OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

実相寺監督、逝く……

2006-11-30 18:55:40 | Weblog
特撮ファンにはお馴染みの映画監督、実相寺昭雄氏の訃報に接しました。

TBS~円谷プロ系のウルトラシリーズや怪奇大作戦の諸作で一躍注目されましたが、リアルタイムでは子供心に、なんて暗い画面の人だろうと思っていました。

実際、その凝りすぎと言うか、アクの強い作風は必ずしも勧善懲悪では無く、また人間の嫌な部分、生きていくためには避けられない暗黒面を、あえて選んだ製作方針だったようです。

それが後年、スタイリッシュな映像美学と共に高く評価され、実相寺監督作品を認めないものは、バカにされるような風潮になったことは、やや悲しいものがありました。

それはさておき、やはり観て納得の作品が多く、それはエログロ味の強い部分でも存分に発揮されていました。

本日は、ちょっとショックで眩暈がしています。

歌舞音曲は自粛ということで、本日の1枚は休載させていただきますが、何かひとつ映像作品を、じっくりと味わいながら鑑賞したいと思います。

最後に衷心より、御冥福を祈念致します。合掌。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

強い押し!

2006-11-29 17:24:24 | Weblog

あぁ、もう今年も1ヵ月ちょっとで終わりかぁ……。

自分の寿命も確実に縮んでいるわけですが、日々を大切にする意味でもプログだけは続けたいと思います。

ということで、本日は――

Jimmy Smith At The Organ Vol.2 (Blue Note)

どんな世界にも押しの強い人はいるもんですが、ジャズ界ではジミー・スミスが、そうじゃないでしょうか?

というのは、完全に私的な推測に過ぎませんが、このアルバムを聴いてしまうと、そうとしか思えなくなります。

録音は1956年3月27日、メンバーはジミー・スミス(org)、ソーネル・シュワルツ(g)、ドナルド・ベイリー(ds) というベース抜きのオルガントリオです――

A-1 The Champ
 ディジー・ガレスピーが書いたハードバップのブルースですが、ジミー・スミスは強烈なアップテンポで、これ以上無いウルトラ・ハードバップに演奏しています。
 なにしろ初っ端からグイグイバリバリ! よくこんなに指と足が動くもんだと呆れるほどの躍動感! もちろん演奏はコーラスを重ねるにつれ、熱気が充満していくのです。
 共演者も必死の追走というか、ソーネル・シュワルツの合の手風のリズムギターも激演ですし、ドナルド・ベイリーも魂のリズムキープが見事です。
 そしてついに4分を過ぎたあたりから、ジミー・スミスは痙攣するようなフレーズも絡めながら、バンドメンバーを強引に引き連れて地獄のグルーヴを! 後を引き継ぐソーネル・シュワルツのギターが弛みそうになると、激を飛ばすかのようなツッコミまで入れるのですから、たまりません。
 もちろんクライマックスは激情の嵐! 特に6分40秒目からの爆発的なノリは、聴いていて相当の覚悟を強いられます! しかもラストテーマの後には荘厳な教会ゴスペルのようなエンディングまでつけるのですから、全く天国と地獄を往復させられるような大名演になっています。

A-2 Bayou
 一転してスローでハードボイルドなジミー・スミスのオリジナルです。
 このムード満点な曲調は聴いていると、まるっきり日活ニューアクションの主人公になったような気分にさせられます♪ 俺は、渡哲也か藤竜也!?
 う~ん、しかしジミー・スミスのオルガンからは容赦ない厳しいフレーズが出てきます。2分5秒目位から後のコード弾きで醸し出される世界は、重厚でハートにグサリと来る、激情と哀切です!
 ギターとドラムスのサポートも自分の役割をしっかりとわきまえた好演ですし、これまた最高ですねぇ~♪

A-3 Deep Purple
 これもスローな展開で、美メロのスタンダード曲が演奏されていますが、激烈なイントロから一転、ギターでテーマが奏でられる展開が本当に上手いと思います。実際、これが和むんですよねぇ~♪ 背後で蠢くオルガンのドヨヨ~、という低音の響きにもグッときます。
 ただしジミー・スミスは自分のパートになると、和みよりも激情を優先させていますから、強引です! リスナーをどうしても自分の世界に引き込みたいという思惑でしょうか? しかしこれは、北風と太陽だと思うのですが、いつのまにかジミー・スミスが太陽になってしまうあたりが、天才の証明かもしれません。
 スバリ、凄まじい演奏です。大音量で聴きましょうね♪

B-1 Moonlight In Vermont
 これもムード先行型のスタンダード曲ながら、ここでも情熱が優先されています。
 普通、こうゆうことをやられると、クサイ! とかダサい! と言われるのが常だと思うのですが、ジミー・スミスは持ち前の押しの強さで、臆面も無く乗り切っていくのですから、やはり大したもんだと思います。
 もちろんそれは、ドナルド・ベイリーのキッチリしたビートの刻みにも助けられているわけですが……。憎めません。

B-2 Ready 'N Able
 ジミー・スミス作曲の快適なハードバップです。
 アドリブパートでは、まず先発のソーネル・シュワルツが幾分神経質なギターソロ、続くジミー・スミスは、これも若干忙しないスタイルに終始していますが、ドナルド・ベイリーが珍しく重量級のドラムスで煽りますから、不自然になっていません。
 ソーネル・シュワルツはサイドギターで上手さを発揮していますし、このドラムスの録音はゴスペル色が強くて、大好きです。
 そして終盤へかけて盛り上がっていくジミー・スミスのオルガンは、やっぱり押出しが強いです。

B-3 Turquoise
 これもジミー・スミスのオリジナルですが、一転して幻想的な響きが支配的です。
 ソーネル・シュワルツのギターソロも「間」を大切にしていますが、ダレる事が無いのはジミー・スミスの分厚いコード弾きの伴奏ゆえだと思います。
 そして演奏がグイグイと盛り上がっていく展開には、ついついボリュームを上げさせられるのでした。

B-4 Bubbis
 オーラスは楽しいゴスペルファンキーの世界です♪
 ドナルド・ベイリーのドラムスは手拍子足拍子という感じですし、ジミー・スミスのオルガンからは楽しいフレーズがテンコ盛りで提供されています。もちろんソーネル・シュワルツのサイドギターも楽しく、またソロパートでは正統派ビバップブルースのリックで迫ってくれます。この人も私は大好きですねぇ~♪
 あぁ、当時の黒人クラブでは、こんな演奏で盛り上がっていたんでしょうねぇ~♪ 行ってみたいなぁ、その頃へ!

