OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

正統派ジャズ一直線

2007-10-31 16:27:10 | Weblog

今日で10月も終り! もう年末の心配をするわけですが、私の場合は、この1~2ヶ月、モロジャズのモードに入りっぱなしで、恐くなるほどです。

そして今日も――

A World Of Piano ! / Phineas Newborn Jr. (Contemporary)

テクニシャンが多いジャズピアニストの中でも、とりわけ凄いひとりがフィニアス・ニューボーンでしょう。両手をフルに使ったダイナミックで繊細な超絶技巧、メロディとハーモニーに対するセンスの良さ、きらびやかなスイング感、そして演奏全体に漂う高貴でエキセントリックスな香り……等々、あまりに強烈ですから、聴いていて疲れることも度々なのですが……。

このアルバムは、そんなフィニアス・ニューボーンの代表作にして、言わずもがなの人気盤♪ わかっちゃいるけど、やめられない1枚だと思います。

内容はLP片面に共演者が異なるピアノトリオで、まずA面にはポール・チェンバース(b) とフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、1950年代のマイルス・デイビスを支えた凄腕が参加! 録音は1961年10月16日とされています。

またB面にはサム・ジョーンズ(b) とルイス・ヘイズ(ds) という、これは当時のキャノンボール・アダレイのバンドレギュラーが参戦! こちらのセッションは同年11月21日の録音です――

A-1 Cheryl
 モダンジャズ創成期から生まれた定番ブルース曲で、如何にもビバップという幾何学的なテーマをピアノとベースのユニゾンで演じるテーマ! そして壮絶なアドリブ合戦に突入していきますが、その初っ端からスパイラルに急上昇していくフィニアス・ニューボーンの驚愕フレーズが炸裂します。
 しかし一歩も引かないドラムスとベースの存在感は流石ですねぇ~。豪快にドライブし、両手ユニゾンのオクターブ弾きからグリグリのコード弾きまで自在に展開させる暴れ馬の如きフィニアス・ニューボーンの手綱を絞るような働きでしょうか。
 ここまでやって、まだまだ小手調べという雰囲気なのですからっ!

A-2 Manteca
 ポール・チェンバースのベースがリードするラテンジャズの名曲を、ここでは4ビートも入れて豪快至極に演奏しています。ド頭から冴えまくるフィリー・ジョーのドラミングが鮮やかですねぇ~♪
 そして両手をダイナミックに使ったフィニアス・ニューボーンのピアノが炸裂! 左右ユニゾン弾きや対位法のメロディ展開は、とても即興とは思えない完成度だと思います。猛烈にシャープな単音弾きのスイング感も凄すぎます!
 最後には共演した2人が置いていかれそうに……。

A-3 Lush Life
 烈しい演奏が続いた後にホッとする名曲・名演が♪
 曲はエリントン楽団の名参謀だったビリー・ストレイホーンのオリジナルで、もちろん今ではスタンダードとなった有名なメロディですから、最初っから超絶技巧のソロピアノでシェイクしまくるフィニアス・ニューボーンにしても、これが本望でしょう。実に凄いと思います。
 そして中盤からはドラムスとベースが定石どおりの入り方から、ゆったりとしたビートの中で揺れるようなスイング感が絶妙な演奏となります。
 もちろんテーマメロディを大切にした中でのフェイクは最高で、本当に感銘を受けてしまうのが、何時もの私なのでした。

A-4 Dahoud
 クリフォード・ブラウンが書いた爽快なハードバップ曲で、フィニアス・ニューボーン自身もお気に入りなのでしょう、これ以前にも自己のリーダー盤(Atlantic)で録音したという十八番ですから、ここでの快演も、お約束!
 最高のリズムコンビを得たフィニアス・ニューボーンが全力疾走すれば、フィリー・ジョーはリムショットも多用した楽しい煽り♪ クライマックスでは壮絶なドラミングでフィニアス・ニューボーンと対峙しています。

B-1 Oleo
 さてB面も初っ端なから物凄く、ルイス・ヘイズが大ハッスルしたドラムのイントロからフィニアス・ニューボーンが弾きまくるのは、ソニー・ロリンズが書いた有名なハードバップ曲ですから、たまりません!
 もはや暴風のような勢いが漲る演奏は怖ろしいばかり! 豪快に暴れて破綻しないフィニアス・ニューボーンを必死に追走するサム・ジョーンズとルイス・ヘイズも凄いと思います。
 スカッとする大名演!

B-2 Juicy Lucy
 一転してリラックスしたファンキームードが楽しい演奏で、作曲はホレス・シルバーですから、ここでツボを押えた快演も納得出来ます。
 フィニアス・ニューボーンのピアノからは力みが感じられず、自然体のブルースフィーリングが滲み出ていますし、ゴージャスな雰囲気はファンキーの対極にあるのですが、非常に説得力がありますねぇ。
 もっとビシバシと敲きたいルイス・ヘイズの意気込みが微笑ましくもありますし、サム・ジョーンズの落ち着きが良い感じです。

B-3 For Carl
 これが畢生の名曲・名演♪ 早世した名ピアニストのカール・パーキンスに捧げて書かれたリロイ・ヴィネガー(b) のオリジナル曲で、シンプルな胸キュンのメロディが素敵なワルツ曲♪ 一聴、虜になるでしょう。
 実は告白すると、私はこのバージョンの前に菅野邦彦(p) の演奏(takt盤)を聴いていたのですが……。
 う~ん、やっぱり泣けてきますねぇ~。重厚で歯切れの良いリズムコンビとの相性も素晴らしく、特にサビの展開あたりは、涙が止まらないほどです。
 もちろんアドリブパートも美メロの連続♪ フィニアス・ニューボーンの超絶テクニックも嫌味なく本領を発揮し、惜別の悲しみに溺れない激情を表現していると思います。何度聴いてもシビレますぇ~~~♪

B-4 Cabu
 名曲揃いのアルバムの中では、ちょっと目立たないテーマメロディなんですが、フィニアス・ニューボーンはノッケから両手ユニゾン弾きを炸裂させ、さらにスピードがついたアドリブパートまで一直線の突っ走りです。
 ギシギシと軋るサム・ジョーンズのベース、それとビシバシに反応するルイス・ヘイズのドラムスも好調ですが、おそらく吹き込み前には前回セッションでポール・チェンバース&フィリー・ジョーが起用された事実を知らされていたのでしょうか? ここには2人の「負けじ魂」が感じられるのですがっ!

ということで、ご存知のように、フィニアス・ニューボーンは精神的な持病があったらしく、その活動は波乱万丈でしたから、全ての録音が素晴らしいとは言い難いのが真実です。

しかしこのアルバムは、全曲が怖ろしいまでにテンションが高く、両面通して聴くと疲れが残るほどなんですが、そこはLPの良いところ! ちょうど片面ずつ楽しめるようなプログラムが絶妙です。

そして知名度から言えばA面に期待が大きいのですが、個人的にはB面が優っていると思います。ジャズ喫茶でもB面が定番じゃないでしょうか。

とにかくガッツ~ンときてヘトヘトに心地良い疲労感♪ それも名盤の条件だと思うのでした。

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真っ向勝負のソニー・ロリンズ

2007-10-30 15:21:59 | Weblog

実家の窓ガラスが2枚割られた! という連絡がありました。どうも昨夜の事らしい……。

損害の方は保険もあるんで、どうということも無いのですが、原因不明なのが面白くないところ……。何かをぶっつけられたわけですが……???

というか、こういう事があると、日頃から怨みをかっている自分の存在を見つめることになりますね……。

ということで、本日は――

Moving Out / Sony Rollins (Prestige)

なんだかんだ言ってもソニー・ロリンズは、やっぱり凄い! 特に1950年代の演奏は勢いと気力が充実していて、モダンジャズ全盛期を象徴していると思います。

このアルバムはソニー・ロリンズが当時発表した10吋盤の曲を集めて12吋LP化した再発物ですが、私は聴く度にゾクゾクする名盤! と自分で勝手に認定した1枚です。

内容は、まず1954年8月18日録音の10吋盤「ソニー・ロリンズ・クインテット(Prestige 186)」に収録の全4曲が中心です。メンバーはソニー・ロリンズ(ts) 以下、ケニー・ドーハム(tp)、エルモ・ホープ(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds) という黄金の面々♪ 演目は全てソニー・ロリンズのオリジナル曲です。

そして、やはり10吋盤「ソニー・ロリンズ&セロニアス・モンク(Prestige 190)」からの1曲を加えていますが、こちらは同年10月25日の録音で、セロニアス・モンク(p)、トミー・ポッター(b)、アート・テイラー(ds) という凄いリズム隊とのワンホーン編成になっています――

A-1 Movin' Out (1954年8月18日録音 / Quintet)
 快速テンポでソニー・ロリンズがブッ飛ばす爽快な演奏です。テンションの高い合奏のイントロ(?)も凄いですねぇ~♪
 あぁ、それにしても躍動的なソニー・ロリンズは圧巻の一言! 続くケニー・ドーハムも大ハッスルのビバップ節ですから、もう気分はモダンジャズにどっぷりです♪
 またリズム隊の厳しいノリも流石で、豪快にしてシャープなアート・ブレイキー、純粋ビバップに独特のハーモニー感覚を入れたエルモ・ホープの快演、さらにガッチリと土台を支えるパーシー・ヒースと申し分ありません。

A-2 Swingin' For Bumsy (1954年8月18日録音 / Quintet)
 アート・ブレイキーの豪快なドラムソロがイントロになって始る、これも快速ハードバップですが、ソニー・ロリンズのアドリブはアイディアが泉の様に湧いてきて止まらない勢いに溢れています。
烈しいリズム隊を逆に引っ張るような豪快なノリには、後年の十八番になる時間差攻撃の萌芽が感じられ、当に天才の証明!
 またケニー・ドーハムがここでも凄いです。良く言われる「イブシ銀」なんて形容は、とこの国の話!?
 そしてエルモ・ホープが、またまた素晴らしい! バド・パウエルと互角かと思われる凄いビバップ魂の発露が、ゾクゾクするほどに楽しめます。
 さらにクライマックスでは、アート・ブレイキーもナイヤガラ瀑布を炸裂させて存在感を示すという、バンド全体の勢いも強烈です。

A-3 Silk N' Satin (1954年8月18日録音 / Quintet)
 ソニー・ロリンズの豪放なテナーサックスが歌いまくる、正々堂々のスローな演奏が潔し♪ このあたりは、もちろんコールマン・ホーキンスの影響が大きく感じられますが、どこまでがテーマでどこからがアドリブなのか、つまり全体を好きなように吹きながら、独自の展開を構築していく中には、モダンなノリと「歌」がいっぱいです。
 またエルモ・ホープの新鮮な伴奏、ラストで絡んでくるケニー・ドーハムも存在感抜群なのでした。

B-1 Sold (1954年8月18日録音 / Quintet)
 グルーヴィなリズム隊に煽られたファンキーなハードバップ大会♪ ブルースフィーリングを保ちながらも、完全に新しいフレーズとノリを積み重ねていくソニー・ロリンズは、真っ向勝負のガチンコです。
 またケニー・ドーハムが素晴らしいファンキー節! トランペットの余韻までも使いこなした素晴らしさです。
 そしてエルモ・ホープが意外にもソフトな感性にクラシック調の雰囲気も漂わせる裏ワザを披露♪ 実に良い感じなのでした。

B-2 More Than You Know (1954年10月25日録音 / with Thelonious Monk)
 美しいメロディのスタンダード曲を、ソニー・ロリンズとセロニアス・モンクが究極まで煮詰めて、さらに開放していく名演です。
 ます不気味なベースのイントロから一転、悠然とテーマを吹奏するソニー・ロリンズのテナーサックスが、たまりません♪ ミディアムスローのテンポをグルーヴィなものにしていくドラムスとベースのノリも素晴らしく、どことなく感傷的なコードを選んでいるセロニアス・モンクの伴奏にも、グッときます。
 肝心のソニー・ロリンズは、アドリブパートでも美メロ主義を貫き、生硬で優雅なアンバランスの中のバランスをスリルに変える大名演♪ 聴くほどに味が出てきます。
 またセロニアス・モンクには、ジコチュウを捨てたような柔らかさがあって、ここでは大きな魅力なんですねぇ~♪ もちろん決して妥協ではないと思います。
 演奏はこの後、ソニー・ロリンズの思い切った捨て身のアドリブまで飛び出して大団円を迎えますが、実は非常に丁寧な演奏だと思います。畢生の名演!

ということで、名作・傑作が多いソニー・ロリンズのアルバムの中では、決して目立つ作品ではありませんが、一切の遊びが無い真摯な演奏は、これぞジャズの魅力がいっぱいです。

個人的にはエルモ・ホープがガチンコでビバップを演じているのが最高に嬉しいですし、あまりハイハットを使わず、煽りに撤しているアート・ブレイキーのドラミングとか、ビバップからハードバップに移り行くモダンジャズ最前線の記録として楽しむのも、一興かと思います。

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セルダン・パウエルは和み派

2007-10-29 15:46:45 | Weblog

最近、テレビで渡哲也が缶コーヒーのCM、やってますね。部下のバカ女を連れて、詫びに行くやつですが……。

常日頃から本音を言えない苦しさに押さえ込まれている私にとっては、なんか感情移入してしまいます。

しかし缶コーヒーは買いません。どうせなら、そういう時こそ、本物を飲みたいから……。

失礼しました。ということで、本日はホッとする1枚を――

Seldon Powell (Roost)

私がジャズ喫茶に通い始めた高校生の頃は、ジョン・コルトレーン(ts,ss) やアルバート・アイラー(as,ts)、フレディ・ハバード(tp) やリー・モーガン(tp)、もちろんマイルス・デイビスやビル・エバンス……等々が大音量の鳴りまくりでしたから、それが心地良い疲労感でもあって、ジャズを聴く喜びに目覚める日々でした。

そしてさらに快感なのは、ガイド本には紹介されないシブイ演奏者に出会うこと! 本日ご紹介の黒人テナーサックス奏者=セルダン・パウエルも、そのひとりでした。

演奏スタイルとしては所謂モダンスイング、中間派と呼ばれるものなんでしょうが、黒人らしからぬスマートな感性とグルーヴィな歌心には、ジャンルを超越した魅力があります。

実際、1970年代にはファンキーなソウル系の演奏まで含んだリーダー盤を作っていますし、スタジオの仕事でもソウルやロックを問わず、膨大なセッションに参加しているのは、その証かと思います。

で、このアルバムは1950年代中頃に吹き込まれたらしく、その演奏はスバリ、安らぎと楽しさに満ちていますから、これがジャズ喫茶全盛期のゴリゴリした雰囲気の中へ流れてくると、店内がファ~っ和んだ空気に包まれたものです。

メンバーはセルダン・パウエル(ts) 以下、ジミー・ノッティンクガム(tp)、ボブ・アレキサンダー(tb)、トニー・アレス(p)、ビリー・バウアー(g)、フレディ・グリーン(g)、アーノルド・フィシュキン(b)、ドン・ラモンド(ds) ……等々とされています――

A-1 Go First Class
 フレディ・グリーンのリズムギターを核にした弾むようなリズム隊の4ビートに乗せて、セルダン・パウエルが軽快にドライヴしまくるアップテンポの快演です♪ バックを彩るホーンの合奏もゴキゲンですねぇ~♪
 セルダン・パウエルのアドリブは嫌味の無い音色で全てが「歌」というフレーズの連続ですから、この1曲で完全に虜になる楽しい仕上がりです。

A-2 Why Was I Born
 粘っこい雰囲気と「泣き」が融合した歌物バラードの傑作演奏! もちろんセルダン・パウエルのテナーサックスが主役で、ジワジワと雰囲気が盛り上がります
 ただしリズム隊に若干の違和感が……。とは言え、素晴らしいコードとオカズの妙技を聞かせるビリー・バウアーが、流石ですねっ♪

A-3 Love Is Just Around The Corner
 これは楽しいモダンスイングで、フレディ・グリーンの参加ゆえに演奏は完全にベイシー調なのが微笑ましいところ♪ バックのホーンアンサンブルもゴキゲンです。
 セルダン・パウエルは原曲メロディの巧みな変奏からレスター・ヤング系の流麗なアドリブを披露しています。もちろん歌心は満点!

A-4 Someone To Watch Over Me
 これも「泣き」が入った素敵なメロディのスタンダード曲♪ ここではミディアムテンポで演奏されていきます。相変わらずツボを押えたホーンアンサンブルのアレンジが粋ですねぇ~♪
 セルダン・パウエルのテナーサックスはキャバレーモードにギリギリまで接近していますが、それを潔しとする歌心には言葉も無いほどです。

B-1 Count Fleet
 これまたフレディ・グリーンのリズムギターが冴え渡る、楽しいアップテンポの演奏で、A面では聴けなかったトロンボーンやトランペットのソロも登場しますが、やはり主役はセルダン・パウエル!
 全く気分は最高というゴキゲンなノリと歌心には、脱帽です。
 後半のアンサンブルは白人ウエストコーストジャズのような雰囲気も♪

B-2 Autumn Nocturne
 これはお馴染みの曲、有名なメロディなので、どうしてもキャバレーモードになってしまうのですが、それも良いじゃないかっ! という仕上がりです。
 ミディアムスローでひたすらにメロディを綴るセルダン・パウエルの真摯な姿勢が……。しかし正直、ややダレた雰囲気もありますねぇ……。

B-3 Swingsville Ohio
 一転して溌剌とした演奏で、哀愁が滲むテーマメロディはセルダン・パウエルの作曲とされています。しかもアドリブの最初の部分が驚異的にアグレッシブで、ちょっと驚愕! その後に続く安らぎ優先フレーズとの落差が大きすぎますねっ!
 そしてここでのハイライトがトニー・アレスのピアノソロだと思うのですが、いかがなもんでしょうか? 大ハッスルしたトランペットにオトボケのトロンボーンの対比も、狙ったんでしょうねぇ♪

B-4 Summertime
 オーラスは、このアルバム中で一番有名なスタンダード曲ですが、ちょいと変化球のアレンジには??? しかしお馴染みのメロディが出てくると、流石にホッとします。
 そしてビリー・バウアーのギターが素晴らしい味わいですねぇ~♪
 肝心のセルダン・パウエルは、やや古臭い節回しのアドリブに積極的なシーツ・オブ・サウンド(?)まで入れた妙な構成で、個人的には??? しかし豪勢なホーンアンサンブルには、それがジャストミートの快演だと思います。

ということで、快適なA面にシブイB面というアルバム構成もニクイ1枚です。極端に言えばド頭の「Go First Class」だけでも全然OK!

それとリズム隊の主力はレニー・トリスターノ派の面々ですが、それがここではクールよりも踏み込んだ、如何にもジャズっぽいビートを出していて、それはフレディ・グリーンの存在が大きいと感じるのは、私だけでしょうか……?

セルダン・パウエルはカウント・ベイシー楽団にも参加した楽歴がありますから、強いビートの演奏は得意だったかもしれません。しかし独特の和みのスイング感は唯一無二の個性だと思います。

そして個人的には「ウイズ・ストリングス」なんていう企画も聞きたかったのですが……。

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エルモ・ホープのネクラな美学

2007-10-28 17:11:23 | Weblog

某イベントで巨乳グラドルに曹禺♪ その後、なんとなく入った蕎麦屋が旨かった♪ というように偶然な幸運が重なる日もあるんですねぇ~♪

おまけに長らく探していたレコードが入ったという連絡まで♪

あまりにラッキーなんで、明日から、この揺り戻しが恐いという1日でした。そこで――

Introducing The Elmo Hope Trio (Blue Note)

エルモ・ホープはバド・パウエルの幼友達で、ともにクラシックピアノの修練を積んだ仲間ということで、ジャズに転じてからも共通のスタイルとスピリットを持っていたわけですが、エキセントリックなまでに自己を表現してスタアになったバド・パウエルに比べると、エルモ・ホープはネクラの美意識を貫いていたように感じます。

そういうところが、私には気になる存在なんですねぇ。ジャズ界で本格的に活動する以前にはR&B系の楽団で働いていたそうですが、そのわりには泥臭さが無いスマートなピアノスタイルも気に入っています。

ただしそれは、モダンジャズの中では地味なんですねぇ~。なんとなくセロニアス・モンクの影響が感じられるオリジナルの作曲とか、何処が山場なのか分かりかねるようなアドリブ展開も、???となる演奏が、けっこう残されています。

しかし当時のブッ飛んだ音楽であったモダンジャズに力を入れていたブルーノートが契約直後にリーダーセッションを持たせたのは、やはり優れた才能の証明だと思います。

このアルバムは、そこから作られた10吋LPで、録音は1953年6月18日、メンバーはエルモ・ホープ(p)、パーシー・ヒース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) というイノセントなビアノトリオですが、この3人はR&B楽団時代からの仲間ということで、気心も知れていたのでしょう。なかなかの快演が楽しめます――

A-1 Mo Is On
A-2 Sweet And Lovely
A-3 Happy Hour
A-4 Hot Sauce
B-1 Stars Over Marakech
B-2 Freffie
B-3 Carving The Rock
B-4 I Remember You

演目は、有名スタンダードの「A-2」と「B-4」を除いて、全てがエルモ・ホープのオリジナルですから、まず独特のテンションの高さが不思議な魅力の曲作りが味わえます。

ド頭の「Mo Is On」や「Hot Sauce」は超アップテンポでガンガン飛ばす真正ビバップを伝承していますし、ミョウチキリンなオリエンタルムードがアヤシイ「Stars Over Marakech」では、ドラムス&ベースも含めて、かなり緻密なアレンジが光ります。もちろんエルモ・ホープのピアノからは厳しいオーラが出まくっていると感じるのです。

またハードバップ直前というグイノリの「Happy Hour」や「Freffie」ではフィリー・ジョーとのコンビネーションも素晴らしく、全くゴキゲンですねぇ~~~♪ もちろんイントロからフィリー節が炸裂する「Carving The Rock」の豪快なノリも見事だと思います。

しかしそれでも、どこか内向したような雰囲気が漂うんですねぇ。そのあたりはスタンダード曲「Sweet And Lovely」の気分はロンリーという解釈、また「I Remember You」の諦めたようなノリや突き放したようなアドリブに顕著で、グッと惹きつけられます。

そして演目は全て3分前後ですが、全く隙が無さ過ぎて、親しみが持てないのも事実かと思います。

しかしフィリー・ジョーが独自のクッションを完成させる直前というか、真っ向から力勝負のドラミングを聞かせてくれるところは、大いなる魅力でしょう。ちなみにエルモ・ホープとフィリー・ジョーは本当に手が合うのか、あまり多くないエルモ・ホープの録音では共演していることが非常に多い仲のようです。

ということで、決して人気盤ではありませんが、ピアノトリオ盤としては傑作! というか真摯な姿勢のモダンジャズが、きっちりと記録されていると思います。それゆえに楽しくはないのですが、聴く度に気合が入ってしまうのでした。

そして冒頭に書いた「ネクラの美意識」について、このアルバムではそれほど表れていません。それは以降に吹き込まれるセッション毎に強まっていくと感じていますが、その意味で、ガツンと真正面から決意表明したかの様なここでの演奏は、一層、愛着が持てるのですが……。

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ゲッツのフラミンゴもイイ♪

2007-10-27 16:58:42 | Weblog

台風来てますね。

朝から冷たい雨、そのわりにモヤモヤした空気、こういうアンバランスに気分が晴れません。

そこで――

Stan Getz At The Shrine (Norgan / Verve)

昨日聴いていたキャノンボール・アダレイの名演「Flamingo」に刺激されて、またまた聴きたくなったのが、スタン・ゲッツの同曲バージョン♪ それが収められたアルバムが、これです。

しかも12吋LPの2枚組アルバムなんですねぇ~。これは当時のポピュラー音楽では珍しかったんじゃないでしょうか?

内容は1954年11月8日のライブ録音がA~C面に、そして翌日のスタジオセッションがD面に収められています。

メンバーはスタン・ゲッツ(ts) 以下、ボブ・ブルックマイヤー(v-tb)、ジョン・ウイリアムス(p)、ビル・アンソニー(b)、アート・マディガン(ds) というクインテットで、スタジオセッションではドラマーがフランク・イソラに交代しています――

A-1 Flamingo (1954年11月8日 / ライブ)
 デューク・エリントンだと言われている粋な司会に導かれ、素敵なテーマメロディが軽快なアンサンブルで演奏されただけで、もう完全に満足させられると思います。
 スタン・ゲッツのアドリブは美メロ満載ですし、流れるようなノリと絶妙のアクセント、ウネリとタメも嫌味無く、自然と腰が浮きます♪ 途中で絡んでくるボブ・ブルックマイヤーもツボを押えていますし、ジョン・ウイリアムスのピアノにも、グッときます。
 ちなみに原盤の解説によれば、当夜はエリントン楽団を筆頭に、ジェリー・マリガンやディブ・ブルーベックのバンドも同じステージに出ていたという豪華コンサートらしく、それゆえにテンションの高さがあったのかもしれませんが、もはや絶対的な自信に満ちたスタン・ゲッツが堪能出来るのでした。

A-2 Lover Man (1954年11月8日 / ライブ)
 ここでの曲紹介と挨拶はスタン・ゲッツ本人によるものでしょう、なんとなく憎めないものがあります。
 演目はモダンジャズでは避けて通れない歌物で、ここではスローテンポながら、2管の絡みとメリハリの効いたビートを使った粋な展開が素敵です。意外に黒いノリもあるんですねぇ。
 もちろんスタン・ゲッツは美しい思わせぶりと歌心♪ ボブ・ブルックマイヤーもキラリと光るフレーズで対抗しています。

A-3 Pernod (1954年11月8日 / ライブ)
 ここでは客席とのトボケた会話のやりとりもあったりして、楽しい雰囲気で快適なアップテンポの演奏がスタートしますが、如何にも西海岸派というスマートなノリがたまりません。
 流麗なスタン・ゲッツと対峙するリズム隊の意気地も烈しく、ボブ・ブルックマイヤーの対位法的な絡みも、個人的にツボです♪

B-1 Tasty Pudding (1954年11月8日 / ライブ)
 バンド全体で、たっぷりとしたグルーヴが楽しめるクールな名曲・名演ですが、中でもスタン・ゲッツの豊かなアドリブ能力には絶句! スカスカの音色にも、あらためて魅力を感じます。
 それとジョン・ウイリアムスの明快なピアノタッチによる幻想的なアドリブも、また秀逸だと思います。

B-2 I'll Remember April (1954年11月8日 / ライブ)
 スタン・ゲッツが十八番にしているスタンダード曲ですから、ここでの快演は間違いないのですが、始る前のドタバタした雰囲気はテープ編集によるものでしょうか?
 まあ、それはそれとして、些かモゴモゴとしたボブ・ブルックマイヤーに比べて颯爽と駆け抜けていくスタン・ゲッツの素晴らしさ♪ ただし、ちょいとマンネリも感じられるのですが……。
 ジョン・ウイリアムスの必死のアドリブには好感が持てます。

C-1 Polka Dots And Moonbeams (1954年11月8日 / ライブ)
 曲が始る前にスタン・ゲッツによるメンバー紹介が、実に良い雰囲気です。
 そして始まるのが、決定的なスローバラードなんですが、ボブ・ブルックマイヤーの絡みやリズムアレンジによって、ちょいとオトボケ調になっているのが、妙な感じです。
 う~ん、スタン・ゲッツのワンホーンで聴きたかったですよ……。しかしラストのアンサンブルは素晴らしい♪

C-2 Open Country (1954年11月8日 / ライブ)
 そのボブ・ブルックマイヤーが書いた楽しいオリジナルで、私は好きでたまらない曲のひとつです。
 もちろんここでの演奏も素晴らしく、アドリブ先発のボブ・ブルックマイヤーが歌心いっぱいにスイングすれば、スタン・ゲッツはクールで流麗なフレーズに加えて、ちょっと黒っぽい、グルーヴィなノリも聞かせてくれます。
 またリズム隊もシャープな好演、見事な煽りです。

C-3 It Don't Mean a Thing / スイングしなけりゃ意味がない (1954年11月8日 / ライブ)
 オーラスはイントロの司会を務めてくれたデューク・エリントンに敬意を表したような同楽団のヒット曲♪ タイトルどおり、猛烈にスイングしまくった快演です。
 特にテーマからアドリブに突入していくスタン・ゲッツの鮮やかさと荒っぽさのバランスが秀逸! 執拗に絡んでくるボブ・ブルックマイヤーも熱っぽいですし、リズム隊も大ハッスルしています。

D-1 We'll Be Together Again (1954年11月9日 / スタジオ)
 ここからが11月9日に行われたスタジオセッションで、音もグッと良くなっていますし、前日のライブからテンションも落ちていません。
 この有名スタンダード曲もスタン・ゲッツとボブ・ブルックマイヤーの対位法的アプローチでテーマが演奏され、両者ともに哀愁モードの好演です。ジョン・ウイリアムスの伴奏も素敵ですねぇ♪
 う~ん、スタン・ゲッツのテナーサックスが生々しい音色で録音されているのが嬉しい!

D-2 Feather Merchant (1954年11月9日 / スタジオ)
 ジョン・ウイリアムスがリードする擬似ハードバップ調イントロでは、リズム隊が本領発揮というか、ちょっと馴染めない雰囲気なんですが、中間派っぽいテーマメロディが出てくれば、後はもう安心印の快演となります。
 そして、こういう演奏が十八番のボブ・ブルックマイヤーが大熱演です。グルーヴィでオトボケが入ったアドリブの妙は最高♪ リズム隊も調子が出てきたようで、アタックが強くて粘っこいノリが、たまりません。
 するとスタン・ゲッツが、これまた独特のノリとメロディセンスで、演奏はますますハードバップ化するのですが、やはり時代はウエストコーストだったというか、心底、黒くなれないバンドのノリが、今となっては貴重なムードだと思います。

ということで、ライブ音源の方は音質がイマイチなんですが、演奏そのものは極上♪ 特に「Flamingo」と「Open Country」は最高ですねぇ~~♪

ちなみにアナログ盤は2枚組でしたが、CDでは1枚に収められ、編集によって会話や演奏が継足されているらしいのですが、持っていないので、そのあたりはご容赦願います。

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兄弟の絆

2007-10-26 17:11:47 | Weblog

今日のハイライトは、やはり亀田&金平の謝罪会見でしたね。

長男として父親と意見が対立している部分がモロ出しになっていましたが、あんまり卑小なんで拍子抜け……。プロの勝負師なんだから、もう少しエグイ事を言っても許されたと思うのですが、結局は腰抜けぶりを露呈したのですね。

精神に異常とされる、当事者の弟の存在も情け無いです。

これでは先が……、なんて私が心配してどうなるもんでもありませんね。

ということで、本日は仲良し兄弟の――

Presenting“Cannonball”/ Julian Cannonball Adderley (Savoy)

キャンノンボール・アダレイの初リーダーアルバムとして有名な1枚ですが、皆様が良くご存知のとおり、実弟のナット・アダレイと共にニューヨークに出てきたキャノンボール・アダレイが、直ぐにサボイレコードと契約して、この作品を発売出来たのは運否天賦の成せるところでしょう。

カフェ・ボヘミアでの飛び入りで、その場を圧倒したという伝説は、そればかりが一人歩きしている感もありますが、しかし直後に行われたセッションから作られた数枚のアルバムには、既にして完成されていたキャノンボール・アダレイのスタイルが記録されていますから、あながち伝説ばかりとは言えません。

この作品も、その中のひとつで、録音は1955年7月14日、メンバーはナット・アダレイ(cor)、キャノンボール・アダレイ(as)、ハンク・ジョーンズ(p)、ホール・チェンバース(b)、ケニー・クラーク(ds) という、今では夢の顔合わせになっています――

A-1 Spontaneous Combustion
 後々までキャノンボールのハンドでは大切な演目になったオリジナル曲で、「イン・サンフランシスコ(Riverside)」でのゴスペルファンキーな熱演があまりにも有名ですが、ここでのリラックスしたノリも素晴らしいと思います。
 ハンク・ジョーンズが余裕で作る軽いブギウギ調のイントロから、覚え易いテーマメロディ、さらに自然体でアドリブをスタートさせるキャノンボール・アダレイのグルーヴィなアルトサックスまで、これは美しき流れです! もちろんチャーリー・パーカー直系のフレーズも用いながら、独自のアタックと息遣いを聞かせてくれるんですねぇ~♪ 烈しい倍テンポにも揺るがない鉄壁のリズム隊が、また凄いです。
 そして続くナット・アダレイも熱いですが、トランペットよりも小さいコルネットというラッパを吹いているのがミソなんでしょうか……? どういう違いがあるのか、ド素人の私には分かりかねますが、よりハイノートが出ている感じです。
 またハンク・ジョーンズの上品なピアノも光ります。というか、単純には熱くならないという意気地があるようです。そのあたりはリズム隊全員の総意かもしれません。ポール・チェンバースも流石のベースプレイを聞かせてくれます。

A-2 Still Talkin' To Ya
 キャンノンボール・アダレイが書いたブルース歌謡曲♪ 如何にもという様式美がブルース&ソウルに溢れていますが、ほとんどアドリブフレーズの積み重ねという雰囲気が、たまりません♪
 ミディアムテンポでジンワリとしたグルーヴを作り出すリズム隊も流石ですから、キャノンボール・アダレイも心置きなくブルースの魂を発揮しているようです。もう、臭味、ギリギリなんですよっ!
 するとナット・アダレイは、些かノーテンキな駆け足スタイルも披露しますが、ちょっと古典ジャズっぽいフレーズまでも使った、ミエミエの狙いが微笑ましいところ♪
 またハンク・ジョーンズのソフトなフィーリングとグリグリのポール・チェンバース、さらに淡々としたケニー・クラークという、個性がマゼコゼのリズム隊が、鮮やかな存在感を示すのでした。

B-1 A Little Taste
 明るく軽快なハードバップ曲ですが、アドリブパートに入るとキャノンボール・アダレイのアルトサックスは真っ黒! 豊かな音量とソウルフルなフレーズの洪水は、唯我独尊の響きです。
 またナット・アダレー
イはミュートで勝負していますが、マイルス・デイビスにはなっておらず、もうひとつ古い感じが憎めません。
 それとハンク・ジョーンズのアドリブが素晴らしい歌心♪

B-2 Caribbean Cutie
 タイトルどおり、陽気でノンビリしたアフロキューバン系の曲ですが、正統派4ビートになるアドリブパートでは、異様に黒いキャノンボール・アダレイのサックスが本当に黒光りです。
 また、その前段としてアドリブの先発を務めるハンク・ジョーンズが、これまた素晴らしいです! あぁ、このソフトな歌心! このまんま終わっても、ノー文句じゃないでしょうか。
 それとナット・アダレイの泣きじゃくるコルネットも良い味ですし、ブンブンブンのポール・チェンバースとか、これもハードバップの隠れ名演だと思います。
 
B-3 Falmingo
 オーラスはR&B系アルトサックス奏者のアール・ボスティックが大ヒットさせた人気曲ですから、ここでもキャノンボール・アダレイがワンホーン体制でじっくりと、独自の歌心を披露してくれます。
 それはテーマメロディの艶っぽい変奏からして、もう、辛抱たらまらん状態♪ 豊かな音量を活かしたアルトサックスの「鳴り」も、大変な魅力ですし、魂を込めたアドリブパートも実に説得力があります。
 もちろんハンク・ジョーンズはムード満点の粋なピアノを聞かせてくれますよ♪

ということで、後年に比べれば、まだまだ地味な演奏かもしれませんが、その基本スタイルは、既にここで出来上がっていたと思います。

ちなみに同時期のセッションからは、ケニー・クラークのリーダー盤「ボヘミア・アフター・ダーク(Savoy)」が作られ、さらに1980年代になってからは、別テイク集も発掘発売されていますから、合わせて聴く楽しみもございます。

個人的には真正面から歌物スローバラードを演奏するキャノンボール・アダレイが好きなので、「Falmingo」を愛聴しているのでした。

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ショーター魔術

2007-10-25 17:13:51 | Weblog

今日は近日開業予定の巨大ショッピングセンターに行きました。駐車場が五千台のスペースということなんですが、なんと帰りになったら、自分の車を止めた場所が分からなくなってしまった……。

う~ん、自分の車の場所が直ぐに分かるようにしてくれぇ~。と、要望はだしておきましたが……。

ということで、本日は――

JuJu / Wayne Shorter (Blue Note)

昨日がジョー・ザビヌルなら、本日はウェイン・ショーターというのが、お約束! かどうかは知らないですが、とにかく急に聴きたくなったのが、このアルバムです。

録音は1964年8月3日、ということは、ウェイン・ショーター(ts) がジャズメッセンジャーズからマイルス・デイビスのバンドに移籍する微妙な時期の演奏で、共演者はマッコイ・タイナー(p)、レジー・ワークマン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、これは全くジョン・コルトレーン(ts) のバンドレギュラーを起用したワンホーンセッション! つまり当時のジャズ界で最も熱かったジョン・コルトレーンの演奏スタイルに真っ向から挑戦した企画であることが、ミエミエです。しかも全曲がウェイン・ショーターのオリジナルなんですから――

A-1 Ju Ju
 一応ワルツテンポなんでしょうが、エルビン・ジョーンズがポリリズムで熱いビートを敲きまくりなんで、ハナからケツまで暴虐の渦! アドリブ先発のマッコイ・タイナーが飛び出すと、そこはジョン・コルトレーンのバンドになるかと思いきや、これは間違いなくウェイン・ショーターの色合が強いと感じます。
 もちろんウェイン・ショーターのテナーサックスからは、絞り出した音符過多フレーズが洪水状態なんですが、どこか軽いフットワークのようなものが滲ます。
 ちなみに曲タイトルは、アフリカの呪術からとされていますが、そう言われるとエルビン・ジョーンズのドラムソロが土人のリズムに聞こえてくるのは、私だけでしょうか……。

A-2 Diluge
 勿体ぶった曲頭から、粘っこくてヘヴィな4ビートが炸裂していく脂っこい演奏です。エルビン・ジョーンズ、最高♪
 しかしウェイン・ショーターは闇雲にジョン・コルトレーンにはなっておらず、あくまでも不思議な存在感を示すアドリブフレーズは、唯一無二の個性でしょう。あぁ、この脱力感覚……♪ 聴いているうちに地獄巡り!
 ですからマッコイ・タイナーのアドリブパートになると、素直にジョン・コルトレーンの物真似大会のような安心感で、癒されますね。

A-3 House Of Jade
 如何にもウェイン・ショーターらしい、安らぎと緊張感がマゼコゼになったスロー曲です。このメロディの感性こそが、ショーターマニアには夢のひとときじゃないでしょうか。上滑りしていくような独特の浮遊感が、私は大好きです。
 それはアドリブパートに入ると、力強いリズム隊によってグングンと増幅され、ウェイン・ショーターのアドリブメロディも冴えまくり♪ 私は、ちっとも古さを感じません。

B-1 Mahjong
 タイトルはスバリ、麻雀です♪
 卓を囲む4人の熱気と和気アイアイとした緊張感が、上手く表現されたテーマメロディには、もちろん中華色が付いています♪ オリエンタルなリズムパターンと4ビートの交錯も、実に良い雰囲気です。
 そしてアドリブ先発のマッコイ・タイナーは、随所で牌を掻き混ぜるようなフレーズを入れたりしますが、それは私の思い込みでしょうかねぇ。
 また様子を見ているようなアドリブの入り方をするウェイン・ショーターも、全体では素晴らしい構成力を発揮! 一聴、奇怪なフレーズばかりのようですが、それがショーターマニア悶絶の乱れ打ちというか、たまりません♪

B-2 Yes Or No
 アップテンポで強烈な突進力を発揮した演奏で、このアルバムの中では一番、ジョン・コルトレーンに接近した仕上がりになっています。
 しかしそこには闇雲な破壊衝動のような展開は無く、むしろロックっぽいスピード感が心地良いところ♪ う~ん、何故、こう感じてしまうのか、自分について不思議に思うんですが、まあ妙なイズムをブチあげる必要もなく、素直に楽しんで良いのがウェンイ・ショーターなんでしょう……?
 シャープでヘヴィなリズム隊の頑張りと遠慮しない姿勢が快演に繋がったのは、ご存知のとおり! マッコイ・タイナーの浮かれたような調子とか、ついつい突っ込んでしまうレジー・ワークマンも微笑ましいのでした。

B-3 Twelve More Bars To Go
 オーラスは私の大好きな曲で、ちょっとオトボケ調のテーマとズンドコ系ポリリズムのマッチングが最高だと思います。もちろんウェイン・ショーターは脱力したようなキメをフレーズ展開の随所に入れ、またリズム隊のスイング感にも、お気楽なムードが♪
 まあ、こんな書き方をするのは邪道かもしれませんが、こうした脱力感と重量感の両立こそ、ウェイン・ショーターが独特の持ち味で、私が一番好きなところ♪ グッと感情移入してしまいます。

ということで、ウダウダと屁理屈ばっかり書いてしまいましたが、ウェイン・ショーターの音楽に、それは必要ないのが本当のところでしょう。

まず聴いて、感じる! 泉のように湧き出る独特の感性に彩られたアドリブメロディは、虜になったら、もうこれでなければ満足出来ない世界です。

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ジョー・ザビヌルの正統派ピアノ盤

2007-10-24 15:56:20 | Weblog

今日は秋晴れ♪ しかし仕事はトラブルばかりで、下げる頭が幾つあっても足りないと言うテイタラクです。

全く自分の人生を振り返ると、頭を下げることで成り立っている部分が非常に多いですね。これで良いのか、良いに決まっています。

と開き直って、本日の1枚は――

To You With Love / Joe Zawinul (Strand)

先日、天国へ召されたジョー・ザビヌルは、欧州から本場アメリカにやって来て、キャノンボール・アダレイ(as) のバンドで活躍した後、マイルス・デイビスのロック系セッションに参加、さらにそこからウェザー・リポートを立ち上げて大成功を勝ち取った、ジャズ史的には勝ち組の人なんでしょうが、ジャズ喫茶に集うようなファンの間では、イマイチ評価されていないような気がしています。

それはウェザー・リポートでの、あまりに時代に迎合したような存在感であり、ピアノよりは電子キーボードの多用、また世渡りの上手さ……云々が、事ある毎に非難されがちなんですねぇ。

しかし1960年代中頃までの、特にキャノンボール・アダレイのバンド時代に聞かせてくれたファンキーなピアノプレイは、個人的に大好きですし、白人らしからぬ粘っこいタッチ、それとは反比例したような洒落たメロディセンスは、ジャズファン万人を魅了するものだと思っています。

さて、このアルバムは渡米直後に吹き込まれた正統派ハードバップピアノの楽しい1枚で、トリオを基本にしながらも曲によってはコンガが入るという嬉しい演奏集です。

録音は1959年の秋、メンバーはジョー・ザビヌル(p)以下、ジョージ・タッカー(b)、フランキー・ダンロップ(ds)、レイ・バレット(per) というグルーヴィな面々――

A-1 I Should Care (Quartet)
 如何様にも料理出来るスタンダードながら、ここでは意表をついたリズムアレンジが強烈で、なんとなく「チュニジアの夜」を連想させる強烈なベースのリフからグイノリの演奏がスタートします。
 ジョー・ザビヌルのビアノはカクテルスタイルのテーマ提示から、ギトギトに粘っこいアドリブに入るというニクイ演出♪ 強いピアノタッチとジョージ・タッカーの押付けるようなベースのウォーキングが最高にマッチした快演で、アドリブの纏め方も実に上手いと驚嘆です♪

A-2 Easy Living (Quartet)
 これはじっくりスローに構えた演奏ながら、全体のグルーヴィな雰囲気が最高という、聴くほどに味わい深い仕上がりです。
 ジョー・ザビヌルのピアノは素直に原曲を変奏していくだけですが、少しずつファンキーな色合が強まっていくあたりに、グッときます♪ 中盤から入ってくるコンガも絶妙の楽しさ!

A-3 Please Send Me Someone To Love (Quartet)
 ブルース歌謡の大名曲ですから、ジョー・ザビヌルにはジャストミートの演目♪ もちろん期待通りの快演を聞かせてくれます。まずテーマメロディの勿体ぶった表現が、たまりません。ブロックコードの使い方が、もう琴線にふれまくりなんですねぇ~~~♪
 また間合いを活かして蠢くジョージ・タッカーのベースソロは真っ黒ですし、中盤の倍テンポを彩るコンガの響きも素敵ですから、演奏はグイグイと盛り上がっていくのでした。

A-4 It Might As Will Be Spring (Trio)
 「春の如く」いう邦題にぴったりの愛らしい名演になっています。このあたりは、やはり白人らしいというか、ヨーロッパ人らしい感性が滲み出ていますし、そこにファンキーな色づけをしようと無理している微笑ましさが♪

A-5 Love For Sale (Quartet)
 いきなりコンガのチャカポコリズムが楽しく、ラテンのリズムと4ビートが烈しく交錯するハードバップの醍醐味が堪能出来る演奏です。
 真っ黒なドラムスとベースの所為でしょうか、アドリブはホレス・パーラン調になるのも憎めないところですが、そうした粘っこいフィーリングを狙っていながら、美味しいとろは共演者に任せているあたりが、上手いと思います。

B-1 Squeeze Me (Quartet)
 コンガを中心に軽快なノリとヘヴィな4ビートを混在させた、前曲と同じ様なグルーヴが提供されています。
 全体には意表をついたアップテンポの演奏で、ジョー・ザビヌルは正統派ピアニストの伝統を守ろうと汲々としている感じでしょうか……。フランキー・ダンロップの流れが止まらないドラミングが良い感じです。

B-2 Greensleeves (Joe Zawinul Solo)
 有名なイギリス民謡がピアノソロで演じられるという、まあ定石なんですが、こういうミエミエの素直さがジョー・ザビヌルの人徳というか、それなりに良いんじゃないでしょうか……。

B-3 My One And Only Love (Quartet)
 そして続けて始るのが、この人気スタンダード曲ですから、たまりません。前曲との繋がりが、実に良い雰囲気なんですねぇ~♪ ジョー・ザビヌルのスローな感情表現にも嫌味は無いと思いますが、それは十人十色かも……。
 ジョージ・タッカーの絶妙のアクセントが効いたベースやフランキー・ダンロップのドラミングのシブさ! こういうところが、ビアノトリオの名盤必須条件なんでしょうねぇ。

B-4 Masquerade Is Over (Quartet)
 一転してアップテンポのハードバップ! これも演目からすれば意表をついた展開なんですが、そんなことはお構いなしに突っ走るバンド全体の勢いが良い感じです。
 しかし演奏はフランキー・ダンロップのドラムソロがメインなので……。

B-5 Sweet And Loevly (Trio)
 オーラスは粘っこいフィーリングを全面に打ち出したスタンダード曲の解釈で、ジョー・ザビヌルが本領発揮! 白人らしからぬファンキーな味付けは、本場への憧れをストレートに表現したものかと思います。
 その意味でジョージ・タッカー&フランキー・ダンロップという重量級の共演者の起用は大正解!

ということで、実に愛すべきジャズピアノのアルバムです。

ちなみにオリジナル盤はウルトラ級の幻盤なんですが、幸いなことに Fresh Sound から再発盤が出ていますし、CD復刻もされているはずですから、これは嬉しい現実です。

一度は聴いて楽しむべきアルバムかと♪

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思い込んでいたっ!

2007-10-23 16:42:32 | Weblog

名古屋方面に出張していた者のお土産が「赤福」でなかったのが、残念……。もう、食べられないんだろうなぁ……。

ということで、本日は――

Drummin' The Blues / Max Roach & Stan Levey (Liberty)

勘違いや思い込みはこの世の常とはいえ、それが長年続いているとシャレになりません。

私にとっては、このアルバルこそが、そういう1枚でした。

それはタイトルとリーダーミュージシャンから、てっきりドラムバトル物と思い込んでいたのですが……。

結論は2人のドラマーをそれぞれリーダーに立てた西海岸流ハードバップ演奏集で、それが交互に4曲ずつ、計8曲が入ったアルバムだったというわけです。

しかも、その実態はハワード・ラムゼイのライトハウス・オールスタアズなんですから! ちなみに録音は1957年頃と言われています。

ご存知、マックス・ローチはモダンジャズ創成をリズムとビートの両面から作り出した天才ドラマーですし、スタン・リーヴィーは白人ながら、その影響をダイレクトに受けたハードドライヴィングなドラマーです。

そして2人の共通点として、ビバップ期には共にチャーリー・パーカー(as) のバンドレギュラーを務め、さらに1953年頃にはハワード・ラムゼイのオールスタアズでドラマーの座を前後して占めていた因縁がありますから、どのような立場でも演奏そのものに悪い予感はしないのですが……。

さて、気になるメンバーは、マックス・ローチ(ds) のリーダーセッションでは、コンテ・カンドリ(tp)、フランク・ロソリーノ(tb)、ビル・パーキンス(ts)、ディック・シュリーヴ(p)、ハワード・ラムゼイ(b) というセクステット♪

一方、スタン・リーヴィー(ds) のバンドもセクステットで、上記メンバーからビル・パーキンスが抜け、代わりにボブ・クーパー(ts) が入った豪華版です――

A-1 Facts About Max (Max Roach 6)
 アルバム冒頭はマックス・ローチのセッションで、ワイルドなドラムスとスマートなホーン隊のコントラストが狙いなんでしょうか。アドリブ奏者のバックに自然体で絡んでくるリフとか軽快なアンサンブルが、いかにも西海岸です。
 そしてマックス・ローチが豪快なトラミングで、と書きたいところなんですが、イマイチ、煮え切らないのは??? と言うか、マックス・ローチだけが浮いていると思うのは、私だけでしょうか……。

A-2 Milano Blues (Stan Levey 6)
 ミディアム・テンポでグルーヴィに演奏されるブルースなんですが、そこは白人のバンドらしいライト感覚に好き嫌いが分かれるでしょう。
 しかしスタン・リーヴィーのドラミングはスバッとキマッたところがあり、バンドのメンバーもノビノビとアドリブを披露しています。特にフランク・ロソリーノは特徴的な駆け足フレーズ、ボブ・クーパーは繊細な表現力を堪能させてくれるのでした。
 ラスマエのドラムソロはハードボイルドな至芸! アンサンブルもカッコイイです♪

A-3 Swingin' The Blues (Max Roach 6)
 冒頭でややミソをつけてしまったマックス・ローチが、ここでは火の出るような熱演で、まずテーマ部分から白熱のシンバルと力感溢れるドラムのブレイクで燃えあがります。
 さらにホーン陣のアドリブの間にも強烈なドラムソロを入れてきますから、油断なりません! あぁ、何度聴いても熱くなります。
 
A-4 Breadline Blues (Stan Levey 6)
 かなりモダンな味わいのテーマメロディが、まず素敵です。作曲はピアニストのディック・シュリーヴで、ちょっと無名な人なんですが、セッション全篇で手堅いプレイを聞かせているので、隠れ名手かもしれません。
 肝心の演奏は、これも素晴らしい白人ハードバップの典型で、バンド全体をギンギンにスイングさせるスタン・リーヴィのドラミングは見事ですし、クライマックスでのホーン陣との対決もスリル満点です。

B-1 Bye Bye Blues (Stan Levey 6)
 B面はスタン・リーヴィーのセッションが最初に配されている気遣いが微笑ましいところ♪
 演奏は軽快な西海岸風で、あまりハードバップとは言えませんが、流麗に歌うボブ・クーパーを筆頭に、全員が疾走感あふれる熱演を披露しています。もちろんスタン・リーヴィーのスピードがついたドラミングは、個人的には最高に好きな感じです♪

B-2 Blues In The Night (Max Roach 6)
 元ネタは映画音楽というブルース風味の歌謡曲なんですが、このメンツで演奏されるとお洒落な感覚が滲み出て、なかなか味わい深いものがあります。
 まずコンテ・カンドリがミュートで素晴らしいアドリブを展開すれば、ビル・パーキンスがスカスカな音色と粘っこいタメを活かした流麗なソロを聞かせてくれます。
 またフランク・ロソリーノのブルースフィーリングも嫌味がありません。
 肝心のマックス・ローチは流石にグルーヴィなピートを敲き出しいて、地味ながらメリハリの効いたドラミングが見事だと思います。

B-3 Royal Garden Blues (Stan Levey)
 この曲はディキー系の演奏が多い所為もありますが、ここでの明るいアンサンブルは白人ジャズのひとつの典型かもしれません。もちろんスタン・リーヴィーのドラミングも冴えまくり♪
 ボブ・クーパーからコンテ・カンドリに受け渡される調子が良すぎるアドリブの楽しさ♪ 見事なアンサンブルを経て飛び出すのがフランク・ロソリーノのトロンボーンという快感は絶品です。
 またクライマックスではスタン・リーヴィとホーンの一騎打ちが真剣勝負! ガチコンの魅力になっています。

B-4 The“Count's”Blues (Max Roach)
 オーラスはマックス・ローチが本領発揮! やはりスタン・リーヴィに比べるとピートがヘヴィでシンバルワークも多彩だと痛感します。
 演奏全体にも黒っぽいグルーヴが横溢し、コンテ・カンドリは敢然とハードバップのアドリブに撤していますし、フランク・ロソリーノはノーテンキなところにネバリも加わった快演だと思います。
 そしてクライマックスはマックス・ローチのポリリズムなドラムソロ! やっぱりこれは、一代の至芸です♪

ということで、正直言うと、2人のドラムバトルが無くて残念……。マックス・ローチにも、何時ものようなスキッとしたところが足りないと感じます。

しかしスタン・リーヴィーは、やっぱり自分の好みだし、参加メンバーの充実したアドリブやアンサンブルの妙は存分に楽しめます。というか、ハワード・ラムゼイのオールスタアズ番外篇として楽しむのが王道なんでしょうねぇ。

ちなみに冒頭で述べたように、私は長年ドラムバトル盤と思い込んでいたので、初めて聴いた時には肩すかしをくらった気分でした。何事も過大な期待も禁物という人生訓のようなアルバムとして、私には妙に愛着のある1枚です。

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ビンビンビンのサム

2007-10-22 16:26:56 | Weblog

食欲の秋とはいえ、昼飯にカツ丼とアンパンと野菜ジュース2本っていうのは、ちょっと……。苦しくはなかったけれど、気分的に食い過ぎ感がありました。もう若くないので!

ということで、本日は――

The Chant / Sam Joines Plus 10 (Riverside)

4ビートはモダンジャズの魅力ですが、それをグイグイと推進していくのがベーシストの存在でしょう。ですからドラマーがどんなにポリリズムに走っても、良いベースが入ってれば演奏は決して迷いませんし、私はそういう演奏に気持ちが良くなります。

本日の主役、サム・ジョーンズもその1人♪

特に1950年代中頃から1960年代までの演奏には、ガッツのある音色とグルーヴィなノリがいっぱいで、心底、魅了されます。

そのキャリアの中では、何と言ってもキャノンボール・アダレイのバンドレギュラーだった時期が一番輝かしいのですが、同時期に吹き込んでいたリーダー盤も、なかなか凝った作りで聞き逃せません。

このアルバムはアレンジを用いた2種の中型バンドを率いた演奏集で、サム・ジョーンズはチェロも弾くという意欲作になっています。

まず仮にグループAとするバンドには、サム・ジョーンズ(b)以下、ナット・アダレー(cor)、ブルー・ミッチェル(tp)、メルバ・リストン(tb)、キャノンボール・アダレイ(as)、ジミー・ヒース(ts,arr)、テイト・ヒューストン(bs)、ビクター・フェルドマン(vib,p,arr)、レス・スパン(g)、ルイス・ヘイズ(ds) という凄い面々が参加♪ 録音は1961年1月13日とされています。

また同年1月26日に録音されたグループBでは、サム・ジョーンズがチェロに専念し、レス・スパンが抜けた代わりに、ウイントン・ケリー(p) とキーター・ベッツ(b) が入っています――

A-1 The Chant (グループA / arr:ビクター・フェルドマン)
 いきなりゴスペルファンキーなハードバップ大会で、カッコ良いアレンジを縫って展開されるサム・ジョーンズのベースソロも最高ですが、ナット・アダレーのコルネットやジミー・ヒースのテナーサックスも真っ黒です♪
 う~ん、それにしても、こういうグイノリはモダンジャズの醍醐味ですし、ベースソロの背後で何気なくリズムを刻んでいるレス・スパンの存在感とか、ほんとうにたまりませんねぇ。

A-2 Four (グループA / arr:ジミー・ヒース)
 マイルス・デイビスが作ったとされるハードバップの定番曲で、もちろん豪快なアレンジの中をビンビンにウォーキングするサム・ジョーンズの4ビートが痛快です。
 アドリブパートではブルー・ミッチェルとジミー・ヒースが持ち味を発揮! サム・ジョーンズもブリブリのベースソロを聞かせてくれますが、例えばポール・チェンバースとの比較では、柔よりも剛のイメージでしょうか。それゆえにハードバップ色がさらに強い演奏になっていると思います。

A-3 Blues On Down (グループA / arr:ビクター・フェルドマン)
 シャープなホーンのシャウトと呼応してサム・ジョーンズのベースが唸り、自然体のハードバッブブルースが始ります。う~ん、グルーヴィ♪ レス・スパンのリズムギターも良い感じです。
 ホーンのアドリブでは、お待ちかねのキャノンポールが登場! ややライトタッチなんですが、黒い魂は存分に味わえますし、続くビクター・フェルドマンのビアノが、実にファンキーでソフトな、微妙な味わいです。

A-4 Sonny Boy (グループB / arr:ジミー・ヒース)
 ここではチェロに専念するサム・ジョーンズが、なかなかに快演です♪ テーマメロディの変奏はもちろん、アドリブパートでも歌心がたっぷりの快適さ! バックを彩るホーンのアンサンブルも気持ち良く、もちろんお目当てのウイントン・ケリーも弾みまくっています。
 それとブルー・ミッチェルが歌心優先という持ち味を存分に発揮していますよ♪

B-1 In Walked Ray (グループB / arr:ビクター・フェルドマン)
 テーマメロディが、なんとなく「Bohemia After Dark」とソックリで、ニンマリしてしまいますが、アップテンポのノリを崩さないサム・ジョーンズのセロが最高にスイングしています。キーター・ベッツのウォーキングベースとの兼ね合いも良いですねぇ~♪
 またクールなビクター・フェルドマンのヴァイブラフォンや豪快なホーンアンサンブルも楽しいかぎり♪ 

B-2 Blue Bird (グループB / arr:ビクター・フェルドマン)
 これがまたグルーヴィな雰囲気が横溢したハードバップ!
 厚みのあるホーンアレンジやリズム隊の粘っこいノリが最高ですし、サム・ジョーンズのチェロはテーマメロディからアドリブソロまで、全くそれらに負けていない強烈な存在感を聞かせてくれます。
 全体にはモダンなカンウト・ベイシー楽団という感じもしますが、ナット・アダレーが大ハッスルし過ぎて憎めません。あぁ、気分はモダンジャズにどっぷりです♪

B-3 Over The Rainbow (グループB / arr:ジミー・ヒース)
 有名スタンダードを凝ったアレンジで料理した隠れ名演だと思います。なにしろサム・ジョーンズのチェロが、実に良い雰囲気なんですねぇ~♪ ビクター・フェルドマンのヴァイブラフォンも素晴らしいスパイスになっています。
 ゆったりしたビートを生み出しているリズム隊では、ウイントン・ケリーが若干、騒ぎすぎかと思いますが、結果オーライでしょうねぇ……。

B-4 Off Color (グループA / arr:ジミー・ヒース)
 ここで再びベースに戻ったサム・ジョーンズが本領発揮の黒いグルーヴを存分に聞かせてくれます。
 まずアドリブ先発のビクター・フェルドマンのバックでは強力な4ビートのウォーキングを披露し、短いアンサンブルを挟んで、今度は密度の濃いベースソロを展開してくれます。
 そしてブルー・ミッチェルのトランペットが鳴り出した瞬間、ズルッと4ビートのウォーキングに戻る瞬間芸も、たまりません!

ということで、とても楽しく聴けるベースのアルバムです。惜しむらくは、キャノンボールが1曲しかアドリブを聞かせてくれないのと、同じ様なテンポ&曲調が続くあたり……。

しかしながら、やっぱりサム・ジョーンズは魅力的なベース奏者で、良く比較されるポール・チェンバースがブンブンブンなら、サム・ジョーンズはビンビンビン! ちょっと硬めの音と強引なスイング感が、私はたまらなく好きです。

ちなみにサム・ジョーンズは1970年代に入ると電気のアタッチメントを使い出し、音色もノリも別人にようになってしまった……、と感じているのは私だけでしょうか?

リーダー盤もそれなりに作っていた人ですから、時代と共に味わいが異なるのも理解するべきなんでしょうが、やはり私はキャノンボール・アダレイのバンドからオスカー・ピーターソンのトリオへ入った頃のサム・ジョーンズが、一番好きなのでした。

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