■Lee-Way / Lee Morgan (Blue Note)
昨日のWBC決勝戦は、近年に無いハードボイルドな雰囲気と我が国にとっては痛快な結末でしたねぇ~! こんなシビレる感動を与えてくれた両チームには素直に感謝です。
ところで変態のサイケおやじは、あの試合の映像に音楽をつけたら……、なんて考えてしまうのですが、とりあえず、本日ご紹介のアルバムは、ジャストミートじゃないでしょうか。なんて独り善がりをやっています。
メンバはリー・モーガン(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ボビー・ティモンズ(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・ブレイキー(ds) という、これも疑似メッセンジャーズ物では有名なひとつですが、録音は1960年4月28日! ブルーノートでのリー・モーガンにとっては、1957年11月&1958年2月に録音した畢生の名盤「Candy」に続くリーダー盤ですが、この間、他レーベルへ浮気をしていたり、あるいはジャズメッセンジャーズでの大活躍があったにしろ、恩あるブルーノートでの公式主役セッションが2年ぶりというのも、なかなか意味深な面白さを醸し出しているようです。
A-1 These Are Soulful Days
如何にもというマイナー調のハードバップ曲で、じっくりと構えた全体のグルーヴの中で、テーマサビのワルツビートが異質なアクセント! これが緊張感を高めます。
しかもアドリブ先発はポール・チェンバースの素晴らしいベースソロがピンピンピン! 続くボビー・ティモンズの抑えたゴスペル節が、尚更に黒っぽいムードを演出していきますし、もちろん、その背後ではポール・チェンバースが、これしかないの4ビートウォーキングが真髄ですよ♪♪~♪
そしてジャッキー・マクリーンが特有のギスギスした音色でせつないアドリブメロディを奏でれば、ついに登場するリー・モーガンは多少のミスも意に介さない勢いでトランペットを鳴らすのですから、このあたりの雰囲気の良さこそがハードバップの魅力でしょうねぇ~♪
何時もに比べれば大変に地味なアート・ブレイキーのドラミングも味わい深く、ジワジワと迫ってくるムードは、とてもアルバムのド頭とは思えないのですが……。
A-2 The Lion And The Wolff
しかし、そういう煮え切らなさが、不安感を尚更に煽り、逆に血が騒いでくるという最高のテーマリフでブッ飛ばされます。というか、ここでの最初の印象を効果的にするための曲順だったのでしょうか!? このあたりのワクワク感、不安とスリルと期待が強まるところは、昨日のイチローの決勝打の対決のような素晴らしさです。
実際、あの場面には、この演奏しか劇伴にはなりませんよっ!
ですからボビー・ティモンズが弾き出す暗くて情熱的なリフ、ポール・チェンバースのグイノリ4ビート、ドドンパとアフロビートを内包したアート・ブレイキーのドラミングという凄いリズム隊に導かれ、ジャッキー・マクリーンが十八番のネクラな激情を聞かせれば、リー・モーガンはひたすらにハードバップの奥儀を極めんと奮闘するのです。
あぁ、この雰囲気の良さは筆舌に尽くし難いです♪♪~♪
ちなみに曲タイトルはブルーノートを運営していたアルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフに捧げられているのは言わずもがなでしょう。
そして演奏はボビー・ティモンズのゴスペル大会へと続きますが、ここでもポール・チェンバースが強烈な自己主張というか、結論から言うと、このベース奏者の参加ゆえに通常のメッセンジャーズ化が図れなかったということでしょうか? 強靭なペースソロを経てアート・ブレイキーも爆発的なドラムソロを披露していますが、実はそれさえも、ちょっと異なる味わいが濃厚だと感じます。
B-1 Midtown Blues
ジャッキー・マクリーンが書いた鋭角的なハードバップのブルースですから、初っ端からファンキー&グルーヴィンなムードが、どこまで横溢していきます。
リー・モーガンのアドリブは荒っぽくて弾けんばかりの勢いが眩しい限り! アート・ブレイキーも嬉々として強烈なバックピートで煽りますし、ポール・チェンバースのパッキングは4ビートの極みでしょうねぇ~♪ 最高っ!
またジャッキー・マクリーンが大熱演ですよっ♪♪~♪ アグレッシブなブルースの解釈とツッコミ鋭いフレーズ、そしてハードバップの楽しさが極まったアドリブの醍醐味は、まさに「マクリーン節」がテンコ盛り!
また、ボビー・ティモンズのゴスペルピアノには歓喜するばかりですし、ポール・チェンバースのヤル気は間違いなく本物! ここでのアドリブは驚異的ですよ。
つまりリズム隊の熱気も凄すぎますし、バンドが一丸となった突進力とガチンコの雰囲気、総力戦という展開は想像に易く、実際はなかなか出来るもんじゃないでしょう。テンションの高さと勝負度胸が渾然一体となった名演だと思います。
B-2 Nakatini Suite
ラテン風味も強い哀愁系の隠れ名曲ですから、ちょいとホレス・シルバーのバンドにリー・モーガンが客演したような雰囲気もあります。
しかしアドリブハードに入ってからの猛烈なアップテンポの展開は、アート・ブレイキーの渾身のドラミングが熱血の4ビートですから、リー・モーガンも燃えています。あぁ、この馬力があって颯爽としたスタイルこそが唯一無二です。
またボビー・ティモンズの前向きな姿勢も潔く、さらにアート・ブレイキーが面目躍如のドラムソロ! そしてラストテーマに繋がるのですが……。
う~ん、ジャッキー・マクリーンはテーマアンサンブルにだけ参加!?
なんとも勿体ない展開ですが、これは曲名から推察して、「組曲」の部分的な演奏だったのでしょうか? もしかしたらジャッキー・マクリーンが主役となったパートもあったのかもしれませんねぇ。
このあたりはオクラ入り演奏でも発掘されんことを願っています。
ということで、実に荒っぽくて痛快なハードバップの人気盤だと思います。若さと度胸で全篇を乗りきったリー・モーガンは大変に魅力的ですね。ミスも散見されるんですが、完全に許せます。というか、それがあってこその魅力かもしれません。
そして個人的には、もうひとつの魅力になっているのが、ポール・チェンバースの存在です。その柔軟で強靭なペースワークは、数多残されたこの天才ベース奏者のセッションの中でも出色だと思います。このメンツ構成でジャズメッセンジャーズにならなかったのも、ポール・チェンバースの所為だといって、過言ではないでしょう。
極限すればメッセンジャーズ対ポール・チェンバースの決選!
結果は十人十色の好みだとしても、熱いセッションが確かにここに残されたのです。