■Baby Come Back / Player (RSO / フィリップス)
1970年代半ば頃からのAORブームは、プロはもちろんの事、なんとかバンドをやっている素人衆にも少なからず影響がありました。
それはプログレにも言える事なんですが、やるからに高度なテクニックと用意周到な音楽性の習熟が必須とされるジャンルですから、いきなり十代の若者達には敷居の高い世界であり、そこでパンクなぁ~んていうロックの初期衝動が浮上してくる事態にも、あながち鼻白んでばかりはいられません。
唯、そこには好き嫌いという感情が優先されるという事情も、決して無視されてはならないでしょう。殊更素人衆にはっ!?!
さて、そんな渦中(?)に登場してきたのが、本日ご紹介のプレイヤーと名乗るバンドで、当時は疑似ホール&オーツとさえ言われた都会派ホワイトソウルの親しみ易さ、そして簡易と思わせられる演奏構造、さらにはちょいと初期スティーリー・ダンにも通じる歌と演奏のお洒落なバランスが、既にアルバム中心に聴かれていた大衆音楽の中で見事なシングルヒットを生み出し、それが1977年末頃から流行った「Baby Come Back」でした。
う~ん、なんて素敵な曲でせう♪♪~♪
演じていたプレイヤーはピーター・ベケット(vo,g)、ジョン・チャールズ・クローリー(vo,key,g)、ウェイン・クック(key)、ロン・モス(b)、ジョン・フリーセン(ds) の5人組なんですが、バンドの中核はピーター・ベケットとジョン・チャールズ・クローリーだったそうで、実は公式レコードデビューに至る前から、この2人はデモテープ~セッションレコーディングで大半の楽曲を完成させていたと言われています。
ところがそれを世に出す直前、契約したばかりのレコード会社が消滅!
以降、紆余曲折があって前述のメンバーが揃い、そうしたマイナス要因をプラスに変えたのは、その逼塞期間を演目の完成度の高さに結びつけた結果だと思われます。
つまり、この「Baby Come Back」は過言ではなく、聴くほどに練り込まれた曲構成と創意工夫の賜物だと思うばかり!
これほど難しい演奏を親しみ易さ優先で聞かせてしまう匠の技は、相当の音楽的センスと修練がなければ、成しえないはずですし、素人バンドがコピーしようとするほどに、ヘタレを演じてしまうのは、サイケおやじの過去の過ちで証明済みなんですよ……。
なにしろやっているうちにリズムやピートはズレるし、ボーカル&コーラスは互いに合わなくなるし、挙句の果てには自分が何処をやっているのか迷ってしまうテイタラク!?!?
ひとつひとつのパートがシンプルなだけに、余計惨めな結果が情けないわけです。
ということで、やっぱり全米チャートのトップに輝くほどの名曲名演は奥が深いですねぇ~♪
また歌詞の内容が別れた女への未練タラタラというあたりにも、なにか1970年代後半の微熱なムードが滲み、それをお洒落な演奏パートが彩るところにAORと称された大人のロックの基本的主張が成り立っているように思います。
そして結果的にプレイヤーは大ヒットシングル「Baby Come Back」を看板に幾つかのアルバムとシングルを出しつつ、お決まりのメンバーチェンジ繰り返しながら、最近も活動を続けているらしいのは、もはや行きつく先の物語でしょうか。
ジョン・チャールズ・クローリーが1980年代から職業作家としての道を歩み、スモーキー・ロビンソン等々の一流シンガーに曲を提供している事実を鑑みても、やっぱりAORはプロの仕事の世界なんだなぁ~~、と痛感させられているのでした。