ということで、圧倒的にハードバップで押しの強い作品です。

特にA面は冒頭から強引とも思えるアクの強さで、大音量で聴いていると、身も心も持っていかれるような気分にさせられます。それが天国か地獄かは、個人差でしょうが! とにかく凄いとしか言えません。

またB面のハードボイルドな雰囲気も捨てがたく、オーラスでノーテンキに盛り上がる布石だけとは言いたくありません。こちらも大音量が必須かもしれません。

それとジャケットに写っているジミー・スミスの表情と仕草は、当にアルバムの内容そのものズバリです!

押しの強さに圧倒されるのも、たまには良いもんです♪

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あったかい、これっ♪

2006-11-28 19:14:46 | Weblog

今年は恐いほど、暖かい冬になりそうです。

雪国だっていうのに、こんなにポカポカして、いいんでしょうか……。

揺り戻しが恐いですよ、本当に。

ということで、本日は身も心も暖まる、王道のこれです――

Smithville / Louis Smith (Blue Note)

ジャズメンは本場ニューヨークで認められてナンボ、というのが業界の掟ではありますが、頑なに地元に留まる実力者も大勢います。

その理由は様々でしょうが、本日の主役たるルイ・スミスの場合は、演奏家よりもアトランタの高校の音楽教師という、指導者の道を選んだためでした。もちろん安定しないジャズメンよりはカタギの生活を、という部分もあるのでしょうが、それでも時折、地元のクラブには出演していたらしく、巡業してくる大物ミュージシャンと遜色無い腕前は、ニューヨークでも噂になっていたそうです。

そのルイ・スミスが1958年の短い期間、ニューヨークで活動していた時に吹き込まれたのが、このアルバムです。

録音は同年3月30日、メンバーはルイ・スミス(tp)、チャーリー・ラウズ(ts)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という、非常に魅力的なセッションです――

A-1 Smithville
 蠢くようなポール・チェンバースのベースに導かれて始まるスローブルースで、リラックスした中にもファンキーなルイ・スミスのトランペットが、「らしい」テーマを吹いてくれるだけで、もう満足です♪
 もちろんソニー・クラークの、これも真っ黒にファンキーな合の手ピアノがたまらなくグッときますし、先発でアドリブしていくチャーリー・ラウズの、幾分ハスキーなテナーサックスが、ハードバップの王道を聴かせてくれます。
 当然、リズム隊は粘っこく、ポール・チェンバースは刺激的な遊びを入れてきますから、油断なりません。
 そしてルイ・スミスは朗々としていながら、ファンキーな翳も併せ持ったスタイルで圧倒的です。まさにクリフォード・ブラウン直系の閃きですが、どこかイナタイ部分が、さらなる魅力です。
 加えてソニー・クラークのファンキー節が冴え渡るんですから、聴いている私は完全にKO状態♪ 名盤「クール・ストラッティン(Blue Note)」の続篇という趣です♪ なにしろ続くポール・チェンバースまでもが、その雰囲気にどっぷりですから!
 まさにアルバムの冒頭に相応しい、本当に強烈なブルースセッションだと思います。

A-2 Wetu
 一転、ルイ・スミスのオリジナルという、烈しいアップテンポのハードバップです♪
 激流のようなテーマが一糸乱れずに演奏されていく様は、当にモダンジャズ全盛期の輝きに他ならず、いつも同じようなフレーズばかり吹いているチャーリー・ラウズにしても、ここでは異様とも思えるハッスルぶりです。
 そして続くルイ・スミスは、ここでもクリフォード・ブラウン(tp) に優るとも劣らない素晴らしさで、輝かしいソロを聴かせてくれます。あぁ、こんな凄い人が短期間しか現役で活動しなかったのは、本当に勿体無い事でした。
 またリズム隊の恐ろしさは言わずもがなで、アート・テイラーの強靭なシンバルとハイハット、ソニー・クラークの俊敏なファンキー感覚、ポール・チェンバースのブリブリドライブは、二度と再現不可能な一期一会♪ トンパチなアルコ弾きにも絶句します。

B-1 Embraceablie You
 チャーリー・ラウズが抜けてのワンホーン演奏で、お馴染みのスタンダードがじっくりと楽しめます。
 まずソニー・クラークが作るイントロが素直で良いですねぇ~♪
 ルイ・スミスのテーマ解釈も余裕の歌心で、ノビノビとしていますが、演奏が進むにつれてシンミリ感が強まっていくあたりは、確信犯的な展開でしょうか……? とにかくアドリブとは思えない出来すぎフレーズの連発には驚愕してしまいます。
 もちろんリズム隊も力強く、ミディアムテンポながらグイノリになっていますから、ソニー・クラークも存分に泣きのフレーズを出していますし、ポール・チェンバースも、ハッとするほど危険なラインを弾いています。
 するとラストテーマでは、我慢出来なくなったのか? チャーリー・ラウズがハスキーな音色で、絶妙な絡みを演じ、陶然とさせらます。

B-2 There Will Never Be Anther You
 これも人気スタンダード曲ですが、ここではアップテンポで景気の良いハードバップに仕立て上げられています。
 ソニー・クラークの歯切れの良いイントロから2管ユニゾンでテーマが演奏されただけで、もう気分はワクワクギンギン♪ 間髪を入れずアドリブに突入するチャーリー・ラウズも、この頃はマンネリ感覚が薄くて最高です♪ ほどよい力み具合も快感ですねぇ~。
 そしてルイ・スミスは流麗なフレーズを次々に聴かせてくれるのです。あぁ、これぞモダンジャズの王道です! もちろんソニー・クラークも期待を裏切っていません。

