン(g)、クライド・ロンバルディ(b)、ジョー・モレロ(ds) というカルテットで、これはおそらくタル・ファーロウにとっての初リーダーセッションと思われます。

A-1 Lover
 モダンジャズではアップテンポ演奏の定番演目というスタンダード曲ですから、いきなりシャープなブラシでスピード感を極めつけるジョー・モレロの存在が怖いほど! そして2本のギターによる落ち着いたテーマアンサンブルから、タル・ファーロウが猛烈な勢いのアドリブで突進する展開には絶句です。
 いゃ~、本当に凄いとしか言えませんねぇ~~♪
 超絶技巧というか、実は手が大きかったタル・ファーロウでなければ弾けないと思われる難フレーズの乱れ打ちは痛快至極です。
 またジョー・モレロの正確無比にして凄味さえ感じさせるブラシのドラミングも天才の証明ですし、サイドギターで参加のドン・アーロンも要所でのツインリードや装飾フレーズ、さらにコード弾きのサポートも縁の下の力持ちとして侮れません。
 モダンジャズの奥の手っぽいエキセントリックな面白さ、そして微妙な隠し味となっているタル・ファーロウのハードボイルドな気質には、きっと圧倒されると思います。

A-2 Flamingo
 これも有名スタンダードとして、その和みのメロディが印象的な名曲ですから、タル・ファーロウはミュートとハーモニスクを巧みに使った名人芸のギターワークでテーマを聞かせた後、豪快なフレーズと繊細なフェイクを上手く対比させながら、本当に会心のアドリブを披露しています。
 サイドギターとのコンビネーションも素晴らしく、テーマアンサンブルから演奏全体の展開は、後のベンチャーズも8ビートに変換流用したことが、今となっては明らかだと思います。
 同曲のジャズバージョンとしては、聴くほどに味わいが深まる大名演じゃないでしょうか。

A-3 Splash
 タル・ファーロウのオリジナル曲ですから、テーマメロディとアンサンブルは相当にモダンジャズ本流の過激さがいっぱい! 幾何学的な旋律とクールな味わい、さらに躍動的なノリは、如何にもビバップがハードバップに変わりゆく姿だと思います。
 しかしそれを軽やかな雰囲気にしてくれるのがジョー・モレロのスマートなドラミングで、まさに天才的なリズム感は4ビート天国♪♪~♪ それだけ聴いていても快感にシビレますよ。
 そしてさらに凄いのがタル・ファーロウのアドリブラインの歌心です。不思議なことに、このセッションではスタンダード曲を演じるとエキセントリックな早弾きという意地悪をやりますが、逆にオリジナル曲になるとテーマメロディよりも歌いまくったアドリブフレーズを連発してくれるんですねぇ♪♪~♪ これは完全に意図的なものだと思いますし、それがこの演奏には特に顕著です。
 もちろんツインギターによるアンサンブルも流石に楽しめるのでした。

B-1 Rock 'N' Rye
 これもタル・ファーロウのオリジナルモダンジャズの決定版!
 2本のギターが流石のテーマアンサンブルからナチュラルにアドリブへと移行していくあたりは、本当にジャズを聴く快感だと思います。
 そしてタル・ファーロウのギターは早弾きとメロディフェイクの絶妙なる融合を披露して秀逸! 悪魔の音楽としてのジャズ、その魅力のひとつであるグルーヴィなムードが横溢し、しかしバックのリズム隊はクールな感性という対比の妙も素敵です。
 ミディアム・テンポをスカッとスイングさせるジョー・モレロのブラシ、そして後半でのツインギターの絡みも最高ですし、最後の最後で効果的なエコー処理が、これまたニクイところでしょうねぇ。 

