OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

サスペンスなマリガン

2007-01-31 17:33:10 | Weblog

今日は冷たい雨でした。

これが雪に変わらないところに、今年の異常気象があるわけです。けっこう寒いんですがねぇ~。いったい昨年の豪雪は何だったんでしょう……。

ということで、本日の1枚は――

The Jazz Combo From“I Want To Live”/ Gerry Mulligan (United Artist)

スーザン・ヘイワード主演、ロバート・ワイズ監督による1958年の名作映画「私は死にたくない」の音楽はジョニー・マンデルが担当し、従来のハリウッド調では無い、真っ向勝負のモダンジャズを使ったことにより、高い評価を受けました。

そしてそこからは2種類の音源が作られており、まずひとつがフィルム音源=真正サウンドトラック、もうひとつが、その映画に出演したジェリー・マリガンのバンドを使ったジャズアルバムです。

これは劇中でスーザン・ヘイワードが演じる主人公のバーバラが、ジェリー・マリガンの大ファンという設定であり、ならば本人に出演してもらおうという意図でしたが、さらにジョニー・マンデルが書いたスコアに感服したプロデューサーが、映画出演したジェリー・マリガンに作品関連のジャズアルバムを作ってもらおうという目論みで作られたのが、このアルバムだと言われています。

もちろん当時、絶大だったジェリー・マリガンの人気があればこその話であり、映画の中では、スーザン・ヘイワードが遊びに行くナイトクラブで演奏しているがジェリー・マリガンのバンドでした。また彼女が監房の中で、ラジオから流れるジェリー・マリガンの音楽を聴く場面もありました。

で、このアルバムの録音は1958年5月、メンバーはアート・ファーマー(tp)、フランク・ロソリーノ(tb)、バド・シャンク(as,fl)、ジェリー・マリガン(bs)、ピート・ジョリー(p)、レッド・ミッチェル(b)、シェリー・マン(ds) という、物凄いオールスタアズです――

A-1 Black Nightgown
 レッド・ミッチェルのベースがリードする、なかなかサスペンス調のカッコイイ曲です。フロント4管の厚みある合奏とリズム隊のビートがビシッと決まったその瞬間、アドリブに突入するバド・シャンクは、そのブレイクからして最高にノッています♪
 またバリバリのジェリー・マリガン、突っ込むフランク・ロソリーノ、クールな歌心を優先させるアート・ファーマーのソロも、短いながら充実していますし、バンドアンサンブルが、もう最高です!
 ちなみにこの曲は後々まで、ジェリー・マリガンの愛奏曲になっていますね♪

A-2 Theme From“I Want To Live”
 前曲の変奏バージョンで、テンポをグッと落としてジェリー・マリガンがテーマを重厚に吹きつつ、バンドアンサンブルにまで気を使った名演になっています。そこで聴かれるバド・シャンクのフルートが抜群の彩りなっているのは、流石にジョニー・マンデルの冴えた作編曲でしょうか。
 ここでの主役たるジェリー・マリガンも、アドリブパートでは変幻自在なフレーズで凄い出来栄えだと思いますし、バド・シャンクもフルートで好演♪ なかなかハードボイルドで幻想的な演奏です。
 またレッド・ミッチェルの野太いベースとビートの芯がしっかりと感じられるシェリー・マンのシンバルも、本当に良いですねぇ~♪

A-3 Night Watch
 一転して、西海岸ハードバッブの極みという名演が続きます。
 まずテーマメロディが最高にカッコ良く、ビシッとキマッたリズム隊に煽られてジェリー・マリガンが力強くブローすれば、アート・ファーマーは当にハードバップ魂の炸裂を聞かせてくれます。
 またピート・ジョリーは粋なセンスのハードスイングですし、シェリー・マンの幾分悪趣味ギリギリのバスドラが、ここでは最高のノリに繋がっているという、なかなか味わい深い演奏になっているのでした。
 素直にノレますよ♪

B-1 Frisco Club
 これまたカッコイイ、アップテンポで最高の西海岸ハードバップです。
 アドリブパートでは先発のジェリー・マリガンが初っ端からバカノリ! グイグイと突っこんでブリブリと吹きまくるあたりは、従来のスマートなイメージを覆すものがありますねぇ。続くアート・ファーマーも本領発揮のスリルと安定感の二律背反を聞かせます。
 さらにフランク・ロソリーノは十八番の細かいフレーズを積み重ね、バド・シャンクはブレイクから絶好調の炸裂ぶりという、山場の連続です。あぁ、素晴らしいですねぇ♪
 おまけにピート・ジョリーまでも我を忘れたようにハッスルし、迫力のバンドアンサンブルと対峙するシェリー・マンのドラムソロでは、唸り声まで録音されています! とにかく何度聴いても大興奮の演奏です。

B-2 Barbar's Theme
 エキゾチックなアレンジが施された哀切の名曲です。メロディそのものが泣いているんですねぇ~。もちろんジェリー・マリガン以下、バンドメンバーの適切な演奏があればこそなんですが、まずはミュートで味わい深いアドリブを演じるアート・ファーマーが、本当に素敵です♪
 また懐の深いシェリー・マンのドラムソロは、好き嫌いが分かれるかもしれませんが、雰囲気は充分だと思います。それあってのバンドアンサンブルと曲の味わいが楽しめると思いますので……。

B-3 Life's A Funny Thing
 アルバムの締めくくりは、これも一抹の泣きを含んだ快適なハードバップです。
 もちろん西海岸派特有のライト感覚が魅力なんですが、アドリブ先発のフランク・ロソリーノは、そのあたりを百も承知の快演ですし、途中から絡んでくるジェリー・マリガンとの遣り取りにもグッときます。
 さらにアート・ファーマーも安定感のあるアドリブで場を引き締め、バド・シャンクの張り切ったアルトサックスに繋いでいますから、続くレッド・ミッチェルは思い切った大技を披露してくれるのでした。
 しかもピート・ジョリーはファンキー味までも! バンドアンサンブルも実に良いですねぇ~♪ シェリー・マンもステック&ブラシで冴えまくりです。

ということで、これは映画云々を別にしても楽しい名演集です。

ちなみに楽曲を提供したジョニー・マンデルは本来はトランペッターらしく、バディ・リッチやアーティ・ションの楽団に雇われていたらしいのですが、子供時代からきちんとした音楽教育を受けていたことから、作編曲で頭角をあらわし、アンドレ・プレビン(p) の紹介で映画音楽の世界に入ったとされています。

代表作としては「いそしぎ」があまりにも有名ですが、他にも名曲多数、映画音楽の仕事も書ききれないほどやっており、素晴らしいセンスの持ち主だと、私は思います。

またこの作品と真正フィルム音源をカップリングしたCDも出ているらしいので、聴き比べも一興ですが、後者の演奏はスタジオミュージシャンが中心ですし、このアルバムで聴けるようなタイプの音楽ではありません。

ただし別種でありながら、ジャズの雰囲気は満点という濃密なものです。

最後に気になる映画そのものですが、一種の犯罪サスペンス物であり、個人的には後味が良くないので、ここまでとさせていただきますが、このアルバムに関しては、何度聴いても最高に好きです♪

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天使の瞳

2007-01-30 17:33:49 | Weblog

土日にゆっくりと人生を楽しんでしまった所為か、昨日から仕事がメッチャ、忙しくなって気が抜けません。

深夜まで働いて、帰宅しては寝るばかりという中で、メシ時にジャズを聴くのが唯一の安らぎになっているのは、幸せの証でしょうか――

Angel Eyes / Dave Blubeck Quartet (Columbia / Sony)

バリバリの人気バンドが、これまた人気作曲家の名曲を演奏するという、一粒で二度美味しい、まあ、ジャズにおけるプロデュースとしては最も安易で王道を行ったアルバムです。

しかも、そのネタ元の作曲家がマット・デニス♪ この人は弾語りの名手としても人気者ですが、粋でありながら硬派な姿勢を貫く楽曲の数々は、モダンジャズでは永遠の人気曲ばかりと決め付けて、過言ではありません。

当然、これはジャケットも含めて人気盤の仲間入りをしているわけですが、主役のディブ・ブルーベックにしろ、また一座のスタアであるポール・デスモンドにしろ、優れた作曲家だったわけですから、こんな企画をすんなりと受け容れたのは、ちょっと???