B-3 Later
 オーラスも、これまた素晴らしいアップテンポのハードバップです。
 厳しいブレークから流れるような歌心を披露するルイ・スミスは、素晴らしいの一言♪ クリフォード・ブラウンの焼き直しと言ってしまえばミもフタも無いんですが、では当時、誰がここまで出来たのか? という疑問には答えるすべを持たない凄さがあると思います。
 続くチャーリー・ラウズはタフな一面も出た熱演ですし、ソニー・クラークも自分だけの「節」で突っ走ってい行きます。

ということで、隅々までハードバップ王道の輝きに満ちた「傑作盤」だと思います。

ただし、これが「名盤」とならなかったのは、クリフォード・ブラウン(tp) という、あまりにも偉大な存在があったからでしょう。その天才が不慮の事故で夭逝し、後継者と目されるトランペッターは数多出現しましたが、個人的にはルイ・スミスがイチオシです。

ただし、どうしても「そっくりさん」のイメージから抜け出せないのも、また事実……。本人もそのあたりを自覚して、第一線を退いたのでしょうか……? う~ん、勿体無い!

ちなみにルイ・スミスは、1970年代後半、突如として新作を録音し、ハードバップマニアを狂喜させましたが、それよりも1950年代のリアルタイムに活動を続けて欲しかったのが、ファンの本音ではなかったでしょうか?

ルイ・スミスはこのセッションからしばらく後、ニューヨークを去ったようですから、このアルバムは「お宝」という聴き方がますます強くなりますが、本当はリラックスして楽しめる1枚だと思います♪

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美奈子とクリスマス♪

2006-11-27 19:38:20 | Weblog

この時期、クリスマスソングが流れていますねぇ。和製のクリスマスソングも、なかなか雰囲気満点になってきたのは、宗教抜きの感覚が良い方向に作用しているのでしょうか?

私の中では、こんな曲を聴いています――

Ponta Box Meets Yoshida Minako (JVC)

吉田美奈子とくれば、村上秀一!

私の世代では、何故か、そうなってしまうのが普通です。

って、本当は、そうばかりでも無いんですが、それはそれとして、このアルバムは、ついに実現した本格的な共演によるジャズアルバムです――

01 Lullaby Of Birdland
02 All Of Me (take 1)
03 Waltz For Debby
04 I Love You Porgy
05 The Look Of Love
06 The Lady Wants To Know
07 In A Sentimental Mood
08 Tea For Two
09 I'm A Fool To Want you
10 Caravan
11 Moonlight Serenade
12 All Of Me (take 6)
13 No More Blue Christmas'

とにかく演目が琴線にふれまくりですねっ♪

ジャズスタンダートはもちろんのこと、マイケル・フランクスのボサノバヒット「The Lady Wants To Know」とかバート・バカラックの「The Look Of Love」も気になります。

録音は1998年10&11月、メンバーは吉田美奈子(vo)、ポンタボックスというのは、佐山雅弘(p,key)、バカボン鈴木(b)、村上秀一(ds,per) というバカテクのピアノトリオですから、期待しないわけにはいかないのですが……。

結論から言うと、綺麗すぎます。

ジャズの持っている自堕落な面とか不良っぽさ、胡散臭さが私には感じられません。

ポンタボックスの破天荒な姿勢も、ここでは、こじんまりとしています。

遠慮?

個人的には肩透かしの仕上がりだったんですが、最後に至って「No More Blue Christmas'」を聴いた瞬間、震えがきましたですねぇ~~~♪

もう、これ1曲で満足させられました。

私にとっての吉田美奈子は、上手さ凄さが満点の、最高に好きなボーカリストですが、必ずしも4ビートジャズが合っているとは思えません。中高音ではキャロル・キング風の節回し、低音ではモロにソウルフルなコブシが、ここでは出すことが出来ていないのです。

しかし「No More Blue Christmas'」は、素直なポビュラーボーカルとしての良さが全開しています。これからのクリスマスシーズンには、絶対です。

パーティで鳴らしてみて下さい。良い雰囲気になるでしょう♪ その後はお楽しみ~♪

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

意識過剰も、たまには良い

2006-11-26 19:08:57 | Weblog

ジャズはアドリブ!

それは間違いではありません。が、必要条件であって充分条件ではないのです。

そして、その証明のようなアルバムが、これです――

Inventions And Dimensions / Herbie hancock (Blue Note)

ハービー・ハンコックは多用な音楽性をジャズに活かすことが出来る、極めて有能なピアニストですが、やはり駆け出し時代は若気の至りというか、勘違いも多々ありました。

例えば1961年頃にドナルド・バード(tp) に見出され、ニューヨークに出てきた当時はハードバップ色が強いスタイルでしたが、ほどなく参加したエリック・ドルフィー(as) のバンドではフリーに走っています。

またマイルス・デイビス(tp) のバンドに抜擢されてからは、ビル・エバンスを自意識過剰気味に解釈してバンマスのゴキゲン伺いをしているような部分さえ、私には感じられます。

もちろんそれは、自己のアドリブ能力に自信がなければ示せる行動ではありません。

で、この作品は、定評のあった作曲能力よりも、アドリブで勝負している雰囲気が濃厚です。

録音は1963年8月30日、メンバーはハービー・ハンコック(p)、ポール・チェンース(b)、ウィリー・ボボ(ds.per)、チワワ・マルチネス(per) という変則ピアノトリオです――