B-2 All Through The Night
 あまりにも有名なコール・ポーターの素敵なメロディが、タル・ファーロウの絶妙なフェイクとギターの魔術によって素晴らしく演じされています。とにかく流れるように進むバンドのスイング感が、まず絶品! もちろんそれはジョー・モレロの完璧なブラシがあればこそですし、何の淀みもごまかしも無いタル・ファーロウのギターも歌いまくって止まりません♪♪~♪
 あぁ、こんなにギターが弾けたら、本当に楽しいでしょうねぇ~♪
 もちろん演じている本人は必死の集中力なんでしょうが、それよりも余裕というか、極めて自然体のアドリブは神業としか言えません。

B-3 Tina
 オーラスもまた、タル・ファーロウのオリジナルですが、このグルーヴィでクールな感性は東西ジャズスタイルの見事な融合かもしれません。明解なベースのウォーキングからツインギターのアンサンブル、そして4ビートから瞬時にラテンリズムを敲き分けるジョー・モレロの名人芸を経て、いよいよタル・ファーロウのアドリブは冴えわたりです。
 う~ん、この演奏でも、シンプルにしてコピーが極めて難しいフレーズばっかり弾いてくれますねぇ。しかも絶妙の歌心がさらに素敵です。

ということで、全6曲に駄演無し!

ヴァン・ゲルダーの録音も素晴らしく、特にジョー・モレロの最高演奏をしっかり確認出来るのは嬉しいプレゼントです。

またサイドギターのドン・アーロンは、ほとんど無名の存在ながら、上手くタル・ファーロウに合わせるジャズセンスは一流だと思いますし、地味ながらバンドをしっかりとスイングさせているベースのクライド・ロンバルディもなかなかの実力者です。

そういうカルテットにあって、アドリブパートの美味しいところを全く独り占めしたようなタル・ファーロウではありますが、それもここまで凄かったら素直に脱帽するしかありません。

ジョン・マクラフリンは、きっとこれを聴いていたに違いない!

これは邪推ではないと、私は思うのですが……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジョン・マクラフリンのジャズって!?

2009-04-23 13:26:13 | Jazz

Extrapoaltion / John McLaughlin (Polydor)

イギリス産ジャズロックといえば、私の世代というか、実は私だけかもしれませんが、やはりジョン・マクラフリンを避けては通れません。

皆様も良くご存じのように、このギタリストはマイルス・デイビスの「In A Silent Way」や「Bitches Brew」あたりの電化期アルバムへ参加を経て有名になり、次いでトニー・ウイリアムスのライフタイムでフリーロックをやらかしてから、急速に注目されたようですが、サイケおやじにとっては、あのマハビシュヌオーケストラ! 特に名盤「火の鳥」で目覚めたようなもんですから、それ以前のあえてジャズ寄りの演奏は後追いで確認したようなものです。

で、このアルバムもそうして邂逅した1枚で、ジョン・マクラフリンにとっては初リーダー作だと言われています。

録音は1968年、メンバーはジョン・マクラフリン(g)、ジョン・サーマン(bs,ss)、ブライアン・オッジス(b)、トニー・オックスレー(ds) というカルテットで、演奏そのものは極めてアコースティック! 普通の正統派モダンジャズの響きが大切にされています。

A-1 Extrapolation
A-2 It's Funny
A-3 Argen's Bag
A-4 Pete The Poet
A-5 This Is For Us To Share