しかし発売されたのが1965年であり、内容が1962年からお蔵入りしていた音源に、新録音を加えて仕立て上げたあたりに、当時の事情が見え隠れしていると思います。

以下は全く私の個人的推察にすぎませんが、1965年と言えばビートルズを筆頭に英国ロック勢がアメリカを侵略していた真っ最中であり、この頃を境にジャズはフリーやジャズロックの台頭等々も顕著でした。つまり正統派ジャズに関しては、流石のディブ・ブルーベックも危機感を抱いていたのでは……? もちろんレコード会社側も同様でしょう。わざわざこのアルバムを完成させるためとしか思えないセッションを行っているところに、それを感じるわけですが、もちろん内容は素晴らしい限りです!

録音は前述ように1962年と1965年、メンバーはポール・デスモンド(as)、デイブ・ブルーベック(p)、ジーン・ライト(b)、ジョー・モレロ(ds) という不動の4人組です――

A-1 Let's Get Away From It All (1965年2月15日録音)
 いきなり快適なテンポで素敵なメロディを吹奏するポール・デスモンドが、もう最高です♪ もちろんアドリブに入っては、ますますの桃源郷が現出するのですからねぇ~♪
 ちなみにネタは、マット・デニスがトミー・ドーシー・オーケストラに提供して、初めての大きな成功を得たという出世作で、そのウキウキするような曲調と、ここでの演奏は相性バッチリ♪
 その原動力たるリズム隊はジョー・モレロの天才的なドラムスを中心に、当にビシッとキマッた好演ですが、惜しむらくはディブ・ブルーベックのアドリブに入る前にテープ編集疑惑があることでしょうか……。

A-2 Vilets For Your Furs / コートにすみれを (1965年2月15日録音)
 ボーカルではフランク・シナトラ、モダンジャズではジョン・コルトレーン(ts) の演奏で有名な泣きのバラードが、ここでも期待どおりのプレイとなっています。
 まずディブ・ブルーベックが独り無伴奏でテーマを弾いてくれますが、けっして流麗とは言えない硬い雰囲気から一転、ジョー・モレロの爽やかなブラシと基本に忠実なジーン・ライトのベースが入ってからは、唯一無二のスイング感が生まれます。これが素晴らしい♪ 当にこのバンドだけの専売特許だと思います。
 そしてポール・デスモンドのソフトな情感と歌心に満ちたアルトサックスが登場すれば、辺りは完全に和みモード♪ 全く心に染み入る演奏ですねぇ~♪
 もちろんディブ・ブルーベックは、そうしたものに流されず、あくまでも硬派な姿勢を貫くという、マット・デニスの精神を蔑ろにしていないのは、潔い限りです。

A-3 Angel Eyes (1962年7月2日録音)
 ジャズのスタンダードとしては決定的な人気の超名曲ですから、さて、どんな解釈を聴かせてくれるか、ワクワクすると同時に安心感もあるところに、このバンドの真価があります。
 まずディブ・ブルーベックが、ここでも独り無伴奏のビアノソロからドラムスとベースが入り、さらにポール・デスモンドがすぅぅ~と滑り込んで来るのは常套手段とは言え、ゾクゾクさせられます。スローテンポながらタイトなリズム隊も存在感抜群です。
 しかもディブ・ブルーベックがハードボイルドに迫れば、ポール・デスモンドも負けじとスリル&サスペンス♪ もちろん素晴らしい歌心も満点ですから、数あるこの曲のモダンジャズ・バージョンでも上位にランクされる快演だと思います。
 とにかく必聴! ジャズを聴く喜びに溢れていますよ♪

B-1 Will You Still Be Mine ? (1962年7月2日録音)
 これもモダンジャズではお馴染みの名曲で、マイルス・デイビス(tp) やレッド・ガーランド(p) のバージョンがあまりにも有名ですが、ここでは初っ端から強烈極まるジョー・モレロのブラシが最高という、負けず劣らずの名演になっています。
 ポール・デスモンドのテーマ吹奏~変奏、何時も以上に思いきったフレーズを駆使するアドリブも強烈です。う~ん、この人もやっぱりチャーリー・パーカー(as) なんですねぇ~♪ でも、音色は何時もどおりのソフト主義です。
 またデイブ・ブルベックのアドリブへの入り方に、アッと愕くケレン味がっ! 狙っていたんでしょうねぇ……♪ 思わず苦笑してしまいます。ただし続くアドリブでは生硬なスイング感でバリバリやってくれますから、許せます。
 しかしここで本当に凄いのはジョー・モレロのブラシでしょう! 多くは書きません。まずは聴いて感動の恐ろしさなのでした。

B-2 Everything Happens To Me (1962年7月2日録音)
 私が大好きな曲ですから、ノー文句で褒めたいところですが、このバージョンは通常よりも相当に早いテンポで演じられており、肩すかしでした。
 ただしポール・デスモンドのアルトサックスからは鋭さを伴ったサブトーンが連発されますので、その歌心も併せて、けっこう良いなぁ~♪ と不思議な感動が味わえます。
 しかしデイブ・ブルーベックは迷い道……。このチグハグ感がお蔵入りしていた原因でしょうか? 意気ごみや狙いは分かるんですが……。

B-3 Little Man With A Candy Cigar (1965年2月15日録音)
 ちょっと馴染みの無い曲なんですが、確かジョー・スタッフォードの十八番だったように記憶しています。雰囲気のあるメロディは、やっぱり粋ですねぇ。
 で、ここでの演奏はデイブ・ブルーベックのテーマ演奏、ポール・デスモンドのアドリブという定石どおりの展開が、マンネリの良さに繋がるという安らぎの世界です。終盤で突如始まるデイブ・ブルーベックの独り無伴奏が、スパイスでしょう。

B-4 The Night We Called It A Day (1965年2月15日録音)
 オーラスは、またまた安らぎの名曲です。
 まずポール・デスモンドのテーマ吹奏が素敵ですねぇ~♪ 味わい深いサビを演じるディブ・ブルーベック、安定しながら刺激的なビートを送り出してくるリズムコンビも流石です。
 う~ん、それにしても、このテンポでダレずにフンワカとアドリブしてしまうポール・デスモンドは天才だと思います。真っ向勝負で美メロの世界を追求していく孤高の世界かもしれませんが、難しいフレーズなんて、ひとつ無いんですから♪
 逆にディブ・ブルーベックは、やや難解な世界を彷徨っている感じです。まあ、このあたりのコントラストが、このパンドの魅力なのかもしれません。

ということで、やっぱり人気盤になるだけの名演揃いです。このバンドを初期から聞き続けていれば、マンネリにどっぷりな心地良さにもシビレるはずですし、楽曲単位に楽しむという名曲マニアもニンマリでしょう。

ただし、こんな路線は、それまでの実験性を気に入っていたファンからすれば、逃げとしか感じられないかもしれません。

その意味では罪作りな作品なんですが、ジャズ喫茶はもちろん、自宅で聴いても恥ずかしくなるほど素直な良さがありますから、人気盤はこうあるべし! というお手本ようなアルバムだと思います。

もちろん私は大好きです♪

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小編成の醍醐味

2007-01-29 16:16:55 | Weblog

それにしても今年は雪がありません。昨年の豪雪が嘘のようなポカポカ天気です。地元の人の話でも、生まれてからこんなに雪の少ない冬は初めてだとか……!

あんまり暖かくて、冬眠のクマが目覚めたなんていうローカルなニュースまでも!