A-1 Succotash
 歯切れの良いパーカッション&ドラムス、ブリブリのベースに支えられた変則ワルツビートの上で、ハービー・ハンコックがアドリブばっかり演じています。つまりテーマが無いんですねぇ……。
 ですから、今どこが演奏されているか、リスナーには全くわからないので、不安がいっぱいの時間が流れていくのです。もちろんハービー・ハンコックのアドリブやコード選びには、そこを狙った音が存分に使われていますが……。
 う~ん、ジャズはアドリブというのは、間違いだなぁ……。どんなにつまらないテーマでも、それが提示されていないと聴いていられないです。これは私が古い体質だからかもしれませんが……。
 演奏は終盤から打楽器の経文のような響きが顕著になりますから、行いの悪い私は地獄へ直行です。

A-2 Triangle
 これもいきなりアドリブで始まり、最初は一応4ビートでクールに演奏されていきますが、途中からラテンパーカッションが鳴り響く変則ビートになり、また4ビートに舞い戻るという構成です。
 このアルバムの中では比較的馴染める演奏ですが、やはりアドリブだけというのは、ツライものがありますねぇ……。モード主体の展開なので、誰かのリーダーセッションに参加したアドリブパートと思えば良いのかもしれませんが……。
 まあ、ハービー・ハンコックのピアノだけ、存分に楽しみたい人にオススメです。

B-1 Jack Rabbit
 早いテンポですが、ドラムスとパーカッション、そしてベースが好き勝手なビートを出していますし、ハービー・ハンコックも煮え切らないフレーズばかりのアドリブを演じています。
 なんか映画音楽のサントラ音源のようでもありますね。

B-2 Mimosa
 一応テーマらしきメロディが提示されるスロー曲です。
 そしてこれが、なかなかの美メロなんで、美しき流れを期待してしまうのですが、何故か全員が、どこかしら抽象的な観念にとらわれているように感じます。
 ただしハービー・ハンコックのピアノからは、一番「らしい」アドリブが生み出され、このアルバムの中では一番和める演奏でしょう。
 個人的には、この快感を求めて、アルバムを聴き続けているのでした。
 まあ、被虐の中の官能美という、SM的なものかもしれません。素敵です。

B-3 A Jump Ahead
 烈しいシンバルに煽られて初っ端から疾走するハービー・ハンコックが痛快です。
 もちろんこの演奏にもテーマなんかありません。ただただアドリブが存在するだけですが、それが最高に上手くいった瞬間がたっぷり♪
 そして要所にポール・チェンバースの交通整理のようなブレイクが用意されており、そこから次の展開を求めてバンド全体が烈しく燃焼していくところが、たまりません♪ もっとも普通のジャズっぽい演奏です。

ということで、安心して和めない雰囲気のアルバムです。

その一番の原因は曲テーマが無いことで、いくらアドリブ命のジャズでも、これは致命的! 実際、ジャズはアドリブさえ良かったら名演というのは、机上の目論見に過ぎないことが納得されると思います。

ハービー・ハンコクックにしても、これが成功作とは思っていなかったようで、人気ピアニストのわりには、普通のピアノトリオ物を作らなかったのは、この所為でしょうか?

しかしそれでもこのアルバムが良いのは、既に述べたように、これが映画のサントラ音源の趣を有していることです。そして実際に車の中で聴いていると、自分が何か、映画の登場人物になったかのような錯覚に浸り、悦に入ってしまうんですねぇ♪

まあ、自意識過剰の世界を演出するには、最高の1枚かもしれません。ジャズ喫茶や評論家の先生方からバッサリと無視されているのも、ムベなるかなです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パリは名演が多い♪

2006-11-25 19:13:00 | Weblog

菩提寺の修繕に伴う集まりがあって、一応役員に名前を連ねている私も出席しましたが、なんでこんなに金がかかるのか、全員、頭を抱えましたですね……。

これでは檀家から集金するのも一苦労だなぁ……。

と言って、そのまんまにするのも無理という……。

だいたい寺の住職がパリに旅行して帰りの飛行機が遅れ、約束の時間にその場に居ないという、呆れた事態に!

ということで、本日はこれにしました――

First Dose In Paris / Rolling Stones (Exile)

久々にストーンズのブートです。

録音は1976年6月4日、パリ公演の初日とあって、ストーンズの面々は気合が入っていますが、それというのも、テレビ収録とライブ盤録音があったからです。

この時期のライブにはサポートとしてビリー・プレストンが参加していることもあり、歴代最高のファンキーな演奏が展開されていて、私は大好きです。

気になる録音状態は、客席からの隠密ですが、なかなか臨場感のある優れもの♪ 演目は以下のとおりです――

Disc 1
01 Honky Tonk Women
02 If You Can't Rock Me - Get Off Of My Cloud
03 Hand Of Fate
04 Hey Negrita
05 Ain't Too Proud To Beg
06 Fool To Cry
07 Hot Stuff
08 Starfucker
09 You Gotta Move
10 Angie
11 You Can't Always Get What You Want

Disc 2
01 Band Introductions
02 Happy
03 Tumbling Dice
04 Nothing From Nothing
05 Outa Space
06 Midnight Rambler
07 It's Only Rock'n Roll
08 Brown Sugar
09 Jumping Jack Flash
10 Street Fighting Man

ディスク2の中盤にはビリー・プレストンの2曲があり、その後の「Midnight Rambler」からは怒濤のノリというか、曲が終わっての大歓声に間髪を入れず、次の曲がスタートするという激しさで、もう最高です!

また前半のディスク1では、「Hey Negrita」の粘っこいノリがいかにもライブ!

「You Gotta Move」から「Angie」を挟んで「You Can't Always Get What You Want
」へ流れていく構成は、この日だけのスペシャルで、緊張感があります。正直言うと、正規盤「ラヴ・ユー・ライブ」よりも好きですねっ!

