OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

一身上の都合

2008-05-08 15:35:43 | Weblog

いきなりですが、当分の間、お休み致します。

一身上の都合というか、現在の職場で所期の目的が達成となりました。思えば5年前、泥沼だった今の仕事場へ出向させられ、外様として鬼のような事ばっかりをやり続け、なんとか形をつけられた今、また別の所で同じ様な事をやる仕儀となりそうです。

単身赴任の心地良さ、住まい環境の良さがあって、当初は長期出張と構えていたはずが、本格的に泥沼に介入したというわけです。

この5年間は本サイト「サイケおやじ館」を始めたり、このプログをスタートさせたりと、まあ、自分の自由な時間を使うことが出来て幸せでした。

一応、ブログはしばらく休止致しますが、「サイケおやじ館」は継続営業する所存です。

皆様には心から感謝しております。

それでは再開の日まで……、ありがとうございました。

 

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユルユルファンクの心地良さ♪

2008-05-07 16:12:45 | Weblog

やっぱり休み明けは調子が出ないもんです。

こういう時には弛緩したグルーヴ物が似合いますね――

Move Your Hand / Lonnie Smith (Blue Note)

ジミー・スミスで当りを取ったブルーノートは以降、積極的に個性的なオルガン奏者のリーダー盤を製作していきますが、中でも特にイナタイ雰囲気だったのがロニー・スミスだと思います。

それはズバリ、弛緩したグルーヴというか、例えばラリー・ヤングあたりの積極性とは対極にあるユルユルなノリ♪ これが私にはジャストミートしています。

モダンジャズというよりはソウル、ソウルというよりはスワンプという、つまり真剣に聴いているとダサダサで確実につまらないでしょう。我国のジャズ喫茶で無視され続けたのも間違いではありません。

しかし悪く言えば「ながら」聴きというか、例えば日活ニューアクション映画の劇伴とか、昭和末期からのクラブ系、あるいは昭和40年代の歌謡曲グルーヴあたりが好きでたまらない私なんかには、これが無くてはならないものなんですねぇ。もちろん仕事の合間とかドライブには欠かせません♪

で、このアルバムは1970年頃に発売されたとおぼしきライブ盤♪ モロに日活調のファッションでキメたジャケ写もイカシていますね。

録音は1969年8月9日、ニュー・ジャージー州の「クラブ・ハーレム」という店のセッションから、メンバーはロニー・スミス(org,vo)、ラリー・マギー(g)、シルヴェスター・ゴシェイ(ds)、ルディ・ジョーンズ(ts)、ロニー・キューバ(bs) という、これは多分、当時のレギュラーバンドだと思われます――

A-1 Charlie Brown
 黒人コーラスグループのコースターズが、1959年に大ヒットさせた楽しいノベルティR&Bを演奏するあたりに、このバンドの基本姿勢が表れています。原曲の味わいを大切にしたグルーヴのミソはオトボケ色というか、これがファンキーのひとつの要素かもしれません。黒人音楽は深いです。
 しかし、それにしてもバンド全体のノリがイナタイとしか言えません。ユルユルのグルーヴと重いビート感♪ これがロニー・スミスの持ち味だとしたら、決して一流の技巧派とは言えないメンバーの人選は、これで大正解でしょう。バタバタしたドラムス、些かゴマカシが目立つギター、山場を作れないホーン陣のアドリブは逆に親しみ易くて、憎めません。
 聴いているうちに、完全に下半身から力が抜けていきます♪ でも身体は確実に揺れていくのでした。

A-2 Laying In The Cut
 アドリブ中心に聴かせようとする目論見が見え隠れするロニー・スミスのオリジナル曲で、それはワンコード系の演奏に近くなりますから、本当は火の出るような、と書きたいところなんですが……。
 モダンジャズ的な意味合いはほとんどありません。メンバー各人が漫然とアドリブっぽい事をしているだけなんです。しかし、それが実に気持ち良いという、なんか悪い女に引っ掛かったような快楽があります。
 特にラリー・マギーのギターソロのバックでバタバタするドラムス、執拗なロニー・スミスの伴奏が、もう最高です! クセになりますねぇ~、これはっ♪ もちろんロニー・スミスのアドリブパートでも、同様の快感がっ♪ 

B-1 Move Your Hand
 今やレアグルーヴの聖典曲となったイナタイR&B♪ 溜息まじりみたいなロニー・スミスのボーカルは、ちょっとハスキーな高い声ですから、好き嫌いがあるかもしれませんが、クセになる魅力も秘めています。私は好きですねっ♪
 演奏は正体不明のパーカション奏者も加わって熱いグルーヴが噴出し、ラリー・マギーのギターがヘタウマの極北という味わいです。もちろんホーン隊も良い仕事をしていますが、やはりロニー・スミスのボーカルには独特の怠惰な雰囲気があって、聴くほどにヤミツキ状態♪
 ちなみにロニー・スミスが以前に来日した時、私はライブへ行ったんですが、何故かこの曲はやってくれませんでした……。この仕打ちには、私以外のお客さんも不満だったみたいですよ。それほどの人気曲というわけです。
 あぁ、チャカポコのパーカッションと緩いグルーヴが、辛抱たまらん状態なのでした。

B-2 Sunshine Superman
 イギリスのフォークロック歌手で、当時はポップサイケ色のヒット曲を連発していたドノバンの代表曲が、またまた弛緩したソウルファンクに焼きなおされた演奏ですから、グッとシビレが止まりません。
 蒸し暑い日の昼間っからビールでも飲んで、女とイチャイチャしている雰囲気とでも申しましょうか、全然、ビシッとしていないバンドのノリは、それでいて妙に粘っこいのです。メンバーのアドリブソロだってダラダラですから、山なし、オチなし、意味なしという、元祖やおい系でしょう。もちろん現代とは語句の使い方が異なるのは時代の流れというものですが、これがなかなか良い感じ♪