いやはや、なんとも、雪なんか無いほうが良いというのが、外様の意見なんですがねぇ。

ということで、本日の1枚は――

The Swinging Count ! / Count Basie (Clef / Verve)

カウント・ベイシー楽団のファンにとっては、もうひとつの楽しみが、ピックアップ・メンバーによるスモール・コンボのセッションでしょう。

なにしろ超一流の実力者でなければ入団出来ないバンド内から、さらにスタアプレイヤーを選りすぐっての演奏ですから、何時の時代も悪いはずがありませんが、特に1950年代初期にはビバップの影響も染みこんだ、絶妙の中間派ジャズが楽しめます。

このアルバムは1952年のセッションから纏めたものですが、当然、この仕様で発売された演奏ばかりではありません。SPやEPで既に発表されていたもの、そしてこれが初出の演奏もあろうかと思いますが、そのあたりのマニア泣かせがヴァーヴというレーベルの特徴でもあります――

A-1 Extended Blues (1952年7月23日録音)
 カウント・ベイシー(org)、オスカー・ピーターソン(p)、フレディ・グリーン(g)、レイ・ブラウン(b)、ガス・ジョンソン(ds) という、非常に興味深々のメンバーで演奏されたブルースです。結論はもちろん最高!
 まずカウント・ベイシーのオルガンがグビッと出た後は、フレディ・グリーンを中心に「間」を大切にした絶妙のグルーヴが生み出され、オスカー・ピーターソンが音符過多ギリギリの名演を聴かせます。もちろん指が動いて止まりませんが、同時にタメとネバリの芸術までも堪能させてくれます。
 対するカウント・ベイシーは、オルガンでも何時ものピアノと変わり無く、やはり「間」の芸術ですねぇ~、これはっ♪ そこを埋めていくリズム隊とオスカー・ピーターソンの思惑も見事に合致しています。ゲッ、ファンキーまでもっ!?
 あぁ、これを聴けただけで私は満足です!

A-2 I Want A Little Girl (1952年7月23日録音)
 「A-1」と同日の演奏ですが、メンバーは異なり、ルノー・ジョーンズ(tp)、ヘンリー・コーカー(tb)、マーシャル・ロイヤル(as,cl)、ポール・クィンシェット(ts)、チャーリー・フォークス(bs)、カウント・ベイシー(p)、フレディ・グリーン(g)、ジーン・ラミー(b)、バディ・リッチ(ds) の9人編成となっています。
 演奏はムード満点のスローな展開で、テーマをリードするルノー・ジョーンズのミュート、ソフトに絡むマーシャル・ロイヤルのクラリネット、情感たっぷりのアドリブで酔わせるポール・クィンシェットと、本当に役者が揃っていますねぇ~♪
 もちろんフレディ・グリーンを核としたリズム隊も鉄壁ですから、ダレません。
 しかも途中にはキメまで仕込んであるという、ニクイ演奏になっています。これも必聴!

A-3 Oh, Lady Be Good (1952年12月13日録音)
 カウント・ベイシー楽団にとっては十八番の当り曲ですから、ここでもソツが無いどころか、会心の演奏になっています。
 メンバーはジョー・ニューマン(tp)、ポール・クィンシェット(ts)、カウント・ベイシー(p)、フレディ・グリーン(g)、ジーン・ラミー(b)、バディ・リッチ(ds) というセクセットですので、悪いはずがありません。
 メンバーそれぞれに見せ場がありますが、特にバディ・リッチのシャープで躍動的なドラムスは天才の証ですし、レスター・ヤング(ts) の役割を立派に果すポール・クィンシェット、さらにモダンな感覚を披露するジョー・ニューマンが快演です。
 ブギウギ調のカウント・ベイシーのピアノは温故知新♪

A-4 Song Of The Islands (1952年12月13日録音)
 全曲と同日録音ですが、メンバーからジョー・ニューマンが抜けたクインテットの演奏です。しかもカウント・ベイシーが再びオルガンにチェンジして、最高の味を披露しています。爽やかグルーヴとでも申しましょうかっ!
 またアドリブで大活躍のポール・クィンシェットが、ソフトな歌心と情感を存分に聴かせてくれますし、リズム隊のビートのキレも申し分ありません♪

A-5 Basie Beat
A-6 She's Funny That Way
B-1 Count's Organ Blues
B-2 K.C.Organ Blues
B-3 Blue And Sentimental
B-4 Stan Shorthair
B-5 As Long As I Live
B-6 Royal Garden Blues

 この8曲は再びセクステットの演奏で、録音は1952年12月15日、メンバーはジョー・ニューマン(tp)、ポール・クィンシェット(ts)、カウント・ベイシー(p,org)、フレディ・グリーン(g)、ジーン・ラミー(b)、バディ・リッチ(ds) となっています。
 特筆すべきはカウント・ベイシーのオルガンとピアノの二刀流でしょうか、グビクビと響いてくるオルガンのグルーヴィな雰囲気とシンプルで「間」を生かしたピアノの対比が印象的♪ もちろんブギウギ調の強烈なビートも何時もの楽しさです。
 またフレディ・グリーンが、やっぱり良いですねぇ♪ このアルバムは小編成録音ということもあって、何時も以上に、あの天才的なリズムギターが堪能出来ます♪
 さて演目では、まず「She's Funny That Way」や「Blue And Sentimental」といった泣きのスロー物が、心に染み入る名演です。ポール・クィンシェットの優しさあふれるテナーサックスとカウント・ベイシーのオルガンの相性は、これ以上無いほどです♪
 また「Basie Beat」「Count's Organ Blues」や「K.C.Organ Blues」といった、そのものズバリの演奏では、ベイシー楽団が本来持っているドロ臭味が遺憾なく発揮され、しかも嫌味になっていないのは、ジャズの真髄を鋭く突いた証でしょうか!? ポール・クィンシェットが本当に良いですねぇ~♪ もちろんジョー・ニューマンも絶妙です。
 そして「Stan Shorthair」や「As Long As I Live」では小気味良いベイシー・ビートが堪能出来ます。う~ん、フレディ・グリーンは最高だぁ! 当然の如く暴れるバディ・リッチとジーン・ラミーのコンビネーションもバッチリです。
 さらに最後の「Royal Garden Blues」ではデキシーのモダンスイング化に見事成功しています。その立役者はもちろん、バディ・リッチですが、一緒になってグイノリを作り出していくリズム隊全員のグルーヴは素晴らしいの一言♪ あぁ、いつまでも聴いていたいですねぇ~♪

ということで、これは短い曲ばかりですが、密度の濃さは保証付きという名演集です。リズム隊だけ聴いていても十二分に満足出来るはずですし、フロントではポール・クィンシェットが畢生の出来栄えでしょう。嘘、偽り無く最高なんです♪ 必ず泣きます。

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昔行ったライブ

2007-01-28 19:24:07 | Weblog

昨日、今日と、久々に自分だけの時間を堪能しましたです。

もちろん中古屋も襲撃、古本屋も徘徊して収穫も大きく、散財もありましたけど、お金は生きているうちに使わなければと、苦しい言い訳をしています。

で、最近は復刻CDが紙ジャケットになるのが主流のようですね。中古でしたが、こんなんゲットしてきました――

■Phil Woods & The Japanese Rythm Machine (RCA)

フィル・ウッズはハードバップ期から活躍している優れた白人アルトサックス奏者ですが、一番勢いがあったのは1970年代だと、私は思います。

特にジャズ喫茶という文化がある我国では、残されたレコードを中心に本場の演奏に接する機会がほとんどですから、そこに名演・名盤があれば、自ずと人気者になってしまいます。その意味からフィル・ウッズには「ヨーロピアン・リズム・マシーン」とか「ミュージック・デュ・ボア」等々という、当にジャズ喫茶に無くてはならないアルバムを吹き込んでいる名手です。

したがって1975年の初来日公演は、否が応でも熱烈歓迎でしたが、気になったのが単身来日だったことです。

実は当時のフィル・ウッズはレギュラーのバンドを持っておらず、このあたりは、けっこう厳しい本場の現実というところでしょう。なにしろ時代はフュージョンブームが急上昇、そして正統派ジャズは落目のなんとらや……。

そこで日本人ミュージシャンがサポートすることになった次第でしょうが、フィル・ウッズには○○リズム・マシーンという錦の御旗がありますからねぇ~♪ これが摩訶不思議なノリと異様な高揚感が充満したステージとなりました。というのは、私が直に体験したライブからの感想ですが、嬉しいことに、その日の模様はレコード化され、我国独占で発売されたのが本日の1枚です。

録音は1975年7月31日の新宿厚生年金会館、メンバーはフィル・ウッズ(as,ss)、市川秀男(p)、古野光昭(b)、ジョージ大塚(ds) という、当にジャパニーズ・リズム・マシンとの共演です――

A-1 Windows
 チック・コリアが書いた新主流派バリバリの名曲です。
 ここでは冒頭から思わせぶりなフィル・ウッズのテーマ吹奏が、その太くて豊かな音色と音量で一層、魅力的です。
 さらに日本側リズム隊も最初っから異様なほどテンションが高い雰囲気ですから、本当にヤバイです。どこに連れていかれるか、ちょっと……。
 ですからフィル・ウッズは何の遠慮もせずに吹きまくり、グイグイ突進です。
 すると市川秀男がハービー・ハンコックも真っ青のフィーリングで見事に期待に応えますが、ジョージ大塚のドラムスがバタバタと潔くないというか、ここらが日本のジャズメンに対して我国のファンから厳しい声があがるところでしょう。ただし演奏が白熱してフリーに近くなってくると、何とも言えない良い味になるんですよねぇ~。
 演奏は終盤でフィル・ウッズと古野光昭のデュオパートが用意され、なかなかスリルある展開から、ようやくリズム隊が本領発揮の繊細な感覚を聴かせてくれます♪ 

A-2 Spring Can Really Hang You Up The Most
 個人的に大好きなスタンダード曲なので、嬉しい演奏でした。
 そして甘さと激しさ、厳しさを存分に発揮して悠然と吹奏するフィル・ウッズの勇姿に感動したことが、今でも思い出される名演です。とにかくテーマの膨らませ方が最高です! キメで入れるチャーリー・パーカー直伝のフレーズも良いですねぇ♪
 そして本格的なアドリブパートでは、テーマメロディを大切にしつつも、烈しい感情吐露が、当時若かった私にはジャストミートの熱演でした。
 気になるリズム隊は古野光昭の絡みがジャズの醍醐味ですし、ドンチャカ系のジョージ大塚のドラムスでは、そのオカズやキメを逆手に取ってしまうフィル・ウッズが流石の柔軟性です。
 最後の独り舞台的なアルトソロも、お約束の嬉しさに満ちています。

B-1 Johnny Hodges
 フィル・ウッズが敬愛するジョニー・ホッジスに捧げて書いた、和んで楽しい名曲です。しかもここではソプラノサックスを吹いてくれましたからねぇ~、ちょっと驚きましたが、これがまた、良いです。名手の証というか、なかなか楽しませてくれる歌心は、最高です。もちろんジョン・コルトレーンっぽい烈しいフレーズまでも!
 それと良いのが市川秀男です♪ 自分のアドリブパートでは、当然リズム隊だけのトリオになるんですが、3人がバラバラをやっている雰囲気の中、一瞬のうちに纏まって、また散り散りになるというジャズの面白さが、何度も繰り返されます。
 自己主張の烈しい古野光昭も、実に良いですねぇ。

B-2 Speak Low
 お馴染みのスタンダード曲ですが、なんと最初が、あの「マイルストーンズ」になっていて、間髪を入れずに猛烈なテーマ吹奏が始まるという、恐るべきアレンジです。
 もちろんアドリブパートは激烈! 暴風警報のフィル・ウッズに対し、ジョージ大塚がドタンバタン、ガチ~ンと喰らわせる独自のキメには、本当に熱いものを感じます。もちろん、そんなことに怯むフィル・ウッズではありませんからねぇ~♪ 完全にジコチュウでブリブリとブッ飛ばしています!
 すると市川秀男が変幻自在の実力を存分に発揮したフルスピード・ピアノです! 背後のドラムス&ベースなんか、知ったこっちゃ無い雰囲気です。特に烈しいストライドからフリーになる瞬間なんか、もう最高でした!
 そして最後にはジョージ大塚の爆裂ドラムソロが、お約束です。対峙するフィル・ウッズも、これには困った顔でニンマリしていましたねぇ~♪ 当日の私の席は2階でしたけど、はっきり分かる良い雰囲気でした。

B-3 Doxy
 ソニー・ロリンズのオリジナル曲ですが、フィル・ウッズは1950年代から終演テーマに使っていたという、短いながら、お楽しみの演奏です。
 そしてこれが出た時には、会場は大盛り上がりでした。ちなみに最後の挨拶もフィル・ウッズがやっています、「ど~も」なんてねっ♪
 オーラスのフリージャズもどきが、なんとも楽しい瞬間です。

ということで、実際に現場にいた私だから、これが好きなのかもしれません。実際、冷静に聴くと、リズム隊が如何にも日本人丸出しのバタバタ感覚ですし、ちょっと纏まりの良すぎるというか、もう少しフリーっぽい演奏も聞きたかったのが本音です。

とは言え、現在CDで復刻されているのは貴重です。紙ジャケット仕様の限定盤なので、気になる皆様は早めにゲットして下さいませ。

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ガッツ~ンと、ビックバンド!

2007-01-27 13:14:26 | Weblog

現在、紙ジャケット仕様でCD復刻されているアトランティックレペール諸作の音の良さには、ちょっと衝撃を受けています。

失礼ながらアトランティックというレーベルは、企画・製作は良いのに、アナログ盤時代から音がイマイチという印象しかありませんでしたからねぇ……。

それがっ!

本日の1枚も、そうした楽しみがビッシリ楽しめる、これです――

Clarke - Boland Big Band (Atlantic)

ビバップ=モダンジャズを創成した偉大なミュージシャンのひとりであるケニー・クラーク(ds) が渡欧して後、ベルギー生まれのピアニスト=フランシス・ボーランと一緒に結成したビックバンドには、欧州で活躍する精鋭が集結し、1960年代から1970年代前半に物凄い名演・名盤を多数残していて、今日までも評価が高い存在です。

もちろん、オールスタアのバンドですから臨編体制なんですが、実はイタリアの有力興行師=ジジ・カンピが影の立役者として巡業やメンバー集めに関係していたことが、常に優れた演奏を残した秘密だと言われています。

さて、このアルバムは、そんなバンドの結成直後の演奏が収められた、多分2作目でしょうが、溌剌盤です。

録音は1963年1月25&26日、メンバーはフランシス・ボーラン(p,arr)、ジミー・ウッド(b)、ケニー・クラーク(ds) をリズム隊にして、ベニー・ベイリー(tp)、ジミー・デューカー(tp)、アイドレース・シュリーマン(tp)、オキ・ペルソン(tb)、ナット・ペック(tb)、デレク・ハンブル(as)、カール・ドレボ(ts)、ビリー・ミッチェル(ts)、ロニー・スコット(ts)、サヒブ・シハブ(bs,fl) ……等々、もう書ききれないほどの豪華絢爛さ♪ フランシス・ボーランのアレンジもジャズのキモを大切して晴らしく、もちろん、一糸乱れぬ強烈なアンサンブルと濃密なアドリブソロがたっぷりです――

A-1 Long Note Blues
 いきなり強烈なティンパニーの連打にドキモを抜かれますが、今回復刻されたCDはリマスターが素晴らしいので、尚一層、ガッツ~ンときます。
 そしてフランシス・ボーランの擬似ファンキーなピアノを中心としたリズム隊のペース設定、さらにタイトルどおりにロングノートを積み重ねていくホーンセクションが、気持ち良い限りです。
 アドリブパートでは、まずサヒブ・シハプが唸りを加えたフルートで大熱演すれば、ビリー・ミッチェルは黒いグルーヴを炸裂させて抵抗し、アイドリース・シュリーマンがクールなカッコ良さを披露するという、アメリカ勢が底力を発揮しています。
 しかし本当に凄いのは背後から襲い掛かってくるブラス&リードのアンサンブルで、シンプルなアレンジながらジャズの真髄を鋭く突いた強烈さがあります。
 もちろんリズム隊のシャープなノリは言わずもがな♪ 本当に興奮させられる演奏です。

A-2 Get Out Of The Town
 コール・ポーター作曲の有名スタンダードが軽快に演奏されています。もちろんフランシス・ボーランのアレンジは冴えていますが、アドリブパートでの各人の奮闘も聞き逃せません。
 まずオキ・ペルソンの伸びやかなトロンボーンが素晴らしく、続くデレク・ハンブルは押えた情熱で嫌味がありません。そしてジミー・デューカーが基本に忠実な歌心を披露すれば、アイドリース・シュリーマンはツッコミ鋭く迫ってきます。
 しかしここでもバンドアンサンブルが最高の聴きものでしょうか、素晴らしくワクワクさせられますねぇ~♪

A-3 Sonor
 ケニー・クラークが書いた快適なハードバップ曲ですが、フランシス・ボーランのアレンジによって豊かな彩りが添えられたテーマが素敵♪
 しかし負けずに炸裂する名手達のアドリブソロは、短いながらも大充実です!
 また当然ながらケニー・クラークのドラムソロもありますし、ここまでの各曲で活躍しているティンパニーはジョー・ハリスが担当しています。

B-1 Speedy Reeds
 痛快なハードバップがビックバンドで演奏されるという醍醐味が、存分に楽しめます! しかもアドリブパートではカール・ドレボ、ロニー・スコット、ビリー・ミッチェルという三竦みのテナーバトルが炸裂しますから、たまりません!
 もちろんフランシス・ボーランがアレンジしたシャープなリフが背後から襲い掛かってきますし、煽りまくるリズム隊の強烈なビートが爽快です♪
 気になるテナーバトルの勝敗は、着くはずがありません。本当にタフな演奏なんですが、疲れませんので、本当に何時までも聴いていたいのが本音です。必ず、ノリますよ♪

B-2 Old Stuff
 これがまた、グルーヴィでハードボイルドな曲&演奏です。
 ミディアムテンポで初っ端から飛び出すアイドリース・シュリーマンとベニー・ベイリーのサスペンスいっぱいのトランペット合戦に、まずシビレます♪ 続くデレク・ハンブルとビリー・ミッチェルのサックス対決も熱く、バンドアンサンブルも最高としか言えません! あぁ、こんな豪快なバンドがあるでしょうか!? シンプルな良さというか、本当に良いです!

B-3 Om Mani Padme Hum
 タイトルからも連想出来るように、エキゾチック系の曲であり、ファッツ・サディのパーカッションが大フィーチュアのスタートから、分厚く入り組んだホーンセクションとポリリズムのビートが完全融合した名演となります。
 しかしアドリブパートではクールな4ビートに転換し、まずサヒブ・シハブのフルートが疾走します。もちろん唸り入りですが、バックのボンゴも快適ですねぇ♪
 またベニー・ベイリーが畢生の大熱演です! けっこう前衛派のフレーズも混ぜ込んでいますが、ちゃんと構成された雰囲気なので、素直に熱くなれますねぇ~♪ 背後のアンサンブルも言う事なしの豪快さです。

ということで、とにかく素晴らしい演奏集なんで、カーオーディだと、ついアクセル踏み過ぎになりそうなほど! スカッとします。

ちなみに彼等の勇姿が拝めるDVDも出ていますので、ぜひとも、ご堪能下さいませ。

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方針転換

2007-01-26 17:32:47 | Weblog

本日はブログが不調で、何故かアップ出来ません。

そこで、この時間を利用して、本サイト「サイケおやじ館」を更新致します。

日活ニューアクション・ヤクザ篇「大幹部 / 無頼」を掲載の予定です。

http://www12.ocn.ne.jp/~nacky/

よろしくお願い致します。

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西海岸ハードバップ

2007-01-25 14:50:04 | Weblog

新車にしてからカーオーディオを増強したので、またまたCDを買うことが多くなりました。車の中じゃアナログ盤、聴けませんからねぇ。というのは実は言い訳でもありますが、最近のCD復刻には愕くべきものが多々あります。

それは紙ジャケット仕様の忠実度とかマスタリングの進歩で、特に後者については思わず唸るものも少なくありません。

しかし音質面の復刻状況については、何を基準にするかで拘りが違うというのも、個人差があるでしょう。

例えばピカピカのオリジナル盤を発売時リアルタイムの最高級オーディオで鳴らした際の音に近づけるのか、あるいはミックスダウンをしたスタジオモニターの音を基準するのか、はたまたマスターテープそのものの音を忠実に再現するのか……等々、結局はリマスター担当エンジニアの思惑が反映されるのが、本当のところでしょう。

一番良いのは、例えば現在のブルーノート復刻のように、録音時のエンジニアだったルディ・ヴァン・ゲルダーがCD化のリマスターを担当することなんでしょうが、最終的にはオリジナル盤の価値は不滅という結論に達してしまうんでしょうか……?

という考えすぎは別にして、最近のアトランティック盤復刻における紙ジャケット仕様の日本盤は、本当に素晴らしいと思います。本日もその中から、これを――

West Coast Wailers / Conte Candoli & Lou Levy (Atlantic)

西海岸ハードバップの傑作盤です!

ウエストコーストのジャズと言うと、直ぐにアレンジ重視の爽やか系か、短くてさっぱりした演奏を思い浮かべてしまいますが、ジャズ本来の暴力性とかエグミを持った黒っぽいものがあったのも、また事実です。

もちろんミュージシャンは白人中心だったかも知れませんが、彼等は優れた黒人ミュージシャンとの共演を立派にやっていますし、黒人ミュージシャンにしても遠慮無しに烈しい姿勢を貫いているのですから、悪いわけがありません。

このアルバムは中でも特に強力な1枚で、リーダーの2人は白人ですが、やっている事はモロに黒いフィーリングがたっぷりという優れものです。

録音は1955年8月、メンバーはコンテ・カンドリ(tp)、ビル・ホールマン(ts)、ルー・リヴィー(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、ローレンス・マラブル(ds) という白黒混成バンドです――

A-1 Lover Come Back To Me
 スローでテーマを変奏していくルー・レヴィーのビアノが思わせぶり、一転して烈しいドラムスに導かれコンテ・カンドリのトランペットが火の様熱く炸裂するところから、もう最高です!
 そしてビル・ホールマンの滑らかなテナーサックスが、どこまでも止まらないアドリブに突入すれば、コンテ・カンドリはラフな一面も聞かせて大ハッスルです。
 しかしここで本当に凄いのはリズム隊でしょう。グイノリのベースとドラムスに爆発的なルー・レヴィーのピアノは快感です。それはホレス・シルバーとバリー・ハリスの良いとこ取りかもしれませんが、間違いなくルー・レヴィのスタイルになっていると思います。
 思わずボリュームを上げてしまう快演ですねぇ~♪
 ラストテーマをセカンドリフ的に入れ替えているあたりも楽しいです。

A-2 Comes Love
 ちょっとエキゾチックなテーマが楽しく演奏される、これも快演ハードパップです。
 特にアドリブ先発で登場するルー・レヴィーは最高で、初っ端のブレイクのスリルは満点♪ ここだけで畢生の名演でしょう。もちろん続くアドリブだって最高にファンキーで躍動的です!
 またコンテ・カンドリは思わせぶりに登場しておきながら、忽ち猛烈なツッコミを聞かせてくれるんですから、たまりません。
 さらにビル・ホールマンも熱演ですが、ソロが短いのが減点でしょうか……。
 ただしラストテーマの合奏とアンサンブルは、流石に西海岸派の醍醐味があるのでした。

A-3 Lover Man
 リラックスした早いテンポで演じられるので、原曲に含まれた哀愁はどうかなぁ……? と不安になるのですが、心配はご無用です。
 コンテ・カンドリが一人舞台のテーマ吹奏、そして素晴らしい歌心に満ち溢れたアドリブは、見事です。ファンキーなフレーズも出ますし、テーマの裏メロみたいな変奏も隠し味になっています。特にラストテーマ代わりのアドリブは良いですねぇ。
 もうひとりの主役、ルー・レヴィーも粋なイントロにビートの強い伴奏、さらに短いながらもキラリと光るアドリブで魅了してくれますよ♪

A-4 Pete's Alibi
 如何にも西海岸派らしい軽快なテーマが、素敵なハードバップになっていく爽快な演奏です。
 アドリブ先発のビル・ホールマンは、所謂レスター派と称される滑らかなフレーズとノリが信条ですが、ここでは少~しですが、ハンク・モブレー風のタメとモタレが感じられる黒っぽいフィーリングが素敵です。
 するとコンテ・カンドリは、当然という顔でクリフォード・ブラウン(tp) の雰囲気に挑戦しているようです。
 そしてやっぱり良いのがルー・レヴィーですねぇ♪ 全く迷い無い独自のファンキー節は短いながらも最高で、ベース&ドラムスとの相性も抜群です。