こういうブツが出てくるんで、ブートは止められないのです。そして最近、またまたドロ沼に落ちかかっています。

しかも、この頃は機材もアナログでしたし、録音テクニックも個人差が大きく、ダメな音源も多数あります。そして、それが逆にある種の楽しみでした。今は隠し録りとはいえ、デジタル機材でそれなりに綺麗な音なので、どれも同じ様で面白みが無くなりましたですねぇ……。

このCDはかなり以前に入手したものなので、現在出回っているかは不明ですが、ストーンズのブート入門には最適かもしれません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドン・バイアスは東宝系

2006-11-24 18:34:44 | Weblog

今年の冬は暖かいらしいですね。

実際、この時期にしては、私が働いている雪国も穏やかでした。

自然環境が良いんで、雪さえ少なければ余生はここで送りたいほどなんですが、現実は毎年、豪雪なんで……。

ということで、本日は昨日アップ出来なかった、これを――

A Tribute To Cannonball / Don Byas - Bud Powell (Columbia / Sony)

お気に入りのミュージシャンの発掘音源というのは、本当に嬉しいものですが、失望されられるブツも少なくありません。

しかし1979年に突如発売されたこのアルバムに関しては、リアルタイムで聴いた瞬間の驚愕と感動が、今も鮮烈です。

ちなみにタイトルは、このセッションをプロデュースしたキャノンボール・アダレイ(as) にちなんでいるらしく、元々はドン・バイアスのリーダー盤として企画されたものですが、何故かお蔵入り……。しかし同時期にはバド・パウエルの隠れ名盤「セロニアス・モンクの肖像(Columbia / Sony)」もキャノンボール・アダレイによって製作されていますので、決して内容が悪いはずは無かったのです。

録音は1961年12月15日のパリ、メンバーとドン・バイアス(ts)、バド・パウエル(p)、ピエール・ミシェロ(b)、ケニー・クラーク(ds) を中心に、曲によってアイドリス・シュリーマン(tp) が加わります――

A-1 Just One Of Those Things
 コール・ポーターの名曲が早いテンポで演奏されますが、当時、レギュラートリオとして活動していたリズム隊が、劇的なイントロから溌剌としてテーマを提示! その勢いをそのまんまにアドリブに突入するドン・バイアスは、えっ! コルトレーン!? という強烈さです。
 この人は基本的にはスイング時代のプレイヤーで、コールマン・ホーキンスの影響が濃厚なんですが、そのモリモリブリブリと吹きまくる躍動感満点のスタイルとモダンな感覚は、ベニー・ゴルソン~ジョン・コルトレーンに直結するものだと、私は思います。
 しかもスロー物が得意という、本当の実力者なんで、どんなに吹きまくっても歌心を蔑ろにしない姿勢が、私は大好きです。
 で、ここでの演奏なんか、目隠しテストだとベニー・ゴルソン、と答えてしまいそうな♪ とにかくグイグイにノッています。
 またバド・パウエルが強烈で、当たり前ながら、これが正統派ビバップピアノ! ケニー・クラークのドラムスとの相性も最高ですし、ピエール・ミシェロのベースが、これまた、どっしりとした快演になっています。
 そしてラスト・テーマでのドン・バイアスのテナーサックスが、本来の魅力を発揮してくれるのでした♪ 凄いです!

A-2 Jackie My Little Cat
 ドン・バイアスが本領発揮のバラード演奏♪
 なんて素敵な曲なんでしょう♪ ということで、スタンダードかと思ったら、ここに参加しているフランス人ベーシストのピエール・ミシェロのオリジナルでした!
 あぁ、これで酔わないジャズ者は、いないでしょう……♪ 歌心もさることながら、テナーサックスの音色そのものが、大きな魅力になっています。
 バド・パウエルの淡々とした味わいが、また良いんですねぇ♪ 本当にジワジワと暖まってくる名演だと思います。

A-3 Cherokee
 スタンダード曲ながら、それはビバップ創成のカギを秘めたコード進行らしいので、モダンジャズでは定番の演目です。
 ここでは初っ端からドン・バイアスが過激なブローを聴かせ、快調にテーマを吹奏してくれるだけで、血が騒ぎます。もちろんアドリブでは元祖シーツ・オブ・サウンドという音の洪水ですが、けっしてスケール練習になっていないのは流石です!
 そしてバド・パウエル! やや調子が出ていませんが、もがき苦しみつつも自己のペースを掴んでいく様は、良く言えばジャズのスリルでしょう。
 見かねたドン・バイアスが、豪快に聴かせてくれるのは、お約束です。

A-4 I Remember Clifford
 ベニー・ゴルソン(ts) が書いた説明不要のジャズバラードを、同じスタイルの本家=ドン・バイアスが演奏してくれる、それだけで満足してしまいますが、出来がまた、素晴らしいんですねぇ~♪ ふすすすすす~、というテナーサックスのサブトーンが控えめに効いていますし、情感たっぷりの力強さが嫌味になっていません。あぁ、何度聴いても、シビレます♪
 またバド・パウエルが慎重に音を選びながら、情感豊かに曲想を膨らませていくあたりも、実に良いですねぇ~♪

A-5 Good Bait
 ジョン・コルトレーンの決定的な名演が残されている曲ですから、ドン・バイアスの元祖シーツ・オブ・サウンドがどう炸裂するか、ワクワクしてしまいますが、おぉ、やっぱり! キャノンボール・アダレイの指示かもしれませんが、それほど聴かせてくれません。まあ、要所で「らしい」フレーズを吹いているだけなのが残念……。
 またここではアイドリス・シュリーマンが加わっていますが、無難な演奏に終始しています。しかしバド・パウエルはリラックスしたノリが素晴らしく、そのまんまバンド全体をセカンドリフに導いていくあたりは、モダンジャズの快感♪

B-1 Jeannine
 おぉ、これはキャノンボール・アダレイのバンドでも十八番になっているモード系の名曲です♪ もちろん私は大好きで、この曲が入っていれば、そのアルバムは無条件に入手していた時期があったほどです。
 で、ここでの演奏は、スバリ、痛快です♪
 まず快適なテーマ合奏から、ドン・バイアスが意想外なモダンなノリでブリブリと吹きまくり、アイドリス・シュリーマンはマイルス・デイビス風のクールな展開!
 そしてバド・パウエルはモードもコードも関係無しという、全くの自己流を貫き通した快演です♪ 背後で敲きまくるケニー・クラークも良い感じ!