 A面は一応、上記の曲が演じられていますが、ひとつひとつがモダンジャズとしては比較的短いトラックであり、それがLP片面をブッ通して聴かれるように構成されています。つまり曲間が無いというか、実際には独立して演奏されたかもしれない曲が違和感無く、ひとつの流れになっているのです。
 まず冒頭の「Extrapolation」は所謂新主流派がモロ出しとなった幾何学的なテーマメロディ、そして絶えず変化していく4ビートか暗黙の了解的に演じられ、それはモードやフリーに近い中身なんでしょうが、ジョン・マクラフリンのギターは既成の概念から外れています。なんというか、メロディの楽しみを否定しているような、それでいて実にビート感がはっきりしたフレーズは音譜過多症候群に加え、セロニアス・モンクと共通するようなアブナイ雰囲気のコードワーク!
 はっきり言えば、あくまでも正統派から抜け出せないジョン・サーマンが気の毒になるほどです。
 それが一端収束し、穏かなムードの中で聞こえてくるのが、続く「It's Funny」という仕掛けなんですが、これがチャールズ・ミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」のようでもあり、チッコ・コリア系のスパニッシュモードのようでもあり、生真面目にそれを解釈していくジョン・サーマンのソプラノサックスが不思議な「泣き」を演じています。
 しかしジョン・マクラフリンのギターは全く容赦無し! 一定の文法に基づいているのは感じられますが、ロックもジャズも関係ねぇと主張する無戸籍なアドリブが強烈です。それゆえに演奏を上手く纏めようとするジョン・サーマンのラストテーマの吹奏が結果オーライというわけですが……。
 その静かなムードの中に響くのが、全くジョン・マクラフリンとしか言えないギターのコード弾き♪♪~♪ ようやく一番にジャズっぽい演奏となるのが「Argen's Bag」です。そしてジョン・サーマンのバリトンサックスが熱く咆哮すれば、ジョン・マクラフリンのギターはディープな思索に没頭し、ベースとドラムスはジャズのビートを大切にしながらも、その本音はロックに傾斜して良い感じ♪♪~♪
 それが何時しか高速4ビートへと転換し、実にテンションの高い演奏となるのが「Pete The Poet」ですが、ここではトニー・オックスレーのドラミングが、ほとんどトニー・ウィリアムスというのが意味深でしょうねぇ~。それゆえにジョン・マクラフリンも疑似ライフタイムを演じていますし、ジョン・サーマンの自虐的なバリトンサックスや唯我独尊のペースワークに専心するブライアン・オッジスも好演だと思います。
 こうして突入するクライマックスはトニー・オックスレーのドラムソロ! いゃ~、本当にトニー・ウィリアムスですよっ! ですから続く「This Is For Us To Share」の導入部のインタープレイを聴かされると、マイルス・デイビスが出てきそうな錯覚に襲われるんですが、実際に聞こえてくるのは、ジョン・コルトレーンが演じそうなスピリッチャルなメロディ♪♪~♪ もちろんバックが厳かに盛り上げる中、ジョン・サーマンが内側からこみあげてくるが如き、魂の叫びです。あぁ、この重厚な響きこそが、1960年代末期のモダンジャズだと思います。実際、これで身体に力が漲ってくるのは、その当時を体験した世代でしょうねぇ。

B-1 Spectrum
B-2 Binky's Beam
B-3 Really You Know
B-4 Two Piece
B-5 Peace Piece

 さて、そうしたA面の構成はB面にも引き継がれ、つまりこちらもLP片面をフルに使った演奏として聴かされてしまいます。
 それはアンサンブル主体の短い演奏という「Spectrum」に始まり、そのテンションの高い4ビートが、このアルバムでは一番に長いトラックの「Binky's Beam」に引き継がれますが、その場面転換の自然なムードが、もう最高です。ほとんど「In A Silent Way」の予行演習という感じさえするんですよ♪♪~♪ 暗黙の了解に基づいて躍動するブライアン・オッジスのペースに煽られるように燃え上がるジョン・マクラフリンのギターからは、青白い炎のようなクールで熱いフレーズが溢れ出して止まらず、またジョン・サーマンのバリトンサックスが煮詰まりを逆手に活かした名演を聞かせてくれますから、もう、辛抱たまらん状態! それがクールダウンして始まる「Really You Know」の優しい雰囲気も用意周到です。
 そして中盤からの正統派4ビートは、まさに安心感でしょう。実に上手いと思いますねぇ~♪ イヤミが無いといえば嘘になりますが、憎めないのも事実です。
 さらにそんな諸々をブッ壊して爽快に突っ走るのが、続く「Two Piece」の大熱演! テーマが提示された直後に乱れ打ちされるジョン・マクラフリンのコード弾きの大嵐には溜飲が下がりますよ。そしてバンドが一丸となってフリーに接近していくアドリブパートの物凄さは、筆舌に尽くし難いものがあります。う~ん、それにしてもトニー・オックスレーのドラミングは、セッションを通してトニー・ウィリアムスにクリソツなんですが、名前が同じだからといって、それで良いのか!? いや、これで良いんですねぇ~~~♪
 こうして迎える大団円は、ジョン・マクラフリンならではインド趣味というか、生ギターの音色が逆にハイテンションという独演会が短くあって、感動の余韻が何時までも漂うのでした。

