■Charlie Parker Vol.2 (Dial)
何時かは欲しいと思っていたチャーリー・パーカーのダイアル盤10インチ、それをついに入手しました。
まあ、これも最近の世界恐慌のおかげですから、手放したコレクター氏の気持ちを思えば身につまされるとはいえ、申し訳なくも気分が良いのも、また正直なところです。
あぁ、サイケおやじって、嫌な奴だなぁ……。
と自己嫌悪しつつも、盤に針を落として聴くオリジナルの良さは格別です。まあ、本当は純粋オリジナルのSPが一番なんですけどねぇ、このLPには一応、オリジナルテイクなるものが集められています。
ちなみに、ここで「一応」とお断りしたのは、ダイアルレーベルのオーナーだったロス・ラッセルは、チャーリー・パーカーの天才性を認め過ぎたがゆえに、SP時代から同じカタログ番号のブツを再プレスした時に、ワザと別テイクを使用したという趣味人間でしたから……。
まあ、それはそれとして、このアルバムには片面ずつ異なるセッションがプログラムされ、しかも全盛期のチャーリー・パーカーが見事な音質で楽しめるという、世界遺産といって過言ではない演奏ばかりです。
A-1 Relaxing at Camarillo
A-2 Cheers
A-3 Carving the Bird
A-4 Stupendous
まずA面はチャーリー・パーカー・オールスタアズの名義で、メンバーはハワード・マギー(tp)、チャーリー・パーカー(as)、ワーデル・グレイ(ts)、ドド・マーマローサ(p)、バーニー・ケッセル(g)、レッド・カレンダー(b)、ドン・ラモンド(ds) という、当時のLAでは最先端の7人が揃っています。
ちなみに録音は1947年月26日で、チャーリー・パーカーがハリウッドで行った最後のダイアルセッションですが、実はこのバンドはリアルタイムで実際に活動していたらしく、オーナーのロス・ラッセルが一番作りたかったのが、このセッティングだったと言われています。
肝心の演目はリラックスしてノビノビとしたブルースの「Relaxing at Camarillo」が、一番有名でしょう。ドド・マーマローサが作りだしたイントロは、後にトミー・フラナガンが同曲を演じる時には必ず、そのまんま使い回すという歴史的なスタンダードフレーズになっているほどですよね。もちろんチャーリー・パーカーは言わずもがな、他のメンバーも素晴らしい好演を連発しています。
また同じブルースでも「Carving the Bird」は相当に鋭く、エキセントリックな雰囲気が横溢しています。特にバーニー・ケッセルがイントロで弾いてしまう過激なコードは強烈! それに触発されたかのように親分が炸裂させるパーカーフレーズも怖いほどですが、対照的にレスター・ヤングのビバップ的展開というワーデル・グレイが私は大好き♪♪~♪ もちろん他のメンバーの出来も素晴らしく、わずか2分40秒の演奏は物凄い高密度だと思います。あぁ、バーニー・ケッセルのアンプの歪みを活かしたギター!!!
そのあたりは「Cheers」での均整のとれた纏まりや、「Stupendous」の気持ち良すぎるモダンジャズ風味の強さでも証明されていて、如何にも西海岸という明るい雰囲気が、そこはかとなくセッション全体に波及したかのようです。
B-1 Cool Blues
B-2 Dark Shadows
B-3 Hot Blues
B-4 This is Always
B-5 Bird's Nest
B面は、あの忌まわしい「ラバーマン騒動」から療養所生活を経て社会復帰した後のセッションということで、心身ともにリフレッシュしたチャーリー・パーカーの姿が記録された歴史の一幕です。
しかしそれを素直に録りたかったロス・ラッセルの思惑とは逆に、チャーリー・パーカーが申し出たのは、黒人歌手の歌物セッションでした。
そのメンバーはアール・コールマン(vo)、チャーリー・パーカー(as)、エロル・ガーナー(p)、レッド・カレンダー(b)、ハロルド・ウェスト(ds)という、なかなか面白い組み合わせですが、どうやらアール・コールマンとチャーリー・パーカーは友達だったそうですね。それがどんな関係かは、知る由もありませんが……。
そこでロス・ラッセルは条件を出し、リズム隊には当時メキメキと人気を集めていたエロル・ガーナーの起用、そして次回のレコーディングには最先端のモダンジャズを録ることを納得させたうえでのセッションだったと言われています。録音が1947年2月19日ですから、ここで条件提示されたのがA面に収録の演奏だと分かりますね。
そして肝心のレコーディングは、まずアール・コールマンのボーカルで「Dark Shadows」と「This is Always」が録られますが、このアール・コールマンという歌手は、ちょうどビリー・エクスタインの二番煎じっぽい人ながら、独特の哀しい歌い方が個人的には好きです。気分はロンリーな「Dark Shadows」は、もっと聴かれてしかるべきかもしれません。チャーリー・パーカーがキメるイントロや寄り添いのフレーズも、実に味わい深いと思います。
で、とりあえず2曲を仕上げたところで、ロス・ラッセルはバンドだけのレコーディングを強行し、ここに凄い名演が残されます。それが溌剌として熱いブルースの「Cool Blues」、その別テイクを別曲名にした「Hot Blues」、さらにアグレッシブな「Bird's Nest」という3曲です。
いゃ~、何度聴いてもチャーリー・パーカーは凄いです! 興奮します!
またエロル・ガーナーの起用は、今となってはミスマッチと思われるかもしれませんが、これが実にジャストミートなんですねぇ~♪ あの特徴的な後ノリが、チャーリー・パーカーの尖鋭的なスタイルと見事に融合し、残された各曲が最高の化学変化をしてしまったような感さえあります。
ブルースは殊の他にブルースっぽく、ビバップはさらに過激にブッ飛ばしたこの時期のチャーリー・パーカーは、やはり聴かずに死ぬるかだと思います。
ということで、何れの演奏も今ではCDで簡単に楽しめるわけですが、それでも欲しいダイアル原盤!
もう、これ以上書くと、胸が苦しくなりそうですから、今日はここまでと致します。