B-2 All The Things You Are
 ビバップ時代から定番となっているスタンダード曲で、モダンジャズ的に面白いコード進行なので、なかなかの難曲ですが、このメンツならば何の問題も無く快演が展開されていきます。
 まずイントロのアレンジが刺激的! 続いてドン・バイアスがテーマを吹かずにアドリブ一直線ですから、アイドリス・シュリーマンも右ならえの快調さです。う~ん、こういう展開があったのか! もちろんドン・バイアスも元祖シーツ・オブ・サウンドを炸裂させています。
 そしてバド・パウエルは、正統派のパウエル節に加えて幻想的なコード付けまで披露する、これも快演だと思います。
 さらにクライマックスではケニー・クラークのドラムスが大暴れ!

B-3 Jackie
 「A-2」の別テイクで、これもドン・バイアスのテナーサックスがムード満点のキャバレーモード♪ というか、これは日活キャバレーよりは、東宝ナイトクラブの世界ですねっ♪ バド・パウエルの内向的な伴奏も素晴らしいと思います。

B-4 Myth
 オーラスはベースのピエール・ミシェロが書いた素敵なハードバップです。ちょっと泣きが入ったデューク・ジョーダンの世界という、変則ブルースなんですねぇ~♪
 ですからドン・バイアスもグイノリながら、泣きぬれていく情感を漂わせ、アイドリス・シュリーマンは歌心優先です。
 もちろんバド・パウエルも素晴らしく好調で、自分のソロパートが待ちきれずにアドリブを始めてしまうあたりが、微笑ましいところ♪ 例のゲーゲーいう呻き声が逆に安心感に繋がっていくのでした。
 う~ん、それにしてもピエール・ミシェロは作曲が上手いですねぇ♪

ということで、これは発売当時から私の愛聴盤になっています。

参加メンバーはフランス人のピエール・ミシェロを除いて、全員が本場アメリカで活躍していた超一流でしたが、時流に押されて欧州に活路を見出していた時期とはいえ、決して落目では無かったことが、このセッションから納得出来ます。

特にドン・バイアスはスイング時代の人ならが、非常にモダンなセンスがあるというか、後輩のベニー・ゴルソンやジョン・コルトレーンのルーツがこの人にあるという証明を楽しんでも許される雰囲気です。

またバド・パウエルを中心としたリズム隊は、当時、スリー・ボイシスというバンド名でレギュラー活動していましたので、コンビネーションは最高! 野太いピエール・ミシェロにビシバシ叩くケニー・クラークという相性もバッチリです。

聴かず嫌いは損をするというアルバムなんで、機会があれば、ぜひとも♪

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビートルズの新作って、なんだっ!

2006-11-23 17:46:19 | Weblog

ダメだ……、何度やってもアップ出来ない……。

PCが不調なのか、サーバーが無理なのか?

まあ、無料のブログですからねぇ……、本日の休載、ご容赦下さい。

ところでビートルズの新作とされる「ラブ」という盤は、???です。

コラージュとダビング、その作業が面白いという噴飯物ですが……。

これ以上は、語れません。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

怖ろしき名演!

2006-11-22 18:36:43 | Weblog

仕事は自分だけで出来るもんじゃありませんが、こう相手の気まぐれに付きあわされると、カチンときます。

本日も妙に時間が無駄になったり……。

ということで、今日は、これです――

Art Blakey's Jazz Messengers With Thelonious Monk (Atlantic)

今月、紙ジャケット仕様で復刻されたCDを聴いています。

結論から言うと、万難を排して入手をオススメ致します。

特筆すべきはモノラルマスターを使用していますし、リマスターが愕くほどに良好です♪

昔っから、この作品は名演・名盤とされていましたが、正直、私にはピンッときませんでした。それはアナログ盤時代からステレオバージョンを聴いていたことと、それが音質・盤質ともに悪かった所為に他なりません。

隙間だらけというか、音の密度が薄く、そこへセロニアス・モンクの訥弁スタイルと怒濤のアート・ブレイキーが、遠くで汽笛を聞きながら状態……。ベースの存在感の無さも、致命的でした。

ところが今回の復刻では、それが見事に解消され、グッと厚みを増した音になっています。う~ん、本当に凄い名演だった!!!

録音は1957年5月14&15日、メンバーはビル・ハードマン(tp)、ジョニー・グリフィン(ts)、セロニアス・モンク(p)、スパンキー・デブレスト(b)、アート・ブレイキー(ds) という、特編メッセンジャーズ! 演目も1曲を除いて、セロニアス・モンクのオリジナルになっています――

A-1 Evidence (1957年5月15日録音)
 アート・ブレイキーの爆裂ドラムソロに導かれてスタートする緊張感いっぱいの先鋭ハードバップです。それはテーマ部分からテンションが高く、アドリブ先発のビル・ハードマンも最初っから気合充分!
 もちろんアート・ブレイキーも猛烈な煽りですから、続くセロニアス・モンクがどんなに自己主張しようとも、揺ぎ無いグルーヴが最後まで継続しています。
 そして飛び出すジョニー・グリフィンが、暗中模索の迷い道から強烈なエネルギーを発散させる早吹きですから、セロニアス・モンクも突っ込めないほどに、熱いです! 最後にはアート・ブレイキー独壇場のドラムソロまで!
 しかし、これさえも、このアルバムの中では挨拶代わりという恐ろしさなのです。

A-2 In Walked Bud (1957年5月15日録音)
 イントロからセロニアス・モンクが不協和音の嵐でバンドを導いていきますが、流石はアート・ブレイキーです。お前の好きなようにはさせんぞっ! というリーダーとしての強烈な自負がミエミエのドラミングで、バンドメンバーをサポートしていくのです。
 するとそれに応えて、まずジョニー・グリフィンが全く自己のペースでハードバップを満喫させてくれる大熱演! 背後で炸裂するセロニアス・モンクの常軌を逸したコードも素晴らしい響きです。
 そしてソロパートでは、ますます唯我独尊で孤立を深める訥弁スタイルが、グサリっと胸に突き刺さる名演だと思いますし、逆に淡々とバックを務めるベースとドラムスに凄みが滲んでまいります。
 ただしビル・ハードマンが、若干、煮えきっておらず、それゆえにアート・ブレイキーとセロニアス・モンクの煽りが激烈になるのでした。

A-3 Blue Monk (1957年5月14日録音)
 セロニアス・モンクにしては穏やかな曲調のブルースで、ニューオリンズ風の響きからして、私の大好きな曲♪ それをここでは、少し凝ったアレンジまで入れて熱演されるテーマから、もう、最高の名演に仕立て上げられています。
 アドリブパートでは、まずジョニー・グリフィンが神経質な出だしから、怒りを秘めたフレーズを積み重ねて場を熱くし、緩いテンポの中で独り相撲の快演です。
 続くセロニアス・モンクも、自然体の中で自己中心の音を模索し、バックのアート・ブレイキーやスパンキー・デブレストを惑わせる強烈さ!
 ですから最後に出るビル・ハードマンは、困り果ててのハードバップを演じるのがやっとという有様ですが、それゆえに素晴らしい演奏になってしまうんですから、セロニアス・モンクの存在感は、流石だと思います。
 またベースの歪んだような響きは、今回のCD復刻では特に顕著で、ここでも決定的な魅力になっています。

B-1 I Mean You (1957年5月14日録音)
 和やかさと劣情が交互に繰り返される名曲・名演です。
 しかもそれを強引にハードバップにしてしまうのが、ジャズ・メッセンジャーズの凄さでしょう。
 まずはジョニー・グリフィンが好き放題に吹きまくり、セロニアス・モンクが伴奏しないことから、増長しまくりの痛快さです!
 ただし、それでも侮れないのがセロニアス・モンクの面白さというか、それまでのことがウソのような屈託の無さで、思いっきり自分だけのアドリブを演じてしまうのですから、いやはやなんともです。
 そしてビル・ハードマンが混乱収拾の熱演を聴かせてくれるという、まあ、このあたりが狙いとミエミエですが、憎めません。

B-2 Rhythm-A-Ning (1957年5月15日録音)
 これぞっ、ハードバップという大名演です!
 等と、最初から力が入ってしまいましたが、ここでテーマを演奏するバンドの勢い、膨らみとドライブ感は、本当に猛烈なんですねぇ~♪
 セロニアス・モンクが自分だけの思惑で訥弁を演じても、ジャズ・メッセンジャーズの面々がそれを許さない雰囲気が横溢しています。
 例えば地味だ、地味だ、と言われるベースのスパンキー・デブレストにしても、ここではスーパースタアのごとき地響きでバンドを煽り、ビル・ハードマンもセロニアス・モンクの意地悪な伴奏をブッ飛ばす勢いで吹きまくり♪ アート・ブレイキーも鬼神のステックで大噴火しています。
 そして、やっぱりジョニー・グリフィン! 激情を押さえながらもセロニアス・モンクに図星を指され、ヤケッパチで盛り上がっていくところなど、もはや奇跡の一瞬としか言えません。とにかく豪快、猛烈、爆裂なアドリブです。
 さらにクライマックスでは、アート・ブレイキーが怒りの大車輪ドラムソロ! 何時もと同じ遣り口ながら、気合が違います! あぁ、こんな……!♪

B-3 Purple Shades (1957年5月15日録音)
 この曲だけがジョニー・グリフィンのオリジナルで、ファンキーこの上も無いダークなブルースです。
 しかしセロニアス・モンクのピアノが好き放題なんで、緊張感がいっぱい! アドリブパートでも「ファンキー」なんて下衆の戯言になっています。
 ただし流石はジャズ・メッセンジャーズです。ビル・ハードマンが軌道修正すれば、ジョニー・グリフィンは、俺に任せろの大熱演♪ スローな演奏なんですが、本気で血が騒ぐ任侠精神のような展開になっていきます。
 そしてトドメがスパンキー・デブレストの軋みのベースソロ! セロニアス・モンクとアート・ブレイキーの遣り取りもキマッています。

ということで、何という名演集なんでしょう♪ この時期のジャズ・メッセンジャーズは、所謂暗黒時代とされていますが、そうだとしても、このセッションは歴代バンド作品の中でも間違いなく上位にランクされる快演だと思います。

その要因は、もちろんセロニアス・モンクの参加ですが、実はこのセッションの時にはジャズ・メッセンジャーズのメンバーが譜面を貰えず、演目を徹底的にリハーサルで覚えさせられたという、有名な逸話が残されています。

つまりセロニアス・モンクという人はインスピレーションの塊であると同時に、肉体派でもあるんですねぇ。小手先の仕上げを嫌う姿勢は、生涯変わらないところだったと思います。

ちなみに今回の復刻CDには「Evidence」「Blue Monk」「I Mean You」の別テイクが入っていますので、聴き比べてディープな恐さに浸るのも楽しいところ♪

とにかく、この音の存在感、凄さに接するだけで、なんかジャズが分かったような気分にさせられる名盤だと思います。まあ、実は聴くほどに分からなくなる、私ではありますが……。

ちなみにモノラルバージョンでありながら、復刻紙ジャケットがステレオ仕様になっているのは残念な減点でした。

それでも激オススメの復刻盤です♪

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

手品師ウォーリントン♪

2006-11-21 19:46:20 | Weblog

またまた物欲に苦しめられる時期になりました。

本日は頼んでいたブツがドカッと届いたんですが、金を使っても楽しむ時間が無いというジレンマに陥りそうなんで、まずは、これから聴きました――

The Prestidigitator / George Wallington (East-West)

ジョージ・ウォーリントンは白人ながら、ビバップの創成に深くかかわったピアニストで、1950年代には多くのリーダーセッションを残しています。

しかし日本では一般的な人気がイマイチで、それは自身のピアノスタイルが基本点にバド・パウエルやアル・ヘイグと同根であるにもかかわらず、アクの強さや派手なところが無い所為かもしれません。

ただし残されたリーダー盤は非常に魅力的で、そこには常に強力なメンツが参集♪ 例えばジャッキー・マクリーン(as)、ドナルド・バード(tp)、フィル・ウッズ(as)、ボール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) 等々、当にハードバップを作った強者がバンドに去来していたのです。

そして、それだけのメンバーを率いていられたジョージ・ウォーリントンのリーダーとしての資質も、特筆されるべきかもしれません。

で、このアルバムもそうした1枚で、録音は1957年4月4~6日、メンバーはJ.R.モントローズ(ts)、ジョージ・ウォーリントン(p)、テディ・コティック(b)、ニック・スタビュラス(ds) というカルテットを中心に、曲によってジェリー・ロイドが加わっています――

A-1 In Salah
 ジョージ・ウォーリントンのファンには説明不要の大名曲で、作曲はモーズ・アリソンと言う、知る人ぞ知るピアニストですが、実はジョージ・ウォーリントンがこのセッションに先立つ1ヵ月前にも吹き込んでいたという、お気に入りです。
 それはドナルド・バード&フィル・ウッズをフロントに、ここでのセッションと同じリズム隊で演奏され、「ザ・ニューヨーク・シーン(Prestige)」というアルバムに収められた快演でした。
 肝心のここでの演奏は、J.R.モントローズを中心としたワンホーン編成で、まずは哀愁のテーマメロディからギクシャクウネウネしたテナーサックスが、何とも摩訶不思議な味です。
 またリーダーのピアノは、ビバップスタイルながら、エキセントリックなところが無い、控えめな表現に終始しており、そこがなんとも判官贔屓的な魅力に繋がっています。
 そしてクライマックスはテナーサックスとドラムスのソロチェンジ!
 あぁ、いつ聴いても素敵なテーマメロディです♪

A-2 Composin' At The Composer
 ジョージ・ウォーリントンが書いたジェントルなハードバップです。
 アドリブパートもジョージ・ウォーリントンが先発で、じっくりと展開されるピアノソロに派手さはありませんが、いかにもモダンジャズという味が滲み込んだ玄人っぽさが感じられます。
 またここで加わっているジェリー・ロイドはバストランペットを駆使して、トロンボーンのような響きを聴かせてくれますし、J.R.モントローズはギスギスしながらも、実は優しいフレーズを積み重ね、ジャズ者を虜にしてしまいます。
 リズム隊のファンキー味も、良いですね♪

A-3 Jouons
 J.R.モントローズが書いた衝撃のハードバップです。
 というのもリズム隊の煽りが既にして後の新主流派っぽい響きになっていますし、J.R.モントローズのノリやテナーサックスの鳴り方が、ハードバップから脱却しようという感じです。
 このあたりは、あくまでも個人的な独断と偏見ではありますが、ジョージ・ウォーリントンの伴奏も、なんとなくハービー・ハンコックに聴こえてしまう瞬間までありますから!

A-4 Rural Route
 これもモーズ・アリソンが書いた、なかなか魅力的なハードバップです。
 しかもジェリー・ロイドが入った2管なので、膨らみのあるテーマ吹奏からアドリブパートも彩り豊か♪ それぞれに良い味を出しています。
 肝心のリーダー、ジョージ・ウォーリントンも素晴らしく、少し抽象的なノリとフレーズを織り交ぜながら、ここでもビバップスタイルからの脱却を目指しているような♪ う~ん、侮れない人です。

B-1 Promised Land
 B面に入っても、初っ端からモーズ・アリソンのオリジナルが取上げられていますが、これがまた素晴らしくファンキーな、ゴスペルカントリーっぽい名曲です♪
 しかも演奏がジェリー・ロイドの入ったクインテットですから、必ずやジャズ者の琴線に触れるはずという快演になっています。何よりもリズム隊の快演が楽しいところ♪ それだけ中心に聴いても満足してしまいます。
 ジョージ・ウォーリントンは、もちろん地味ですが、なかなかのファンキータッチが妙に魅力的ですし、背後で煽るテディ・コティックの野太いベースが、たまりません。

B-2 August Moon
 ジェリー・ロイドが書いた楽しい名曲で、もちろん本人がテーマをリードした快演となっています。なにしろバストランペットということで、何となく、もっさりした音色が逆にホノボノ感覚♪ ウキウキさせられますし、歌心も満点です。
 そしてこういうノリならジョージ・ウォーリントンの地味なスタイルも輝くというか、一瞬の煌きに心がときめく、そこを求めて緊張して聴き入る集中力が、私には快感です。
 ちなみにJ.R.モントローズは、お休みです。

B-3 The Prestidigitator / 手品師
 アルバムタイトル曲だけあって、一番の熱い演奏が展開されています。
 それは J.R.モントローズの熱いブローに始まり、リズム隊とグルになった仕掛けとキメを入れながら、グイグイと盛り上がっていきます。
 しかも作曲が J.R.モントローズ本人ですから、本当に好きなように吹きまくったというところでしょうか♪ 十八番のブチキレフレーズ、突如としてローリングするノリは唯一無二の素晴らしさです。
 気になるジョージ・ウォーリントンは、相変わらず地味に奮戦していますが、このレコーディングを境に第一線から徐々に引いていったのが理解出来ると言っては、失礼でしょうか……。

ということで、地味と派手が交錯した、なかなかアンバランスな魅力に満ちた作品です。

オリジナル盤はアッと言う間に廃盤になったようですが、幸いなことにアナログ盤が日本で発売されていましたし、現在、紙ジャケット仕様のCDとして復刻され、本日、手元に届いていますが、なかなかマスタリングが良好です。

もちろんこれを書きながら聴いていたのも、件のCDなのでした。好みの問題かもしれませんが、アナログ盤よりも音が良いのは、言わずもがなです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする