OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ベン・E.キングの変化と常態

2012-09-06 15:48:07 | Soul

Supernatural Thing / Ben E. King (Atlantic / ワーナー・パイオニア)

ベン・E.キングと言えば、「Stand By Me」と応えるのが、広く音楽ファンの常識だと思います。

それは黒人ソウルミュージックを代表する名唱にして、ロックファンをも魅了する名曲であり、中でもジョン・レノンのカバーバージョンが、これまた地球規模で大ヒットしていますから、とにかくメロディラインと歌詞の内容についても、お馴染みのはずです。

しかしその曲を作り、オリジナルバージョンを歌ったベン・E.キング本人については、些か評価が定まらない感があるようで、実はサイケおやじも後追いで聴くベン・E.キングの歌の数々には、あまりソウルフルなムードを覚えないものが少なくないのです。

ご存じのとおり、ベン・E.キングはアメリカの黒人コーラスグループとしては超有名なドリフターズのリードシンガーであり、特に1959年からアトランティックと契約して以降に連発した大ヒット曲、例えば「ラストダンスを私に / Save The Last Dance For Me」等々は、今やスタンダードなオールディズでしょう。

また独立してからも前述の「Stand By Me」や「Spanish Harlem」、「Don't Play That Song」あたりは知られ過ぎているに違いありません。

ところがそうしたヒット曲には、意外とも思えるほど甘~いフィーリングがたっぷりと塗されていて、ストリングスやリズムのアレンジが、なかなか白っぽいメロディにジャストミート!?

おまけにベン・E.キングのボーカルスタイルが十八番とはいえ、そのソフトタッチの節回しは、何なんとも洋楽ポップスじゃ~ありませんかっ!?

つまり世間一般も、またサイケおやじも強く感じてしまう、黒人らしくないソウルミュージックというか、極言すれば白人ウケを狙ったお洒落感覚は、如何にも都会的という事かもしれません。

それが1960年代前半頃までの黒人ソウルミュージックのひとつの典型だったとすれば、サム・クックが同時期に、これまた甘~いムードのポカール曲を歌っていた事も合わせて、そうしたスタイルこそが黒人音楽の主流だったと理解されるべきなのでしょう。

ですから時が流れ、黒人音楽の世界にモータウンやスタックス等々から作り出される新しいサウンドが蔓延した時、残念ながらベン・E.キングが過去の人になってしまった印象も当然!?

実際、サイケおやじがベンチャーズやビートルズの流行によって洋楽を聴き始めた1960年代中頃以降ではありますが、黒人ソウル歌手としてベン・E.キングの名前が出てくる事は稀だったという記憶しかありません。ただ、前述した「Stand By Me」や「ラストダンスを私に / Save The Last Dance For Me」あたりの歌のメロデイだけを知るのが優先事項として、歌手「ベン・E.キング」は付随事項だったんですから、不遜極まりない話ですよねぇ……。

しかし、それが当時の真相と本音であったサイケおやじにとって、1975年という、ニューソウル真っ盛りの時期に、突如としてベン・E.キングが流行バリバリの大ヒットを出したという現実は、なにか浮世離れした感が強く、同時に新鮮でありました。

それが掲載したシングル曲「Supernatural Thing」で、実は7吋45回転のレコードA面には「part-1」、B面には「part-2」が収められているという、如何にも仕様が侮れません。

実は結論から言うと、普通、こうしたシングル曲が出る場合、それはアルバム収録の長尺オリジナルバージョンをシングル向きに分断編集したものと思ってしまうんですが、この「Supernatural Thing」の場合はLPでも、きっちり「part-1」と「part-2」に、最初っから分けられているんですねぇ~。

しかもご推察のとおり、「part-1」はクライマックスの盛り上がりでフェードアウトしながら終了し、「part-2」において、ついにネチネチとイヤミっぽいほどのエキサイティング状態に突入するんですから、どうしてアルバムに纏まったロングバージョンが入っていないのか??

これは全く不思議でなりません。

また既に述べたとおり、曲調はチャカポコのパーカッションやファンキーなギターカッティング、思わせぶりなメロディ展開等々、まさに流行最先端のサウンドが構築され、その中で自在な歌を披露するベン・E.キングは、非常にソウルフルなんですねぇ~~♪

女性(?)コーラス隊との相性も良い感じ♪♪~♪

う~ん、時代は確かに変わったんでしょうが、実はベン・E.キングの本質は変わっておらず、どんな環境のサウンドでも唯我独尊で歌いこなしてしまうのが、その実力の証明なのでしょう。

そう思ってからは、有名な「Stand By Me」が尚更に真っ黒く聴けるようになったんですから、たまりません。

しかも、このシングル盤B面「part-2」における呪術的な魂の盛り上がりが、尚更に愛おしい!

何時しかサイケおやじは、常にB面ばっかり聴いていた時期があったほどです。

ということで、どんな環境にあっても、常に自分の実力を発揮出来る人物は確かに存在し、それは要領が良いとか、日和見主義だとか、周囲から様々な批判を浴びようとも、残した立派な結果の前では戯言にすぎません。

ベン・E.キングは今日でも堂々と活躍し、最近では日本語の歌も吹き込んでいることから、ますますそうした讒言に晒される立場は看過されませんが、だからこそサイケおやじは、ベン・E.キングを認めてしまうのでした。

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2 コメント

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Unknown (市久田)
2012-09-10 11:58:18
洋楽を聴き始めた70年代初頭頃、私の中でベンEキングというよりも「スタンド・バイ・ミー」は、プラターズの「オンリー・ユー」のような超定番曲のイメージが強くて、実はなめていましたですね。
しかし、人並みにニュー・ソウルを聴き始めた頃には、心の中でベンEキングに「すみませんでした!」と謝罪してました(笑)。
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人の良さも良し悪し (サイケおやじ)
2012-09-10 14:33:26
☆市久田様
コメント、ありがとうございます。

ベン・E・キングは「Stand By Me」があまりにも有名になりすぎたんじゃ~ないでしょうか? なにしろ同名映画まで作られたんですから。
あと、本人の物分かりの良さというか、別にイージーな姿勢という事でもないんでしょうが、日本人はどっちかといえば、頑固な芸術家が好きですから(笑)。
しかし、最近は日本語の歌も吹き込んでいるらしいですよ。いやはやなんともです。
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