ということで、何度聴いても凄さに圧倒されるアルバムです。

おそらくこの時代では、最もブッ飛んだジャズだったんでしょうねぇ、これは!?

主役のジョン・マクラフリンのギタースタイルも、この時代では誰の真似でも無い、独自のスタイルが既に完成されていると思いますが、ちなみに原盤裏ジャケットにはアコースティックボディのセンターホールにアタッチメントを装着してエレキ化したギターを弾く本人の姿があり、これは当時のフォークやロックでは既に一般的な使用法でしたが、これを堂々とジャズに使っていたとしたら、なかなか画期的だったかもしれません。

う~ん、斬新なスタイルは、こういうところにも要因があるのですねぇ。

我が国の推理作家、島田荘司の書く名探偵・御手洗潔は1960年代からジョン・マクラフリン系のギターを弾いていたそうですが、きっとこんな感じなんでしょうか?

まあ、それはそれとして、ここで聞かれる演奏は原則として4ビートが主体とはいえ、ジョン・マクラフリンのアドリブパートに限っては、もしバックがそのまんまロックビートだったとしても、何ら変わらない方法論で押し通すように思えます。

ジョン・マクラフリン、やっぱり凄くて最高!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トラフィックの復活と永遠

2009-04-22 11:39:41 | Rock Jazz

John Barleycorn Must Die / Traffic (Island)

トラフィックはブリティッシュロックの歴史を作った名バンドのひとつですが、ご存じのようにデイヴ・メイソン(g,vo) とジム・キャパルディ(ds,vo) が組んでいたザ・ヘリオンズという売れないグループに、当時は既にスタアになっていたスティーヴ・ウインウッドが参加して作られたという経緯は、後になって凄腕プロデューサーのクリス・ブラックウェルが目論んだ真相として、明らかにされています。

それゆえトラフィックというバンドは離散集合の繰り返しが、1967年のデビュー当時からの繰り返され、特にデイヴ・メイソンに至っては、素晴らしい曲と演奏を残している反面、アルバム単位では全てに参加していないという真相が、さもありなんです。

今となっては、その大きな原因がスティーヴ・ウインウッドのワンマン主義というか、ピアノもオルガンもギターもベースもボーカルさえも、全部自分で演じていたというところに、他のメンバーの反発がミエミエでしょう。

しかしスティーヴ・ウインウッドの才能は圧倒的!

全く、痛し痒しという結果がトラフィックの魅力でもあったわけですが、そこに居て、バンドをしっかりと纏めていたのが、クリス・ウッド(sax,fl) ではなかっでしょうか?

さて、このアルバムはスティーヴ・ウインウッドがトラフィックを一端は解散させ、例のスーパーバンドだったブラインド・フェィスの結成と分裂を経た後、再びトラフィックとして発表した傑作盤です。

録音は1970年の早春とされ、当初はスティーブ・ウインウッド(vo,p,org,g,etc) のソロアルバムとなるはずでしたが、セッションに参加したジム・キャパルディ(ds,per.vo) &クリス・ウッド(sax,key,fl,vo) という元トラフィック勢と意気投合した結果、トラフィックの再結成となったようです。

A-1 Glad
 何とも印象的なピアノイントロのキメフレーズからノリノリのテーマ演奏が流れてくると、あぁ、この雰囲気は1970年代の日活ロマンポルノのサントラ音源、そのまんま!
 という、実に魅惑的なインスト曲です。
 しかも驚くのは、メンバー3人だけの演奏なので、ベースやピアノ、キーボードは当然ながらスティーヴ・ウインウッドが何役もこなした多重録音であるにもかかわらず、極めて自然体のグルーヴが強烈無比! 重心の低いエレキベースの蠢きも、全く私の好むところですし、ヘヴィなビートと転がるようなドライヴ感は、明らかにニューオリンズ系R&Bの影響が大きいと感じます。
 その中で時にはワウワウ系の電気サックスまで聴かせるクリス・ウッドは、イノセントなジャズファンからすれば物足りないところもありましょうが、如何にも英国産ロックジャズと多国籍フィーリングが好ましく混ぜ合わされたスタイルとして、これも私は大好き♪♪~♪
 そして訪れるクライマックスは、スティーヴ・ウインウッドが弾く、まさにヨーロッパ教会音楽を強く連想させられるオルガンとピアノの様式美です。あぁ、この美しき流れの心地良さ♪♪~♪ その静謐な盛り上がりには、感動するしかありません。

A-2 Freedom Rider
 前曲からいきなり繋がって始まるのが、この熱いボーカル曲! そこに絡んでくるクリス・ウッドのフルートも最高にビューティフルです。
 プログレもソウルもジャズロックもゴッタ煮とした曲調は、これぞトラフィックなんですが、このあたりは後のスティーリー・ダンにもパクられたキメのリフがあったり、演奏パートの熱気は唯一無二の素晴らしさとして、これも後々のプログレバンドに大きな影響を与えていると思います。
 もちろん蠢きまくるエレキベースの快感は言わずもがな、アドリブパートでのフルートの響きを聴いていると、これまた1970年代の我が国アクション&エロ映画のサントラ音源がモロ♪♪~♪ 唸り続けるオルガンも最高ですから、全くサイケおやじには御用達の演奏として、永遠に不滅です。
 強烈なクライマックスの盛り上がりから、すぅぅ~とクールダウンしていくエンディングも素敵の決定版ですよ。

A-3 Empty Page
 英国メロディと黒人R&Bが巧みにミックスされた曲だと思いますが、その悪びれない演奏スタイルには好感が持てます。なんかブラインド・フェィスが演じてもOKかもしれませんね。
 しかしここでもエレピやオルガンが主体ですから、エレキギターが出ないロックの典型として、これも立派だと思いますし、エレキベースの大活躍はニクイほど!
 それとスティーヴ・ウインウッドのボーカルは本当に真っ黒で、流石は16歳の頃から天才少年として人気を確立していたのもムベなるかなです。

B-1 Stranger To Himself
 英国トラッドとスワンプロックの素敵な結婚という感じでしょうか、生ギターの凝ったキメのリフとかファンキーに躍動するリズムとビート、酔いどれてヤケッパチ気味のコーラスや暑苦しいギターソロあたりを聴いていると、気分はまさに1970年代ロックのど真ん中!
 その中にあって、スティーヴ・ウインウッドの歌唱は本当にツボを抑えたものでしょうねぇ。なんか出来すぎが逆に物足りないという……。

B-2 John Barleycorn
 そして続くのが、このアコースティックで素朴なメロディのアルバムタイトル曲♪♪~♪ 英国トラッドをメンバーがアレンジしたそうですけど、生ギターの素敵な味わいとクリス・ウッドのフルートが、なんとも魅力的です。
 そしてスティーヴ・ウインウッドのボーカルが原曲のメロディを大切にした歌い方というか、その気負いの無い説得力が最高じゃないでしょうか。

B-3 Every Mothers Son
 比較的自然主義の曲が続いた後に置かれた大団円が、この名曲にして名演です。
 熱いボーカルが冴えわたり、オルガンが唸り、ギターが叫ぶ展開の中で進む演奏は、メインの泣きメロが絶妙のスパイスとなって、グングンと盛り上がっていくのです。あぁ、聴いているだけで、力が漲ってきますよっ!
 そして中盤からのオルガンソロ、それを支えるジム・キャパルディのドラミングにもシンプルな魅力がありますから、重層的にダビングされたピアノやギターが尚更に演奏を熱くしているようです。
 最後のゴスペル大会も美しき「お約束」だと思います。

ということで、ロックジャズなA面、英国トラッドのゴスペル的展開というB面、と味わいが少し別れていますが、どちらもトラフィックというゴッタ煮バンドでしか作り出しえない演奏が楽しめます。

そこにはスティーヴ・ウインウッドという天才的なボーカリストにしてマルチプレイヤーの存在が、もちろん強いわけですが、A面でのクリス・ウッドの存在感も侮れませんし、作曲面でも貢献しているジム・キャバルディのドラミングが、けっこう良い味だと思います。

既に述べたように、A面はギター抜きが顕著なトリオということで、発表当時は違和感が確かにあったようです。実際、リアルタイムで聴いた私にしても、完全に??? なにしろ当時はエマーソン・レイク&パーマーもブレイク前でしたし、英国トラッドブームも我が国では無縁でした。もちろんフュージョンなんて分野もありませんでしたから、ジャズロックとしても中途半端だった感は否めません。

しかし虚心坦懐に聴いていると、とても心地良く、少しずつ私の感性にジャストミートしていったのです。

ちなみにその頃、これを聴いていたのは、某国営FMラジオ局からのエアチェックで、当時はアルバムを丸ごと流す豪気な番組があったのですよっ! ありがたい思い出です♪♪~♪

そしてアルバムを買ってからも、現在まで愛聴している1枚となりました。う~ん、やっぱり良いです♪♪~♪ 元祖ジャムバンド!?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

デクスターの上り調子

2009-04-21 14:39:16 | Jazz

The Chase / Dexter Gordon (Dial / Spotlite)

元祖モダンジャズのビバップは、一部の尖鋭的な黒人ミュージシャンによって、ニューヨークのクラブで、それも営業時間外に生み出されたそうですから、所謂アングラの黒人音楽ということで、そんなものをリアルタイムで楽しむファンなんてものは、相当にスノッブな人達だったと思います。

もちろんそれは白人が中心だったでしょう。なにしろ前述したクラブには黒人なんて入れないのが当時の世相でしたし、そもそも音楽産業が白人によって主導されていたのです。

そんな事情ですから、ビバップが新しくて凄いと気がついた業界にあっても、それを積極的にレコーディングしていく会社は、やっぱりインディーズでしたし、中でも中心人物のチャーリー・パーカーと逸早く契約し、その全盛期を記録したダイアルレコードの功績は計り知れないものがあります。

そして付随して記録されたビバップど真ん中の演奏もまた、素晴らしいものばかり!

本日ご紹介のアルバムは、そうした中からデクスター・ゴードンの当時のSP音源を復刻したアナログLPですが、これが編纂された当時のジャズ業界はモダンジャズがフリーやクロスオーバーに毒され、まさに混迷を極めていた1970年代ということで、実はその頃から活発になっていたネオバップと呼ばれるハードバップリバイバルを根底から支えた良い仕事でもありました。

で、このアルバムは当然ながら短いSP音源を纏めたものですから、様々なバンドによる演奏が集められています。

 A-1 The Chase (1947年6月12日録音)
 A-2 The Chase (1947年6月12日録音)
 A-3 Mischievous Lady (1947年6月5日録音)
 A-4 Lullaby In Rhythm (1947年6月5日録音)
 A-5 Horning In (1947年12月4日録音)
 B-1 Chromatic Aberration (1947年6月12日録音)
 B-2 It's The Talk Of Town (1947年6月12日録音)
 B-3 Blues Bikini (1947年6月12日録音)
 B-4 Ghost Of A Chance (1947年12月4日録音)
 B-5 Sweet And Lovely (1947年12月4日録音)
 B-6 The Duel (1947年12月4日録音)

1947年6月5日 / Dexter Gordon Quintet
 A-3 Mischievous Lady
 A-4 Lullaby In Rhythm

 メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、メルバ・リストン(tb)、チャールズ・フォックス(p)、レッド・カレンダー(b)、チャック・トンプソン(ds) という、なかなか素敵なバンドになっています。特にトロンボーンのメルバ・リストンは当時から注目されていた女性プレイヤーであり、またドラマーのチャック・トンプソンは後にハンプトン・ホーズが全盛期のレギュラートリオで有名になるわけですが、すでにこの当時から西海岸ではトップの存在だったと思われます。
 そしてデクスター・ゴードンは既に様々なバンドに加入し、全米各地で高い評価を得ていた新進気鋭であり、その頃にはチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスビー、パド・パウエルという超一流メンバーとのレコーティングも残していましたから、ようやく出身地のロスに戻ってきたところを西海岸が拠点のダイアルレコードが契約したのも当然が必然でした。つまりレーベルオーナーの長年の願いが叶ったセッションということで、バンドも気合いが入った大熱演!
 と書きたいところですが、実はこの頃からデクスター・ゴードンは悪いクスリにどっぷり……。この日の調子も決して良くなかったと言われているとおり、通常は4曲を録音するのが当時の慣習だったところを、わずか2曲でセッションを終了させているのは、その所為だと思われます。
 しかし如何にもデクスター・ゴードンらしいオリジナル曲の「Mischievous Lady」では、堂々としたテナーサックスの存在感が圧倒的に素晴らしく、ここで聞かれるミディアムテンポのグルーヴは永遠に不滅でしょう。またメルバ・リストンのトロンボーンは、知らなければ女性だとは思えない力強さがあります。ちなみに曲タイトルからして、この「Mischievous Lady」はメルバ・リストンへ捧げられているのでしょうか?
 そしてスタンダード曲の「Lullaby In Rhythm」は対位法を使ったテーマアンサンブルのアレンジが、ビバップから一歩先んじた雰囲気で感度良好♪♪~♪ デクスター・ゴードンのアドリブも有名曲メロディの引用という得意技が頻出していますし、ノリノリの楽しさが最高です。

1947年6月12日 / Dexter Gordon & Wardell Gray Quintet
 A-1 The Chase (false start)
 A-2 The Chase

 これが歴史に残るテナーバトルの大熱演!
 メンバーはデクスター・ゴードン(ts) とワーデル・グレイ(ts) の二枚看板にジミー・バン(p)、レッド・カレンダー(b)、チャック・トンプソン(ds) という強靭なリズム隊が参加していますが、彼等は当時、ロスでは人気のバトルチームでした。このアルバムの裏ジャケットの解説では、ダイアルレコードのオーナーだったロス・ラッセルの証言が熱く語られているとおり、それをきちんとスタジオ録音で残してくれた功績は偉業としか言えません。
 しかもマスターテイクとなった「A-2」は、当時の常識外という7分近い演奏時間! これをSPの両面に分けて発売したわけですが、となると当然、レコーディングにはテープが使われていた証となるのでしょうか?
 肝心の演奏は、まず最初の失敗スタートテイクでスタジオの雰囲気が楽しめるというミソがニクイばかり♪♪~♪ 演奏のムードを指示するデクスター・ゴードンらしき人物の声が、なかなかシブイです。
 そしてついに始まるマスターテイクでは、既にイントロからテーマ部分で熱気が充満していて、実に良い感じです。アドリブパートでは先発のデクスター・ゴードンがギスギスした音色のハードなフレーズなのに対し、続くワーデル・グレイは滑らかなフレーズとソフトな音色で応戦するという両者の個性も際立っています♪♪~♪ もちろんそこには演奏が進むにつれ、バトルのアドリブ小節が短くなるという「お約束」が用意されていますから、本当に熱くなりますよっ!
 当時のダイアルレコードでは、これが発売直後から爆発的な人気盤となり、最高の売上を記録したというのも納得出来ます。

同年同日 / Dexter Gordon Quartet
 B-1 Chromatic Aberration
 B-2 It's The Talk Of Town
 B-3 Blues Bikini

 これは「The Chase」と同じ日に行われたセッションですが、前述のメンバーからワーデル・グレイが抜けたワンホーン演奏ということで、絶好調のデクスター・ゴードンが楽しめます。
 まず「Chromatic Aberration」は何とも凄い曲タイトルどおり、相当に複雑なコードを使っているであろう、デクスター・ゴードンのオリジナルですが、作者本人のテナーサックスを筆頭に、なかなかリラックスした仕上がりです。特にラストが素敵ですねぇ~♪
 そして続く「It's The Talk Of Town」は味わい深いスタンダードの歌物曲ということで、デクスター・ゴードンが自身のキャリアの中でも畢生の名演じゃないでしょうか。ふくよかなテナーサックスの鳴り、そして歌詞を知らないバラードは吹かないとされるデクスター・ゴードンの歌心は絶品♪♪~♪ 本当に何時までも聴いていたいです。
 さらに即興的なブルースの「Blues Bikini」では、ハードボイルドなコブシが実に心地良いテナーサックスの名人芸! タフで懐の深い表現が最高だと思います。

1947年12月4日 / Dexter Gordon & Teddy Edwards Quintet
 A-5 Horning In
 B-4 Ghost Of A Chance
 B-5 Sweet And Lovely
 B-6 The Duel

 前述した「The Chase」のヒットから続篇として企画されたのが、このセッション!
 メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、ジミー・ロウルズ(p)、レッド・カレンダー(b)、ロイ・ポーター(ds) というカルテットに、ワーデル・グレイの代役として参加したのが、当時の西海岸では注目株だったテティ・エドワーズです。
 そのテナーバトル演奏は2テイクが完成され、7分半にも及ぶ長いテイクが「Horning In」、一方は短いといっても5分半ほどの「The Duel」、その二通りの曲として発売されたようです。
 肝心の仕上がりは、残念ながら名演の「The Chase」には及ばないと個人的には思っていますが、しかし全篇に横溢するガサツな熱気とか、リズム隊の好演は魅力的です。ハードな音色を聞かせるのがデクスター・ゴードン、やや灰色のトーンで遮二無二ブローしていくのがテディ・エドワーズという聞き分けも容易だと思いますが、アドリブの閃きという点ではデクスター・ゴードンに軍配があがるのではないでしょうか。
 その意味で、デクスター・ゴードンがワンホーン演奏の真髄を聞かせてくれる「Ghost Of A Chance」と「Sweet And Lovely」は、歌物スタンダード曲のモダンジャズ的解釈として最高峰! 絶品の歌心と繊細なメロディフェィクは力強くて、さらに優しさが滲み出た決定的なものだと思います。

ということで、何れもSP時代の復刻演奏ですから、元々のノイズが針音と連動して古臭く聞こえるかもしれません。しかし演じられているものは完全なる本物! そう断言して異論は無いと信じています。

残念ながら、これほど素晴らしいジャズを聞かせていたデクスター・ゴードンは、既に述べたように、この頃から違法なクスリの悪癖から逃れられず、1950年代後半のモダンジャズにとっては最高の時代に活躍出来ませんでした。

もちろん復帰後の演奏も唯一無二の素晴らしさで、さらに人生の機微を表現するが如き存在感は偉大だと思います。しかしここで聞かれる上昇期の姿は眩いばかり! それゆえに後の逼塞期が悔やまれるわけですから、なおさらにこのアルバムを私は愛聴しています。

ちなみにここには一応、オリジナルのマスターテイクなるものが収められていますが、後年になって発掘発売された別テイクも、当然ながら素晴らしい世界遺産! おそらくCDには上手く纏められているはずですから、存分にお楽しみくださいませ。

冒頭で述べたネオバップでは、特に人気が高かったデクスター・ゴードンは、最初っから凄い人だったと、聴く度に感動させられます。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする