OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジュニア・マンス!

2006-10-31 18:10:44 | Weblog

本日もハードボイルドな仕事が続きました。

と書けば、カッコイイんですが、実際は泣き落としまでされたり、きっと私は鬼に思われたでしょう……。

でも、時には心を鬼にすることも、世の中、必要なんだぜっ!

こうでも思わなきゃ、やってられない毎日が、まだまだ続くんでしょうか……。

あ~ぁ、こういう時には黒っぽいものが聴きたくなります――

Big Chief ! / Junior Mance (Jazzland)

ジュニア・マンスというピアニストはブルースが十八番というイメージが強く、実際、バリバリのブルースマンと共演したアルバムやセッションも残されているほどです。

でも、本質は真っ向勝負のジャズピアニストでしょう。

そしてこのアルバムは、ブルースやソウルのフィーリングを、とても上手くジャズに融合させた名盤だと思います。

録音は1961年8月1日、メンバーはジュニア・マンス(p)、ジミー・ローサー(b)、ポール・ガスマン(ds) という、いささか地味な面々ではありますが、その演奏はソフトな黒っぽさと熱い想いに満ちた名演ばかりです――

A-1 Big Chief !
 ゴスペル風味のブルースで、テーマ部分からピアノとベースのコール&レンポンスが気持ち良く、そのまんま、アドリブパートに入っていくジュニア・マンスの自然なブルース・フィーリングが素敵です。
 しかし、ここでは必要以上に熱くならず、トリオとしての一体感を大切にした演奏が展開され、まあ、小手調べといったノリですが、そこが逆に好印象です。

A-2 Love For Sale
 一転、激烈なテンポで突進するスタンダードの解釈が、凄まじい興奮を呼ぶ演奏です。ジュニア・マンスのピアノは、当に暴れのフレーズの連打ですし、破綻寸前のリズム隊がスリル満点ですねぇ~!
 3分6秒目あたりからは、十八番のフレーズとドラムスの対決となり、クライマックスへ一気の雪崩込みです。
 きっと当時のクラブでの演奏は、こんなパターンの繰り返しだったんでしょうねぇ♪ トリオの纏まりも最高です。

A-3 The Seasons
 またまた演奏は一転し、なかなか魅力的なテーマを持ったスロー曲が披露されます。
 ジュニア・マンスのピアノは力強く深遠で、こういう世界は全くの意想外!
 ジミー・ローサーのアルコ弾きも効果的ですし、およそジャズらしくない、完全に作り上げられた演奏かもしれませんが、クセになる恐さを秘めています。

A-4 Filet Of Soul
 ちょっとユーモラスなテーマ曲ですが、ベースとドラムスにまでアレンジが及んでいる緻密な構成がミソでしょう。実際、ジミー・ローサーのベースが主役の演奏と言ってもいいほどです。
 しかしジュニア・マンスも小気味良いフレーズの連発から、絶妙のファンキー・フィーリングを聴かせます♪

A-5 Swish
 シンプルなテーマ部分からポール・ガスマンのブラシが冴えるアップテンポの曲です。
 ジュニア・マンスはオスカー・ピーターソン風のテクニックを駆使して圧巻のアドリブを繰り広げますが、ここではステックに持ち替えたポール・ガスマンが、手加減せずに煽るので、演奏はどこまでも熱くなるのでした。

B-1 Summertime
 お馴染みのスタンダード曲がファンキーに演奏されるのですから、たまりません!
 定型のリフを用いつつ、黒いフレーズを慎重に選んでグルーヴィな雰囲気に撤するジュニア・マンスは潔く、また控えめながら、地の底で蠢くようなベースとドラムスの瞬発力がキメとなった、哀愁の大名演だと思います。

B-2 Ruby My Dear
 セロニアス・モンクの名曲をファンキー味で料理した、これも名演だと思います。
 それはソフトな黒っぽさであり、ハードバップ王道の分かり易さでもありますが、嫌味どころか、いつまでも浸っていたい魅惑のジャズになっているのでした。

B-3 Little Miss Gale
 ミディアム・テンポのファンキー節が満喫出来る、ゴスペル・ハードバップです。
 ジュニア・マンスのブルース味満点のフレーズは、もちろん素晴らしいですが、実は何よりもトリオの一体感が最高です。
 力強いジミー・ローサーのベース、繊細かつ豪胆なポール・ガスマンのドラムス!
 彼等は日本では無名に近いですが、こういう実力者が本場にはゴロゴロしていたのでしょうねぇ~。少ないレコーディングのチャンスに燃えた、熱い魂の迸りというか、とても気合の入った演奏が、この曲だけでなく、全篇で楽しめるのでした。
 
B-4 Atlanta Blues
 最後を飾るのはブルースの偉大なる作編曲家=WCハンディか書いた名作です。
 まず一抹の「泣き」を含んだテーマを、ベースの定型パターンで活かしながら展開されるトリオの一体感が素晴らしく、ジュニア・マンスのアドリブはツボを外さない、美味しいフレーズの連続です。
 またポール・ガスマンのゴスペルドラミングが痛快! これも何時までも聴いていたい名曲・名演になっています♪

ということで、ピアノトリオでは決して名盤扱いにはなっていないようですが、こういう地味な味こそが、ジャズの醍醐味のひとつだと思います。

録音もリバーサイド系特有のギスギスした音で生々しく、個人的には、こういう雰囲気が大好きです。

ギトギトやコテコテとは言えませんが、なかなかの味があるアルバムで、甘さに流れないハードボイルドに浸るには最適かと、私は思います。

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たまには上品さも必要

2006-10-30 18:50:21 | Weblog

まったく仕事が忙しく、毎日、何人もの人に会い、シビアな話をしているわけですが、一番ストレスになるのは、昼飯時に仕事の話をしなければならない事です。

大体、その時間帯の私は、好きな音楽を鳴らしつつ、和んでいるのが日課ですが、そこに来客が予定されていると、迂闊なブツも聴いていられないという、ミエまではらなければなりません。

つまり下世話なハードバップとか、ドギツイR&B、ストーンズや昭和歌謡曲という私が一番好んでいるジャンルは、みっともないです! とネコ耳秘書に諫言されるというテイタラク……。

バカヤロー! 好きなもの聴いて、なんか悪いかよ~!

と怒鳴りつけたい気分ではありますが、やはり格好をつけなければならない日には、これを聴いています――

Concorde / The Modern Jazz Quartet (Prestige)

ジャズは個人芸の競い合いなので、ロックのような役割分担の束縛が大きいグループという観念が希薄ですから、そもそもバンド名を持って活動しているグループは、ほとんどありません。

しかし、それゆえ逆に有名なのが、ジャズ・メッセンジャーズ(JM)とモダンジャズ・カルテット(MJQ)の2つでしょう。

特に後者はジャズばかりでなく、クラシックや現代音楽、さらにボサノバやロックの感覚までも貪欲に取り入れた演奏が、ジャズファン以外にも大ウケでしたし、タキシードでビシッと正装したメンバーのステージマナーの良さもあって、幅広い人気を得ていました。

このアルバムは、そんな彼等の人気を決定付けた名盤で、録音は1955年7月2日、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds) という黄金期のレギュラーが初顔合わせとなっています――

A-1 Ralph's New Blues
 ミルト・ジャクソンが書いたシンプルなブルースですが、テーマ部分はクラシックのフーガ調が取り入れられている芸の細かさで、こういうところにグループとしての存在感が顕著です。
 しかしアドリブパートでは自由度が重んじられ、ジャズの真髄が追求されるのです。それはディープで静謐なファンキー感覚を撒き散らすミルト・ジャクソンであり、淡々とした間合いから黒い魂を覗かせるジョン・ルイスであり、墨絵のごとき濃淡が鮮やかなパーシー・ヒース、さらに地味ながら芯の強いコニー・ケイという、極限まで煮詰められた世界が展開されています。

A-2 All Of You
 有名スタンダードをスローな展開で聞かせるカルテットは、「間」を大切にしながらも、繊細な歌心を持ってジンワリとした名演を作り出していきます。
 なにしろ、これだけゆったりとしたテンポでありながら、決してダレ無い演奏からは、徐々に黒い感覚が滲み出してくるのですから、惹き込まれます。特にミルト・ジャクソンが繰り出す2分55秒からのキメのフレーズには、グッときますねぇ~♪

A-3 I Remember April
 一転して早いテンポで演奏されるこの曲は、ビバップ時代からモダンジャズでは定番のスタンダードです。そして、それゆえにイモな演奏は完全に許されない世界が求められますから、ここでの急速バージョンは緊張感がいっぱいです。
 流麗なミルト・ジャクソン、無駄な音を出さないジョン・ルイス、煩い寸前のコニー・ケイのシンバル、そして土台作りに腐心するパーシー・ヒースと、間然することの無い仕上がりが、当にハードバップ時代を代表する名演になっています。

B-1 Gershwin Medley
 タイトルどおり、ガーシュインの曲ばかりが4つ、メドレーで演奏されています。
 まず最初がベースソロで「Soon」、続く「For Me, For You, Forevermoer」はジョン・ルイスとミルト・ジャクソンの絡み、さらに「Love Walked In」はミルト・ジャクソンが全面に出ていますが、最後の「Our Love Is Here To Stay」はグループ全体の纏まりを聞かせようという意図がうかがえます。
 全篇が落ち着いたスローな展開になっていますが、このジェントル感覚が人気の秘密のように思います。こんな演奏がホテルのラウンジで生演奏されたなら、下心のきっかけが掴めないカップルは大助かりでしょうねぇ……♪

B-2 Softly As In A Morning Sunrise / 朝日のようにさわやかに
 このアルバムの目玉演奏で、ジャズ史的にも名演とされています。
 ネタはモダンジャズでも多くの素晴らしいバージョンが残されているスタンダード曲ですが、ここではイントロとラストテーマの後に、バッハのカノンを用いたアレンジが施されているのがミソです。
 そしてアドリブパートでは極めてハードパップな味が全開になるという、ミスマッチとアンバランスの妙が鮮やかさの極北です。全てが口ずさめるミルト・ジャクソンのアドリブフレーズ、調子の良さと奥深い味わいのジョン・ルイスが本当に最高で、もちろんバンド全体の落ち着いたグルーヴから発散される黒っぽさが、たまらないのでした♪

B-3 Concorde
 短い曲ですが、クラシックをモチーフにバンド全体が集団アドリブを展開しつつ、ひとつの完成形に持っていく妙技が冴えた名演です。
 こういう展開は、後々までMJQが十八番とする、その原風景が楽しめます。

ということで、クールでお洒落な演奏集なので、ほとんど定番化している作品ですが、完成度が高い分だけ、ここに収められた演奏はアドリブパートも含めて、ライブでもスタジオバージョンとなんら変わらない出来になるようです。

それはMJQというバンドが、高度なアレンジとリハーサルによって煮詰められた演奏を完成させていたからに違いなく、果たしてそれが自然発生的なグルーヴが求められるジャズか否かという議論までも引起こしますが、ここに聴かれるのは、間違いなくジャズそのものです!

ジャズは夜の音楽とか、よく言われますが、お昼のお茶の時間に聴いても素敵なアルバムなんで、私は重宝しています♪

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ウマが合ったら♪

2006-10-29 19:15:33 | Jazz

世間は休み、私は仕事……!

はっきり言って、嫌になるっ!

自分の人生は、もっと楽しくて良いんじゃないかっ?

そんな激情モードでは、こういう尖がったアルバムが聴きたくなります――

It's Time / Jackie McLean (Blue Note)

ジャッキー・マクリーンは、十代の頃からトッププレイヤーとして活躍した黒人アルトサックス奏者ですが、けっして世渡りが上手いタイプでは無いと思います。

なにしろ駆け出し時代から、マイルス・デイビス(tp) やチャーリー・ミンガス(b) といった、自分を高く評価してくれたリーダーと喧嘩してバンドを飛び出したり、アート・ブレイキー(ds) やケニー・ドーハム(tp) という、モダンジャズを作り上げた偉人と共演しながら、自分を曲げなかったという、頑固なんだか、我侭なんだか、ちょっと理不尽大王的な人かもしれません。

しかし、そのジャズに対する情熱や個性は圧倒的で、今日でもジャッキー・マクリーンを語る際には「青春」とか「熱血」がキーワードになるのです。

このアルバムは、そんなジャッキー・マクリーンが三十路を越えながら、なお熱い血潮の滾りを聞かせた傑作盤です。

録音は1964年8月5日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as)、チャールス・トリバー(tp)、ハービー・ハンコック(p)、セシル・マクビー(b)、ロイ・ヘインズ(ds) というコワモテが揃っています――

A-1 Cancellation
 いかにも黒人ジャズらしい熱気を伴ったモード曲で、刺激的なテーマにはロイ・ヘインズのシャープなドラムスと暗い情念を表出させたハービー・ハンコックのピアノが、絶妙のアクセントを付けています。
 ジャッキー・マクリーンのアドリブは先鋭的なフレーズの連続ですし、チャールス・トリバーのトランペットはさらに突っ込んだエグミがたっぷりです。
 ちなみに、このチャールズ・トリバーは当時大学を出たばかりの新鋭で、これが初レコーディングのようですが、そのスタイルはフレディ・ハバードと同根のエモーションに溢れ、既に完成されています。そしてこのアルバムでは、これを含めて3曲のオリジナルまで提供しているという、リーダの片腕的な存在感を示しているのです。
 またハービー・ハンコックは、当時マイルス・デイビスのバンドレギュラーとして大活躍していましたが、ここでも実力を遺憾なく発揮! 自分のソロパートではロイ・ヘインズのドラムスと上手い掛け合いを演じています。

A-2 Das' Dat
 なかなか楽しくファンキー色が強いジャッキー・マクリーンのオリジナルで、作者自らが、独自の音色を武器にして「泣き」の本領を発揮しています♪
 またチャールス・トリバーも、お約束のファンキー・フレーズを吹いていますし、ハービー・ハンコックが、また素直に素敵なんですねぇ♪
 こういう演奏を聴いていると前曲のツッパリは何だったんだぁ? と思ってしまいますが、これもまたジャズの味わい深いところだと思います。

A-3 It's Time
 アルバムタイトル曲は、再びモード色に染まりきった過激な演奏になっています。
 しかし基本がマイナー調ですから、ジャッキー・マクリーンが十八番の哀切のアドリブフレーズを連発しています♪ 
 またチャールス・トリバーはフレディ・ハバードのフレーズを盗用している感がありますが、それでも何とか自己主張しようと悪戦苦闘している様が憎めません。
 そしてハービー・ハンコックが、流石の素晴らしさです! 刺激的な伴奏とシャープなアドリブソロは、この当時のトップピアニストの面目躍如たるものでしょう。
 それとセシル・マクビーの思索的なベースワーク、オカズが多くてメシが無いというロイ・ヘインズのドラムスも強烈です。

B-1 Revillot
 曲タイトルの綴りから一目瞭然、チャールズ・トリバーのオリジナル曲で、つまりトリバーの逆綴りなんですねぇ♪ これがジャズ業界の、お約束です。
 肝心の演奏はテーマ部分で変拍子が入るハードなものですが、アドリブパートは豪快な4ビートで、まずは作者本人が素晴らしいトンペットを聴かせてくれますし、背後で炸裂するロイ・ヘインズのドラムスも最高のスパイスになっています。
 またジャッキー・マクリーンは必要以上に泣きませんが、図太いフレーズは流石の存在感ですし、ハービー・ハンコックが陰の主役という暴れを披露しています。

B-2 Snuff
 これまた強烈な刺激に満ちたジャッキー・マクリーンのオリジナルです。
 アップテンポでブッ飛ばす中にも全員の熱演で、暗い情念とか熱い想いが混濁していく様が表現されているようです。
 特にチャールズ・トリバーは渾身の吹奏というか、その必死さに好感が持てます。
 またハービー・ハンコック以下のリズム隊の纏まりも素晴らしく、ロイ・ヘインズだけ聴いていてもゾクゾクさせられます。

B-3 Truth
 オーラスは、このアルバム中で唯一のスロー曲です。
 作者のチャールズ・トリバーにとっては、かなりの自信作とみえて、以後、自分のセッションでは何度も取上げていますが、ここでの初々しさは本当に素敵です。
 テーマをリードするトランペットに絡むジャッキー・マクリーンのアルトサックスの響きも奥深く、アドリブパートでは例の「泣き」を聴かせてくれますから、たまりません。

ということで、これはチャールズ・トリバーという新主流派バリバリのトランペッターのリーダー盤として出ても、全く違和感が無い仕上がりです。

しかしジャッキー・マクリーン色が薄いかと言えば、否としか答えられません。

つまり本当にウマが合ったんでしょうねぇ。そういう出会いがあると、仕事も上手くいくという、これはひとつの好例かもしれません。翌月にはもう1枚の共演盤「アクション(Blue Note)」が吹き込まれ、いっしょにライブの仕事もしていたそうです。

ただし、2人の共演は1965年末で終わっているが、残念でした……。

またセッション全体におけるリズム隊の素晴らしさは言わずもがなで、特にロイ・ヘインズのシャープなドラミングは大きな聞き物だと思います。ちなみにジャッキー・マクリーンは、自己のリーダーセッションでは、イモなドラマーは決して使わない人だと思います。

それにしても休みが欲しい……。

フリーに走るジャズメンの気持ちが分かるなぁ……。

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新しめの愛聴盤

2006-10-28 18:55:57 | Weblog

仕事がゴッタ煮状態で、身動きが取れなくなっていますが、こういう時に限ってジャズモードを身体が欲するのです。

そこで本日は、ちょっと新しめの愛聴盤を――

Eugene Pao & Mads Vinging Trio (Stunt)

本日の主役=ユージン・パオは香港生まれでアメリカ育ちのギタリストです。その活動は決してジャズ一筋では無いようですが、もちろんジャスを演奏させても超一流という証明が、このアルバムです。

録音は2001年6月26~28日、メンバーはユージン・パオ(g)、Olivier Antunes(p)、マッズ・ヴィンディング(b)、アレックス・リール(ds) となっていますが、まず、なによりも演目が魅力です――

01 Witch Hunt
 ウェイン・ショーター(ts) が書いたモードの名曲です。
 ここでの演奏はオリジナルの味を大切にしたミステリアス&ハードな雰囲気で、ユージン・パオは単音弾き、オクターブ奏法、コード弾きと自在なテクニックで、全く間然することのない正統派のジャズギターを聴かせてくれます。
 そして個人的に気に入ったのが、フランス生まれの若手ピアニストである Olivier Antunes で、センスの良さと的確なテクニックは素晴らしく、ジャズっぽさ真っ只中の演奏を披露しています。
 快適な4ピートの真髄を送り出しているドラムスとベースは、もちろん1970年代のネオパップ期に頭角を現し、今日まで活動しているベテランコンビです♪

02 Recordame
 ジョー・ヘンダーソン(ts) が書いた、これも1960年代ジャズの名曲です。
 ここでは、そのキモであるジャズロックのノリを、如何にも新主流派というハードなものに変換し、また原曲の楽しさを損なわずに聴かせてくれます。
 アドリブ先発はマッズ・ヴィンディングの豪快なベースソロ、次いでユージン・パオの流れるような、そして温か味に溢れたギターが躍動します。
 そして、Olivier Antunes が、また素晴らしいんですねぇ~♪

03 Infant Eyes
 おぉ、これこそモードジャズの極北という、ウェイン・ショーターが書いた永遠の名曲です!
 ユージン・パオは、それを生ギターで静謐に演奏していくのですから、聴いている私は、いつもジャズの深遠を覗いてしまったかのような、不思議な満足感に浸ってしまいます♪ それはテーマメロディを素直に弾いているだけなんですがっ!
 もちろんアドリブも強烈です。
 また、Olivier Antunes がビル・エバンス~ハービー・ハンコック系をモロ出しにした素晴らしさで、憎めないですねぇ~♪

04 All Of You
 これも生ギターを使って、有名スタンダード曲を素直に演奏しています。
 ここではリズム隊のマッズ・ヴィンディング・トリオが素晴らしい出来で、ピアノ、ベース、ドラムスのインタープレイが本当に嫌味の無い好演だと思います。
 そしてユージン・パオは、かなりアグレッシブなフレーズと過激なノリを展開しますが、リズム隊が鉄壁なので、安心感があります。
 う~ん、それにしてもこのギタリストは、物凄いテクニックと歌心を持っていますねぇ~♪ 随所に出る爆裂フレーズが破綻しないのですからっ!

05 Alice In Wonderland
 ジャズ・バージョンではビル・エバンスの演奏があまりにも有名ですから、ここでは、そのギター・カルテット的な展開を期待して、全くそのとおりの仕上がりになっています。
 なにしろテーマをリードする Olivier Antunes のピアノがモロ! さらにベースとドラムスが、こういうのをやるのが、本当に楽しくて仕方が無い雰囲気ですので、悪いわけがありません。けっこう過激な展開まで聴かせてくれます。
 肝心のユージン・パオは、またまた生ギターで驚異のアドリブを聴かせてくれますよっ! 本当にジャズそのものの楽しさが、たっぷりと味わえます♪
 そして大奮闘する Olivier Antunes にご注目!

06 Blame It On My Youth
 古いスタンダード曲ですが、近年はキース・ジャレット(p) あたりで火がついた人気曲です。イノセントな雰囲気が素敵なんですねぇ~♪
 テーマをリードするのはマッズ・ヴィンディングのピチカートでしょうか? 途中からユージン・パオの生ギターがそれを引き継いでいくあたりの緊張感と静謐な雰囲気は、自然体の魅力が満点です。
 しかし Olivier Antunes のピアノは若気の至りというか、狙いすぎなんですが、この人は憎めませんねぇ~。寸前でユージン・パオが素晴らしいアドリブで助け舟を出すあたりが、ジャズの醍醐味かもしれません。最後の最後に出るオクターブ奏法が、地味にグッときます。

07 Dolpin Dance
 ハービー・ハンコック(p) が作った、これも1960年代ジャズの名曲ですが、生ギター中心の演奏にも違和感がありません。
 ここではアレックス・リールのドラムスに存在感があり、難解なベクトルに向かい気味のメンバーを、しっかりと4ビートに?ぎ止めているようです。ただし、その分だけ自分が暴れているわけですが……。

08 Bud Powell
 チック・コリア(p) がバド・パウエル(p) に捧げて書いた、新世代の楽しいビバップ曲です。
 ユージン・パオはエレキを使いますが、その暖かい音色はあくまでも正統派でありながら、随所でロック的な細かいニュアンスが織込まれていて、流石だと思います。もちろん歌心は天下一品! 思わずコピーしたくなる美味しいフレーズが、これでもかと飛び出します。もっとも簡単に真似出来る世界ではないのですが……。

09 My Foolish Heart
 オーラスは、またまたビル・エバンスの世界か!?
 と期待してしまう演目ですが、期待を裏切っていません♪
 ユージン・パオは生ギターでマッズ・ヴィンディングと絡み合いながらテーマを綴るあたりは「Blame It On My Youth」と同じ手なんですが、それゆえに安心感があります。
 また Olivier Antunes が思いっきりビル・エバンスをやってくれますから、なかなか気持ちの良いヌルマ湯状態♪ 純ジャズ的には、いけない事かもしれませんが、気持ち良いんですから、ご容赦を♪

ということで、あまりにもイージーな作りと疑うなかれ! これは聴かないとソンをする1枚だと思います。

私は3年ほど前に入手したのですが、これも今日まで座右のアルバムとして、ジャズに嫌気がさした時に聴いては、独り悦にいっています。

何よりもユージン・パオというギタリスト、また Olivier Antunes というビアニストを知った事が大きく、特に後者は私のお気に入りとして、いろいろと音源を漁っています。

皆様には、ぜひとも聴いていただきたい名演盤です。

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みちづれ盤

2006-10-27 17:54:28 | Singer Song Writer

近頃、何となく自分の葬儀について考えることがあります。

暗い気分ではなく、もちろん特に健康を害しているわけでも無いのですが、自分の人生の最後ぐらいは、自分で演出してみたいような我侭さがあるのです。

それと気になるのは、自分が楽しんだ蒐集物の行方とか……。きっと捨てられてしまうんでしょうねぇ……。

いかん、暗くなってきたので、本日は私が特に和むアルバムを――

Tapestry / Carole King (Ode)

高校時代に始めて聴いて以来、今日まで私の座右の愛聴盤♪ 願わくば、あの世までも持って行きたいアルバムです。

キャロル・キングは1950年代後半から作曲家として、多くのヒット曲を書き、また自分でも歌っていた天才ですが、その活動は決してロックではありません。

キャロル・キングが書いた曲を歌っていたのは、エルビス・プレスリーが兵役についた後からビートルズが登場するまでの間に、アメリカで人気を集めたティーン・アイドル達が中心でした。

それは黒人っぽいものではなく、薄められたロックンロールとそれ以前の白人ジャズソングの変形でしかありません。

つまりユダヤ人モードで作られたスタンダード曲のコードを用いて作られた8ビート曲であり、もちろん歌詞は8ビートに乗って違和感の無い語呂になっていました。

そしてキャロル・キングはゲリー・ゴフィンという作詞家とコンビで、多くのヒット曲を量産したというわけです。

ちなみに彼女は、ビートルズが渡米した時には表敬訪問を受けているほどの才女ですが、そのビートルズや後に続くイギリス勢、あるいはアメリカのモータウン・レーベルの所属歌手達の台頭で、徐々に表舞台から消えていくのですから、皮肉なものです。

そしてサイケ、ブルース~ハードロック、ソウルといったブームが頂点を極めていた1968年になって、キャロル・キングは再び自分が作曲し、歌う姿勢を取り戻し、ついに1971年になって発表したのが、この大ヒットアルバムです。

そのサウンドはシンプルな伴奏にゆるやかな曲という、当時流行のシンガーソングライターの典型ですが、実は根底に、ロックやフォークに留まらず、ジャズやソウルの味付けが濃厚に存在しているのです。

告白すれば、私はシンガーソングライター系の音楽は、それほど好きではありませんが、このアルバムだけは、最初聴いた瞬間から、やられました。

それが何故か、当時は分からなかったのですが、まず曲が私の好きなジャズと同根のコードで作られていたこと、そして演奏にソウルジャズとかニューソウルの味がついていた所為かと、後付で分析しています。

とにかく全曲が素晴らしいとしか言えません。そして結論から言うと、我国の五輪真弓、吉田美奈子、ユーミンをはじめとして、このアルバムの影響下から脱出したシンガーソングライター系の歌手は、ほとんどいない、と思います――

A-1 I Feel The Earth Move / 空が落ちてくる
 彼女の自身のピアノがジャズロックしている派手な演奏ですが、曲そのものは王道ポップスでしょう。しかしブンブン蠢くエレキベースやソウルタッチのギターが最高に心地良く、コーラスも黒っぽくて最高です。

A-2 So Far Away / 去り逝く恋人
 ジャズではクルセーダーズの演奏が名演とされていますが、やはり決定版はこの自作自演のバージョンでしょう。緩やかで力強いキャロル・キングの歌唱も絶品ですが、演奏もシブイです。カーティス・アーミーのフルートの穏やかさ、ジェームス・ティラーの控えめな生ギターが、特に心に残ります。 
 ちなみに、このコード進行と演奏の雰囲気は完全にユーミンや五輪真弓、あるいは山下達郎に継承されています。 

A-3 It's Too Late / 心の炎も消え
 シングルカットされて大ヒットした名曲です。
 この仄かにマイナーな曲調は、私が最も好むものですし、サビの泣きがたまりません。
 もちろんこの雰囲気は、ユーミンや山下達郎に通じるものです。間奏のあたりなんか、モロですよ。

A-4 Home Again / 恋の家路
 これも我国ニューミュージックの元ネタとして、パクリが山のように存在している名曲です。
 穏やかな曲調でありながら、ゴスペル味があり、キャロル・キングの歌いまわしは黒っぽさが自然体で気持ち良い限りです。ラス・カンケルの重いドラムスも良いですねぇ~♪

A-5 Beautiful
 ちょっとジョン・レノンが書きそうなハードな曲調ですが、実は逆もまた真なり! ジョン・レノン十八番のコード進行の元ネタはキャロル・キングなんですから!
 この曲なんか、「イマジン」の中に入っていても違和感ありませんよ。

A-6 Way Over Yonder / 幸福な人生
 これも緩やかなゴスペル調の名曲です。
 絡んでくる黒いボーカルは、ストーンズとの共演でも有名なメリー・クレイトンという黒人シンガーで、演奏もグイグイと盛り上がって山場を作っていきます。

B-1 You've Got A Friend / 君の友達
 ジェームス・テイラーが取上げて大ヒットさせた名曲のオリジナル・バージョンです。もちろん力強く、ほのぼのとした味わいが素敵です。

B-2 Where You Lead / 地の果てまでも
 キュートなカントリー・ロックになっていますが、キャロル・キングならではのコード進行が気持ち良く、コーラスがポップで暖かい雰囲気を醸し出していますねぇ~♪

B-3 Will You Love Me Tomorrow ?
 作曲家時代の彼女にとっては代表的な作品の自作自演バージョンです。
 ここでは非常にシンプルな伴奏で、テンポもゆるやかに味わい深く演じられており、その新感覚が当時の雰囲気と見事に合致しているのですが、今、初めて聴かれる人には、どうなんでしょうか……?

B-4 Samckwater Jack
 クインシー・ジョーンズも取上げているグルーヴィな名曲です。
 キャロル・キングのボーカルは、やや力み過ぎですが、こういうニューソウル系のサウンド作りは、これ以降、白人シンガーソングライターの基本となっていくのでした。

B-5 Tapestry / つづれおり
 アルバムタイトル曲は、初期の吉田美奈子がモロになっています。
 もちろん、これだって逆もまた真なり! つまりパクラれたわけですが、パクリたくなる気持ち、分かりますねぇ~♪ 歌いまわしまで、似ていますから!
 仄かなゴスペル感覚が内包された歌と演奏をお楽しみ下さいませ。

B-6 A Natural Woman
 アレサ・フランクリンが取上げて大ヒットさせた名曲の自作自演バージョンです。
 とにかく落ち着いた中にも力強い仕上がりで、ピアノのゴスペル調が、全ての源でしょう。

ということで、全曲、アルバム丸ごと素晴らしい歌と演奏です!

曲毎の紹介では書きませんでしたが、歌詞が、また素晴らしいんですよ♪ それほど難しい英語ではないし、日本盤なら歌詞カードがあるので、訳詩を味わって下さいませ。

私は自分の葬式で、遺族が「So Far Away」歌ってくれたなら……、と願っているのですが。

ちなみに「猫ジャケット」としても秀逸で有名なアルバムなのでした♪

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シルヴィが好き♪

2006-10-26 18:21:30 | Weblog

仕事が地獄になってきました。もう今年いっぱいは、休みなんて夢のまた夢でしょう。

また、この時期になると物欲を刺激されるブツが、ドカッと出てしまうんですねぇ……。

今年も本当に地獄になりそうです……。

ということで、まずは、これを――

Sylvie A Nashville / Sylvie Vartan (RCA)

私の好みは、お姉さん系♪

というのは何度もカミングアウトしていますが、歌手ではシルヴィ・バルタンが大好きです。

とにかく好みの美人だし、歌はキュートで大人っぽく、楽曲も最高♪

で、今回、デビュー45周年企画で、1960年代のオリジナルLPが紙ジャケット仕様でCD復刻されました。しかもボーナストラック付き!

本日の1枚は1964年に発売されたもので、あまりにも有名な大ヒット曲「アイドルを探せ」が入っている、通産3枚目のアルバムです――

01 恋のショック 
02 しあわせな私 
03 モンキー・タイム
04 わたしを愛して(英語バージョン) 
05 祭りの気分 
06 ミーン・ウーマン・ブルース 
07 アイドルを探せ 
08 アイ・ウィッシュ・ユー・ウィル 
09 ドゥム・ディ・ラ 
10 もう泣かない 
11 わたしを愛して 
12 ラ、ラ、ラ 
 
-Bonus Track-
13 ジョニーはどこに 
14 オー・プリティ・ウーマン
15 ラ・ヴィ・サントワ

録音はタイトルどおり、アメリカのナッシュビルで行われているせいか、ロックンロールっぽい曲ではエルビス・プレスリーっぽい歌いまわしが出たりして、憎めません。

全体にポップス黄金時代の胸キュン曲、ロックやR&Bの黒い雰囲気、さらにフランスらしいお洒落感覚が絶妙にブレンドされた仕上がりになっています。

また、今回の復刻で特筆したいのはジャケットの仕様で、オリジナルでは見開きの裏ジャケット部分が切り離せる豪華カラーピンナップになっていたので、中古アナログ盤は、それが無いブツばっかりでしたので、たとえミニチュアといえども、嬉しいところ♪ 

実は今回、初めて見ましたけど、あぁ、可愛くキュートな彼女のポートレートにクラクラしてきましたですね♪

また聴いてみて分かることですが、彼女の楽曲や雰囲気が、いかに昭和40年代の歌謡曲~歌謡ポップスに影響を与えていたか、実感されると思います。もちろん1980年代女性アイドルは、言わずもがなです。

ということで、全部で6作品ほど復刻されていますので、機会があれば店頭で手にとってみて下さいませ。欲しくなりますよ~♪ もちろんサイケおやじは全部ゲットしていますが……。

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ジャムで和む

2006-10-25 18:58:57 | Weblog

流石にちょっと寒くなってきましたですねっ、もう、そろそろ11月ですから……。

こんな時な和みの演奏が聴きたくなりますので――

Norman Granz' Jam Session #4 (Clef / Verve)

ジャズの醍醐味は、ズバリ、アドリブの共演に他なりません!

つまり参加演奏者の腕比べ! もちろん、その丁々発止を支えるリズム隊の凄さも堪能出来るのが、ジャムセッションと呼ばれる演奏スタイルです。

それは通常の営業が終了したクラプ等で、残り少ない居残りの客や関係者を前にしての演奏が原点です。なにしろ店の営業を考えなくても良いので、演奏者は自己満足に浸り、飛び入りの参加者も大歓迎! 全くジャズの本質に根ざしたものでした。

そして、それを初めて商業ベースに乗せたのが、ノーマン・グランツというプロデューサーで、同じステージに白人・黒人をいっしょに出演させ、巡業でも同じホテルに宿泊させ、また、ギャラの支払いも惜しまないその姿勢は、多くのミュージシャンから人望を得ていたそうです。

なにより凄いのは、ジャズをダンス音楽から鑑賞音楽に変化させていったことでしょう。客席にはダンスフロアが無く、観客は椅子席で演奏を聞き入るだけなのです。ちなみにそういう興行は、今日JATPと称されているものです。

さらにノーマン・グランツは、自分のレーベルまで作り、自分でプロモートしたジャムセッションの興行を録音し、発売するという画期的なことまでやっています。

プロデューサーとは本来、こういう仕事をするのが本当のところでしょう。実際、スタジオ等の現場でミュージシャンに口出しするのは、A&Rとかディレクターと呼ばれる職分です。

で、このアルバムは最初から録音を目的としたジャムセッションで、当時のスタアプレイヤーをスタジオに集めていますが、観客はいなくとも、一発録りの自然発生的なグルーヴが楽しめます。

録音は1953年8月3日、メンバーはハリー・エディソン(tp)、バディ・デフランコ(cl)、ウィリー・スミス(as)、ベニー・カーター(as)、ワーデル・グレイ(ts)、スタン・ゲッツ(ts)、カウント・ベイシー(p,org)、フレディ・グリーン(g)、ジョン・シモンズ(b)、バディ・リッチ(ds)、アーノルド・ロス(p) という、凄みに満ちた天才ばかりです――

A-1 Oh ! Lady Be Good
 演奏される元ネタはガーシュインの名曲ですが、こういう演奏スタイルでは、あくまでも素材に過ぎません。しかし原曲が持つエッセンスをいかに上手く抽出しているかが、ジャムセッションにおける腕の見せ所かもしれません。
 さて肝心の演奏は、ビシッと極まったバディ・リッチのシンバルワークから快適なテンポでカウント・ベイシーのビアノが鳴り出し、フレディ・グリーンの天才的なリズムギターとジョン・シモンズの基本に忠実なベースが土台を作りますから、もう、この劈頭のところでジャズにどっぷりです。
 そしてホーン陣ではスタン・ゲッツが先発で類稀なるスタイルを披露♪ その独自グルーヴは、いささか古臭いリズム隊を逆に引張る雰囲気です。もちろんジャムセッションではお約束のリフの煽りにも負けていません。
 続くワーデル・グレイも本領発揮で、素晴らしい歌心に満ちたフレーズの洪水を聴かせてくれるのですから、私は感涙悶絶です。実際、生涯のベスト25に入る名アドリブではないでしょうか!? バックのリフを先取りするズルさも聴かせますが、憎めません♪
 そして次に登場するのが、こういうジャムは十八番のハリー・エディソン♪ ノリの良さは最高で、バディ・リッチとの遣り取りとか、艶やかな音色で伸びやかに吹きまくりのトランペットは、ジャズのひとつの完成形だと思います。
 で、演奏はここでリズム隊のコンビネーションを聴かせるパートになり、バディ・リッチは天才的なリズム感とステックさばき、バスドラとタムの連打という奥義を披露していますが、嫌味になっていません。
 まあ、リズムパターンが古いと言われればそれまでですが、それゆえに次に出る御大ベニー・カーターのアルトサックスが、すんなりとビバップの枠に入り込んでいくのですし、ウネリと艶の名手であるウィリー・スミスは大奮闘! 2人とも完全にモダンジャズ以前の古いスタイルを崩さずに自己を貫きとおすあたりは、流石です。
 もっともカウント・ベイシーという、そういう自然体の巨匠がいますからねぇ~、ここにはっ!
 しかしバディ・デフランコは違います! 徹底的にモダンなフレーズの連発で、当にクラリネットのチャーリー・パーカー(as) を証明していますが、実は、この人とワーデル・グレイは少し前にカウント・ベイシーのバンドに雇われていたという因縁がありますから、モダンとカンサススタイルの融合なんて全く問題無く、自然体の極みという雰囲気です。あぁ、最高です♪
 
B-1 Blues For The Count
 この曲ではカウント・ベイシーがオルガンを担当し、アーノルド・ロスがピアノを演奏しています。
 曲はリラックスしたブルースですが、コテコテでは無いカウント・ベイシーのオルガンに和みます。
 アドリブの先発はベニー・カーターでしょう。全く悠々自適なブルーススタイルで、黒さもほどほどのセンスの良さです。
 それは続くウィリー・スミスも同様で、背後から合の手を入れるカウント・ベイシーのオルガンも楽しく、ジンワリと心が温まる素敵な名演だと思います。
 またバディ・デフランコは、トリッキーなビバップフレーズに加えて、余裕のタメとモタレを駆使してブルース・フィーリングを出す目論見だったようですが、結局はモダンジャズがモロ出しになるあたりが、ご愛嬌です♪
 そしてそれを引き戻すのが、ハリー・エディソンのミュートトランペット♪ 難しいフレーズを出さなくとも、ジャズ魂全開の心意気が最高ですねぇ~♪
 さらに続くワーデル・グレイが、これまた最高で、やや勿体ぶったスタイルではありますが、和みとスリルのコンビネーションが、ファンにはたまらないところ♪ 背後で唸るカウント・ベイシーのオルガンも素敵ですねぇ~♪
 おまけに次に登場するスタン・ゲッツが、思い切った変化球勝負というか、かなりアグレッシブなフレーズ展開で、ハッとするほど良い感じです。ただし、後半で若干、遠慮があるような気も致しますが……。

ということで、溌剌としたA面、まったりとしたB面という濃厚な1枚です。

スタイル的にはモダン派とスイング派の邂逅という、所謂中間派的な演奏になっていますが、それにしてもバディ・リッチというドラマーは本物の天才です。なにしろ2つのスタイルをアドリブするプレイヤー毎に使い分け、その差異を自然体で融和させているのですからっ!

本当にジャズの楽しさが極まったアルバムだと思います。

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リトル・ジョニー

2006-10-24 17:38:07 | Weblog

今年もまた、赴任地でクマが出没して、連日騒動になっています。

私が家を借りている集落では140キロという大きな奴がワナにかかったそうです。また昨日は1頭、射殺されています。

クマにしてみれば山に食べ物が無く、座して死を待つよりはという決死の行動なんで、かわいそうな気も致しますが……。

ということで、本日もトランペット盤です。リーダーは地味ですが、マイルス・デイビス似ということで有名な人です。まあ、味わい深いということで――

Little Johnny C / Johnny Coles (Blue Note)

ブルーノートはジャズの名門レーベルですが、存在そのものが地味~なアルバムが幾つか作られています。

本日の1枚も、そうした作品でしょう。

主役のジョニー・コールズはマイルス・デイビス系のトランペッターですが、本家よりも上手いということは、失礼ながら言えません。なんとなく同じ味わいがあるというだけだと思います。

ところが、そのジョニー・コールズだけの「味」が、妙にクセになるのが、ジャズの恐いところです。

このアルバムは数少ないジョニー・コールズのリーダー盤としても貴重ですが、メンツが地味~! というか、所謂ツウ好みという点でも面白みがあります。

録音は1963年7月18日&8月9日、メンバーはジョニー・コールズ(tp)、レオ・ライト(as,fl)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、デューク・ピアソン(p,arr)、ボブ・クランショウ(b)、ウォルター・パーキンス(ds)、ピート・ラロッカ(ds) という、味わい深い面々です。

ちなみに2人のドラマーはA面がウォルター・パーキンス、B面がピート・ラロッカとされています。

また演目は「A-2」以外、全てデューク・ピアソンの作編曲によるもので、実質的に現場を仕切っていたのは、この人だったのでしょうか?

A-1 Little Johnny C (1963年7月18日録音)
 デューク・ピアソンのピアノがリードする景気の良いブルースで、アップテンポで溌剌としたテーマが、まず最高です。
 アドリブパートでも、その勢いを持続して突進するレオ・ライトのアルトサックスがシンプルに素晴らしく、続くジョニー・コールズも簡素なフレーズとマイルス・デイビス似の音色が、何とも言えずにジャズそのものです♪
 しかしジョー・ヘンダーソンは違います。短いながら、そのアドリブフレーズはウネウネと微妙に屈折していきます。音色もニャ~という猫の鳴き声を連想させるところがありますねっ♪
 またデューク・ピアソンの小気味良いピアノも聴き物でしょう。

A-2 Hobo Joe (1963年7月18日録音)
 これだけがジョー・ヘンダーソンの作曲で、曲自体はシンプルなプルースですが、楽しいボサロック調のビートがたまりません。
 アドリブパートではジョニー・コールズが最初から奮闘し、ハスキーな音色でしぶといフレーズを綴っていきますが、要所で4ビートが交錯する展開が素敵です。
 もちろんデューク・ピアソンも、そのあたりのツボは外しておらず、楽しくシンプルなピアノソロ、またレオ・ライトは幾分せっかちなフレーズばかりですが、その情熱は本物でしょう。
 そして作者のジョー・ヘンダーソンは最後に登場し、意想外の落ち着いたフレーズを積み重ねていきます。う~ん、これはどうしたことだっ!? もっと烈しいものを求めているのが、リスナーの本音のはずだけど……!? まあ、いいか……。

A-3 Jano (1963年7月18日録音)
 これも、やたらに調子の良いハードバップです。
 と言っても、シンプルな音列が繰り返されるだけのモード系なんですが、リズム隊が快適なビートを送り出してくるので、先発のレオ・ライトは素直にノセられて、なかなかの好演です。
 続くジョニー・コールズもマイルス・デイビス丸出しになってサービス精神旺盛なところを聴かせてくれますが、その姿勢は潔い限りだと思います。自分が何を期待されているか、分かっているんでしょうねぇ。
 そしてジョー・ヘンダーソン! ここではファンの臨む激しさを存分に発揮し、屈折系のフレーズとネクラな叫びのコンビネーションが最高です。
 またドラムスのウォルター・パーキンスが素晴らしく、ビシッとしたオカズと煽りの妙技が冴えているのでした。

B-1 My Secret Passion (1963年8月9日録音)
 ちょっとマイルス・デイビスの「All Blues」を意識したワルツ調のブルースですから、ジョニー・コールズも自分が何をすればよいのか、完全に分かっている好演です。
 ただしテンポが、やや速いのが意図的か否か、逆効果のような……。
 ですからジョー・ヘンダーソンも煮詰まり気味だと思います。
 しかし続くレオ・ライトがフルートで雰囲気を変えてくれますから、デューク・ピアソンも一安心というところでしょうか、快適なアドリブで場を盛り上げていくのでした。

B-2 Heavy Legs (1963年8月9日録音)
 またまた調子の良いハードバップです。
 テーマメロディにリズミックなリフが仕込まれているのがミソでしょうか、ジョニー・コールズはそのあたりのツボを押さえて、素晴らしいアドリブを聴かせてくれます。
 そしてジョー・ヘンダーソンが珍しくも直球勝負で突進すれば、レオ・ライトは激情のフレーズを撒き散らすのです。
 もちろん実質的なバンマスのデューク・ピアソンは、伴奏に、ソロに大活躍! 快適さを演出していきますが、ピート・ラロッカの軽くて変態的なドラムスも聞き逃せません。

B-3 So Sweet My Little Girl (1963年8月9日録音)
 オーラスは幻想的なスロー曲です。
 ハスキーな音色で迫るジョニー・コールズは丁寧にテーマを吹いていますし、バックをつける他のメンバーのハーモニーも素敵な響きです。
 アドリブパートではデューク・ビアソンが一人舞台で美味しいところを独り占めですが、それしか正解が無いという説得力があるのでした。

ということで、リーダーのジョニー・コールズよりも共演者が目立っている雰囲気も感じられますが、それというのも、この人は残念ながら自分だけのキメのフレーズを持っていなかった所為かもしれません。

ちなみに本家のマイルス・デイビスは、幾つかのキメのフレーズと思わせぶりな部分だけで最後まで押し切ったからこそ、偉大なところがありました。誰もがクリフォード・ブラウン(tp) にはなれないわけですから、そいうい「手」を「逃げ」とは言いません。

しかしジョニー・コールズは、そういうところが無垢というか、それゆえに好感が持てるトランペッターなのでした。

このアルバム以外ではエピック盤が有名ですが、機会があれば、このブルーノート盤も聴いてみて下さいませ。調子の良さは天下逸品♪ ジャケットデザインも秀逸だと思います。

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調子良い1枚

2006-10-23 18:47:30 | Weblog

本日は流石に疲れていました。

特に朝がヘヴィでしたねぇ……。午前中は完全に調子が出ませんでした……。

そこで昼メシ時に聴いたのが、調子の良いこれ、です――

The Thing To Do / Blue Mitchell (Blue Note)

トランペットで、もう1人、好きなのがブルー・ミッチェルです!

良く知られているように、ホレス・シルバー(p) 全盛期のバンドレギュラーであり、後年は白人ブルースのジョン・メイオールに雇われリ、フュージョン系のアルバムを作ったりしていますが、その魅力は分かり易くてツボを外さないフレーズの妙だと思います。

もちろん一番得意なのはハードバップなんでしょうが、その基本はR&Bで、レイ・チャールズのバンドに雇われていたキャリアもあるのです。

肝心のリーダー盤は、まずリバーサイドと契約していた時期の作品が秀逸とされていますが、続くブルーノートに残されたアルバムも侮れません♪

本日の1枚は、如何にもブルーノートらしい真っ向勝負のモロジャズで、製作時期的にハードバップを一歩進めた新感覚を聴かせてくれます。

録音は1964年7月30日、メンバーはブルー・ミッチェル(tp)、ジュニア・クック(ts)、チック・コリア(p)、ジーン・テイラー(b)、アル・フォスター(ds) という直球勝負の面々ばかりです――

A-1 Fungii Mama
 楽しいラテンビートのハードバップで、ブルー・ミッチェルのオリジナルですが、どっかで聞いたような懐かしさが、たまりません♪
 アドリブパートでは先発のジュニア・クックがソニー・ロリンズとジョン・コルトレーンの美味しい部分を拡大解釈して、リスナーを喜ばせます。
 そしてブルー・ミッチェルも負けていません♪ 分かり易いフレーズの連発は、なんとなくグラント・グリーン(g) のフレーズをトランペットで再現したような趣も感じられます。
 また、ここに参加したチック・コリアは本当に駆け出し時代の記録ですが、十八番のラテン系ジャズとあって、新しめのフレーズを織込みながら、楽しく盛り上げていくのでした。
 ちなみにリズム隊も秀逸で、ドラムスとベース、ピアノがバラバラをやりながら、ひとつに纏まっていく様が、何回も楽しめたりします♪

A-2 Mona's Mood
 幾分、陰鬱なモード系の曲ですが、ブルー・ミッチェルは必要以上に勿体をつけず、明快なフレーズと豊かな歌心を披露しています。
 またジュニア・クックはアトランティック期のジョン・コルトレーンという雰囲気で、これも好ましく、チック・コリアはハービー・ハンコック寄りの新感覚だけを聴かせてくれます。

A-3 The Thing To Do
 アルバムタイトル曲は痛快なハードバップです。
 そのキモはラテンリズムの変形というジャズロックのビートで、リズム隊は何気なく、凄いことをやっていると思います。
 しかもアドリブパートがビシッとした4ビートですから、たまりません♪
 ブルー・ミッチェルは全てが「歌」という楽しさですし、背後で煽るリフとの遣り取りも調子良く、あぁ、ジャズは難しいフレーズなんか出さなくても成り立つもの! という方程式が出来上がっています。
 それはジュニア・クックという盟友を得て、尚更に証明される真実で、ハードな音色でジョン・コルトレーンの物真似をやっても、ハードバップ~ファンキー・ゴスペルを忘れない姿勢は、サービス精神に満ちているのでした。

B-1 Step Lightly
 ミステリアスなモード系のハードバップですが、妙に歪んだブルースという趣がニクイところです。
 しかも作曲が、ジュニア・クックの後釜としてホレス・シルバーのバンドに入ったジョー・ヘンダーソン(ts) という因縁もありますから、ジュニア・クックもじっくりとアドリブを熟成させていくのです。う~ん、この人も、まず音色が私の好みです♪
 そしてブルー・ミッチェルが、また、落ち着いた中にも熱いジャズ魂を全開させ、味わい深いフレーズを綴っています。
 お目当てのリズム隊も重いビートで、がっしりとした土台を作っていますから、ブルー・ミッチェルのトランペットに合わせて、そのフレーズを歌っても、何の違和感もないはずです♪
 特にジーン・テイラーのベースはシンプルながら、ツボを押さえた図太さが良いですねぇ~♪

B-2 Chick's Tune
 オーラスはタイトルどおり、チック・コリアが作曲したアップテンポのモード系ハードバップです。もちろん、その曲調は新主流派丸出しながら、ラテン味が仄かにただよう素敵さがあります。
 そしてアドリブ先発もチック・コリアですから、いきなりジャズにどっぷりの世界に誘い込まれてしまいます。おそらく活動初期では代表的な演奏というところでしょう。このパートを「目隠しテスト」で出されたら、ちょっと……。
 さらに続くジュニア・クックもハードに調子良く迫ってきますし、ブルー・ミッチェルは密かに隠し持っているキメのフレーズを出し惜しみしない姿勢が潔く、本当に分かり易い、楽しい演奏を心がけているので好感が持てます。

ということで、実はブルーノートには、この作品以上に楽しい「ダウン・ウイズ・イット」という人気盤があるのですが、個人的には、こっちの初々しさも捨て難く思ってます。

ジュニア・クックとブルー・ミッチェルの盟友関係も好ましく、またリズム隊の新しい感覚が尖がり過ぎていないあたりに、リーダーの人柄が滲み出ているようにも感じます。

あまりジャズ喫茶でも鳴っていないと思われますが、機会があれば聴いてみて下さい。

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爽快トランペット盤

2006-10-22 17:25:28 | Weblog

昨日、急病で倒れた友人の意識が戻り、お見舞いに行ってきました。

それでも、まだ、思うように喋れず、まだ手足も不自由なんですが、とりあえず命に別状は無いということで、今後の療養とリハビリに頑張ってほしいところです。

まあ、口で言うのは簡単ではありますが、私としては、そう言う他はありません……。

ということで、本日は景気づけの1枚です――

Trumpets & Rhythm Unit / Dusko Gojkovic (RTB)

なんだかんだ言っても、私が一番好きなトランペッターはダスコ・ゴイコビッチです! 基本はマイルス・デイビスなんですが、柔らかな歌心と哀切のフレーズ、リズムへの絶妙なアプローチ、等々が理屈を超えて私の琴線にふれるのです。

さて、このアルバムはユーゴスラビアの国営放送曲が、1979年にラジオ放送用として製作した音源を、勝手に自前のレコード会社で出してしまったブツで、その後の国内事情と内乱により、完全に幻化していた1枚です。

なにしろダスコ・ゴイコビッチ本人が、レコード化されていたのを知らなかったのですから!

しかし内容は素晴らしく、タイトルどおり、4人のトランペッターを起用したアンサンブルと鉄壁のリズム隊が見事に噛合った秀作です。

さらに、私が入手したのはもちろん復刻CDですが、そこには2曲のボーナストラックまで収録されていたのですから、感涙するしかありません。

録音は1979年3月16&17日、メンバーはダスコ・ゴイコビッチ(tp,arr)、ペロ・ユーグリン(tp)、ストイエプコ・ガット(tp)、ラディスラフ・フィドリ(tp)、ボラ・ロコヴィッチ(elp)、クレシミール・レメタ(b)、ブラニスラフ・コヴァセフ(ds) という、舌を噛みそうなメンツです――

01 Quo Vadis Samba
 タイトルどおり、サンバのリズムで繰り広げられる哀愁のマイナーメロディは、ダスコ・ゴイコビッチのオリジナル♪ いきなり胸キュンの世界です。
 もちろんアドリブでも、ソフトな美メロの連続! トランペッターが2人登場しますが、多分、先発がダスコ・ゴイコビッチでしょう。
 リズム隊ではエレピが使われていますが、何の違和感も無く、むしろ効果的で気持ち良いほどです。またホーン・アンサンブルとリズム隊の絡みも素直なアレンジで、疲れません。

02 In The Sign Of Libra
 基本はスローな8ビート、さらにエレキベースにエレピが使われているので、フュージョン色が濃くなっていますが、しかし、これは大野雄二の「ルパン三世」の世界です♪
 つまり、泣きのメロディが際立つテーマから、マイルス・デイビス直系の思わせぶりなトランペット! ダスコ・ゴイコビッチ自らのツボを押さえたアレンジが冴えていますから、もうアドリブの領域を超えた完成度があります。
 またボラ・ロコヴィッチのエレピが良いんです♪

03 Rufus
 マイルス・デイビス風のモードジャズが快適に展開されますが、元ネタは「So What」でしょうか? もちろんダスコ・ゴイコビッチが水を得た魚状態という絶好調のアドリブソロです。
 二番手で登場するトランペッターは誰か不明ですが、この人もまた、マイルス・デイビス系ですし、ここでもボラ・ロコヴィッチのエレピが素晴らしいです!

04 Donna Lee
 説明不要のビバップ名曲ですから、ここでも全員が大ハッスル! 過激なスピードと絶妙なホーンアンサンブルが冴えに冴えていますし、リズム隊もビシッとキメまくりです。
 しかしダスコ・ゴイコビッチは必要以上に熱くならず、基本に忠実なフレーズの連続が潔い限りです。またボラ・ロコヴィッチのエレピが素晴らしく、あぁ、何度も言わせないでくれっ♪ 本当に、グッときますねぇ~♪ 背後で炸裂する4本のトランペットアンサンブルも強烈です。
 そしてクライマックスはダスコ・ゴイコビッチとドラムスの対決です! 爽快地獄ですよぉ~~~♪

05 Adaptation Blues
 オリジナルのアナログ盤では、ここからがB面になっているようです。
 この曲はハードバップがモロ出しの痛快なブルースで、カッコイイとしか言えません♪
 アドリブパートでは3人のトランペッターが登場しますが、ダスコ・ゴイコビッチが、多分、先発でしょう。、もちろん良いフレーズしか吹きません。
 ところが他のメンツが、これまたマイルス・デイビス系の実力者なんですから、嬉しい誤算です。もちろんアンサンブルでも一糸乱れぬ凄さがあります。
 そしてリズム隊のエレピとエレキベースの使用が、ここでは最高に効果的で、現代的なスピード感が増幅された雰囲気ですし、ドラムスが、これまた基本に忠実で凄い実力者なんですねぇ~♪ 世界は広いです。

06 Summertime
 マイルス・デイビスの決定的な名演にダスコ・ゴイコビッチが果敢に挑戦して、見事に答えを出してしまいました。もちろん、ミュートですから、たまりません。
 なにしろアドリブの入りに「You Be So Nice」を引用したり、全篇にタメとツッコミが絶妙の歌心♪ バックのソフトなアンサンブルも好印象です。

07 Majority Of One
 如何にも1970年代というアフリカ風モード曲で、なんと言ってもリズム隊が、まず好演です。重厚なホーンアンサンブルとエレピのコントラストが良いんですねぇ~♪
 曲の展開は途中からマーチアンサンブルに変わり、直後に高速4ビートに転換してのアドリブパートでは、トランペッター4人の激突です。ダスコ・ゴイコビッチは、多分、二番手で登場していると思いますが、全員が強烈なソロの応酬です。
 そして大団円ではドラムスが乱入してのバトル大会! 

08 Festival Blues
 以下の2曲は今回のボーナストラックです。
 この曲はリラックスしたブルースで、4人のトランペッター各々が持ち味を発揮していますが、いずれもマイルス・デイビス系ですからねぇ~♪ 否、ここではダスコ・ゴイコビッチ系というべきでしょうか……。
 肝心のリーダーは最後に登場し、ミュートとオープンの両刀使い!

09 The Ambassador
 アップテンポのハードバッブで、クールで熱い演奏が最高です。
 ダスコ・ゴイコビッチは左チャンネルからアドリブ二番手で登場し、暖かい歌心と泣きのフレーズを存分に聴かせてくれます。もちろんホーンアンサンブルも素晴らしく、リズム隊もキマッていますので、オリジナルLPに入らなかったのは時間的な制約でしょう。CD万歳です!

ということで、ようやく聴けるようになった作品ですが、噂に違わず爽快なアルバムでした。

聴かず嫌いになりそうなエレキベースとエレピの使用は全く気にならず、むしろそれゆえに、このアルバムの演奏が冴えているほどです! 騙されたと思って聴いてみて下さい。

日活や東映あたりのアクション物映画音楽に使われても違和感が無いはずですし、とにかくカッコイイ演奏ばかりなんです♪ タイトなリズム隊にシャープなホーンアンサンブル! 本当にスカッとして和みますよっ!

まあ、本音を言えば、トランペットのアドリブはダスコ・ゴイコビッチだけにして欲しかったところですが、他の3人もなかなかの実力者ですから、寛容な気持ちでノッて下さいませ。

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