■Michelle / David & Jonathan (Columbia / 東芝)
自分の好きなもののルーツは思いの外、深~いという事実!
そういう部分にハッとさせられる体験は、皆様にもおありかと推察する次第なんですが、サイケおやじの場合は音楽の好みという点においても顕著でした。
それは好きな歌やメロディを書いた作家がほとんど共通しているとか、普段に聴いている時にはそれほど思わない事が、実際にソングライターのクレジットを確認してみると、なかなか同じ名前に出くわすという真相があるのです。
例えばイギリスの音楽業界では、1960年代後半から1970年代前半にかけて、それこそ今日でも世界中で親しまれている多く名曲を書いたロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイというコンビが個人的には大好き♪♪~♪
おそらく一番有名なのはコカコーラのCMソングとしてもお馴染みというニューシーカーズの大ヒット曲「愛するハーモニー / I'd Like To Teach The World To Sing」でしょうが、他にもゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズの「Green Grass」、ホワイト・プレインズの「恋に恋して」等々、本当に数え切れませんし、とにかく気持良く耳に馴染んでくるメロディとリズムのコンビネーションの上手さこそが、決定的な持ち味だと思います。
また以降は完全な後付けで知った事ではありますが、ロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイは業界の裏方でありながら、その保守本流をがっちり守り抜いていたという事実! これはビートルズやストーンズ等々の英国ビートバンドの大ブレイクから所謂ブリティッシュロックやサイケデリック、あるいはプログレといった1960年代ロックの表舞台の動きと一緒にあった、もうひとつの洋楽状況と無縁ではありません。
それは言うまでもなく、ラジオ放送での需要から生まれるポップスヒットの世界であって、このあたりはリアルタイムで楽しまれた皆様にとっては、尚更にご理解いただけるはずです。
つまり今日のロック史では、名盤アルバム云々が主要テーマにされがちですが、当時は同等の扱いでシングルヒットが大切であり、むしろそれがなければアルバムなんて作れないのが、ひとつの「掟」でありました。
しかし現実的には、そんなにホイホイとオリジナルの素敵な歌が作れるミュージシャンが多いわけもありませんでしたから、必然的に有能な職業作家が求められ、ロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイもそうした人材だったというわけです。
ところが職業作家だって基本はミュージシャンですから、自らがバンドをやっていたり、レコードを出していたり、時には有名グループのメンバーだった履歴を有する者も少なくありませんし、そうした人脈を活用しながらの仕事が成功への道標になる事も頻繁だったようです。
それがロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイの場合は、1950年代末頃に結成されたケストレルズというグループが本格的なプロ活動の第一歩であり、メンバーの中には、後にエジソン・ライトハウス名義で「恋のほのお」を歌って一躍有名になるトニー・バロウズの在籍が、以降の活動で大きな意味合いを持っています。
というのは、結局はヒット曲とは無縁だったケストレルズが発展的解散というか、やはりイギリスのポップス系ソングライター&プロデューサーとして今日も忘れられていないジョン・カーターが運営(?)していたアイヴィー・リーグやフラワーポット・メン等々の企画優先グループにロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイ、そしてトニー・バロウズが参加を要請された事により、トニー・バロウズはスタジオセッション中心のボーカリストとして、また、ロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイは職業作家としての道へ本格的に進む事になったのですが、その詳しい経緯の流れは別の機会に譲りたいと思います。
しかしロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイにとっては、いよいよ本領発揮のチャンスであった事はまちがいなく、その最初の飛躍が1965年に出たフォーチュンズの「You've Got Your Troubles」で、これは欧米で大ヒットしています。
そしていよいよ本題に入りますが、実はこの曲を最初に録音していたのが、ロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイの別名義デュオだったデヴィッド&ジョナサンであり、そのデモテープ(?)を高く評価したのが、ビートルズのプロデューサーとして説明不要のジョージ・マーティン!
なんとっ!! ビートルズが畢生の傑作ながら、アルバム「ラバーソウル」からシングルカットしていなかった人気曲「Michelle」を与えられるという栄誉と幸運に恵まれ、これは期待どおりにウケまくりでした。
もちろん我国でも昭和41(1966)年のラジオからは頻繁に流れていたと記憶していますし、告白すればサイケおやじは本家ビートルズのバージョンよりも好きなほどで、それはストレートなコピーながら、基本的なコーラスワークやアコースティックな味わいを活かした薄~いストリングスかキーボードの活用、さらにはオリジナルと同じピアノソロ等々、当然ながらジョージ・マーティンが肝煎りだけの事はあります。
なによりもロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイが持前のセンスの良さ!
そういう部分がソングライターとしての仕事にも共通して発揮される魅力じゃないでしょうか。
しかし、もうひとつ告白すれば、リアルタイムで聴いていたデヴィッド&ジョナサンと裏方作家としてのロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイが同一人物だったと知るのは、かなり後の事でした。
その間、前述したヒットポップスの数々を楽しんでいたサイケおやじは、何時しかプロデューサーやソングライターで自らの好みを分類分析するという、如何にもオタクな道へと踏み込んでしまい、するとそこにはロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイという天才ソングライターコンビが、これまた個人的に崇拝しているトニー・マコウレイと並立する存在である事実に突き当ったというわけです。
また、その媒介が前述したトニー・バロウズやフォーチュンズだった事は言わずもがな、以前から好きだったデヴィッド&ジョナサンの正体にも愕然とさせられた記憶は今も鮮烈!
結局、自分の好みなんてのは、そう簡単には変わらないという事なんですよねぇ~♪
そのあたりのあれこれは、もっともっと書きたいところですが、最後にひとつだけお許しを頂ければ、深夜放送として根強い人気の「走れ歌謡曲(文化放送)」のテーマ曲「口笛天国 / I Was Kaiser Bill's Batman」も、口笛ジャック名義でロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイが作り出した名曲名演♪♪~♪
これは今でも夜に車を運転していると、何時の間にか口笛を吹いてしまうほどに刷り込まれた素敵なメロディというわけです。