B-1 Cheremoya
 やや翳を帯びたテーマが魅力的なビル・ホールマンのオリジナル曲が、力強いテンポで演奏されます。
 アドリブ先発の作者は、もちろん曲のキモをしっかり掴んだ好演ですが、ここでもハードエッジのリズム隊が実に良いですねぇ~♪ 続くコンテ・カンドリも気持ち良さそうです。

B-2 Jordu
 あまりにも有名なデューク・ジョーダン(p) の名作オリジナルと言う以上に、クリフォード・ブラウン(tp) &マックス・ローチ(ds) が残した強力ハードバップ・バージョンが聖典となっているハードバップ曲です。
 もちろんここでは、その美しき流れを大切にした演奏を目指しているようで、まずテーマ部分では独特の翳がきちんと表現されていますし、アドリブ先発のビル・ホールマンも、かなり灰色なソロを聴かせてくれます。
 またコンテ・カンドリは、嫌でもクリフォード・ブラウンと比較されてしまう宿命を素直に受け容れて大健闘! ルー・レヴィーのファンキーピアノも負けていません。
 思えば前述のブラウン&ローチのバンドは、このセッションの1年ちょっと前に西海岸で旗揚げしたのですから、当地のミュージシャンには多大な影響を残しているはずで、こういうハードバップが西海岸にあっても不思議では無いと、ひとり納得しているのでした。

B-3 Falmingo
 これは素敵な出来栄えです♪
 ネタは美しいメロディのスタンダード曲ですが、安らぎのテンポと黒いビートで演奏して立派なハードバップに仕上げられています。なんといってもコンテ・カンドリの歌心満点というトランペットが最高ですねぇ~♪ 自身にとっても畢生の名演ではないでしょうか! 何度聴いても素晴らしい限りです。
 もちろん自分達の役割を心得ているバンドメンバーも誠実なサポートで、好感が持てます。

B-4 Marcia Lee
 オーラスは楽しいウエストコーストジャズの真髄が、見事にハードバップとして解釈された名演です。あぁ、聴くほどに爽快な気分になってしまいますねぇ♪
 アドリブパートでも滑らかにドライブするビル・ホールマン、丁寧にフレーズを積み重ねていくコンテ・カンドリ、そして明るくファンキーに弾けるルー・レヴィーと充実♪

ということで、もちろんニューヨークやシカゴあたりのドス黒い演奏とは違いますが、これも立派なハードバップだと思います。その原動力はルー・レヴィーでしょうか? 同時期ではスタン・ゲッツのリーダー盤、例えば「ウエストコーストジャズ(Verve)」でも大活躍が記録されていますが、私はそのライトなファンキーピアノにゾッコンです。

また同時にリロイ・ヴィネガーとローレンス・マラブルという、西海岸きってのリズムコンビが生み出す強烈なグルーヴも、どこか明るさが滲んで捨てがたい魅力があると感じます。

ただしフロントの2人がちょっと軽い雰囲気なので……。まあ、そこがこのアルバムの特徴でもあるんですが、失礼ながら、これでテナーサックスがテディ・エドワーズあたりだったらなぁ……、という我侭を、つい言いたくなります。

さて冒頭で述べた、このCDのリマスター状態ですが、やはり秀逸だと思います。

実は私は、一応、オリジナル盤を持っていますが、残念ながらレコードの材質そのものが粗悪というか、特に盤面が痛んでいるわけでは無いのに、アメリカ盤特有のメリハリの強い音がしていません。その点、今回の復刻CDは、なかなか良いセンだと思います。

ちなみに、ここで再現されている音は、恐らくマスターテープの忠実な再生を狙ったものでしょうか? 好きな演奏なだけに、一度でいいから、スタジオモニターでオリジナルマスターテープを聴いてみたいものです。

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唸りの名盤!

2007-01-24 18:58:46 | Weblog

今週末は久々に自分の時間が取れそうなんで、ワクワクしています。

中古屋巡り、古書店回り、最新映画鑑賞、食べ歩き……、様々に思惑だけが先行していますが、願わくば、このまま行って欲しいところ!

ということで、本日は――

Overseas / Tommy Flanagan (Metronome)

ビアノトリオでは言わずもがなの名盤です。

しかし、あえて述べさせていただければ、1957年にJ.J.ジョンソンが行った北欧巡業時のバンドからリズム隊だけをピックアップして、地元スウェーデンのメトロノームというレーベルが作った1枚なので、スウェーデン盤がオリジナル!

ですから各国で発売されているものは、オリジナルでは無い、マスターコピーのテープから作られているわけです。

もちろん、今では当たり前の緑色に「C」が沢山並んだオリジナルジャケットも、実は発売各国で違うものが使われていた時期がありました。

例えば我国では、トミー・フラナガンが叫んでいるようなモノクロジャケットでしたし、アメリカ盤は掲載したようなデザインで、当時のJ.J.ジョンソンのバンドメンバー全員が写っているジャケットでした。しかも擬似ステレオ仕様!

しかし、これが侮れません。当時の日本盤より、遥かに私好みの音がしています。これはアナログ盤を作る際のカッティングマスター製作に拘りがあった所為か、あるいはカッティングレベルの高さの所為か、諸説あると思いますが、とにかくハードバップどっぷりのエグイ音が聴けたのは確かです。

ただしオリジナル盤と比較出来なかったので、あくまでも個人の好みとご了解願いたいところではありますが、1970年代のジャズ喫茶でもオリジナル盤を置いているところは少なかったと思われますから、日本盤を使っていてもオーディオ装置の優秀さでフォロー出来たのかもしれません。

肝心の中身は1957年8月15日の録音で、メンバーはトミー・フラナガン(p)、ウィルバー・リトル(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という今では伝説の面々です。

そしてこの演奏が凄いのは、エルビン・ジョーンズの奔放で粘っこいビートを軸にして3者が執拗に絡み合うインタープレイ、さらにトミー・フラナガンの協調性とウィルバー・ウェアの頑固さが最高に上手く機能したからでしょうか? 何時聴いても、やっぱり良いですねぇ――

A-1 Relaxin' At Camarillo
 ノッケからエルビン・ジョーンズのブラシが冴え、トミー・フラナガンが珍しくもバリバリと弾きまくった快演です。というか、トミー・フラナガンにはジェントルなイメージがありましたから、これを初めて聴いた時には驚いたものです。
 またウィルバー・リトルの突っこんでくるベースはブレイクでのスリルもあり、もちろんエルビン・ジョーンズは重量級でありながら、シャープなノリがあって素晴らしいと思います。

A-2 Chelsea Bridge
 一転して優しさ優先の和みモードが全開します。もちろん曲はデューク・エリントン楽団のヒット曲ですから、幻想的で優雅な雰囲気を壊してはならず、しかしハードバップ的なグルーヴも大切にしているあたりが秀逸だと思います。
 それはありがちな演奏テンポよりも、やや早くて強いビートが用いられているからで、トミー・フラナガン本来の持ち味である歌心が発揮されているのは言わすもがな、勢いという点でも聴き易いものがあります。
 ただし現代の感覚からすれば、やはり王道のスローテンポが好ましいような気もしていますが……。

A-3 Eclypso
 タイトルどおり、カリプソ風味があるトミー・フラナガンのオリジナル曲です。そしてこうなると、エルビン・ジョーンズが嬉々として大活躍! 思わせぶりな前奏からテーマに入ってのウネリには独自のものがありますねぇ。もちろんトリオ全員のノリが統一されていますから、たまりません。
 アドリブパートは快適な4ビートとなって、哀愁の歌心を存分に発揮するトミー・フラナガンに対し、頑固一徹なウィルバー・リトル、そして変幻自在なエルビン・ジョーンズという美しき構図がたっぷりと楽しめるのでした。

A-4 Beats Up
 ビバップでは定番のリフを使ったトミー・フラナガンのオリジナルで、アップテンポでお約束の演奏には、ブレイクで各人の妙技が使えるような仕掛けもあります。
 全体には小気味良いトミー・フラナガンのアドリブが冴えていますが、ウィルバー・リトルの骨太ベースとエルビン・ジョーンズのドラムソロも聞き逃せません。
 短いのが残念という不満が残ります。

A-5 Skal Brother
 イントロからファンキー節が冴える、これもトミー・フラナガンのオリジナル曲です。もちろんエルビン・ジョーンズは唸りながらの粘着ビートを敲き出しています♪ いゃ~、素直に良いですねぇ~♪ 合の手の入れ方なんか、そこで次にトミー・フラナガンがどんなフレーズを出してくるか、完全に読みきったような雰囲気になっていますから、見事なもんです。

B-1 Little Rock
 これが凄い演奏です!
 まず初っ端からウィルバー・リトルの軋んだベースが雰囲気を設定し、フゥ~、と入ってくるトミー・フラナガンを、ビシッとタイトなエルビン・ジョーンズのドラムスが後押ししてスバッと決まる! そんな静かな熱気をトリオ全員が益々沸騰させていくのです。
 あぁ、この粘りの雰囲気! 「間」と「余韻」を活かしきったエルビン・ジョーンズとウィルバー・リトル! ジェントルな雰囲気を大切にしつつも真っ黒なトミー・フラナガン! 決してゴスペルではない、純正ハードバップの黒さを堪能出来る名演だと思います。

B-2 Verdandi
 短くも快適に疾走する演奏ですから、エルビン・ジョーンズのブラシもサクサクと止まりません! 曲そのものも、キメがクラシック風のメロディみたいで素敵です。

B-3 Dalarna
 これがまた和みの極致のようなトミー・フラナガンのオリジナル曲です。
 緩やかなテンポと優しい曲調が最高に上手く融合しており、演奏そのものも雰囲気を大切に、しかも刺激的に展開されているという素晴らしさです。
 う~ん、トミー・フラナガン畢生の名曲・名演でしょうか、アドリブメロディも良い節が出まくりです。ウィルバー・リトル助演も良い感じですし、途中から倍テンポになるあたりは泣けるほどにゾクゾクしてきます。もちろんテンポを戻すところも絶妙♪
 
B-4 Willow Weep For Me
 オーラスはブルースっぽい感覚がモロ出しになるスタンダード曲なので、このトリオも存分に自己主張と心情吐露に専念しているようです。
 特にウィルバー・リトルは地味に良いですねぇ。この人はあまり有名ではありませんが、このセッションで永遠に歴史に名を残したのは単なる員数合わせの結果ではありません。素晴らしい実力者だと、私は思います。
 そしてトミー・フラナガンは切れ味するどいフレーズを連発して硬派な一面を強調していますし、エルビン・ジョーンズも容赦無い雰囲気でガチンコ体質を露わにしていますから、名演も必然のトラックだと思います。
 3分47秒目あたりからのキメの連続には、何時も熱くさせられてしまいますねぇ~♪

ということで、何処を切っても名演しか出ないのが、このアルバムです。

トミー・フラナガンにしても、死ぬまでこのアルバムの呪縛から逃れられなかったのが現実で、演目の再演を熱望され、実際にそれを行って、またまた名演を残してはいるのですが、どうしてもオリジナルセッションの一期一会には及ばないのも、また現実でした。

今更、名盤を聴くのは恥ずかしい……、という気分が、ある時期のジャズ者には訪れるのですが、これはそんな思い込みを軽くいなしてくれる、真の名盤だと思います。

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素敵なシェリフ

2007-01-23 18:18:50 | Weblog

ジャズはアドリブか、曲か?

そのどっちに重きをなすのか、特にモダンジャズでは論争になったりすることがありますね。こんな事に悩んでいるのは、まあ、日本だけかもしれませんが……。

で、私はやっぱり曲重視派でして、特に知らないレコードを買う時は、メンツ以上に演目に拘ったものでした。これは今でも、そうです。

ところが、つまらないというか、自分の好みではない曲なのに、アドリブがやたらに良いという演奏も、確かに存在しています。

例えば、このアルバムが――

■The Sheriff / The Modern Jazz Qrartet (Atlantic)

モダン・ジャズ・カルテット=MJQが1963~1964年にかけて行ったセッションから作られたアルバムです。

当時のバンドはすっかり人気が安定していたようで、ライブでは定番レパートリー、一方新作スタジオ盤では新曲録音という、ちょうどマイルス・デイビスと同じよう活動になっていたようです。

ただしその新作が、決して面白い出来ばかりではありません。同時期ならば、どうしてもライブ、あるいはライブ盤が楽しいのは、万人の認めるところでしょう。このあたりは、どうしてライブで積極的に新曲を演奏しないのか、ちょっと不思議ではありますが、結局、ウケないと判断していたのでしょうか……? なんか勿体無い贅沢だと思います。

さて、このアルバムは、そうした新曲盤のひとつですが、今となっては有名ボサノバ曲「黒いオルフェ」が入っているというお楽しみがあります。

録音は前述のように幾度かのセッションに分かれていますが、それもまた、確証が得られないのが実状です。そしてメンバーはもちろん、ミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds) という不動の面々ですが――

A-1 The Sheriff (1963年5月17日録音)
 ジョン・ルイスが書いたアップテンポのオリジナル曲で、テーマ部分の「間」の取り方が如何にも、という仕掛けになっています。
 ところがアドリブパートが物凄く、猛烈な勢いで疾走するミトル・ジャクソンとシャープに絡んでくるジョン・ルイスが見事です。このあたりは厳しいリハーサルの痕跡も覗えますが、これぞMJQという纏まりは流石だと思います。
 そして最後はテンポを落としてジャズそのものを演じるという、サービス精神も良いですねっ♪

A-2 In A Crowd (1964年録音?)
 これもジョン・ルイスのオリジナル曲ですが、やや、メロディにヒネリが足りない感じです。
 しかしアドリブパートでは、まずジョン・ルイスが大健闘! 起伏の無い展開ながら妙に魅了されます。またミルト・ジャクソンは早いテンポながら独自の歌心を全開させ、テーマメロディより素敵なアドリブメロディを出しています。

A-3 Bachianas Brasileiras (1963年5月16日録音)
 バロックとボサノバの楽しい融合とでも申しましょうか、作曲はブラジル人のエイトル・ヴィラ・ロボスですが、アレンジはジョン・ルイスでしょう。ちなみに曲名は「ブラジル風バッハ」です!
 そしてこれは名演ですねっ♪ 一部のスキも無いところに疲れてしまいますが、ミルト・ジャクソンのアドリブは本当にアドリブかどうか、疑わしいほどに完成されています。
 もちろん他の3人のパートも完璧ですからねぇ~♪ 名演としか言えません。もちん名曲でもあります。本当に何度聴いても飽きませんよ♪

A-4 Mean To Me (1963年5月16日録音)
 これは有名スタンダードなんで、テーマが流れた瞬間から和みます。
 もちろんミルト・ジャクソン主導による歌心優先モードで演奏が進行し、緩やかなテーマの提示から小気味良いアドリブパートまで、当にMJQここに有り! という仕上がりです。分かっちゃいるけど止められませんねっ♪

B-1 Natural Affection (1963年5月16日録音)
 録音当時流行していたボサノバを意識して書いたと思われるジョン・ルイスのオリジナル曲で、演奏も涼しいボサビートで展開されていますが、肝心のテーマメロディが物足りません。
 しかしミルト・ジャクソンがアドリブを始めると状況は一変! ソフトな情感が満ち溢れ、さらに情熱的な展開にまでなるのですから、ジャズは素晴らしいです。もちろんテーマメロディよりも素敵なアドリブメロディが、たっぷり出てくるんですから、たまりませんねぇ♪

B-2 Donnie's Theme (1963年5月16日録音)
 パーシー・ヒースのベースが巧みなリードを聞かせる、これもジョン・ルイスのオリジナル曲ですが、これといったテーマメロディが無く、バンド全体の絡みで展開される演奏です。
 となれば、ミルト・ジャクソンが俺に任せろ! という大活躍です。美メロアドリブがビンビン飛び出し、合の手を入れるリズム隊も楽しそう♪
 さらにジョン・ルイスが「間合いの芸術」とまでは行かないものの、それらしいノリで迫ってきますので、憎めません。ある意味、このアルバムでは出色でしょうか。

B-3 Carnival / 黒いオルフェ (1963年録音?)
 そしてお待ちかね、哀愁漂う名曲のメロディを余韻を大切にしながら聞かせるミルト・ジャクソンは、本当の自然体で好感が持てます。コニー・ケイのドラムスも良い感じ♪ アドリブパートでも余計な手出しはしないので、演奏はクールに熱くなり、この曲にして、この演奏有りという決定版になっています。
 ジョン・ルイスの予想外の良さにも目覚めます。

ということで、何故かジョン・ルイスのオリジナル曲が面白くないんですが、演奏は成熟した濃厚なもので、しかもスマートでお洒落です。

そのあたりが物足りないというファンも確かに存在するでしょうが、これはMJQというバンドが持つ宿命でしょう。つまりアドリブも演奏の纏まりも出来すぎなんです。それゆえに安心感もあるんですが……。

ちなみに私が今、聴いてるのは、最近紙ジャケット仕様で発売された日本盤CDですが、これがリマスター最高! アトランティックは必ずしも音の良いレーベルではありませんが、それはアナログレコードの世界だけであって、マスターテープはきちんと作られていたことが分かりますので、オススメです。

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地味なリーダー

2007-01-22 18:23:26 | Weblog

さてさて、今日も1日が終わります。

こんな風に過ぎていくのなら、と浅川マキが歌ったのは、遥か大昔の事のようです。

ということで、本日は地味なリーダーは如何にして……、というテーマです――

Imformal Jazz / Elmo Hope (Prestieg)

現場ではリーダーが目立たない方が、良い仕事が出来る! そういう業界が、確かにあります。

ではジャズの世界では、どうでしょう?

リーダーは、けっこう目立つ人が多いようです。例えばアート・ブレイキーやマイルス・デイビス……等々、だから優秀でアクの強いメンツを集められるんでしょうが、これがレコード製作の現場となると、仕切りがレーベルのプロデューサーになりますから、時としてリーダーの存在があやふやになる事が、間々あるようです。

本日の1枚なんか、いや、「なんか」ってことはないですが、良いセッションにしようと集められたメンツが強力過ぎて、肝心のリーダーが一番地味という……?

録音は1956年5月7日、メンバーはドナルド・バード(tp) とハンク・モブレー(ts) がジャズ・メッセンジャーズから、ジョン・コルトレーン(ts) 、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) がマイルス・デイビスのバンドから参加していますが、リーダーのエルモ・ホープをこれ以上の知名度というファンがいたら、贔屓の引き倒しでしょう。しかし――

A-1 Weeja
 エルモ・ホープのオリジナル曲となっていますが、実はビバップではお約束のリフを用いたアップテンポの演奏です。
 まず景気の良いフィリー・ジョーのドラムスに導かれたテーマ部分に、参加したスタア達のブレイクが織り込まれる演出は、既にして白熱の雰囲気で、実に良いです。
 アドリブパートでは、まずドナルド・バードがソフトで流麗な歌心を披露♪ それでいて若さも感じさせるんですから、なかなかの名演だと思います。
 そして続くハンク・モブレーとジョン・コルトレーンのテナー対決が、またまた興奮を煽ります! 幾分モコモコの音色で奮闘するハンク・モブレーに対し、ギスギスとした音色とフレーズで対抗するジョン・コルトレーンという構図は、如何にもハードバップ全盛期の輝きでしょう♪ 終盤では1コーラスずつのバトルになるんです♪
 肝心のリーダー=エルモ・ホープはバド・パウエル系のビバップ丸出しスタイルでありながら、ハンク・ジョーンズの味わいも含んだ、しっとり派でしょうか? 地味ながら随所にキラリと輝くフレーズを聴かせてくれます。
 またポール・チェンバースのベースがブンブン唸り、フィリー・ジョーのメリハリの効いたドラムスが本当に最高のリズム隊です。実際、マイルス・デイビスと一緒の時よりもノッているかもしれません。特にフィリー・ジョーに関しては代表的な快演だと思います。終盤のソロチェンジとドラムソロあたりは、たまりませんねっ♪

A-2 Polka Dots And Moonbeams
 スローで演奏されるスタンダード曲ということで、エルモ・ホープの作るイントロが哀愁どっぷりです。そしてドナルド・バードの素直なテーマ吹奏! サビで優しさを響かせるハンク・モブレーも「味」の世界です。
 さらにベースとドラムスがスローテンポながら、強いビート感を打ち出しているのも高得点! 全くダレませんからねぇ~♪
 気になるアドリブパートでは、エルモ・ホープが先発で豊かな歌心を披露すれば、ジョン・コルトレーンはダーク音色でサブトーンまで駆使した出だしで勝負です。
 そしてドナルド・バードが艶やかなバリエーションを聞かせれば、ハンク・モブレーは十八番のタメとモタレに加えて、倍テンポ気味の早いフレーズまでも織り込んだ職人技を披露するのです。
 あぁ、何気なく凄いです。これがモダンジャズ黄金期の勢いなんでしょうねぇ~、和みます。

B-1 On It
 B面はエルモ・ホープのオリジナル・ブルースでスタートしますが、相変わらずフィリー・ジョーが絶好調です。
 アドリブ先発はドナルド・バードが快適に、そして溌剌と吹きまくりですが、やや型にはまった雰囲気でしょうか……。エルモ・ホープも、ちょっと大人しい感じですで???
 しかしハンク・モブレーが登場するとそれが一変! 珍しいくらいに最初から突っこんでくるノリと独自のモタレの妙、さらにジョン・コルトレーンを意識したかのような擬似シーツ・オブ・サウンドまで聞かせます。
 するとジョン・コルトレーンは、逆にタメを活かしたフレーズを出しつつ、後半ではハンク・モブレーとのバトルに持って行くという、最高の展開です。う~ん、なかなか楽しい、と言うよりも、2人とも不慣れな意地の張り合いがあるようで、ニンマリしつつもハラハラするのは、これも贔屓の引き倒しかもしれません……。
 最後は強引に終わらせた雰囲気が……。

B-2 Avalon
 ベニー・グッドマンでお馴染みのスタンダード曲が、アップテンポで豪快に演奏されています。
 アドリブパートではエルモ・ホープが、ようやく本領発揮という感じでしょうか、バックでサクサクと気持ちが良いフィリー・ジョーのブラシを従えて快演です♪ ビバップスタイルですが、歌心もたっぷりだと思います。
 そしてスルスルとすべりこんで来るハンク・モブレーが強烈に最高です! 一瞬の間でステックに持ち替えて激烈ビートを送り出すフィリー・ジョーも素晴らしく、ポール・チェンバースのベースは、一層ブンブンブン! あぁ、これがハードバップの醍醐味でしょうねぇ~♪♪♪
 こうなるとドナルド・バードも黙っていられないところでしょう、これまた大ハッスルしすぎて、良く聴くと同じ様なフレーズばっかり吹いているのは、ご愛嬌♪
 しかしジョン・コルトレーンは、まだまだ思い余って技足りず状態……。ツッコミと縺れ具合が散見されますが、それが逆に勢いへ繋がっているのは時代の流れかもしれません。

ということで、やはり結果的にリーダーよりも共演者が目立っていますが、エルモ・ホープだって悪いはずは無く、特にフィリー・ジョーとの相性は抜群ですから、それがセッションを成功に導いたとも解釈出来ます。

ちなみにこの2人は共演が多く、きっと仲が良かったか、ウマが合ったんでしょうねぇ。気になる皆様はディスコブラフィーを検索してみて下さいませ。

またエルモ・ホープというビアニストが地味という印象は免れませんが、私は、この人が入っているセッションが妙に気になってしまいます。なんか奥行きがある演奏になっているような……。で、気がつくと私のレコード棚には、この人のコーナーが出来ているほどです。まあ、それほどレコーディングが多いわけでは無いのですが♪

で、やっぱり地味な人なんですが、この人でなければ、当時これだけの若手精鋭を集めたセッションは無理だったのかもしれない……、と強引に結論づけています。例えばレッド・ガーランドやウィントン・ケリーあたりだったら、火傷しそうな熱さになって、挙句、空中分解が予測されませんか?

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