OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

クールダウン

2008-01-31 16:45:28 | Jazz

憧れのスタアからいただいたサインをオークションに出してしまう人の気持ちが分からないなぁ、どんな事情があるにせよ……。

そういうサインは、直接もらえた本人だけに価値があるもので、第三者の手に渡った時には、単なる落書きと同じでしょう。つまり、憧れの人との絆として、サインを貰うという行為が成り立つと、私は思います。

しかし中には大バカ者が居て、関係者であることを利用して、イベントに集ったスタアの寄せ書きサインを入手、それをヤフオクに出す愚行がっ!

こんなものを落札したって、それが本物か否かなんて、鑑定書が付いていない限り、騙されているのと同じでしょう。

と、ひし美ゆり子様のブログから理不尽な行為を知り、憤ってしまいました。

そこで本日は冷静な1枚を――

The Influence / Jimmy Raney (Xanadu)

白人ギタリストのジミー・レイニーは、常に沈着冷静、それでいてツッコミ鋭くスリル満点の演奏をしてくれますから、そこんとこが、根強い人気の秘密でしょう。

そのスタイルはジム・ホール同様に豊かなハーモニー感覚、歌心に満ちたフーズ、絶妙のリズム感、クールで暖かい音色が本当に魅力で、もちろん優れたテクニックに裏打ちされているのですが、厭味がありません。

そのキャリアではウディ・ハーマンやアーティ・ショウのオーケストラ、あるいはスタン・ゲッツやレッド・ノーボのバンドでの活躍が特に有名ですが、残されたレコーディングを聴くかぎり、きわめてハズレの少ない演奏家だと思います。

ですから、前述したジム・ホール、ルネ・トーマス、パット・マルティーノ、そして息子のダグ・レイニーまで、多大な影響を受けたギタリストは多いのですが、何故か1960年代には些かレコーディングに恵まれていませんでした。

それが1970年代に入ると、次々に優れたリーダー盤を発表し、このアルバムもそのひとつです。

録音は1975年9月2日、メンバーはジミー・レイニー(g)、サム・ジョーンズ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、けっこう気になるギタートリオです――

A-1 I Love You
 有名な歌物スタンダードですから、初っ端からジミー・レイニーの卓越した歌心が素敵ですが、テーマ部分から絡みまくるサム・ジョーンズの唯我独尊とシュワシュワ気持ちが良いビリー・ヒギンズのブラシにも耳を奪われます。
 しかしトリオの一体感は流石の響きで、左にベース、真ん中にギター、そして右にドラムスというステレオミックスの定位も快感という、リラックスした快演だと思います。
 
A-2 Body And Soul
 これも有名スタンダード曲が定石どおり、スローテンポで演じられますが、トリオの絡み具合が如何にも1970年代という雰囲気ですし、些か忙しないビリー・ヒギンズのブラシが、後々で効いてきます。
 つまり演奏が何時しかグイノリ気味に変化していくところから、もう絶妙のアドリブパートに変化しているんですねぇ♪ もちろんジミー・レイニーの弾く複雑なキメを多用したフレーズの連続は圧巻ですが、微妙にチューニングが狂っているようなチョーキングは、賛否両論かもしれません。

A-3 It Could Happen To You
 これも選曲が良いですねぇ~♪ もちろんジャズ者ならば、誰もが知っているメロディですから、楽しげにテーマを演じるトリオのノリの良さ、ちょっと皮肉っぽい解釈までもが感度良好♪
 そしてアドリブパートではビリー・ヒギンズの快適なドラミングに煽られて、ジミー・レイニーが流麗なフレーズを積み重ね、そこにサム・ジョーンズがツッコミを入れるという展開が、当時の4ビートジャズの典型になっていくのでした。
 ちょっと無機質なようで、実は豊かなメロディ感覚を発揮するジミー・レイニーの醍醐味が味わえます。

A-4 Suzanne
 ジミー・レイニーのオリジナル曲で、なんと多重録音を使い、ひとり二役で桃源郷を作り出しています。それは現代音楽のようでもあり、バルトークとか、そのあたりを意識した曲構成とギターソロだけで展開されるフリージャズのようでもあり、不思議な深みが個人的に気に入っています。

B-1 Get Out Of Town
 ボサノバアレンジで演じられるスタンダード曲ですが、ここでもジミー・レイニーのギターが多重録音されています。
 とはいえ、ビリー・ヒギンズのドラミングが正統派のキレ味なんで、特に気にならず、ジミー・レイニー特有のコード感やフレーズ構成の妙が楽しめるでしょう。

B-2 Therek Will Never Be Another You
 グッとアップテンポで演じられる御馴染みのスタンダード♪ というだけでファンには嬉しいところなんですが、バリバリと弾きまくるジミー・レイニーは、相等に新しいフレーズも繰り出しています。
 う~ん、これも1970年代ということなんでしょうか……?
 ちょっとラリー・コリエルとかジョン・マクラフリンのような部分さえ感じれます。ビリー・ヒギンズも過激なドラミングを聞かせてくれますし、もしかしたらベテランの意気地を聞かせようとしていたのかなぁ……。
 個人的には爽快な演奏に聞こえるのですが……。

B-3 The End Of A Love Affair
 これこそ、完全なるジミー・レイニーのギターソロ演奏です。
 もちろん良く知られたテーマメロディを巧みに変奏していくワザの冴えが印象的ですし、ちょっと???というコードも使っているようですが、その意味不明なところが妙に魅力的♪
 あぁ、酔わされますねぇ♪

B-4 Danceing In The Dark
 ビリー・ヒギンズが叩くラテンビートを上手く活用するジミー・レイニーの名人芸! コード弾き主体のテーマ部分から単音弾きが素晴らしいアドリブパートへの流れだけで、グッときます。
 もちろんそこは溌剌とした4ビートになりますから、サム・ジョーンズの気合が入ったウォーキング、刺激的で抑制されたビリー・ヒギンズの好サポートがあって、ジミー・レイニー本人も気分良さそうにギターを弾くという、幸せな演奏になっているのでした。

ということで、メンツの魅力としては期待するほどハードバップ色は強くありません。しかし力強くて要所を締めるリズム隊としてのドラムス&ベースの存在感ゆえに、ジミー・レイニーも何時に無く力んだ部分が楽しいところです。

また多重録音については賛否両論あろうかと思いますが、実際に聴いてみれば違和感はそれほど感じないでしょう。スタンダード曲主体のプログラムも嬉しいですね♪

ちなみにアナログ盤、CD共に収録曲順が異なるブツが数種類出回っているそうですから、要注意です。もちろんジャケット違いもあると思いますが、そこまでは確かめていませんので……。

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ローランド・カークのブルース

2008-01-30 15:47:19 | Jazz

仕事場でも風邪をひいている者が多く、また来客も同様です。

頼むからうつさないでね。

と祈りつつ、本日は――

We Free Kings / Roland Kirk (Mercury)

黒人ジャズメンはブルースが上手くて当たり前と思われがちですが、モダン期になると、案外そうでもない人が増えてきます。

これはブルースといえども、ストレートなコードからわざと逸脱しての自己主張とか、平たく言えばカッコづけがモダンジャズの真髄かもしれないという行動?

逆に徹底的にブルース、あるいはファンキーR&Bに拘った者も大勢いたのですから、不思議な気分です。

さて、本日の主役、ローランド・カークはご存知のように盲目であり、自分で考案したリード楽器を駆使してのアクロバット的な演奏がウリでしたから、その大道芸人的な部分はライブが魅力的でしょう。ですからスタジオで作られたレコードはイマイチ、そういう芸風が楽しめないのですが、このアルバムはブルースに拘ったところから、素直な仕上がりかと思います。

録音は1961年8月16&17日、メンバーはローランド・カーク(ts,stritchk,Manzello,fl,per)、リチャード・ワイアンズ(p)、ハンク・ジョーンズ(p)、アート・デイビス(b)、ウェンデル・マーシャル(b)、チャーリー・パーシップ(ds) という手堅い人選です――

A-1 Three For The Festival
A-2 Moon Song
A-3 A Sack Full Of Soul
A-4 The Haunted Melody
A-5 Blues For Alice
B-1 We Free Kings
B-2 You Did It, You Did It
B-3 Some Kind Of Love
B-4 My Delight

――という演目では、「You Did It, You Did It」が圧倒的に素晴らしいです! ローランド・カークが自作のスローブルースなんですが、フルートによる呻くような吹奏に加え、所々で聞かれるローランド・カークのボーカルが、フルートから流れる音色と渾然一体になって、あぁ、ぶる~す! もちろんこれは多重録音ではありません。演奏時間は、わずかに2分半ほどですが、この濃密なブルースの味わいは、本当にたまりません♪ これ1曲だけで、このアルバムをゲットする価値があると断じます。

またステージでは定番の「Three For The Festival」は、これがオリジナルのスタジオバージョンながら、躍動的なリズム隊に煽られ、ローランド・カークが十八番の多重管一斉吹きやフルートによるアドリブがスリル満点! チャーリー・パーシップのドラミングも最高です。

それと正統派ハードバップを自己の芸風で変形させていく「Blues For Alice」や「My Delight」、ゴスペルファンキーな「A Sack Full Of Soul」はモダンジャズの王道路線♪

もちろん哀愁感満点の「Moon Song」や「Some Kind Of Love」もローランド・カークのウリですからねぇ♪ とにかくアルバム全体が間然することのない仕上がりで、アッという間に聞き終えてしまうのです。

ローランド・カークの代表作は、これかもしれません。

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'73型ハリウッドポップス

2008-01-29 17:20:28 | Weblog

仕事の話をしながら昼飯を喰ってたら、煮詰まりがますます酷くなりました。

う~ん、と唸っていたら、なんとも懐かしい曲が店内に流れてきたんですねぇ♪

おっ、これは「マスクラット・ラヴ」じゃないかっ♪ アメリカのっ!

ということで、本日は――

Hat Trick / America (Warner Bros.)

アメリカはイギリスからデビューしたアメリカ人3人組という、些かややっこしいバンドで、実はイギリスで勤務していたアメリカ軍関係者の子息達というのが真相です。

ご存知のように彼等はCSN&Yの絶大な影響下にあるコーラスワーク、ジェームス・テイラーやビートルズ風の曲作りがウリで、それは1972年に発売したシングル曲「名前のない馬」の大ヒットで一躍有名になりました。

その魅力は素人っぽさというか、決して上手いバンドではないですし、曲の元ネタもバレバレが多いのですが、素直な憧れを真摯に演じているところに好感が持てるのだと思います。

ですから続けて「ヴェンチュラ・ハイウェイ」の大ヒットを放ち、本場というか地元のアメリカをメインとした活動も、当時のウエストコーストロックのブームの中で、ひときわ輝くものだったのです。

さて、本日の1枚は1973年に発売された彼等のサードアルバムで、前述のヒット曲「マスクラット・ラヴ」が収録されています。しかも前2作の爽やかコーラス&生ギターというスタイルを進化させ、王道のハリウッドポップス仕立!

ちなみにメンバーはダン・ピーク(vo,g,b,key)、ジェリー・ベックリー(vo,g,b,key)、デューイ・パーネル(vo,g,b,key) がオリジナルの3人で、レコーディングにはハル・ブレイン(ds,per)、トム・スコット(sax)、ジョー・ウォルシュ(g,key)、チェット・マクラッケン(per) 等々に加えて、ビーチボーイズからカール・ウィルソンとブルース・ジョンストンまでもがコーラス隊として名を連ねています。

収録曲では圧倒的に「マクスラット・ラヴ」が優れていますが、アルバム全体としては曲の繋ぎに凝ってみたり、シンミリ&ヤンワリの雰囲気が横溢した安らぎの1枚♪

しかし現実にはイマイチ、売れていませんでした。だって、それまでの爽やかイメージが些かネクラに転じたような……。私もリアルタイムでこのアルバムを聴いた時には、???でした。

ところが時が流れて現在になると、このネクラ系の優しさが心に滲みるんですねぇ~。

とても作り込まれたプロデュースも、アメリカの3人が担当しているだけあって、どこか素人っぽさがあり、一生懸命さも伝わってくるのです。

そしてこの後、彼等は、あのジョージ・マーティンにプロデュースを依頼して、第2期黄金時代を築くのですが、その直前のシンプルな情熱こそ、このバンドには相応しいと私は思っているのでした。

地味なアルバムですが、末永く愛聴出来る作品だと思います。

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コニッツの新しき展開

2008-01-28 17:38:11 | Jazz

昨夜から肋間神経痛に苦しめられています。痛み止めを飲んだら、食べ物の味まで分からなくなったような……。

自分も、歳だなぁ……。文字通りに痛感しています。

ということで、本日は――

Very Cool / Lee Konitz (Verve)

こんな寒い日々に、こんなタイトルのアルバムなんてっ!

と、顰蹙かもしれませんが、ここでの「Cool」は冷たいじゃなくて、カッココと解釈したいです。

実際、レニー・トリスターノ派の優等生だったリー・コニッツは、師匠ゆずりのクールな感覚に秀でていましたが、本人はチャーリー・パーカー(as) を尊敬していたとおり、かなり情感に篤い演奏を目指していたと言われています。

そしてこのアルバムこそ、その端緒の1枚として、私は名作だと思っています。

録音は1957年5月5日、メンバーはリー・コニッツ(as)、ドン・フェララ(tp)、サル・モスカ(p)、ピーター・インド(b)、シャドウ・ウィルソン(ds) とされています――

A-1 Sunflower
 フワフワと抑揚が無いのに、けっこうエキセントリックな雰囲気のテーマメロディは、確実にビバップから進化したモダンジャズの佇まいでしょう。相等にグルーヴィなリズム隊、特に黒人ドラマーのシャドウ・ウィルソンが強いビートを叩いていますから、リー・コニッツも微妙なグイノリでアドリブを演じています。
 というか、フレーズはトリスターノ系なのに、ノリがクロンボという新感覚が、今でも古びていません。
 作曲者のドン・フェララも味わい深いトランペットを聞かせてくれますが、ラストテーマの前からアルトサックスと絡みながら演奏を進めていくあたりが真骨頂♪
 またリズム隊も力強いピーター・インドのベースワークに煮え切らないサル・モスカのピアノというミスマッチが、些か厭味な感じですが、これが当時の最先端だったのかもしれません。

A-2 Stairway To The Stars
 ゆったりと演奏される歌物スタンダード曲ですが、アドリブパートで光り輝くのはリー・コニッツのアルトサックス♪ 安らぎ優先モードという感じで、オリジナルのメロディを抜群に上手くふくらませていく至高の名演だと思います。
 スタン・ゲッツ(ts) でもアート・ペッパー(as) でもない、まさにコニッツ節が味わえるのですが、ディブ・ブルーベックのようなゴツゴツした伴奏を聞かせるサル・モスカゆえに、ちょいとポール・デスモンド(as) か、なんて……。

A-3 Movin' Around
 アップテンポでテンションの高いテーマ演奏は、トリスターノ派の真骨頂かもしれませんが、アドリブはハードバップに近くなっている快演です。特にドン・フェララはクリフォード・ブラウン~ドナルド・バードっぽいフレーズ&ノリですからねぇ♪ これでもうすこしリズム隊が暴れていたら、師匠のレニー・トリスターノは激怒したかもしれません。
 リー・コニッツもドライブ感溢れるフレーズ展開に加え、珍しくも迷い道のような音使いまで聞かせてくれますし、リズム隊も熱くなっていくのがミエミエで♪
 しかしサル・モスカがなんとかトリスターノ派の矜持を守りますから、反対の事をやってしまうシャドウ・ウィルソンのシンバルワークが最高に輝くのでした。
 どんなに頑張っても、時代はやっぱりハードバップだったんですねぇ。

B-1 Kary's Trance
 リー・コニッツの代表的なオリジナル曲で、幾何学的なクールスタイルのテーマメロディが、なんとここではハードバップっぽいドライブ感で演奏されますから、たまりません。とにかくリズム隊のグイノリが素晴らしいと思います。
 そしてリー・コニッツのアドリブが、これまた凄い! 録音の按配もあるかもしれませんが、まずアルトサックスの音色が、これまでとは違う情熱的な響きで太く鳴っていますし、蠢くのようなところから流麗なフレーズ展開に持っていくという裏ワザっぽいところが、憎めません。
 もちろんドン・フェララはハードバップ色に染まっていますし、サル・モスカはセロニアス・モンクのようなアブナイ世界に入りかけています。シャドウ・ウィルソンのシャープで厚いシンバルワーク、太く短いようなピーター・インドの4ビートウォーキングも最高ですし、クライマックスのアルトサックス対トランペットのバトルも♪~♪

B-2 Crazy She Calls Me
 これも歌物スタンダード曲を素材にして、リー・コニッツの素晴らしい歌心が堪能出来るワンホーン演奏になっています。まずテーマメロディの吹奏がジンワリと心に染み入りますねぇ♪ もはや私は、ここで完全降伏させられます。
 サル・モスカの伴奏も秀逸で、クールどころかウォームな雰囲気を作り上げていきますから、これを聞きたくて、私はB面ばかりに針を落としているのでした。
 味わい深い名演だと思います。

B-3 Billes' Bounce
 チャーリー・パーカーが1945年に吹き込んだこの曲のオリジナルバージョンこそが、モダンジャズ最初の完成形と言われていますから、リー・コニッツも真剣勝負! またリズム隊の力強さが印象的です。
 グルーヴィなテーマ合奏からアドリブに突入するリー・コニッツは頑なに自己を守り通す潔さですが、もちろんチャーリー・パーカーの呪縛から逃れんとして、苦しみもがいています。それがクール派の面目なんでしょうか……。
 演奏はドン・フェララからピーター・インドのベースソロに受け渡され、サル・モスカも淡々と自己主張するあたりが、如何にも白人ジャズという感じです。
 ところが、続くアンサンブルで、オリジナルバージョンでチャーリー・パーカーとマイルス・デイビスが演じたアドリブを再現するという、笑えないリスペクトがっ!
 う~ん、このあたりはシャレになっていないのですが、ニクイですねぇ。ちなみに似たようなことは、レッド・ガーランド(p) がマイルス・デイビスのアルバム「マイルストーンズ(Columbia)」に収録された「Straight No Chaser」のアドリブパートでやっていますので♪

ということで、ジャケットを見ると氷のツララに囲まれたリー・コニッツが何とも言えませんが、これは演奏の熱気で融けたと解釈するのが正しいのでしょうか?

それはそれとして、かなり楽しめるアルバムだと思います。

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伝説再現ジャムの好企画盤

2008-01-27 17:38:58 | Weblog

大相撲も東西横綱の対決で優勝が決するというメデタシメデタシ!

しかしショッキリみたいな感じも否めませんが……。

ということで、本日は――

Bohemia After Dark (Savoy)

ジャムセッション盤は特定のリーダー名を記載していないアルバムがほとんどですが、明らかに新スタアを売り出そうとして企画されたセッションを纏めたブツも少なくありません。

これもそうした1枚で、メンバーはドナルド・バード(tp)、ナット・アダレイ(cor)、キャノンボール・アダレイ(as)、ジェローム・リチャードソン(ts,fl)、ホレス・シルバー(p)、ポール・チェンバース(b)、ケニー・クラーク(ds) という超豪華セッション! しかしこれは当時のニューヨークジャズ界を震撼させていたキャノンボール・アダレイの売り出しを図ったセッションです。

キャノンボールとナットのアダレイ兄弟が注目されたのは、今では伝説化している1955年6月19日のカファ・ボヘミアでの飛び入りセッションで、当夜そこに主演していたオスカー・ペティフォードのバンドは、ホレス・シルバー、ケニー・クラークを入れたリズム隊にジェローム・リチャードソンという布陣だったのですが、なんかの都合でジェローム・リチャードソンがステージに現れず、そこでキャノンボール・アダレイが飛び入りしたと言われています。

もちろんフロリダから出てきたばかりのアダレイ兄弟を知っている者など、その場には誰もおらず、しかし圧倒的な存在感でバリバリに吹きまくったという評判が、キャノンボール・アダレイの鮮烈なデビューでした。

そしてこのアルバムは、その世の伝説を再現すべく企画されたというわけですから、メンバーも極力、その日のギグを意識しているのです。ちなみに録音は1955年6月25日とされていますから、まさに直近の勢いが記録されているのです――

A-1 Bohemia After Dark (1955年6月25日録音)
 伝説の店となった「カファ・ボヘミア」にちなんだオリジナルで、残念ながら作者のオスカー・ペティフォードが参加していませんが、一応ここでのバンマスはケニー・クラークのようですから、熱い演奏が迸ります。
 まずテンションの高いテーマの合奏からアドリブの先発がドナルド・バード、そして続くのがナット・アダレイですが、真打キャノンボールの露払いという感は否めません。
 そのキャノンボール・アダレイは、些か押え気味ながら、独特のタメが効いたグルーヴィな雰囲気が最高です。またリズム隊が抜群に素晴らしいですねぇ~♪ 特にホレス・シルバーのピアノはビートはニュアンスが完全にビバップから飛躍しているようですし、ポール・チェンバースのブンブンべースも圧巻です。

A-2 Chasm (1955年6月25日録音)
 アダレイ兄弟が書いた楽しいハードバップで、ケニー・クラークのビシバシドラミングに煽られた快演が聴かれます。
 アドリブ先発はジェローム・リチャードソンのテナーサックスで、なかなか硬派な熱演! 続くキャノンボール・アダレイも火の出るようなウネリのアドリブに撤しますから、たまりません。
 その夜の因縁も絡んで、これはなんとも凄い共演が、しっかりと記録されているのでした。もちろんリズム隊の煽りも最高!

A-3 Willow Weep For Me (1955年6月25日録音)
 これはキャノボール・アダレイが一人舞台で、ブルースに彩られた歌物の名演を聞かせてくれます。う~ん、ほどよい毒々しさはデビュー当時から完成されていたんですねぇ~♪
 ハードボイルドなリズム隊との相性も最高です。

A-4 Late Entry (1955年6月25日録音)
 これもカッコイイ、アダレイ兄弟のオリジナル曲で、絶妙のファンキーさがミソ♪ アドリブパートはナット・アダレイからジェローム・リチャードソンのフルートに繋がりますが、共に熱演ですし、ホレス・シルバーのクールで熱い伴奏も聴き逃せません。

B-1 Hear Me Talkin' To Ya (1955年6月25日録音)
 これまたウルトラファンキーなブルース大会で、初っ端からホレス・シルバーが大活躍♪ ミディアムのグルーヴィなテンポも最高ですし、ギシギシ軋るポール・チェンバースのベースに加えて、生々しいケニー・クラークのハイハット&シンバルにグッときます。
 そして呻くようにアドリブするキャノンボール・アダレイ、ややオトボケのナット・アダレイが対照的ですから、キャノンボール・アダレイが再び登場してファンキーに軌道修正! するとドナルド・バードが、これぞハードバップという名演を披露するのでした。
 あぁ、この粘っこい雰囲気は、時代の空気というものかもしれません♪

B-2 With Apologies To Oscar (1955年6月25日録音)
 このアルバムで一番熱い演奏! アップテンポの陽気なテーマから全員が入り乱れてのアドリブ合戦が痛快です。
 それはまずドナルド・バードの流麗な快演でスタート♪ 続くキャノンボール・アダレイも豪快にキメまくり、ナット・アダレイが無節操に吹きまくるというところから、ケニー・クラークとの対決が用意されています。
 そしてホレス・シルバーのアドリブが、これまた楽しさ満点♪ まさにハードバップの醍醐味が楽しめます。

B-3 We'll Be Together Again (1955年7月14日録音)
 この演奏だけ、ピアノがハンク・ジョーンズに交代していますし、録音は1955年7月14日ということは、キャノンボール・アダレイの初リーダーセッションからの転用です。つまり、この辺りのセッションは、徹底的にキャノンボール・アダレイを録りまくることを第一義にしていたんですねぇ。それだけ注目度が高かった証だと思います。
 肝心の演奏は、歌物スタンダードを優しく吹奏するキャノンボール・アダレイの別な顔が見事♪

ということで、ハードバップ上昇期の熱気と勢いが真空パックされたような作品です。しかも単なるジャムセッションに終わらず、前述したような明確な意図が感じられるあたりが、一筋縄ではいきませんが、同時にジャムセッション特有の腕比べ大会という趣も楽しいところです。

そしてバンマスを務めたケニー・クラークが流石の貫禄でメンバーを引き締めているように感じます。

ちなみにこのアルバムのジャケットは何種類か出ていますが、掲載したブツのキュッチュな雰囲気が一番、気に入っております。

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地味ジャムの味わい

2008-01-26 17:16:37 | Weblog

母が膝の手術で入院した病院に行ってきましたが、同室の人は皆、同じ病気でしたから、和気藹々とお喋りしていましたですね。

どうして女性は、ああもお喋りが好きなんでしょう。男性の病室なんか、静かなもんですが……。

ということで、本日は和気藹々という――

Jazz Giants '58 (Verve)

ヴァーヴが十八番にしていたジャムセッション物の1枚ですが、そうした企画にありがちなド派手なブロー合戦は聞かれず、むしろ地味な仕上がりで忘れられないアルバムです。

録音は1957年8月1日、メンバーはハリー・エディソン(tp)、スタン・ゲッツ(ts)、ジェリー・マリガン(bs)、オスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、ルイ・ベルソン(ds) という豪華絢爛なのですが――

A-1 Chocolate Sunday
 スタジオで即興的に作られたブルースでしょうか、まずレイ・ブラウンの豪胆なベースが蠢き、ルイ・ベルソンのシンプルなドラミングに乗って、ジェリー・マリガンが口を挟む出だしが、なかなかに暗黙の了解というモダンジャズの醍醐味になっています。
 そして、そのまんま続いていくバリトンサックスのアドリブに楽しい合の手を入れるハーブ・エリスのギター、ハーモニーっぽく絡むスタンゲッツもシブイですが、ギターのアドリブに入ってから、ようやく音を出してくるオスカー・ピーターソンの味わい深さが絶品で、実に良い雰囲気になっていくんですねぇ♪
 う~ん、グルゥ~~~ヴィ! ミディアムテンポながら、強烈なビートを生み出しているリズム隊は最高で、ブラシとスティックを自在に使い分けるルイ・ベルソンが流石の存在感だと思います。
 演奏はスタン・ゲッツが意想外の暖かさ、ハリー・エディソンの甘くて楽しいフレーズの連発に酔わされていきますが、やはりリズム隊が出色! それにしてもこんな地味な演奏がド頭に置かれているアルバムも、そうそうは無いでしょうが、聴くほどに虜になってしまうのでした。

A-2 When Your Love Has Gone
 通常はスローテンポで演じられるスタンダード曲を、ここではアップテンポの快演に仕立てています。
 まずオスカー・ピーターソンの快適なイントロからテーマはリズム隊だけの演奏ですが、既にアドリブになっていきますし、絶妙のタイミングで入ってくるスタン・ゲッツが、クール&ウォームの極み♪ 本当に歌心しかないフレーズの積み重ねは、天才の証でしょうか。
 またハリー・エディソンが何時もながらの分かり易いモダンスイング節に撤すれば、ジェリー・マリガンは自分が中心となった絡みのアンサンブルを使って、場を盛り上げていきます。もちろん素敵な歌心と豪快なスイング感は忘れていません。
 おまけにスタン・ゲッツが二度目のアドリブ登場まであるのですから、たまりませんねぇ♪ 何度聞いても楽しくて、ホンワカしてくる演奏だと思います。

A-3 Candy
 モダンジャズではリー・モーガン(tp) の決定的なバージョンが残されているスタンダード曲も、このメンツにかかると一味違います。
 まずオスカー・ピーターソンがテーマメロディを巧みに変奏し、ハリー・エディソンが暗黙の了解というアドリブに入りますが、背後ではゲッツ&マリガンというハーモニーの天才が絡んできますから、油断出来ません。
 そしてスタン・ゲッツが神業的なアドリブの入り方を聞かせてくれます。もう、こんなフレーズは二度と出せないような気がするほどですが、この何気なさが天才の成せるところでしょう。もちろん続く全てのパートも最高! スタン・ゲッツは神様です。
 さらにハーブ・エリスの地道なギターも感度良好ですし、終始、快適過ぎるブラシに撤するルイ・ベルソンの素晴らしさ! これがジャズだと思います。
 もちろん最終パートはジェリー・マリガンが悠々自適のアドリブで、ディキシー調の展開も楽しい大団円が素敵です。

B-1 Ballad Medley
     Lush Life / Gerry Mulliang
     Lullaby Of The Leavs / Harry Edison
     Makin' Whoopee / Ray Brown
     It Never Entered My Mind / Stan Getz
 ヴァーヴのジャムとくれば、バラードメドレーがお約束♪ ここでも各人が真摯に自己主張してくれますが、特筆すべきはオスカー・ピーターソンの伴奏の上手さです。
 またスタン・ゲッツが絶好調! ここでのクールな佇まいは、もはや後光が射している感じですねぇ。

B-2 Woddyn' You
 オーラスはこのセッションで一番派手な演奏です。
 まずルイ・ベルソンのシンバルワークが強烈ですし、ハーブ・エリスがチャカポコのギター叩き!
 ですからオスカー・ピータソンが火の出るようなアドリブを披露すれば、ジェリー・マリガンもちょっとムキになったような熱血バリトンが珍しいところです。しかしハリー・エディソンは、あくまでもマイペースという楽しさ優先モードですから、スタン・ゲッツも心置きなく天才性を発揮! 私のような凡人は、もはや聴き惚れるのみで、感動に絶句するのでした。
 あぁ、もっとゲッツが聴きたい!

ということで、ジャムセッションの丁々発止と暗黙の了解が同時に楽しめる、素晴らしい纏まりのアルバムだと思います。

ちなみにタイトルの「'58」は、発売が1958年だったからと言われていますが、やはりこの時代でもスタン・ゲッツの天才性は、群を抜いていたと思います。


 

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Willow Grooveで暖まる

2008-01-25 17:39:59 | Weblog

ようやく仕事地獄から脱出の兆しが見えてきました。

しかし、寒い……。

ということで本日は、心温まる1枚を――

Piano Interpretations By Bud Powell (Norgran / Verve)

一般的にヴァーヴ吹き込みのバド・パウエルは良くないというのが、定説です。確かに1950年代中頃のバド・パウエルは好不調がはっきりした演奏が多く、実際、ヴァーヴから発売された作品の中にはボロボロになっているトラックも散見出来ます。

しかし良いというか、この時期特有の味わい深い演奏は一部のジャズ者にとっては捨てがたい魅力があるはずで、ジャズ喫茶では滅多に鳴ることもないヴァーヴ期のアルバムが、自宅では愛聴されているに違いないと、私は思っているのですが……。

さて、このアルバムはジャケットデザインも人気の秘密ですが、演奏が当時のレギュラートリオだったこともあって、なかなか纏まりがしっかりしています。

録音は1955年4月25日、メンバーはバド・パウエル(p)、ジョージ・デュヴィヴィエ(b)、アート・テイラー(ds) です――

A-1 Concepition
A-2 East Of The Sun
A-3 Heart And Soul
A-4 Willow Groove
A-5 Crazy Rhythm
B-1 Willow Weep For Me
B-2 Bean And The Boys
B-3 Lady Byrd
B-4 Stairway To The Stars

――という演目は、ジャズファンには御馴染みのスタンダードとモダンジャス系オリジナルが主体ですが、バド・パウエルのオリジナル曲「Willow Groove」が、なんともこたえられない魅力です。アート・テイラーのラテンリズムが瞬時に4ビートへ変化するイントロ~テーマのスリル♪ ダミ声と共にスイングしまくるバド・パウエルのノリの良さ♪ ブリブリに場を盛り上げていくジョージ・デュヴィヴィエのベースも良い感じです。

同じくアップテンポの「Bean And The Boys」や「Lady Byrd」といったビバップがモロ出しになった演奏も、ちょっと余裕の解釈ですし、ド頭の「Concepition」なんかトリオ全員が力んだ雰囲気で、好感が持てます。

またスローな「Willow Weep For Me」は、この曲が特有のブルースっぽい表現が、ここではバド・パウエルだけの哀感、あるいは「情けなさ」みたいな雰囲気に聞こえてしまいます。

このあたりは、この天才ピアニストの生涯を知っているからかもしれませんが、リアルタイムでは、どうだったでしょう……。う~ん、実に良い演奏だと私は思います。

それとアート・テイラーのシンバルがガンガンギンギンに録音されていますし、重くキマるスネアやタムもジャズの魅力と楽しさを伝えてくれます。これはブルーノートやプレスティッジの録音では、決して味わえないアート・テイラーの魅力ですねっ♪

ということで、今日のような日には、突然に聴きたくなるアルバムなのでした。

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奈美ちゃんは、いいな♪

2008-01-24 15:22:57 | Weblog

今日は天気が大荒れで、予定していた出張を急遽切り替えて、ゴタゴタしています。

と思っていたら、頼んでいたブツがドサッと入荷♪

昼飯食いながら荷解きして、まずはこんなん、聞いてみました――

dankaiパンチ / 東京に吹く風~昭和40年代歌謡曲

先日出た麻田奈美ジャケットのナツメロ盤、続篇です――

01 雨の中の二人 / 橋幸夫
02 アイビー東京 / 三田明
03 今夜は踊ろう / 荒木一郎
04 世界は二人のために / 佐良直美
05 涙くんさよなら / 和田弘とマヒナスターズ
06 ブルー・ライト・ヨコハマ / いしだあゆみ
07 伊勢佐木町ブルース / 青江三奈
08 男と女のお話 / 日吉ミミ
09 悲しみは駈け足でやってくる / アン真理子
10 さらば恋人 / 堺正章
11 お世話になりました / 井上順
12 夜明けのスキャット / 由紀さおり
13 変身 / 池玲子
14 新宿カルメン / 杉本美樹
15 また逢う日まで / 尾崎紀世彦
16 そっとおやすみ / 布施明

――今回は歌謡曲篇ということで、有名曲がビッシリ♪

正統派エレキ歌謡の「アイビー東京 / 三田明」には、本物のアイビー愛好者が激怒するかもしれません。

また永遠の昭和ポップス「今夜は踊ろう / 荒木一郎」は、本当に胸キュンです。

それと「変身 / 池玲子」「新宿カルメン / 杉本美樹」の2連発にも、歓喜悶絶しますねぇ~♪ 新宿東映あたりのゴッタ煮系街角ソングというか、たまりません。

で、本筋のジャケットが麻田奈美! もう私の世代では、この人と東てる美が実用的なアイドルの両横綱でした。このジャケットの文字のレイアウトが、ギリギリなところに当時を懐かしんでしまいます。実に、ニクイ!

ということで、知ってる人も、知らない皆様も、この機会に奈美ちゃんと昭和歌謡曲の素晴らしさに耽溺して下さいませ。

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ドキドキした発掘盤

2008-01-23 16:17:43 | Weblog

今場所も大相撲が、つまらないですね。

というか、些かリアルではない勝負をガチンコとして売っている協会とテレビ局が問題かと……。

しかし中には物分りが悪い力士が居たりして、それが面白いという天邪鬼な観方しか、私には出来なくなっています。

プロならぱ、八百長でも真剣にやって欲しいですね。

ということで、本日は――

Jimmy Smith Trio + L.D. (Blue Note / 東芝)

演目だ、ジャケットだ、と言っても、ジャズの場合はメンツの魅力というのも絶大です。

例えば本日の1枚は、ジミー・スミスとルー・ドナルドソンという、ブルーノートの看板スタアが夢の共演♪ しかも長らくお蔵入りしていた音源として、1980年代に我国優先で発売されたブツですから、特にハードバップのファンは、その事実だけで歓喜悶絶したと思います。

ちなみに2人の顔合わせは、それまでに同レーベルから幾つか発売されていましたが、やっぱり心が躍ります♪ 2人ともスタアですから!

録音は1957年7月4日、メンバーはジミー・スミス(org,p)、エディ・マクファーデン(g)、ドナルド・ベイリー(ds) というレギュラートリオに、ルー・ドナルドソン(as) が加わった自然体の編成です――

A-1 Soft Winds
 ベニー・グッドマン楽団の十八番ですが、ジャズメッセンジャーズの「カフェ・ボヘミア(Blue Note)」における伝説の名演がありますから、ハードバップのファンにとっても聖典のブルース♪ それをジミー・スミスとルー・ドナルドソンがっ! という部分が最大の魅力です。
 まずジミー・スミスの左手&足のベースラインがヘヴィです。これこそが、ジミー・スミスがハードバップに成りえた証かもしれません。
 しかし、テーマが終わってからアドリブの先発を務めるエディ・マクファーデンも良い感じながら、途中でアドリブの構成を間違えたかのような部分が減点……。続くルー・ドナルドソンもイマイチ、熱くなりきれていませんねぇ……。
 う~ん、このあたりがお蔵入りの要因でしょうか……。
 しかしドナルド・ベイリーの快適なドラミング、ジミー・スミスのグビグビにスイングしていくオルガンは、やっぱりグルーヴィで最高!

A-2 Hollerin' And Screamin'
 ジミー・スミスが書いたアップテンポのブルースとくれば、どっかで聞いた雰囲気ながら、後年の「The Sermon」と似ているテーマメロディが、妙に心地良いです。
 アドリブパートでもルー・ドナルドソンが十八番のフレーズを積み重ねる快演♪ このマンネリ感覚は捨てがたいものがあります。
 またジミー・スミスは、あぁ、ぶる~す♪ ゴスペル感覚も存分に混ぜながら、痛快なアドリブを披露しています。ドナルド・ベイリーのゴスペルドラミングも素晴らしいですねっ!
 
A-3 `Round Midnight
 ルー・ドナルドソンが抜けたオルガントリオの演奏で、これが最高です! 曲は有名なモダンジャズオリジナルですから、そのミステリアスな雰囲気を大切にしたジミー・スミスのオルガンの響き、また通常よりも、やや早い演奏テンポの設定が絶妙で、エディ・マクファーデンの出来すぎアドリブも、ついついギターでコピーしたくなります。
 数多ある同曲の名演の中でも、出色のバージョンではないでしょうか。

B-1 Star Eyes
 モダンジャズでは定番演目の有名スタンダード曲ですが、この演奏は楽しさ優先モードに撤したハードバップになっています。まず些かノーテンキなルー・ドナルドソンのテーマ吹奏が、アドリブパートになると一転して過激な色合に変化するあたりに、グッと惹きつけられます。
 またジミー・スミスもアグレッシブなフレーズ展開ですし、エディ・マクファーデンもバランスが悪いところが、なんだか狙ったものなんでしょうか……?
 なんか、その場の勢いだけで演じてしまったような出来なんですが、かなりの熱気が充満した名演だと思います。
 ちなみに、このアルバムはステレオ仕様ですが、このトラックだけがモノラルミックスになっています。

B-2 Darn That Dream
 これも魅惑のメロディというスタンダード曲ですから、まずはジミー・スミスがじっくりとテーマを弾きながら、オルガンの魅力を堪能させてくれます。
 もちろんルー・ドナルドソンも艶やかなアルトサックスで雰囲気を盛り上げていくのでした。

B-3 Street Of Dreams
 これまた雰囲気満点のスローな演奏で、素敵なテーマメロディを丁寧に吹奏するルー・ドナルドソンが、いきなり、たまりません。もちろんアドリブも絶品のフレーズばかり♪
 伴奏するジミー・スミスのオルガンは、その音色も魅力的ですし、グヴィ~~っというドライヴ感が凄いアドリブのメリハリが最高です! あぁ、何度聞いてもシビレますねぇ~~♪

B-4 Cha Cha J
 なんとジミー・スミスがオルガンに加えてピアノを弾いた珍しい演奏で、リアルタイムではシングル盤として発表されていた曲のステレオバージョンが、これです。
 曲は楽しく、またノーテンキなラテン系なんですが、この色物感覚というかキワドイ部分が、なんとも言えません。ジミー・スミスのピアノも面映い感じです。しかしドナルド・ベイリーの半ボケしたラテンビートが最高の楽しさなんですねぇ~♪

ということで、実は中途半端な楽しさが素晴らしいというアルバムです。正直、真っ当にやりながら、ブルーノートの正規盤に比べると、些か頼りない感じがします。

しかし、こうした演奏が発売当時の1980年代に出来たかといえば、それは否! 当時は4ビートがリバイバルしていましたが、こういう真正モダンジャズというか、大衆的な香りもあって、なおかつジャズ魂に満ちた演奏は、ほとんど絶滅していました。

ですから、このアルバムも含めて、当時の未発表演奏集は大いに歓迎されたのです。

本家を意識したジャケットデザイン共々に、人懐っこい1枚だと思います。

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好きな曲だけ聞いていたい

2008-01-22 17:25:56 | Weblog

今日も仕事に苛め抜かれました。

こんなときには好きな曲を聴くのが一番ということで――

A Collection Of Various Interpretations Of Sunny (Trocadero)

誰にでも好きな曲があるはずで、私の場合は「Sunny」です。

オリジナルは黒人歌手のボビー・へッブが1966年に出した大ヒット曲♪ 誰でも一度は耳にしたことがあろう、せつなくて明るくてメロディが最高です。

で、このCDは、そのオリジナルバージョンはもちろん、数多いカバーバージョンを選りすぐって集めた嬉しいブツ――

01 Bobby Hebb
02 Arthur Lyman Group
03 Georgie Fame
04 Booler T. & The MG's
05 Dusty Springfield
06 John Schroeder Orchestra
07 Robert Mitchum
08 Stan Kenton
09 Herbie Mann & Tamiko Jones
10 Stanley Turrentine
11 Andy Williams
12 The Ventures
13 cher
14 Jimmy Smith
15 Wilson Pickett
16 Nancy Wilson

――というメンツは、ジャズ、ロック、ソウル、ポビュラー系の各ジャンルから集められています。

まず冒頭はオリジナルシングルバージョン♪ コードに忠実なベース、単純で深いギターカッティング、暖かいホーンアレンジの妙、素敵なコーラスという、当にヒット曲の醍醐味に和みます。ほどよい情熱のボーカルとヴァイブラフォンの隠し味も効いていますねぇ。

続くArthur Lyman Group はライトジャズというか、カクテルラウンジ風の演奏で、ここでもヴァイブラフォンが良い感じ♪

ジャズ系では他に John Schroeder Orchestra が、とにかくカッコ良いジャズロック! 知らないバンドの恐さですねぇ。しかし Stan Kenton はハズシ気味の4ビートで???

また Herbie Mann や Stanley Turrentine は文句無しの快演♪ もちろん Jimmy Smith も良いですが、ちょいと自分的には納得出来ないアレンジ過多……。

ボーカル物では、ワルツビートでスイングしまくるDusty Springfield  が良いですねぇ~~♪ バックのオーケストラアレンジも最高です。

そして重厚なソフトロック仕立ての Andy Williams、西海岸ポップスの cher、粘っこいR&Bの本領を発揮する Wilson Pickett と快演が続出! アクの強い Nancy Wilson は、う~ん……。

他には、あたりまえ過ぎる Georgie Fame、俳優のシブさが全開の Robert Mitchum、凝りすぎアレンジが泣かせる Booler T. & The MG's、負けずに頑張る The Ventures という布陣もたまりません。

三面見開きデジパック仕様のジャケットも嬉しく、曲解説もシンプルですが、丁寧です。

ということで、私のような者には日常生活の必需品です。幸いにも続篇 Part 2 も出ていますから、これはいずれご紹介せねばなりますまい♪

あぁ、次は「What's Goin' On」が出ないかなぁ~。

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