ということで、決して一般的なジャズ者からは好意的な扱いはされない作品でしょう。実際、1970年代には捨て値でも売れ残っていたアルバムでした。それが今では局地的とはいえ、聖典扱いになっているのですから、時の流れとは恐いものです。もちろん私も中古の捨て値で買ったひとりなんですが……。

ちなみに1969年度のダウンビート誌ではナンバーワンのオルガン奏者にランクされたそうで、見開き中ジャケの写真では、それが堂々と告知された店の看板の前で、自信たっぷりに写っているスタアその人に苦笑いさせられますよ♪

アルバムの作りとしては、前述したように正体不明の打楽器奏者が居たりして、このあたりはオーバーダビングの疑惑も濃厚ですし、演奏トラックにも編集が入っているようです。

このあたりは製作現場の事情でしょうが、実際のライブの迫力や熱気、怠惰なグルーヴは存分に楽しめると思います。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ひよこのピアノトリオ

2008-05-06 15:59:04 | Weblog

昨夜の大荒れの天候から、本日はカラッとした五月晴れ♪

朝から気分が高揚しましたので――

Shelly Manne and His Friends (Contemporary)

ひよこのお菓子を思い出してしまうホノボノ系のジャケットではありますが、タイトルどおりにシェリー・マンをリーダーとした、それも素晴らしいピアノトリオの傑作盤です。

録音は1956年2月11日、メンバーはアンドレ・プレビン(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、シェリー・マン(ds) という、あの大ヒット盤「マイ・フェア・レディ」と同じですから、内容の良さは言わずもが♪ しかも前述「マイ・フェア・レディ」よりも前のセッションなんですが、完成度は既にして特級です――

A-1 Tangerine
 原曲の軽快な味わいを存分に活かしたアップテンポの快演で、アンドレ・プレビンのビアノが豪快なテクニックと素晴らしい歌心を披露しています。もちろんトリオとしての纏まりも最高で、スピード感満点のブラシに撤するシェリー・マン、ビンビンに4ビートウォーキングを響かせるリロイ・ヴィネガーの存在があってこその醍醐味でしょうね♪
 クライマックスのピアノ対ドラムスのソロチェンジも痛快ですが、それにしてもアンドレ・プレビンのピアノはバカテク!

A-2 I Cover The Waterfront
 ビリー・ホリディが大ヒットさせた名曲を、このトリオは幻想的な味わいで聞かせてくれます。これはアンドレ・プレビンの両手フル使いのピアノがあればこそとはいえ、きちんとアレンジしてある部分も気持ちが良いほどです。特にシェリー・マンの小技が素敵♪
 対してどっしりと構えたリロイ・ヴィネガーの存在感も強く、このあたりはロイ・ドュナンの録音の冴えわたり! 所有盤はモノラルミックスなんですが、ステレオバージョンも聴いてみたいものです。

A-3 Squatty Roo
 エリントン楽団の至宝だったジョニー・ホッジス(as) が書いた有名ジャズ曲なんですが、これはファンキーな味わいも強い、凄いモダンジャズへと変換されています。
 まず低音域主体のアンドレ・プレビンがアグレッシブでアナーキー! 強烈なピアノタッチはオスカー・ピーターソンやフィニアス・ニューボーンも顔色無しの歯切れ良さですし、様式美じゃなくて、ガチンコでジャズをやるという意気込みにシビレてしまいます。リアルタイムでは、かなりの前衛だったんじゃないでしょうか?
 しかし、それでいて楽しさも充分にあるんですから、ブッたまげますね。明らかにデューク・エリントンに敬意を表したピアノプレイかもしれません。とにかく痛快!

B-1 Collard Greens And Black Eyed Peas
 黒人スラングの曲名ながら、これは「Blues In The Closet」として知られているビバップの聖典ですから、ここでのアンドレ・プレビンは些か神妙です。
 ところがリロイ・ヴィネガーが如何にも黒人というノリでベースを響かせるもんですから、たまりません。少しずつファンキーな泥沼を作り出していくトリオの一体感が実に素敵ですねぇ~~。
 アンドレ・プレビンのピアノは決して真っ黒ではありませんが、ここでのエグイ表現はエディ・コスタとか我国の大西順子、あるいはドン・プューレンあたりの打楽器ピアノスタイルに繋がるものかもしれません。後年の物分りの良いアンドレ・プレビンも素晴らしいと思いますが、この頃のガチンコ体質は本気度が高くて、私は大好きです。

B-2 Stars Fall On Alabama / アラバマに星落ちて
 キャノンボール・アダレイ(as) の名演もあるスタンダート曲で、胸キュン系のメロディが大いに魅力の原曲を、なんとアンドレ・プレビンは妙なツッパリで変奏しています。これは意地悪というか……。
 もちろんロマンチックな幻想を狙ったんでしょうから、アドリブではそれなりに美メロのフレーズも出ていますし、綺麗なピアノタッチも侮れませんが……。些か生硬なスイング感が裏目に出たような気がします。
 ただしこれだけのピアノトリオ演奏が他にあるか? と問われれば答えは、否です。

B-3 The Girl Friend
 オーラスはこのトリオならではの持ち味を活かしきった軽快な演奏です。シェリー・マンのブラシはサクサクと気持ち良く、アンドレ・プレビンのピアノは縦横無尽! それをガッチリと支えて弾みまくるリロイ・ビネガーも実力発揮ですねっ♪
 時期的には既にハンプトン・ホーズあたりがドラム入りのピアノトリオでハードバップを演じていたわけですから、ここでのアンドレ・プレビンにはその影響がモロに感じられる部分も濃厚ですが、ちゃんと自分なりの「節」と「ノリ」を確立しているようです。もちろんアート・テイタム~オスカー・ピーターソンという超絶技巧派の流れは言わずもがなですね♪
 全く、こんなに弾いてどこへ行く!? という絶句の演奏なのでした。

ということで、個人的には「マイ・フェア・レディ」よりも、かなり好きなアルバムです。シェリー・マンのドラミングもジャズ度が高く、それは即興的な味わいが強いと感じるからなんですが、反面、アレンジされた部分もイヤミがありません。

このあたりは似たようなことをやっているオスカー・ピーターソンのドラム入りトリオの完成度には及びませんが、オスカー・ピーターソンが正式メンバーとしてドラマーを入れたのは、このセッションよりも後の事ですから……。

そういう経緯も含めて、ここでの過激な挑戦やリラックスした正統派の行き方は、「マイ・フェア・レディ」で見事に結実し、大ヒットに繋がるのですが、これはその前哨戦というには、あまりに完成度が高いと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クラーク、バレル&ジェンキンス

2008-05-05 18:17:15 | Weblog

久々に大型バイクを引っ張り出したら、途中からどしゃぶりの雨の中! ライトが切れたり、ロクなことがありません。ローファイな気分で勤務地に辿り着きました。

ということで、本日は――

John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note)

黒人アルトサックス奏者のジョン・ジェンキンスは、ジャッキー・マクリーンのそっくりさんというのが第一印象かと思います。実際、この2人はバトルチームとしてレコーディングを残していますから、ちょうどフィル・ウッズに対するジーン・クイルみたいな位置付けかもしれません。

しかしジャッキー・マクリーンが青春の情熱だとしたら、ジョン・ジェンキンスはもう少し繊細な、例えば思春期の内気な片思いみたいな部分もあるように、私は感じています。

さて、このアルバムは多分、ジョン・ジェンキンスの単独初リーダー盤でしょう。これ以前のレコーディングとしては前述したジャッキー・マクリーンとのバトル盤「アルトマッドネス(Prestige)」やオールスタアセッションの「ジェンキンス、ジョーダン&ティモンズ(New Jazz)」等があり、またブルーノートではハンク・モブレーの名盤「ハンク」に参加して、真っ向勝負の姿勢を聞かせていますから、同じ年のセッションであるここでの熱演も保証付き♪

録音は1957年8月11日、メンバーはジョン・ジェンキンス(as) 以下、ケニー・バレル(g)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という、ちょいと珍しい組み合わせです――

A-1 From This Moment On
 ボーカルではクリス・コナーの名唱が有名かもしれませんが、インストならば、このジョン・ジェンキンスのバージョンが最高に好きです。
 まずエキセントリックなアレンジのイントロから熱いテーマ合奏! ここではジョン・ジェンキンスもさることながら、ケニー・バレルが旨味のあるサポートを聞かせてくれます。
 そしてアドリブパートではジョン・ジェンキンスが本領発揮の熱血節です。前述したようにジャッキー・マクリーンに似ているのは否定出来ませんが、その基本となっているチャーリー・パーカーのスタイルを自分流に解釈した独特の歌心は最高♪ それがちっとも無理していない感じなんですねぇ~。
 続くソニー・クラーク、ケニー・バレルも自分の持ち味を大切にした好演です。ちなみにソニー・クラークとジョン・ジェンキンスの相性も抜群ですねぇ~♪ 嬉しいくらいに胸キュンの雰囲気♪

A-2 Motif
 ポール・チェンバースのイントロからしてエグイ、これぞハードバップのブルースです。ジョン・ジェンキンスとケニー・バレルのユニゾンによるテーマリフも良い感じ♪
 そしてアドリブパートでは、泣きのアルトサックスが存分に楽しめますが、これをマクリーンの真似っこと言ってはなりません。基本はチャーリー・パーカーから脱出したモダンジャズのプレイヤーなんて、誰もいないのですから! 熱い歌心に偽り無しです。
 もちろんケニー・バレルの正統派ハードバップのギターは心地良く、ソニー・クラークのファンキー節も冴えわたりですし、ポール・チェンバースのブンブン4ビートも、本当にたまりません。

A-3 Everything I Have Is Yours
 勉強不足で私は全然知らない曲なんですが、とにかく哀切のスローバラードで、ジョン・ジェンキンスの吹奏からは内向的な、というよりもネクラな情熱が滲み出ています。
 ケニー・バレルとソニー・クラークも協調性のある好演ながら、ポール・チェンバースのシンプルな力強さが印象的なのでした。

B-1 Sharon
 軽い味わいのハードバップ曲で、如何にもというジョン・ジェンキンスのオリジナルです。それはアドリブ先発のケニー・バレルの快適なアドリブに良く活かされていて、こういう都会的に洗練されたグルーヴは明らかにビバップとは一線を隔していますねぇ。
 またポール・チェンバースが要となったリズム隊のグイノリは、そのまんまマイルス・デイビスのオリジナルクインテットと同じ雰囲気なのも嬉しく、ダニー・リッチモンドも基本に忠実な好演♪
 肝心のジョン・ジェンキンスは気持ち良い泣き節の連発ながら、そこに留まった感があるのは残念……。しかし続くソニー・クラークが味わい深く、この独特のノリは唯一無二と痛感させられるのでした。

B-2 Chalumeau
 これもジョン・ジェンキンスのオリジナルで、ちょっと洒落た感じのテーマ演奏が良い感じ♪ 初っ端からソニー・クラークが好調で、私なんか伴奏を聴いているだけで満足させられてしまいます。
 ジョン・ジェンキンスはパーカーフレーズを駆使してノビノビとアドリブを展開し、これは決して開き直りではないと思いますねぇ。
 ただしこの演奏では、どうしてもソニー・クラークが輝いてしまったというか、本当に良すぎますねっ♪ 全く隠れ名演かもしれません。

B-3 Blues For Two
 オーラスはケニー・バレルのオリジナルブル~スですから、タイトルどおりにバレル&ジェンキンスが素晴らしいコンビネーションを聞かせてくれます。
 そしてアドリブ先発のソニー・クラークが、もはや異常とも言える絶好調! ファンキーなタッチとマイナー気味のフレーズが、これでもかと噴出しています。
 さらにケニー・バレルがノリノリで止まりませんから、続くジョン・ジェンキスが最初から戸惑い気味で、本当に憎めません。相等に無理している感じが実に良いんですねぇ~。
 ポール・チェンバースのアルコ弾きやダニー・リッチモンドのドラムソロも含めて、演奏時間の短さが勿体無いです!

ということで、ガイド本に掲載されるような名盤ではありませんし、ジャズ喫茶でも聴いた記憶が無いほどに、ブルーノートでは目立たない作品だと思いますが、実際に聴いてみると、これが不思議と虜になってしまうアルバムです。

ソニー・クラークのファンならば、きっと愛聴しているでしょう。

また珍しくもブルーノートに参加したダニー・リッチモンドは、チャールズ・ミンガスのバンドでは番頭格という、エキセントリック派のドラマーですから、ここでも気になる存在なんですが、結果は潔すぎる正統派の実力を披露しています。ジョン・ジェンキンスとは仲が良かったんでしょうか、前述した「ジェンキンス、ジョーダン&ティモンズ(New Jazz)」でも叩いていましたですね。

しかし、これだけの傑作盤を残したジョン・ジェンキンスは、翌年からフェードアウトしています。理由は知る由もありませんが、ジャズの本場のニューヨークには馴染めなかったのでしょうか……? 短い期間に多くのセッションを集中的に残して消えていったジャズメンには、いろんな人がおりますが、ジョン・ジェンキンスこそ中でも印象的なひとりだと思います。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

元祖LIFETIME

2008-05-04 16:52:18 | Jazz

昨夜は旧友に誘われて、久々に夜の街で遊びまくってしまったです(自嘲)。オマケにいろんなブツにも手を出してしまったしなぁ……。完全に散財モードです。

さて、そんなわけで最近、盟友ブログサイトの管理人諸氏から語られることも多い、ジャズ鑑賞と体調の問題について、自分も痛感する事が多くなりました。心身の疲労というかストレス溜まっていると、レコード棚から取り出すアルバムは、どうしても癒し系が多くなってしまいます。

これでも若い頃は朝の景気づけにド派手な一発を聴いていたもんですが……。あるいは夜だって、やる事をやる前には勢いがつくものを♪

ということで、本日はこれで体調チェックです――

Talkin' About! / Grant Green (Blue Note)

グラント・グリーンはブルーノートの看板スタアという黒人ギタリストですから、リーダー盤も大量に作られていますが、その大部分はソウル&ファンキー、コテコテに近い楽しさ優先主義の人気盤がどっさり♪ もちろん正統派ジャズミュージシャンとしての実力は超一流です。

それはサイドメンとして参加したセッションの多様性でも明らかなんですが、モードやフリーに近い演奏でも、全く自分色にその場を染上げてしまうアクの強さは圧巻の存在だったと思います。

とは言え、それゆえに疲れが増幅させられる演奏もあったりして、本日の1枚は、その代表かもしれません。

録音は1964年9月11日、メンバーはグラント・グリーン(g)、ラリー・ヤング(org)、エルビン・ジョーンズ(ds) という恐すぎる面々! 一応、正統派オルガントリオの体裁とはいえ、このメンツで平穏無事な演奏になるなんて、誰も思わないでしょう。しかしそれにしても――

A-1 Talkin' About J. C.
 タイトルと演奏からして、ジョン・コルトレーンに捧げたモードの嵐はお約束! いきなりアップテンポで熱い語り口のラリー・ヤングがテーマ提示、続いてグラント・グリーンが十八番のアドリブフレーズを叩きつけます。もちろんエルビン・ジョーンズは暴虐のポリリズムで烈しい煽りなんですねぇ~♪ ラリー・ヤングのオルガン伴奏が控えめに聞こえるほどです。
 あぁ、グラント・グリーンが執拗に同じフレーズ繰り返す、所謂針飛びフレーズが冴えわたりです! そしてラリー・ヤングがモリモリとアドリブソロに入れば、背後からエグイばかりのコード弾きとカウンターのリフをぶっつけてくるんですから、これにはエルビン・ジョーンズも怒りのドラミングで強烈な対抗意識を露わにするという、本当に地獄の展開!
 これが12分近く続くんですから、体調が悪かったら聴いていられませんね、今の私には。う~ん、幸いにも、なんとか今日はイケてます♪

A-2 People
 一転してゆるやかで優しいメロディが流れてくるという、至福の一瞬がヤミツキになります。ラリー・ヤングの伴奏オルガンが最高に良い感じ♪
 テーマメロディを全く自分流に味付けしながら、じっくりと弾いていくグラント・グリーンは、アドリブパートではシカゴソウルぽいアドリブフレーズも交えて、素敵な歌心を披露してくれます。
 エルビン・ジョーンズのサポートもブラシに撤していますが、力強さと軽快な雰囲気が両立されていますから、これもたまらんですね♪
 全体にフュージョンに近い、ソフト&メロウのフィーリングが感じられるのでした。私は好きです、これが♪

B-1 Luny Tune
 ラリー・ヤングが書いた幾何学的なビバップのような、楽しくない曲なんですが、アドリブパートに入るやいなや、グラント・グリーンが十八番の世界でグルーヴィな演奏になるあたりが、ハイライトでしょうか。
 エルビン・ジョーンズのドラミングも控えめながら白熱したステック捌きは何時もどおりですし、ラリー・ヤングのオルガンベースの4ビートも侮れません。
 ただしA面のテンションが高すぎた所為か、イマイチ……。

B-2 You Don't Know What Love Is
 お馴染みの有名スタンダード曲が、極めて真っ当に演奏されますから、これも物足りないというのが正直な気持ちです。超スローテンポのテーマ部分なんか、聴いているこっちが焦れてくるほどです。
 それでも途中から入ってくるエルビン・ジョーンズのブラシが、それなりに強いビートを出してくれますから、テンポが上がったアドリブパートでホッとするのですが……。
 ただしグラント・グリーンが本来の持ち味である夜の雰囲気は如何ともし難く、それゆえに疲れて帰宅した時なんかには絶対的なものになるでしょうね。意外にラウンジ系というラリー・ヤングも憎めません♪

B-3 I'm An Old Cowhand
 ソニー・ロリンズの名演が残されている楽しい曲ですから、ここは百も承知の快適グルーヴ♪ ラテンビートを交えたエルビン・ジョーンズが、まずゴキゲンですねぇ~~。ラリー・ヤングの伴奏も大衆的というか、刺激に満ちていながら、イヤミではありません。
 肝心のグラント・グリーンは好調をキープしながら、新しめのフレーズも弾いていて、好感が持てます。盛り上げ方が新主流っぽいのにも、ニヤリとさせられます。ギターが新鮮に歪んでいるのです♪
 またラリー・ヤングが過激というかジコチュウ! 好き放題にアドリブしますから、エルビン・ジョーンズが焦っている場面さえ、私には感じられます。グラント・グリーンはここで、もちろん伴奏をやっていませんねっ! ドラムス対オルガンの一騎打ちが、さもありなんです。

ということで、濃密なA面に対して些か気抜けのビールっぽいB面かもしれません。しかし、それにしても、こんなアブナイ演奏をよくもまあ、アルフレッド・ライオンが発売許可したもんだと思います。A面なんて明らかに時代の最先端でしょう。

後年、トニー・ウィリアムスがやってしまう「ライフタイム」の元ネタ!?

「Talkin' About J. C.」でグッタリ疲れ、「People」でメロウに癒されるという、まさにゴールデンアワーという感じです。しかもメンバーが、それを嬉々としてやっている雰囲気が伝わってくるんですねぇ~♪

しかし体調が悪いと、これが逆転し、何が哀しくてこんな演奏を聴かなきゃならないの……? なんて思うのですから、私の我侭は、こんなところにも表れているいうわけです。

ちなみにステレオバージョンは左にギター、真ん中にオルガン、右にドラムスというミックスで、これがなかなか立体的に楽しめますし、モノラルバージョンは団子状の音圧が物凄いですよ。これは十人十色に好き嫌いが分かれるでしょうが、私は両方好きです。つまり、これも気分次第という我侭なのでした♪

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自分はやっぱりOLDWAVE

2008-05-03 15:10:18 | Jazz

今日はノンビリという珍しい時間もありましたので、たまには新しいところも――

Prime Time / Eric Alexander Quartet In Concert (High Note)

2ヶ月ほど前に仕入れたブツを今頃やっと聴いているバチあたりな私ではありますが、これは近年人気の白人テナーサックス奏者というエリック・エレキサンダーのライブ盤です。

しかもCDとDVDの2枚セットで値段が1枚分というサービス品♪

セッションデータは2007年4月22日、メンバーはエリック・アレキサンダー、David Hazeltine(p)、John Webber(b)、Joe Farnsworth(ds) というオール白人のカルテットです――

☆CD Track Listing
 01 Blues Like
 02 One For Steve
 03 Little Lucas
 04 Peals
 05 Some Other Time
 06 We All Love Eddie Harris
 07 Nwmesis

☆DVD Track Listing
 01 Peals
 02 One For Steve
 03 Nwmesis
 04 Little Lucas
 05 Blues Like
 06 We All Love Eddie Harris
 07 Yasashiku (Gently)
 08 First Impression
 09 Prime Time

――上記の収録演目からしてCDとDVDは似て非なるものと判断していましたが、実際に鑑賞してみるとDVDよりもCDに収録された演奏が全体的に短めになっています。

これは明らかな別テイクもありますが、編集バージョンもあるような……。このあたりは確実なことが今は判断出来ていません。というか聴き較べる根性が、もはや今の私にはないんですねぇ……。

じゃ、なんでこのブツを入手したかといえば、動く David Hazeltine が見たかったからなのでした。この人は全くの正統派で、しかもビバップ中心主義のフレーズとノリが、私の好みなのです。ちょうどバリー・ハリスのようでもあり、モードを演じても決してスケールで逃げることを潔しとしない雰囲気が現代では貴重な存在かもしれません。ただし歌心にムラがあるんですねぇ。

肝心の演奏は正直、いやはやなんとも……、です。

エリック・アレキサンダーのテナーサックスはスピード感があって、鳴りも相等に強いと思いますが、明らかに歌心廃絶派というか、ジョン・コルトレーンやジョー・ファレルのフレーズを今様に解釈たような……。けっこう音色はハードでノリはジョージ・コールマンのようなところもあるんですから、ここはデクスター・ゴードンのような男気を聞かせて欲しいのですが、現実は……。

それは演目のテーマメロディのつまらなさも一因かもしれません。所謂人気スタンダード曲をやっていないのも、ここではマイナスでしょう。

と悪い事ばっかり書きましたが、闇雲に突進する「Nwmesis」なんか往年のジャズ喫茶では人気となる可能性が高い、スピード感満点のモード演奏♪ エリック・アレキサンダーのテナーサックスは新しいフレーズの連発で、オールドウェイヴな私でさえ、けっこう熱くさせられます。

また David Hazeltine とのデュオで演じられる「Some Other Time」も、なかなか緊張感がある静謐な名演だと思います。

そして「We All Love Eddie Harris」はタイトルどおり、なんでもありのスタイルで隠れ人気があったサックス奏者のエディ・ハリスに敬意を表したボサロック♪ というか現代版のジャズロックでしょうね♪ エリック・アレキサンダーもガッツのあるところを聞かせてくれます。ところが演奏がイマイチ、熱くなっていないんですねぇ……。

というのはDVDでライブ映像を見るとあきらかなんですが、メンバーが如何にも「お仕事」という雰囲気だと、私には見えてしまうのです。特にベース奏者なんかピアノの上に置いた譜面を見てばかり……。どうせ見るなら David Hazeltine が弾くコードの手元でも、と素人ながら思ってしまいます。

まあ、それはそれとして、気になる David Hazeltine は堅実な助演という雰囲気に撤しているのが、如何にも「らしい」です。決して我を忘れないというか、与えられたギャラ以上のことはしないというか……。本来、もっと冷静さを捨てて爆発出来る人だと思うのですが……。

あと、ドラマーの Joe Farnsworth はアート・テイラーやルイス・ヘイズの影響下にある名手でしょうが、映像を見る限りでは、この人も軽く叩くのが身上というか、アート・ブレイキーやエルビン・ジョーンズのように汗ダラダラという事はしませんですね。これが現代のジャズプレイヤーなんでしょうか?

ということで、全体的にはジャズの様式美を追求することに専心した演奏かもしれません。DVDの映像はシンプルで凝ったカメラワークはありませんから、見ていて退屈してしまったのが本音です。音だけ聴けば良いという……。

とはいえ、こういう特売サービスっぽいアルバムは、今後も増えてくるんじゃないでしょうか。それはそれで大歓迎♪

今日は悪口ばっかり書いてしまったわけですが、結局はそれなりに楽しんでしまった私が居るということで、ご理解願います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こんなライブに行きたいね

2008-05-02 16:39:43 | Weblog

ここは雪国だというにの、この暑さはなんでだろう?

そう思わざるをえない1日でした。明日からは一応の休日ではありますが、今からこんなに暑いんじゃ、夏が思いやられるですね。

ということで、本日は――

That's The Way It Is / Milt Jackson Quintet featuring Ray Brown (Impulse!)

ミルト・ジャクソンとレイ・ブラウンは、ともに人気バンドのMJQとオスカー・ピーターソン・トリオのレギュラーとして非常に有名ですが、この2人が不定期ながらも実際のライブバンドを組んでいたのは嬉しいことでした。確か来日もしていたはずですね。

さて、このアルパムは、その端緒となった1枚で、録音は1969年8月1~2日、ロスのシェリーズ・マン・ホールでのライブセッションで、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、レイ・ブラウン(b) に加えて、テディ・エドワーズ(ts)、モンティ・アレキサンダー(p)、ディック・バーク(ds) という、しぶとい名手達――

A-1 Frankie And Johnny
 レイ・ブラウンのベースがテーマメロディをリード、ピアノとドラムスが地味なサポートをしていますが、テディ・エドワーズのテナーサックスが絶妙に入ってくると、バンドのグルーヴがグッと盛り上がり、この瞬間が、まず最高です!
 あぁ、このグイノリ♪ これがジャズです♪
 そしてテディ・エドワーズのアドリブが終わってからようやく登場するのが、リーダーのミルト・ジャクソンなんですから、この深遠な企みは流石としか言えません。もちろんアドリブはブルース&ソウルがたっぷりな濃厚味です。
 続くモンティ・アレキサンダーもオスカー・ピーターソン風の大きなノリが楽しく、聴いていて自然に体が揺れてくるのでした。

A-2 Here's That Rainy Day
 ミトル・ジャクソンをメインとした絶品のバラード演奏♪ ゆったりとした雰囲気は和みに直結するものですが、けっして媚びたり、ダレたりしない、ほどよい緊張感が素晴らしいと思います。
 レイ・ブラウンのベースワークは繊細にして豪胆! ミトル・ジャクソンの歌心を完全に引き出して彩り、バンドを確実にリードしているようです。しかも、全く力みが感じられないのですからっ♪

A-3 Wheelin' And Dealin'
 テディ・エドワーズが書いたブルースがアップテンポで演じられ、メインバー各人の景気の良いアドリブが連発されます。
 特にモンティ・アレキサンダーは最高にノリノリ♪ 独白すれば、私はこのアルバムを聴いてこの人に夢中になり、いろんなレコードを漁った過去があります。実際、楽しい伴奏にスピードのついたアドリブには、参っちゃいますよ♪ 誰かの掛声も良い感じ♪ オスカー・ピーターソンというよりもジーン・ハリス直系のスタイルなんですね、これは♪
 テンションの高いドラムスも素敵です。

B-1 Blues In The Bassment
 おぉぉぉ~、これは山本剛(p) の世界ですねぇ~♪
 告白すると、これより先に山本剛のバージョンを聞いていた私ですから、この演奏にもイントロからシビレたのですが、そのレイ・ブラウンのベースが実に味わい深いです。
 テーマを地味にリードしてアドリブパートにバンドを導き、そこに到ってディック・バーグのシンバルが躍動し、テディ・エドワーズの熱いテナーサックスが入ってくる瞬間が至福です♪ 観客からも暖かい拍手があって当然という快感なのでした。
 もちろんモンティ・アレキサンダーは山本剛の元ネタっぽい大名演! 粘っこくてグルーヴィなアドリブは最高としか言えません。それとドラマーのディック・バーグは無名ながら、実に痛快なドラミングを披露する現場主義の名手でしょうね。観客の手拍子も楽しさの証明だと思います。
 肝心のミルト・ジャクソンは、もちろんブルースの鬼ですが、ここはリズム隊を聴くのが私の楽しみというわけです。

B-2 Tenderly
 レイ・ブラウンが大きな見せ場のバラード演奏で、繊細なベースワークと卓越したテクニック、素晴らしいリズム感には圧倒されます。けっこう細かい音使いと忙しないフレーズの連なりでソロを演じていますが、決してイヤミではないと思います。
 途中から入ってくるミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンは余裕の歌心♪ 伴奏のモンティ・アレキサンダーも抜群のセンスだと思います。

B-3 That's The Way It Is
 アルバムタイトル曲はモンティ・アレキサンダーが書いた黒いブルース♪ グルーヴィな雰囲気が横溢したバンドの纏まりは最高で、まずはミルト・ジャクソンがお手本を示す名演です。
 あぁ、このタメの効いたモダンジャズなブルースの世界こそ、このバンドの持ち味でしょうねぇ~、聴くほどにシビレがとまりません。テディ・エドワーズの思わせぶりも年期が入った節回し♪ ソフトな情感が粋を感じさせてくれます。
 そしてモンティ・アレキサンダーが本音を吐露したところで、ミルト・ジャクソンがオーラスの大団円に相応しいメンバー紹介のアナウンス♪ ここは客席とステージが一体となった実に良い雰囲気に包まれてしまいますから、たまりませんねっ。これがジャズを聴く楽しみのひとつだと思います。

ということで、決して派手な演奏集ではないのですが、このジンワリとしたブルース&ソウル、モダンジャズの王道を行くハードバップでは人気盤じゃないでしょうか。リラックスした雰囲気が、とにかく最高です。ちなみにミルト・ジャクソンがこのバンドを組んだのは、MJQから夏休みを貰えたからだと、インタビューで語っていましたけれど、レイ・ブラウンも創成期MJQのバンドメンバーでしたから、阿吽の呼吸ってやつでしょうね♪

ただし録音が如何にも西海岸というか、特にミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンは何時もより軽めの音になっていますし、テディ・エドワーズのテナーサックスも音圧が足りない感じで、賛否両論でしょう。

しかし演奏には地味な良さがいっぱい♪ 気軽な風情のモダンジャズこそが、本物の証かもしれません。全くジャケ写どおりの雰囲気です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒地に赤く

2008-05-01 18:22:57 | Weblog

世の中、自分の不運を嘆いて無理難題を言う人が、必ずいます。

その気持ちは充分に分かりますが、それを規制するのが法律という仕組みであり、世の中の秩序はこれで保たれているのですが……。

どうしても納得出来ないものがあるのは、仕方がないか……。

ということで、本日は――

Junior / Junior Mance And His Swinging Piano (Verve)

愛聴盤、なんて言葉を容易く使ってしまう私ではありますが、さて、愛聴盤というのは何時聴いても心底、シビレて感動するのが本当でしょうね。

そこであたらめて自分の好きなアルバムを思い返してみると、ピアノトリオでは、どうしてもこの1枚が必ず入ってしまいます。

主役のジュニア・マンスはハードバップの代表選手にしてゴスペルファンキーな演奏が得意ですから、1950年代末期から1960年代にかけて人気盤を多数発表しています。ただし時として、それが行き過ぎた部分も確かにあって、我国ではイマイチ、ブレイク出来ないのは、そのあたりが要因でしょうか。

しかしこのアルバムは名盤としての品格、充実した演奏と選曲の妙、さらに如何にもというジャケットの雰囲気が見事に合致しています。

録音は1959年4月9日、メンバーはジュニア・マンス(p)、レイ・ブラウン(b)、レックス・ハンフリーズ(ds) という素晴らしいトリオです――

A-1 A Smooth One
 ベニー・グッドマン(cl) の当り曲で、テーマの印象的なリフがカーティス・フラー&ベニー・ゴルソンの某有名曲に引用されたほど♪ ですからジュニア・マンスの演奏も小粋なスイング感とファンキーなフィーリングの両立が見事に成功しています。
 もちろんレイ・ブラウンのツボを押えたベースは最高ですが、レックス・ハンフリーズのドラミングも地味な良さが堪能出来ますねぇ。ちなみにステレオ仕様のアルバムは左にドラムス、真ん中にピアノ、右にベースが定位したミックスがすっきりとした録音で、特にベースの細かい音使いは、ハッとするほど良い感じです。

A-2 Miss Jackie's Delight
 ジュニア・マンスが以前に在籍していたキャノンボール・アダレイ(as) のバンドでは定番の演目になっていたハードバップ曲ですから、このバージョンも抜かりはありません。
 ブルースをイヤミ無く追求していくジュニア・マンスのサポートで素晴らしいベースワークを披露するレイ・ブラウン! 素晴らし過ぎます! プロのベース奏者にはお手本になっているらしいですね。

A-3 Whisper Not
 ご存知、ベニー・ゴルソン(ts) が書いた哀愁の名曲を、このトリオはじっくりと演奏していきます。所謂イブシ銀の味わいなんですが、それでいてファンキー度数は非常に高く、ひとつひとつのフレーズに魂が宿った躍動感にグッとシビレます。
 こうしたミディアムテンポでのスイング感は、オスカー・ピーターソンに通じる雰囲気もあり、それはレイ・ブラウンの参加ゆえのことでもありますが、実はオスカー・ピーターソンの通称「黄金のトリオ」よりも、このセッションが早いわけで、つまりドラムス入りのビアノトリオとしてはリアルタイムで最前線の輝きがあったのでしょうねぇ♪

A-4 Love For Sale
 これまた幾多の名バージョンが残されているスタンダード曲という嬉しい演目♪ ここではアップテンポでコロコロと転がり続けるジュニア・マンスのピアノが出色で、ちょっとレイ・ブライアントに似ているあたりも、好感が持てます。
 またレックス・ハンフリーズのブラシも最高に気持ち良く、クライマックスでキメを仕掛けてくるジュニア・マンスに感応するノリの良さは、本当にたまりませんねっ♪

A-5 Lilack's In The Rain
 そしてこれが、このアルバムで私が一番気に入っている演奏です。地味なスタンダード曲なんですが、この味わい深いスローな表現はジュニア・マンスの一般的なイメージを覆すものでしょう。
 脂っこい演奏が続いていた前曲までの流れがあって、LP片面ラストのこの曲が始ると、心底、ホッと和みます。
 あぁ、このジンワリした歌心♪ 予想外に綺麗なピアノタッチも特筆ものでしょうか、とにかくこれは隠れ名演としか言えません。正直、この曲と演奏があるので、私は愛聴しているのでした。

B-1 Small Fry
 B面に入っては、これまたたまらないソフトなゴスペルファンキー曲♪ ジンワリと染入って泣きに変化するテーマメロディの素晴らしさ、そしてアドリブ展開の完璧さ、小粋なピアノタッチとトリオとしての一体感♪ あぁ、こんな素晴らしいピアノトリオがあるでしょうか。
 基本に忠実なレイ・ブラウンと余計な手出しをしないドラムスの存在は、逆に強まるばかりですし、全体にゆったりしたテンポが最高のグルーヴを醸し出しているのでした。
 もう死ぬまで聴き続けても飽きないと、私は覚悟を決めています!

B-2 Jubilation
 ジュニア・マンスのオリジナルとしては一番有名な曲でしょう。もちろんゴスペルハードバップなスタイルはモロ出しなんですが、このピアノトリオバージョンはテキパキとしたピアノタッチとグイノリのレイ・ブラウンが見事なコラボレーション!
 失礼ながら、これにはレイ・ブライアントもオスカー・ピーターソンも顔色が無いでしょうね。意外とさっぱりとした味わいもニクイところです。

B-3 Birk's Works
 当時はジュニア・マンスの親分だったディジー・ガレスピー(tp) のバンドレパートリーという真っ黒なブルースです。もちろんここでの演奏も、ギトギトに煮詰められたブルースとソウルが噴出しています。
 冷静なレイ・ブラウンの伴奏があって、なおさらに脂ぎっていくジュニア・マンスのピアノは必要以上に熱くならず、前半はじっくり構えてジコチュウモード♪
 しかし中盤になってレックス・ハンフリーズがブラシからステックに持ち替える俄然、熱気が充満していきます。僅かに聞こえる唸り声も良いムードを盛り上げますねぇ♪
 クライマックスのブロックコード弾きは豪快にしてツボを押えた必殺技です。そうして次の瞬間、地味な世界に戻っていくあたりは、憎たらしいほどです。

B-4 Blues For Beverlee
 ジュニア・マンスが十八番としているスローブルースの世界が存分に楽しめる名演です。と言っても、ブルースが嫌いな人には地獄かもしれないほどのドロ臭い仕上がりなんですが……。
 とにかく粘ってファンキーに進んでいくジュニア・マンスの本領発揮! そのアドリブの背後でエグイ事を平気でやるレイ・ブラウンのベースワークも凄いと思います。このあたりはオスカー・ピーターソンのトリオとは一味違った雰囲気で、思わず和んでしまうのでした。
 う~ん、このベースのアドリブは圧巻!

B-5 Junior's Tune
 オーラスはタイトル通り、ジュニア・マンスのオリジナル曲で、当然ながらゴスペルの味わい♪ まあバンドテーマという趣もあり、短い演奏です。
 しかし小粋で洒落た雰囲気は最高で、とても前曲でドロドロネバネバをやっていたピアニストと同一人物とは思えないほどです。これがジュニア・マンスの恐ろしさでしょうねぇ~♪ 私は大好きです。

ということで、個人的にはスミからスミまで名演揃いのアルバムとして心底、愛聴している1枚です。最低でも月に1回は必ず聴いているといって過言ではありません。いろいろと気が多い私にしては、珍しい事です。

今更、こんな独白は、ちょっと恥ずかしいのですが……。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする