OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

レッド・ガーランドとレス・スパン

2009-03-15 11:35:16 | Jazz

Solar / Red Garland (Jazzland)

モダンジャズ全盛期に多くのレコーディングを残したレッド・ガーランドは、やはり圧倒的にピアノトリオ物、あるいは管入りの正統派ハードバップ作品ばかりが人気盤とされていますが、本日ご紹介のアルバムは珍しくもギターを加えたカルテットセッションが楽しめます。

実際、レッド・ガーランドが他に残したギターとの本格的な演奏は、ケニー・バレルと共演した数曲ぐらいじゃないでしょうか。

で、ここに抜擢されたのがレス・スパンという、一般的には知名度が低いと思われる黒人ギタリストですが、この人はディジー・ガレスピーのバンドレギュラーとなった1958年頃から頭角を現し、フルートも上手いという隠れ名手のひとりでした。また誰よりも早い段階から、ウェス・モンゴメリーが広めたオクターヴ奏法を堂々の後追いで使ったギタリストでもあります。

そして録音は1962年1月30日、メンバーはレッド・ガーランド(p)、レス・スパン(g,fl)、サム・ジョーンズ(b)、フランク・ガント(ds) とされていますが、セッションの日付については諸説あるようです。

A-1 Sophisticated Swing
 かなり古いスタンダード曲を、ここではギターとピアノのユニゾンを活かしたアレンジで聞かせてくれますが、リラックスしたテンポゆえにラウンジ系の雰囲気が強くなり、それゆえにレッド・ガーランドを意識しすぎると違和感もあるでしょう。
 実際、ピアノトリオにギターが入ったことで、楽器の倍音が音量よりも強く音の厚みを作っているようですから、ピアノトリオ演奏で顕著だったレッド・ガーランドの魅力である、シンプルな歌心の妙が微妙に変化しているのかもしれません。
 しかしジャズ的なキモは決して失われておらず、先発でアドリブに入るサム・ジョーンズのギスギスしたペースの音色とハードなフレーズ展開、また続くレス・スパンの「ウェスもどき」は、ソロと伴奏の両方で、私にはジャストミート♪♪~♪
 肝心のレッド・ガーランドもアドリブパートでは何時もの調子を取り戻したというか、リラックスしてコロコロと転がる、あの「ガーランド節」を完全披露していますし、フランク・ガントのドラミングもブラシをメインに職人芸に徹していると思います。

A-2 Solar
 マイルス・デイビスのオリジナル曲を、同クインテットの人気バージョンとなっていた「Dear Old Stockholm」から、要のアレンジを拝借して聞かせてくれます。
 しかし結論から言うと、これは狙ってハズした雰囲気が強く、メンバー各人はそれなりに熱演ですが、う~ん……。サム・ジョーンズの頑張りが一番という感じでしょうか。
 これをあえてアルバムタイトルに持ってきた意図は、レッド・ガーランドの「らしく」無い姿勢を新しいとすることかもしれませんね……。このあたりは賛否両論が必定だと思います。

A-3 Where Are You ?
 これも一般的にはフランク・シナトラの歌として知られる隠れ名曲♪♪~♪ そしてここではレス・スパンのフルートをメインにした正統派の解釈が素敵です。
 特にレッド・ガーランドは十八番のブロックコード弾きに加え、シンプルな歌心に満ちた短音フレーズが冴えまくりですよ。スローなテンポでもダレない表現は流石だと思います。
 またレス・スパンの美しい音色のフルートも特筆物でしょう。けっこう過激なフレーズも出していますが、あくまでも和み優先の姿勢は高得点♪♪~♪
 レッド・ガーランドが何時もの調子を取り戻した感も強いアルバムの流れには、欠かせない名演です。

A-4 Marie's Delight
 レッド・ガーランドの快調な歌心が存分に楽しめるオリジナル曲で、とにかく転がりまくったピアノが実に最高です。アップテンポで軽快なグルーヴを提供するドラムスとベース、その隙間を埋めていくギターの骨太な響きも、たまりません。
 短い演奏ですが、本当に楽しくなりますよ。

B-1 This Can't Be Love
 B面に入っては、それまでの鬱憤を晴らすかのような、まさに狂ったようにスイングするバンドの勢いが圧巻の名演です。
 とにかくビシバシのリズム的な興奮、アップテンポの痛快なノリ、そしてアドリブの爽快感! これがハードバップとモダンジャズの最高の瞬間かもしれません♪♪~♪ 特に後半のソロチェンジが素晴らしすぎますよっ♪♪~♪
 このアルバムの中では一番、「らしい」演奏じゃないでしょうか。
 
B-2 The Very Thought Of You
 そしてこれまたレッド・ガーランドの得意曲が、レス・スパンの美しいフルートも存分に活かしながら、実にリラックスして演じられます。あぁ、このピアノのソフトでキラキラしたタッチは永遠に不滅でしょうねぇ~♪ これぞっ、レッド・ガーランドだと思います。
 また緩やかにして如何にもジャズっぽいスローなテンポの見事さ♪♪~♪ これもまた、レッド・ガーランドのトリオだけにある、素晴らしい魅力でしょう。
 さらにレス・スパンの魅惑のフルート♪♪~♪
 アルバムの中でも屈指の名演として、聴かずに死ぬるか! ですよ。

B-3 Blues For 'News
 レッド・ガーランドがお得意のブルースは、アップテンポの典型的なハードバップですから、手慣れたフレーズやアドリブの構成がマンネリと言われればそのとおりなんですが、ここではレス・スパンのギターが、ほどよいスパイスになっています。
 このあたりは演奏時間の短さが勿体無い気もするほどですよ。タイトに纏まった快演だと思います。

B-4 I Just Can't See For Looking
 ナット・キング・コールの当たり曲を、全くその味わいで演じるレッド・ガーランドのニクイ遊び心♪♪~♪ もちろんこれはギター入りのセッションを想定した選曲だと思いますが、実際、ここでのリラックスして快適な仕上がりには、思わずニヤリです。
 レッド・ガーランドの歌心と粘っこさ、ビートの芯を外さないベースとドラムス、そしてギターのしぶとい感じが、まさに一体となって作り出すモダンジャズの桃源郷が、ここに楽しめます。

ということで、最初は違和感も強いアルバムですが、聴く度に味わいが深まる隠れ名盤じゃないでしょうか? 個人的にはB面を多く聴くのですが、A面の異質な雰囲気も捨て難いと思っています。

また共演したレス・スパンのギタリストとしての特質は、既に述べたようにウェス・モンゴメリーっぽい部分も含めて、主にギターとアンプだけの関係で音を作るという、極みつきの正統派♪♪~♪ ですから素直な倍音や歪みにイヤミがないんでしょうねぇ、私は大好きです。

ちなみにレス・スパンには、局地的な幻の名盤というリーダー作「Gemini (Jazzland)」があり、これも欲しくて精進を重ねていますが、なかなか……。まあCDや再発プレスは出ておりますが、個人的には妥協出来ない我儘が、その魅力の証明とご理解願います。

春の日の休日には、こんなアルバムも良いですね。

コメント
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