OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

裸のラストワルツ

2009-07-31 11:43:17 | Rock

The Last Waltz Complete With Naked Sound / The Band
                       (Johanna = Bootleg DVD)


先週末は何かに惹きつけられるように入ったブート屋で、いろいろと驚愕のブツを発見しましたが、本日ご紹介も、あぁ、これが大当たり♪♪~♪

内容は1976年11月25日に行われたザ・バンドの最後のライブステージ、通称「ラストワルツ」の夜を可能な限り忠実に追体験出来る映像作品です。

皆様がご存じのように、この「ラストワルツ」はマーティン・スコセッシ監督により映画化され、1978年春に公開されました。そしてサントラ扱いというアナログ盤3枚組の同名アルバムも発売され、ザ・バンドと豪華ゲストメンバーの歌と演奏が存分に楽しめた、まさに1970年代ロックの素晴らしい記録だったわけですが、当然ながらフィルムは商業映画的な面白さを優先するために編集され、当夜のプログラムはバラバラにされていました。またアルバム収録の音源も同様に編集され、歌や演奏には手直しやオーバーダビングが施されていたのです。

それはリアルタイムで出回っていた海賊盤や音楽マスコミによるレポート等々でも明らかでしたし、もちろん裏側にはドロドロした人間関係のトラブルやマネージメントについての、本当に知りたくもない諸事情が渦巻いていたのです。

そんなこんなは、2002年になって世に出たCD4枚組のボックセット「ラストワルツ完全版」とリマスター版DVDによって、ますます顕著になりましたが、実はそれでも、この大イベントの全てを明らかにしていたわけではありません。

そして、ついに出たのが、本日ご紹介の3枚組映像集です。

結論から言えば、当夜のプログラムを進行順に整理し、全ての演奏を収録していますが、その音源は手直しが入っていないリアルライブが基本! しかもサウンドボード直結の高音質ですから、たまりません♪♪~♪ もちろん演奏や歌のミス、そして手違いが随所にあり、それが逆にストレートなロック魂の発露として、実に最高!

ですから映像部分にしてもマーティン・スコセッシ監督の公式映画パージョンとは異なり、そこでカットされていたフィルムパートが、モノクロショットで繋がれているという芸の細かさが泣かせます。つまりマーティン・スコセッシ監督がリアルな演奏をどこでカットし、編集していったかが一目瞭然に楽しめるのです。

ちなみに、ここで繋ぎに使われているフィルムは公式映画クルーが撮影したものではなく、当日の興業を仕切った現場プロデューサーのビル・グレアムのスタッフが記録していたプロショット映像がメインになっていますので、音源との同期も細かい部分まできちんとしています。しかもそこに公式映画のアウトテイクとも思えるフィルムも巧みにミックスしてあるようですから、それが劣化していようとも、極めて自然に「ラストワルツ」の真の姿に接することが出来ました。

おまけに各パートの真相が日本語字幕で画面に出るのも、最高に親切です。

★Disc-1
 01 Opening Document with Japanese Tickers

 まず冒頭、この企画がスタートした経緯が短く字幕テロップで解説されますが、結局はザ・バンド側とレコード会社の対立、と同時にメンバー間の人間関係が大きな要因だとされています。
 しかも当初は、この「ラストワルツ」が決して「解散」では無かったという……。

 02 Up On Cripple Creek
 03 The Shape I'm In
 04 It Makes No Difference
 05 Life Is A Carnival
 06 This Wheel's On Fire
 07 W.S. Walcott Medicine Show
 08 Georgia On My Mind
 09 Ophelia
 10 King Harvest
 11 The Night They Drove Old Dixie Down
 12 Stage Fright
 13 Rag Mama Rag

 このパートは所謂「ザ・バンドのヒットパレード」です。
 ロビー・ロバートソン(g,vo)、リック・ダンコ(b,vo)、リチャード・マニュエル(p,vo,ds)、ガース・ハドソン(key)、レヴン・ヘルム(ds,vo) というザ・バンドのメンバーは、これが最後のライブということで、実に気合いの入った演奏と書きたいところですが、ここでの手直しが入っていない音源や部分的にカットされたパートの映像を合せて追体験すると、荒っぽくてミスが目立ったり、あるいはそれが逆に熱気を生み出していたりして、なかなか興味深々♪♪~♪ 特に冒頭からの3連発が強烈です。
 そして大きな目玉がリチャード・マニュエルがソロで歌う感涙の「Georgia On My Mind」でしょう。これは前述した4枚組ボックスセットからも外された幻の名演! このイベントの後に発売された、リアルなザ・バンドとしての最後のスタジオアルバム「アイランド」に収録のバージョンよりも、確実に素晴らしいのは保証付きです。
 また同じく公式には幻化している「King Harvest」にしても、途中でリチャード・マニュエルのボーカルがヘロヘロになりますから、理由はわかるんですが、これが非常に味わい深いですねぇ~♪
 個人的には「Rag Mama Rag」で圧巻のローリングピアノを披露するガース・ハドソンの熱演にも、シビレがとまりませんでした。

 14 Who Do You Love /  Ronnie Hawkins
 15 Such A Night / Dr.John
 16 Down South In New Orleans / Bobby Charles & Dr. John
 17 Mystery Train / Paul Butterfield
 18 Caldonia / Muddy Waters
 19 Mannish Boy / Muddy Waters
 20 All Our Past Times / Eric Clapton
 21 Further On Up The Road / Eric Clapton
 22 Helpless / Neil Young
 23 Four Strong Winds / Neil Young
 このパートは「ザ・バンド&ゲスト」というコーナーで、何れも大スタアという所縁の面々が登場し、ザ・バンドをバックした熱演を披露しています。
 しかし、この裏側では短期間でゲストと共演する演目を覚えなければならなかったザ・バンドの戸惑いがあり、流石の凄腕メンバー達も些かポロを出しているのが、このリアルな音源と映像にはしっかりと記録されていますが、それでもやっぱり1970年代ロックの魅力が薄れているなんてことはありません。次々に登場してくるゲスト達、それぞれの熱演とリアルな個人的事情も興味を誘います。
 特にブルースの巨匠たるマディ・ウォーターズに関しては、主催者側からキャンセルを申し入れる寸前の非礼があったという、実に驚くべき裏話がっ! しかしこれにはレヴォン・ヘルムが大激怒! この企画そのものにも反対していた経緯もあり、結局はマディ・ウォーターズとの共演を条件に「ラストワルツ」が進行したという真実も語られています。しかしそんな気合いが空回りしたのでしょうか、「Mannish Boy」の最初のキメのリフで、リック・ダンコは音を出しそこねていますから、公式フィルム&音源のペースパートは、完全にスタジオでのオーバーダビングだと知られて……。
 またニール・ヤングは、ほとんど悪いクスリにどっぷりですねぇ……。詳しくは書きませんが、明らかに公式フィルムでは映せない部分、さらに「Four Strong Winds」でのヘロヘロな歌詞の間違いとか、流石にカットされた実状を痛感させられますよ。
 しかし確かに名演もあって、エリック・クラプトンの未発表映像となった「All Our Past Times」の和んだ雰囲気は秀逸ですし、イントロのギターソロでストラップが突然外れてのハプニングが名演となった「Further On Up The Road」では、中間のギターソロがやっぱり少しカットされていたことが詳らかにされています。
 あと、ボビー・チャールズやドクター・ジョンの雰囲気の良さは絶品♪♪~♪ 特に前者の「Down South In New Orleans」は、公式映画では全てカットされたのが不思議なほどの名演だと思います。

★Disc-2
 01 Coyote / Joni Mitchell
 02 Shadows and Light / Joni Mitchell
 03 Furry Sings the Blues / Joni Mitchell
 04 Dry Your Eyes / Neil Diamond
 05 Tura Lura Lural (That's An Irish Lullaby) / Van Morrison
 06 Caravan / Van Morrison
 07 Acadian Driftwood / The Band, Neil Young & Joni Mitchell

 このパートもザ・バンドがバックアップするゲストコーナーの続きです。
 まずジョニ・ミッチェルが本当に素晴らしく、正規映像版でも魅力的だった「Coyote」のジャズフュージョンしまくった歌と演奏には、やっぱりシビレますねぇ~♪ 独特の変則コードワークでギターを弾き、真摯に歌う彼女の姿は凛としていますから、浮遊感に満ちた曲調が尚更に輝くのでしょう。ただし、ここでのリック・ダンコのペースワークは、ほとんどがルートの音を出しているだけというか、正規音源とは大きく異なっています。それはもちろん、後のスタジオ作業でダビングされ直したものなんですが、ジョニ・ミッチェルのオリジナルバージョンでは、ジャコ・バストリアスが驚異のベースプレイを披露していましたからねぇ。いくら名手のリック・ダンコにしても、ライブの現場では些か分が悪いということでしょう。ただし完成された正規音源におけるリック・ダンコのフュージョンベースも、独特の味わいがありますから、私は好きです。
 そして正規映像版ではカットされた以下の演目では、ほとんどメドレーとなって続く「Shadows and Ligh」が、これまた最高! 幻想的な味わいを見事に演出するロビー・ロバートソンのギターやガース・ハドソンのキーボードも流石の一言です。
 しかし二―ル・ダイアモンドの場面は、正規映像版でも些か精彩がありませんでしたが、ここで明らかにされたノーカットの映像でも、やはり同じ……。その真相はグループ内の人間関係にもあるらしいことが、テロップで紹介されています。
 で、そんなモヤモヤをブッ飛ばすのが、続くヴァン・モリソンの登場です!
 ただし、ここでも様々なゴタゴタがあって、当日に予定されていた「Tura Lura Lural / アイルランドの子守唄」が始まっても、本人が出てきません。どうやら衣装が気に入らなかったと解説されていますが、それをフォローしたのがリチャード・マニュエルの泣き節ソウル♪♪~♪ 本当にシミジミと魂を込めて歌い始めるその瞬間から、ステージと会場にはジワジワと感動が広がっていきます。
 すると、それに触発されたかのようにヴァン・モリソンが、ついに登場! 途中からそれを引き継ぎ、熱血とソウルが溢れ出た圧巻の名唱を披露するのです。
 あぁ、これは凄いですねぇ~~♪
 何度観ても震えが止まらないほどに感動します。
 これを正規映像版からカットしてしまったのは、マーティン・スコセッシ監督の大ミステイクだと不遜にも言い切りたいほど!
 ちなみに、この2人の熱唱と言えば、ザ・バンドの名盤「カフーツ」に収められている「4% Pantomime」があまりにも有名ですが、それもやって欲しかったですねぇ。もしライブで聴けるのなら、全てを投げ打つ覚悟をしているサイケおやじですが、今はそれも幻になったのは残念至極です。
 プログラムはこの後、映画でも名場面となった「Caravan」の大熱演へと続きますが、そこでさえ、このネイキッド版を観ると、かなりのカットがあることに、ちょっとショックを受けるかもしれません。しかし、ここでのヴァン・モリソンのパートは、1970年代ロックの決定的な歴史の一幕として残された世界遺産になると確信しています。

 08 Intermission
 09 Poetry Reading

 このパートは前半から後半に引き継がれる休憩時間で、当時の貴重な資料や写真がスライドショウのように楽しめますし、噂になっていた如何にもサンフランシスコらしい「詩の朗読」が、動く映像で追体験出来るという、なかなかマニアックなものです。

 10 Method
 11 Chest Fever
 12 Theme From The Last waltz - Evangeline (concert version)
 13 The Weight (concert version)
 続いて実質的な後半のスタートはザ・バンドの演奏で、まず「Method」はガース・ハドンソが様々な音のコラージュやキーボードを駆使して聞かせるプログレっぽい一人舞台ですが、「Chest Fever」へと続く流れは当時のステージでは定番だったようです。もちろん、これまで全く謎に包まれていた完全ロングバージョンですよ。
 そして、さらに貴重なのが今回のテーマソング「Theme From The Last waltz」の当夜のライブバージョンでしょう。正直言えば、一期一会の演奏ゆえに、ザ・バンドにしては、些かのポロも露呈していますから、後に出された改訂版4枚組ボックスからも外されたのは当然という結果です。それゆえ、ここにはリアルタイムの面白さが味わえる海賊盤の楽しみがあるのですが、まあ、十人十色の感想かもしれません。
 ただし、これも正規映像版からは外された「The Weight」のコンサートバージョンは、汚名返上ともいうべき名演ですから、流石だと思います。

★DISC-3
 01 Baby Let Me Follow You Down / Bob Dylan
 02 Hazel / Bob Dylan
 03 I Don't Believe You / Bob Dylan
 04 Forever Young / Bob Dylan
 05 Baby Let Me Follow You Down (reprise) / Bob Dylan

 こうして迎えるクライマックスが、ザ・バンドを従えたボブ・ディランという、これまたロックの歴史を検証するには相応しい共演が楽しめます。ただし舞台裏では映画撮影におけるボブ・ディランの出演場面や演目についてのゴタゴタが、ここに至っても解消されず……。現場ではスタッフと主催者側の混乱が相当にあった経緯がテロップで流れます。
 しかしステージ上では、そんなの、かんけー、ねぇ~!
 まずはボブ・ディランが1962年のデビューアルバムでも歌っていた黒人フォークブルースの「Baby Let Me Follow You Down」を、ザ・バンドの熱演とともに、ド迫力のハードロックに改変して披露します。もちろんこれも正規映像版では観ることが叶わなかった名場面ですから、歓喜悶絶♪♪~♪ ボブ・ディランの激した歌いっぷりも最高ですよ。
 それはザ・バンドとの共演アルバム「ブラネット・ウェイヴス(Asylum)」に収録されていた中でも、特に地味だった「Hazel」が、情熱的な名唱・名演になっていることでも、当夜の盛り上がりが眩しいほどに追体験されるのですから、たまりません。
 もちろん続く「I Don't Believe You」や「Forever Young」も熱気と威厳とロックの魂が溢れる名場面といって過言ではないのです。
 さらにボブ・ディランとザ・バンドは、その場のノリで再び「Baby Let Me Follow You Down」を歌い、演奏し始めるのですが、これは完全に予定外だったらしく、現場も混乱! ついにボブ・ディラン側のスタッフが映画の撮影を中止させようとしたとか、これも当時の裏話が興味深いところでしょう。
 う~ん、それにしても、ディラン&ザ・バンドって、本当に魅力がありますねぇ。間近いなく、ロック最高の瞬間を作り出せる組み合わせだと思います。

 06 I Shall Be Released / Bob Dylan
 そしてついに大団円!
 当日の出演者のほとんどに加え、リンゴ・スターやロン・ウッドまでもが登場したフィナレーは、もうこれしか無いの名曲・名演です。
 いゃ~、なんともせつなくなってきますねぇ。これは私のような中年者だけではないと思いたいところではありますが。

 07 Jam #1
 08 Jam #2
 これは予定外に行われたジャムセッションの場面で、そのきっかけはリンゴ・スターとレボン・ヘルムのドラム合戦というのが、「Jam #1」です。これは音源だけは公式発売されていますが、正直、それだけでは面白くありませんでした。なにしろ演奏そのものがシンプルというか、遠慮気味でしたからねぇ。
 それが映像となると俄然、興味深々!
 ワンコードのジャムセッションらしく、登場したギタリストはそれなりに相手を立てる事に終始しているのは勿体無いかぎりですが、少しずつ熱くなっていくところは、如何にも当時の雰囲気です。
 ただし映像フィルムが途中で終わり、音声だけになっているのは残念……。
 それは「Jam #2」でも同様で、このパートは近年にリマスターされたDVDのボーナス映像でもご覧になれますが、むしろ演奏に纏まりが出てきた分だけ、なおさらに……。しかしレゲエなムードからブル~スに展開されていくあたりには、ゾクゾクさせられますよね。
 ちなみに参加メンバーは字幕でしっかりと出ますから、ご安心下さい。個人的にはニール・ヤングとスティーヴン・スティルスが並び立つ場面に感涙♪♪~♪

 09 Don't Do It
 この演奏は劇場版映画では最初にありましたが、実は最後の最後にアンコールで登場したザ・バンドの勇姿です。
 これを巧みな編集で纏めたマーティン・スコセッシのミエミエな手法は、本当に憎めませんねっ。やはり流石だと思います。
 ちなみにそこで楽しめたは、後にホーンがダビングされ、2分半ほどに編集されたバージョンですが、リアルタイムではザ・バンドだけの演奏でした。
 そのあたりを今回のブツでは、ホーンがダビングされた後のコンプリートバージョンを使い、映像パートの欠落は上手く他の部分を入れこんで仕上げた労作になっています。

★ボーナストラック
 01 The Weight Studio Performance'76 / The Staple Singers
 02 Evangeline Studio Performance'76 / Emmylou Harros
 03 Forever Young / Bob Dylan
 04 Baby Let Me Follow You Down (reprise) / Bob Dylan
 05 I Shall Be Released / Bob Dylan

 このパートはザ・バンドとボブ・ディランの名曲名演の中から、歌詞が特に難解と言われているものを選び、丁寧に日本語訳をつけた字幕で楽しめる企画です。
 まず「The Weight Studio Performance'76」は、劇場公開版を仕上げるために行われたスタジオセッションで、彼等が尊敬するステイプル・シンガーズとの共演でしたから、殊更にゴスペルムードが高まり、その宗教的な歌詞の味わいも強くなっているようです。
 まあ、正直言えば、キリスト教徒でもユダヤ教徒でもない私には???なんですが、それでも人生の重荷を下ろすという、究極の安らぎを歌ったらしいということは、なんとなく理解出来ます。
 そしてステイプル・シンガーズのディープな素晴らしさ、ザ・バンドが共演で目指したものが痛感されるのでした。実に名演!!
 それは続くトラックでも、確実に楽しめますから、ここは観てのお楽しみと致しますが、それにしてもエミール・ハリスの清涼な佇まいと天使の歌声には、いろんな思惑やゴタゴタが虚しくなる魅力がありますねぇ♪♪~♪
 また「I Shall Be Released」は幾つもの解釈があるとされてきましたが、ここでの翻訳は一期一会と人生の最期を歌ったような、ある種の諦観には、ちょいと驚きました。

ということで、「ラストワルツ」を追体験出来るブツとしては、過去最高じゃないでしょうか? なによりも名作映画とされていた、その制作過程の内幕やマーティン・スコセッシ監督の手腕の一端が、それなりに堪能出来るのは、私にとっては大きな喜びでした。

既に述べたように、それを補完しているのがモノクロパートの映像なんですが、惜しむらくは、その鮮明度がイマイチ……。これはカラーをモノクロに落として焼き付ける場合には当たり前のことなんですが、やはり海賊盤ゆえに、その補正が上手くなかったのです。

ただし、逆に言えば、公式版から流用した映像との対比が、より明確になっているのも、また事実ですし、何よりもダビングも手直しもされていないリアルな音声との同期も厳密に調整されていますから、これ以上言うのは贅沢ってものだと思います。

1970年代ロックの素晴らしき瞬間を、ぜひともお楽しみ下さいませ。

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いちご畑の不安と凄み

2009-07-30 12:09:18 | Beatles

Strawberry Fields Forever / The Beatles (Parlphone / 東芝)

元来、気が弱くて心配性のサイケおやじは、しかし楽天的な部分も非常に多い人間ですから、何かに対して不安感が大きくなるほどに、次なる期待も過大なものになってしまいます。

例えば本日ご紹介のビートルズの名曲は、昭和42(1967)年3月に我が国で発売されたシングル盤でしたが、その前の月にはベストアルバムの「オールディーズ」が出ていていましたから、今となってはビートルズの新しい出発という考察になっているようです。

ところがサイケおやじのリアルタイムでは、全く理解不能……。当時はサイケデリックの全盛期でしたが、それにしてもドロドロにモヤモヤした曲調やいろんな楽器が多層的に鳴り響き、ジョンのボーカルが煮え切らない歌い方をしてくれるのは、純真な少年には荷が重いところでした。

ちなみにサイケおやじが初めて聴いたビートルズは、従姉が持って来た「She Loves You」のシングル盤B面曲だった「I'll Get You」ですが、これは彼女が意図的に我が家のステレオで鳴らしたものです。

こっちの曲が、素敵なのよ~~♪

なんて言っていた彼女は、そうとうにシブイ趣味ですよね。もちろんサイケおやじには、???

それは昭和39(1964)年春の事でしたが、当時の日本では、未だビートルズがブームになっていることは無く、それでも女の子達から騒がれ始めていた時期だったと思います。そして気がつくと、ビートルズの歌と演奏は連日連夜、ラジオから流れてくる日々となるのですが……。

こうして月日が流れました。

昭和41(1966)年には狂乱の来日公演もあり、その後のライブ活動休止宣言や我が国での爆発的なGSブームが続いて、この世はまさに昭和元禄となった時代です。

そしてサイケおやじは最初に買ったビートルズのアルバム「4人はアイドル / Help」、さらに「ビートルズ65 / For Sale」や「ラバーソウル」を聴きまくっていた黄金の日々に、突如として現れたのが、この「Strawberry Fields Forever」だったというわけですから、当時の戸惑いを皆様にはご理解願えると思います。

ちなみに私が「リボルバー」を買ったのは、もう少し後のことで、それはやっぱり従姉から聞かせてもらったアルバムが、リアルタイムでは、なんだかなぁ……。

つまり完全にビートルズには、ついていけなかったのがサイケおやじの本性です。

正直、もっと正統派のバンド演奏をやっているビートルズが好きだったんですねぇ。

いったい、ビートルズは、どうなっちまうんだろう……。

この不安感は、偽りの無い気持ちでした。

それでも、あえて私が、このシングル盤を買ったのは、B面に収録された「Penny Lane」が聴きたかったのが真相です。こちらはA面とは一転した明快なポップス調で、ポール・マッカートニーならではの闊達な魅力が、ストレートに楽しめたのです。ちなみに、このシングル盤は世界中で両A面扱いが基本になっていたのですが、何故か日本ではAB面に厳然とした区分けがありましですね。

そして、そうこうするうちに夏となって、あの世紀の傑作アルバム「サージェント・ペパーズ」が登場し、これも正直、サイケおやじには最初、煮え切らない世界だったのですが、ここであらためて「Strawberry Fields Forever」をじっくりと聴くと、全てのタネが明かされるのでした。

ということで、このシングル盤は当然ながらモノラル仕様ですから、後に様々なアルバムに収録されるステレオミックスとは、異なる部分が幾つかあります。

例えば日本でプレスされたアルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」のオデオン盤(OP9728)は、完全なステレオミックスですが、同様のイギリス盤ともアメリカ盤とも、微妙にミックスが異なっています。もちろん後のベストアルバム、所謂「青盤」とも違うように感じますから、完全に奥の細道ですよね。

また、このシングル盤よりも、ちょっと後の5月頃に発売された4曲入りのコンパクト盤(東芝 OP4251)に収められた同曲は、疑似ステレオ疑惑が極めて強くなっています。

それと、これも有名なエピソードですが、曲の最終部分にあるジョン・レノンの呟き「I Burried Paul」がポール・マッカトニー死亡説の根拠となる、結果的な遊び心も、今となっては印象的でしょう。実は「Cranberry Sause」と言っているのが真相らしいのですが、それはそれ、これはこれでしょうね。

やっぱりビートルズは、凄いと思わせた1枚ですが、分からないけど凄い! を痛感させられたのが、正直な気持ちなのでした。

世の中は何時の時代も様々な不安感が蔓延しているものですが、それを「凄い」に変えてくれる救世主を、今は待ち望んでいます。

コメント (2)
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いっしょに、やろうよ♪♪~♪

2009-07-29 11:44:43 | Winter Family

Come On Let's Go / The McCoys (Bang / 東芝)

昨日は選挙戦をやっている与野党、ふたつの集会に引っ張り出されました。

そして話を聞くほどに呆れて、幻滅してしまったですよ……。

まず、あえて名前を出しますが、民主党!

様々に美味しいエサをばらまくのは、大変に良いでしょう。ただ、消費税を4年間は凍結し、ガソリン税を下げ、高速道路の料金を段階的に無料化等々、財源の見通しが極めて不透明なのは、報道されているとおりです。

無駄を省くといっても、まず審議拒否をしたり、大事な本会議の議決から欠席や対席する代議士の俸給を取り上げるというような、自分達の身を削る話はいっさい、出ません。公務員の俸給削減だって、組合をバックにしている政党に、それが出来るかは、核心に触れる部分を話してくれません。

第一、何を基準に「無駄」と決めるのか、その議論さえ曖昧至極なんですねぇ……。

最低賃金を時給千円に!?! これにも唖然とさせられました。

一方、自民党!

これがまた、手詰まりというか、現状維持に精一杯ならばまだしも、既にして負け戦を覚悟しているような、落ち武者の言い訳ばかり……。自分自身に言い聞かせているようなところが、いけませねぇ……。

私は数年まえから地方で仕事をするようになり、現在は本来の職場も掛け持ちになっているので、わりと比較して様々な現場を見られるのですが、例えば直轄事業となっている高速道路建設についても、それが地方の場合だと、民主党ならは「無駄」とされる部分が非常に多いと、昨日の話の内容にありました。

ところが現地では、自民党も民主党も、2人の立候補者が「作る」と意気込んでいるのです。

まあ、自民党の候補者が当選すれば、当然の流れで工事は継続になるでしょう。

しかし全体として民主党が政権を取った場合、自民党の代議士は野党となり、現実的に「公約」は実現出来ないのです。もちろん民主党候補が当選しても、自分の地方の工事なんて、「無駄」の一言で約束は守れないでしょう。

しかも税収をあえて減らし、一部の国民に大サービスを施す施策では、ますます地方は蔑ろにされるのです。

あぁ、日本は地方から腐っていく……。

なんとも不毛な論議がメインの選挙! 特に地方での戦いは、どっちにしても、お先真っ暗なんですねぇ。

それと「一部の国民」と書いたのは、例の出産一時金とか子供手当の件なんですが、若い人達には嬉しいでしょう。しかし私のような中年者とか子供のいない世帯では負担増になるのが分かりきっているでしょう。しかもその美味しい話が、毎年続けられるという保証なんて、財政面をちょっと考えれば、無理だということが簡単に推察出来るのです。

こういう若い者を誑かすような話は、いけませんよ。

書きたくはないんですが、もう少し「ごまかし」が上手くないと政権運営は出来ないような気がしています。

結局、両政党のトップが2人とも、生まれた時からお金の苦労を知らない御曹司! だから夢物語にマジになったり、呆れた失言を連発するんでしょう。しかも、その下に付き従うものが、お金の亡者か、威張りちらしたい者ばかりという情け無さですよ。

それではせめて、少しでも自分の住んでいる地域を良く知っている候補者に投票しようと思っても、それが他所から鞍替えしてきたり、外様だったりする場合が、非常に多いという矛盾さえあるのです。

どっちが勝っても、日本は良くなることがない!

結論が見えている戦いほど、バカげているものはないでしょう。

ということで、本日は戯言と暴言が長々と続きましたこと、お詫び申し上げます。

そして こういう気分の時こそ、スカッと単純明快な楽しい曲をということで、ご紹介のマッコイズは1960年代半ば頃に我が国でも人気があった、所謂アイドル系のR&Rバンドですが、ルックスの良さとともに、実力も侮れなかったと思います。

メンバーはリック・ゼーリンガー(vo,g)、ランディ・ゼーリンガー(ds) の兄弟を中心に、ランディ・ポップス(b)、ロニー・グランドン(key) が加わった4人組でした。そして1965年に永遠のロックンロール「Hang On Sloopy」のデビューヒットを放つのですが、本来はエレキインストのバンドだった彼等にしてみれば、まずは楽しさ優先主義は譲れないところでしょう。続けて放たれたヒット曲の数々を聴けば、その分かり易い楽曲の魅力が堪能出来るのです。

ちなみにバンド名は、ベンチャーズのヒット曲「McCoy」に因んだもので、実際、ライブステージではバンドテーマにもしていたと言われています。

そして本日の1枚も彼等の代表曲にして、我が国でも昭和41(1966)年から最高に流行った、実に調子良すぎるR&R♪♪~♪

ほとんど、カモ~ン、レッツゴ~♪♪~♪ だけで成り立っている曲調のシンプルな楽しさは絶品ですし、間奏で聞かれるギターソロは完全に「Terry-sh」ですよっ! つまり寺内タケシ! なんですねぇ~~♪

しかし、時の流れは非情にも彼等を忘却の彼方へと追いやり、次に注目されたのは、百万ドルのブルースギタリストとして宣伝されたジョニー・ウィンターのバックバンドとしての活躍でした。まあ、この時のリックはデリンジャーと改名していたのですが、痛快なロックンロールのギターは健在で、嬉しくなりましたよ。

人生も、このように変転出来れば、良いんですけどねぇ……。

これも永田町のテーマにどうだっ!?!

カモ~ン、レッツゴ~♪♪~♪

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ストーンズの逆襲 '78

2009-07-28 11:17:09 | Rolling Stones

Garden State 78 / The Rolling Stones (Kiss The Stone = Bootleg CDR)

春頃から積み重なっていた仕事もようやく一段落した先週末、となればサイケおやじは再び悪いムシが出てしまい、ストーンズの最新海賊盤がドカッと入荷していたブート屋の餌食になってしまいました。

そして本日のご紹介も、その中のひとつで、元ネタはストーンズが1978年に敢行した北米巡業のライブ音源♪♪~♪ しかも内容は当時から音質良好の人気定番として、ファンには有名だったものです。

それは、このブツと同じタイトルの2枚組アナログ盤で、ミキサー卓に直結の所謂サウンドボード音源ということで、観客の熱狂や声援等々はちょいと臨場感に欠けるのですが、個々の楽器の分離状態や低音域にメリハリの効いたミックスは、なかなかに迫力がありました。

録音は1978年6月14日のニュージャージー州、キャピトルシアターという小さめの会場で、資料的にはツアーの三番目となる公演地ですから、まだまだ演目の構成にも興味深い練りの不足が、逆に楽しいところ♪♪~♪ サポートメンバーもロン・ウッドとは昔馴染みのイアン・マクレガン(p,key,vo) だけというシンプルさが、かえって新鮮でした。

そしてストーンズが日常的というラフファイト的な演奏が、その頃に台頭してきたパンクロックへの意地の表れと解釈されているように、原点回帰したというよりも、意図的に開き直った感じが、これも「らしさ」の魅力になっています。

★Disc 1
 01 Let It Rock
 02 All Down The Line
 03 Honky Tonk Women
 04 Star Star
 05 When The Whip Comes Down
 06 Miss You
 07 Just My Imagination
 08 Lies
 09 Beast Of Burden
 10 Respectable
★Disc 2
 01 Far Away Eyes
 02 Love In Vain
 03 Band Introductions
 04 Shattered
 05 Sweet Little Sixteen
 06 Tumbling Dice
 07 Happy
 08 Brown Sugar
 09 Jumping Jack Flash
 10 Street Fighting Man

上記演目は十八番のヒット曲はもちろん、リアルタイムの新作アルバムだった「女たち / Some Girls」から多くが入れられ、中でも「When The Whip Comes Down」や「Respectable」、そして「Shattered」や「Lies」といった、以降のストーンズのライブでも欠かせない、如何にも「らしい」R&Rが痛快至極! もちろん観客にしても、初めて生演奏を聴くわけなんですが、その楽しさと猥雑さ、過激さとリラックスしたノリの良さには、完全に惹きつけられたと思います。

また最新ヒットシングルとなった「Miss You」のディスコ大会とか、人気黒人グループのテンプティションズをカバーした「Just My Imagination」の強引なロックロール的解釈も侮れません。というよりも、ズバリ、楽しいですよ♪♪~♪

ただしラフな演奏はともかくも、時には投げやりなミック・ジャガーの歌い方には、好き嫌いがあるかもしれません。おそらくは意識的だったと思うのですが、終盤の「Brown Sugar」から続くパートでは、これ以前の名演・熱演が深く焼き付けられているだけに、なんだかなぁ……。

そのあたりが哀愁歌謡っぽい新曲の「Beast Of Burden」では、逆に結果オーライなのが皮肉かもしれませんね。

ちなみに演奏全体はツッコミ気味にスピードがついた、なかなか若々しいと言っては失礼な魅力があり、これも前年までのファンキーなストーンズから脱却を図った証明かもしれません。

そして演奏のド頭にやってしまう「Let It Rock」とか、「Sweet Little Sixteen」といったオールディズのR&Rを、堂々と披露するあたりも、憎めません! 既に述べたように、これを出来るのが、パンクロックのアンポタン野郎達へのお手本でしょうねぇ。ロック魂の年齢は、かんけーねー! っていうことを実践しているのは、今でも転がり続けている彼等が立派に証明しているわけですが!?!

気になる音質については、まずアナログ盤時代は基本的にモノラルミックスながら、部分的に綺麗なステレオミックスになっていたのですが、何故か時々、左チャンネルからの音が欠落したり、元ネタテープのヒスノイズが目立っていました。

それがCD時代になって、例えば「Out On Bail」とか幾つかの改訂盤が登場し、音質も飛躍的に向上したのですが、これも何故かチャンネルが左右逆だったり、ヒスノイズを消すために使われたイコライザーの所為で、なおさらに嫌らしくなったり……。

つまり演奏の迫力が魅力なのに、それを活かしきった決定版がありませんでした。

それが今回のブツでは、チャンネルのドロップアウトはモノラルミックスで上手く処理し、最新の技術でノイズを激減するリマスターによって、とても聴きやすく仕上がられています。

またアナログ盤ではフェードアウトしていた「Street Fighting Man」も、客席から隠密録音された音源を上手く繋いで完奏パージョンに作り上げたのも、高得点でしょう。これは以前にも同様の試みがあったのですが、今回は尚更に自然な感じです。

そしてジャケットがオリジナルのデザインにされたのも、嬉しいところ♪♪~♪ 正直言えばプレス盤ではなく、CDRなのが残念ですが、それもまた良しと致します。

この時期のストーンズについては、ファンの間でも好き嫌いがはっきりしている感じで、サイケおやじにしても、それほどの思い入れがあるとは言えません。なにもパンクなんかに意識過剰になるほどもないストーンズの焦りも、気になります。

しかし、そんなこんなで実際に演じられたライブの魅力は、この音源を聴けば即効性があり、実は私が自身がパンクを忌嫌っているところを生理的に痛感させられるのです。当時は30代半ばを過ぎていたストーンズの面々にしても、そんな歳になってまでロックは出来ないとされていた社会常識を、軽々と飛び越えていたんですねぇ~。

当時を未体験のファンの皆様はもちろん、ひとりで多くの中年者にも、お楽しみいただきたいと願っております。

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バードにフィリーとピアソン

2009-07-27 09:44:41 | Jazz

The Cat Walk / Donald Byrd (Blue Note)

モダンジャズではトランペットとバリトンサックスという黄金の組み合わせが、なかなかの人気を集めた歴史があります。例えば一番有名なのがチェット・ベイカー(tp) とジェリー・マリガン(bs) の名コンビですが、他にもケニー・ドーハム(tp) とチャールズ・デイビス(bs) というイブシ銀のコラボレーション、そしてドナルド・バードにペッパー・アダムスの真正ハードバップ組には心底、心が踊ります♪♪~♪

まあ、このあたりはモダンジャズでの超一流バリトンサックス奏者の少なさが残念なほどですが、それゆえに今日まで残されたアルバムは、何れもジャズ者には必須の「お宝」だと思いますし、特に本日ご紹介の1枚は長年の個人的な愛聴盤のひとつです。

録音は1961年5月2日というハードバップが完熟した黄金時代! メンバーはドナルド・バード(tp)、ペッパー・アダムス(bs)、デューク・ピアソン(p)、レイモン・ジャクソン(b) という当時のレギュラーバンドにフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) が参加したという素敵なバンドですが、ちなみに、それまでのレギュラードラマーだったレックス・ハンフリーズは何らかの事情で外れ、ドナルド・バードは次なるレギュラーとしてビリー・ヒギンズ(ds) とハービー・ハンコック(p) を雇い入れる直前という過渡期の記録としても、なかなか興味深いと思いますし、結果はもちろん、最高!

A-1 Say You're Mine
 デューク・ピアソンという隠れ名曲を数多く書いているコンポーザーの代表的なメロディと味わいが堪能出来るだけで、幸せな気分になれるのは私だけでしょうか。ちょっとばかり「屋根の上のバイオリン弾き」を連想させられるムードには思わずニヤリですし、全体は仄かに暗いソフトファンキーな「節」がいっぱい♪♪~♪
 ですからドナルド・バードのミュートトランペットも、何時も以上の歌心優先主義が完全に成功した味わい深いものですし、ペッパー・アダムスも持ち前の豪放な音色とバリトンサックスの魅力たる「鳴り」を活かしきった素敵なアドリブを聞かせてくれますよ。
 そして特筆すべきは、やはりフィリー・ジョーのビシッとしたドラミングで、ミディアムテンポのグルーヴを時には倍テンポで煽り、さらにクッションの効いた独特のリックで4ビートの魅力を堪能させてくれるのですから、たまりません。
 また気になる作者のデューク・ピアソンは、流石にツボを押さえた堅実な助演ぶりというか、決して派手なプレイは聞かせてくれませんが、トミー・フラナガンにも通じるようなジェントルな味わいと原曲メロディの膨らませ方には、グッと惹きつけられます。このあたりは演奏全体のふくよかな展開にも、大いに貢献していることが、聴くほどに明らかになるのですが、この人のような名参謀の存在こそが、モダンジャズでは経営維持が難しいとされるレギュラーバンド成功の秘訣だったのかもしれません。
 ちなみにこの曲はデューク・ピアソン自身にとってもお気に入りだったようで、数少ないリーダー盤の中でも数回の録音が残されていますから、例えば同年に作られた代表盤の「エンジェル・アイズ (Polydor)」に収録されたトリオパージョンと聴き比べるのも、楽しいかと思います。

A-2 Duke's Mixture
 これもデューク・ピアソンのオリジナルで、前曲とは一転してのファンキーゴスペル大会が素晴らしい限り♪♪~♪ フィリー・ジョーの楽しげなバックピートやレイモン・ジャクソンの足踏みしているようなベースワークにはノッケからウキウキさせられますよ。イントロだかテーマだか区別も付かないデューク・ピアソンのピアノも流石です。
 そしていよいよ合奏されるテーマメロディのファンキーな気分が実にほどよいマンネリムードで、たまりませんねぇ~♪ これぞっ、本当に「全て分かっている楽しみ」っていうものでしょう。
 ですからドナルド・バードもペッパー・アダムスも、こちらが思っているとおりのアドリブフレーズをテンコ盛りの大サービス! いきなり思い出し笑いみたいな十八番を聞かせるドナルド・バードは、やっぱり素敵ですし、合いの手だけで組み立てたようなペッパー・アダムスのバリトンサックスを煽るフィリー・ジョーという構図も、最高に美しいです。
 しかし正直言えば、こういう曲調になればこそ、デューク・ピアソンのソフトなフィーリングがファンキーへと拘るほどに、違和感があるのも確かでしょう。個人的にはウイントン・ケリーを強く希望してしまうのですが、それを補うのがトランペットとバリトンサックスのメリハリが効いたバックリフなんですから、これも計算された予定調和のスリルなのかもしれません。

A-3 Each Time I Think Of You
 という前曲にあった些かにの煮え切らなさをブッ飛ばすのが、これまたデューク・ビアソンのオリジナルという傑作ハードバップ曲です。独特の「節」を持ったメロディラインの妙は、歌物と呼んでさしつかえないほどでしょう。
 アップテンポで終始、快適なクッションを送り出すフィリー・ジョーの強い存在感も冴えわたりですし、こういう曲と演奏があるからこそ、ハードバップ中毒がますます進行するのだと思います。
 そしてアドリブ先発のペッパー・アダムスが奔流のような歌心フレーズの勢いを聞かせれば、さらにハートウォームで力強いドナルド・バードのトランペットは、音色そのものも大きな魅力になっています。またデューク・ピアソンのピアノが一段と「トミフラ節」に接近しているのも、なかなかニヤリの名場面じゃないでしょうか。

B-1 The Cat Walk
 B面に入ってはアルバムタイトル曲の演奏が、まずは秀逸の極みです。
 如何にもドナルド・バードが書いたに相応しく、ファンキーでゴスペルなムードとストップタイムを巧みに使った構成の見事さは、過剰に飛躍すること無く、それでいて新時代のモダンジャズを強く想起させるものだと思います。
 ですからドナルド・バードのトランペットは、ここぞとばかりに好フレーズを連発する潔さですし、仄かにマイナーな雰囲気も良い感じ♪♪~♪ そしてペッパー・アダムスのダークな歌心も絶好調ですよ♪♪~♪
 するとデューク・ビアソンが、次は俺に任せろ! その素晴らしすぎるピアノの味わいは、全く短いのが悔やまれるほどの名演だと思いますが、そこへ襲いかかってくるが如きファンキーなホーンリフとのコントラストにも、思わず腰が浮くほどの快感を覚えます。

B-2 Cute
 これはお馴染みというか、二―ル・へフティが書いた楽しいリフ曲なんですが、カウント・ベイシー楽団が歴代レギュラードラマーの見せ場として演奏するという趣向が、ここでは特別参加のフィリー・ジョーゆえに、最高のハードバップに結実しています。
 とにかく初っ端から炸裂するフィリー・ジョーだけのドラミング、それに続く猛烈なスピードのアドリブパートでは、ドナルド・バードの全力疾走が全盛期を証明していますが、当然ながらペッパー・アダムスも豪快なツッコミで大健闘! 煽るはずのフィリー・ジョーが押される場面さえあるのですから、強烈至極ですよっ!
 そしていよいよ始まるドラムソロの痛快天国は、ハードバップが最良の瞬間でしょう。ここに聞かれるような名演をライブ現場でも、当時は普通に楽しめたわけですから、タイムマシンが欲しくなるのは必定です。
 
B-3 Hello Bright Sunfolwer
 オーラスは、まるっきりスタンダード曲のような可憐なメロディが素敵なデューク・ピアソンのオリジナル♪♪~♪ ドナルド・バードの小粋なミュートとフィリー・ジョーのブラシの名人芸が演奏を楽しくリードしていく前半部分だけで、ジャズを聴く楽しみを満喫してしまうこと、請け合いです。
 しかし演奏は後半部分に至り、フィリー・ジョーがスティックに持ち替えたところからグイグイと熱くなり、何時しか存在感を強くしているデューク・ピアソンのピアノも流石ならば、鋭角的なフレーズも交えたペッパー・アダムスが本来の持ち味を損なうことなく、なおさらに重厚な歌心を披露するという、まさにハードバップがど真ん中の名演になっているのでした。

ということで、これもモダンジャズ全盛期の中で誕生した名作アルバムだと思うのですが、それゆえに見過ごされがちいうか、聴くチャンスが以外に少ない隠れ名盤かもしれません。実際、ドナルド・バードに限っても、この前後にはブルーノートを中心に人気盤が何枚も存在しているのが、なんか悔しくなるほどに、このアルバムは充実しているのです。

それは主役のトランペットにバリトンサックスという、既に述べた魅力に加え、この時代のスタアドラマーだったフィリー・ジョーの参加が最高の魅力となっているんですねぇ~♪ ドラムスのソロチェンジやロングソロはもちろんのこと、独特のクッションが冴える4ビートの躍動感とハッとさせられるほどに輝くオカズの妙技には、何時聴いてもワクワクさせられます。

また地味ながらデューク・ピアソンの存在感も侮れず、特に4曲も提供したオリジナルの冴えとツボを押さえた助演を聴くほどに、実はプロデューサーのアルフレッド・ライオンは、デューク・ピアソンのリーダー盤を想定していたのではないか!? とさえ思わせる部分を感じるのですが、いかがなものでしょう。

この時代ならではの素敵な車とイカシたファッションでキメるドナルド・バードが写るジャケットデザインも秀逸ですね。

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朝日のあたる家で作られた歴史

2009-07-26 09:46:39 | Rock

朝日のあたる家 / The Animals (EMI / 東芝)

GSのバンドはヒットしたオリジナルが歌謡曲にどっぶり、しかしその他のステージ演目は洋楽のカバーが当たり前というパラドックスがありましたから、その選曲のセンスと演奏能力の良し悪しが、バンドの評価に直結していました。

もちろんルックスは大切なんですが、やってる歌と演奏がイモっぽくて潰れたバンドが山のようにあったのは、今日の歴史でも明らかだと思います。

それゆえにGSを通して知る洋楽の醍醐味も素晴らしく、例えば本日ご紹介のアニマルズというイギリスのR&Bグループについても、私は昨日書いたスパイダース経由で虜になったのです。

それはもちろんスパイダースが当時のライブステージでアニマルズの十八番だった「悲しき願い」や「朝日のない街」、そして「朝日のあたる家」等々を聞かせていたからなんですが、ご存じのように堺正章というシンガーは、なかなかに黒いフィーリングを秘めた歌い回しがありますから、それが歌謡曲ノリでは独特のコブシに繋がっての結果オーライだったわけですし、当然ながらR&Bに偏ったロックをやらせても、これが味わい深いんですねぇ♪♪~♪

ところで本日の主役たるアニマルズは、イギリスのニューキャッスルという炭鉱の町で結成されたバンドということも影響しているんでしょうか、どうも肉体労働者系の粘っこい馬力が得意技!

しかもそのルーツというのが、モダンジャズや古いブルースだと言われています。

メンバーはアラン・ブライス(p,key,vo)、チャス・チャンドラー(b)、ジョン・スティール(ds)、ヒルトン・バレンタイン(g)、エリック・バートン(vo) という5人組ですが、元々はアラン・プライスがチャス&ジョンと組んだピアノトリオとしてモダンジャズやブルースをやっていたらしく、それが次第にR&Bへとシフトしながらロックバンド化していったようです。

そして1963年にはアラン・プライス・クインテットからアニマルズへとバンド名も変え、渡英してきたアメリカの黒人ブルースマンのバックや単独のクラブギグで人気を集め、ついに1964年になって敏腕プロデューサーのミック・モストと契約し、いよいよメジャーデビューを果たすのですが……。

そこで作られた2作目のシングル曲、つまり本日ご紹介の「朝日のあたる家」が世界中で大ヒットしてしまったのが、結果的にバンドをある意味で狂わせてしまうのです。

そのメロディは誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。原曲は作者不詳の伝承歌として黒人が歌っていたとか、イギリスの娼婦の歌だとか諸説あるのですが、アニマルズが元ネタとしたのはボブ・ディランが1962年に自身のデビューアルバムで歌ったバージョンであると宣伝されたようです。

もちろんボブ・ディランは如何にもフォークソングというシンプルな歌と演奏をやっていますが、これをアニマルズは強烈にエレクトリックなビートとソウルフルな歌い方、さらにジャズっぽいキーボードのアドリブソロで彩ったのですから、たまりません。その粘っこいフィーリングと原曲メロディの哀切感がジャストミートしての大ヒットは、当然が必然でした。

ところが、このヒット曲の印税が作者不詳の所為もあって、アレンジしたアラン・プライスのところにだけ、ごっそりと入ったのですから、他のメンバーは面白くありません。しかも当時のアニマルズはアラン・プライスがリーダーとして、音楽面もビジネス面も全て取り仕切っていたと言われているところから、ある意味では雇い人扱いだった他の4人は露骨な反感を隠そうとせず、ライブステージではアラン・プライスがマイクのスイッチを切られたり、移動の車中では様々な嫌がらせを受けていたというのは、有名な話です。

そしてついにアラン・プライスが自ら結成したバンドを出ていくことになるのは、皮肉でした。

しかしそんな裏事情があったとしても、アニマルズの魅力は尚更に輝き、以降は本格的にエリック・バートンのソウルフルなボーカルをメインに大活躍が続きました。

それは我が国にも波及し、例えば尾藤イサオがアニマルズのヒット曲「悲しき願い」の日本語バージョンを更なる大ヒットにしたり、前述のスパイダースや多くのGSがアニマルズのレパートリーをカバーしていったのです。

さて、私が「朝日のあたる家」を最初に意識したのは、実はスパイダースでもアニマルズでもありません。それはベンチャーズの強烈なエレキインストのバージョンでした。この曲はハードロックやディスコ歌謡にも幾つか焼き直されていますし、当然ながら多くの黒人歌手も歌っているほど魅力のあるメロディですから、これを聴き比べるのも楽しいと思います。、

それとボブ・ディランが、このアニマルズのバージョンを聴いて、フォークロックをやろうと決めたとする伝説は本当なんでしょうか? だとすれば、この曲そのものが、大変な歴史のポイントでもあるわけです。

さらにアニマルズがこのヒット曲のおかげで本格的にアメリカへ進出し、そのある日の巡業でメンバーのチャス・チャンドラーがジミ・ヘンドリックスを発見! 意気投合した後、イギリスに連れられていったジミヘンの大ブレイクは、これも歴史の重要な一部分でしょう。

う~ん、「朝日のあたる家」は、本当に凄い曲ですねぇ~~~!?!

ちなみにサイケおやじはベンチャーズやスパイダースのバージョンを聴いた後になって、ようやくアニマルズのヒットシングル盤を買ったんですが、それは中古!

そして最初に買った中古レコードの第1号だったことを付け加えておきます。

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何時もカッコ良かったスパイダース

2009-07-25 10:37:00 | 日本のロック

真珠の涙 / ザ・スパイダース (Philips)

昭和元禄とさえ称された昭和40年代、それを特に象徴していたのが、所謂グループサウンズ=GSの大ブームだったと思います。

これは昭和40年頃からのエレキブームで若者を中心としたバンド活動が自然発展的に歌と演奏をやってしまうロックの流行へと連鎖して行ったわけですが、やはりベンチャーズとビートルズの存在は絶対的でした。

つまりエレキインストか、ボーカルメインのバンドかという二極分化が根底にあったのは否めません。しかし聴いている側というよりも、見ている側にとってはカッコ良さが、まずあって、次に音楽性というのが、本音だったように思います。

ですから、両方のバランスが上手くて個性的というバンドがトップになるのは当然ですし、前述のGSブームの中ではスパイダースがダントツの存在でした。

メンバーはご存じ、堺正章(vo)、井上順(vo)、かまやつひろし(g,vo)、井上孝之(g,vo)、大野克夫(key,sg)、加藤允(b)、田辺昭知(ds) という7人組ながら、堺正章はスパイダース加入以前の子役時代から、人気喜劇役者だった堺俊二の息子という天才的な芸能センスを発揮して広く活躍していましたし、かまやつひろしはジャズ歌手の大御所というディーブ釜萢の息子ですから、これまた音楽的環境に恵まれた育ちもあり、ロカビリーブーム時代からのキャリアも豊富でした。

もちろんリーダーの田辺昭知は、そのロカビリーの人気バンドだったスイングウエストで活躍した後に独立し、結成したのがスパイダースです。そして前述した全盛期のメンバーが揃ったのは、おそらく昭和39(1964)年頃だったと思われます。

私がスパイダースを初めて意識したのは、なんかのイベントでエレキバンドが幾つか出た公開録音みたいな催し物だったのですが、当然ながらエレキインストが続く中にあって、スパイダースだけが歌入りの演奏をやっていました。これが昭和39(1964)年の事ですから、もちろんそれは英語の歌だったんですが、歌詞は分からなくても、カッコ良さは他のバンドを圧倒していましたですね。なによりもメンバー達の動きや楽器を演奏するスタイルそのものが、垢ぬけていたのです。

そしてそうこうするうちにエレキブームが本格的になり、テレビでもバンド合戦の番組が人気を集め、その中のひとつだった「世界へ飛び出せ」に毎回出演していたのが、スパイダースでした。もちろん「お手本」という感じの模範演奏も披露していたわけです。

ところでスパイダースの初ヒットとなったのは、昭和41年秋に出した歌謡曲にどっぷりの「夕陽が泣いている」だったのはご存じのとおり!

これを出すについてはメンバー達から相当な反発もあったようですが、個人的にはスパイダースのキャラクターへの違和感は全くありませんでした。

というのも、これ以前に出していた「フリフリ」にしても、今日では我が国初の日本語ロックとか言われていますが、実際のライブの場では堺正章が「サンサンナナビョ~シッ」とか言いながら観客を煽ってシャンシャンシャンの手拍子♪♪~♪

あるいは、かまやつひろしと井上順も加わってのモンキーダンスとか、とにかくエンタメ系のサービス精神が旺盛でしたから、多くのファンは歌謡曲路線にもすんなりと馴染めたんじゃないでしょうか?

そして以降は発売する曲が、いずれも大ヒット♪♪~♪

その秘訣というか、スパイダースの魅力は大衆芸能の本質を煮詰めた堺正章と井上順に対し、あくまでも音楽的に勝負していく大野克夫、井上孝之、加藤充、田辺昭知がどっしりと構え、そして両方のコントラストをしっかりと繋ぎ留める役割が、かまやつひろしの最高のセンスだったと思います。

これはファッションやライブステージの楽しさばかりではなく、リアルタイムで数多く出演した映画での活躍も同様でしたし、なによりも当時の洋楽のエッセンスを逸早く取り入れたオリジナル曲を次々に出していたことでも明らかでしょう。

さて、本日ご紹介のシングル盤は、スパイダースが絶頂期だった昭和43(1968)年夏に発売したもので、現実的にはGSブームも爛熟から退廃していく瀬戸際の1枚です。

まずA面の「真珠の涙」は作詞:橋本淳、作曲:かまやつひろし、そして編曲:筒美京平という、今となっては黄金のトリオというか、アッと驚くコラボレーション!? もちろん結果はヒットに結びついていますが、特筆すべきはサウンドの狙いが、当時の流行だった西海岸系フラワーポップスに極めて近いということじゃないでしょうか。

些か乙女チックな歌詞を存分に活かすソフトロック調のメロディ、それを巧みに融合させるアレンジは流石に秀逸で、実際の演奏面ではジョー・オズボーンの如く躍動する加藤充のエレキベースが、まず個人的には高得点♪♪~♪ 多層的に重ねられたコーラスやキーボード、さらにエレガントなストリングスの色彩が、極めて歌謡曲な味わいをハイセンスに昇華しています。

いゃ~、聴くほどに良く出来ていますよ♪♪~♪

ただし、これはロックではないので、GSのアダ花というか、後の歌謡曲&ムードコーラス化への先駆けという位置づけにもなるのですが、それもまたスパイダースならば許されるでしょう。

同時代の他のバンドでは、例えばアイドル人気が最高だったタイガースやテンプターズ、あるいはジャズ出身者ばかりで落ち着いたムードだったブルーコメッツあたりも、こうした曲は演じていたのですが、失礼ながらセンスが違います。

このあたりは上手く書けないのですが、エレキやGSのブーム初期からスパイダースが輝いていたのは、バンドメンバーそれぞれが、しっかりとロックのフィーリングを身につけていたことだと思うのです。それゆえにテレビや映画やライブの現場で、どんなオトボケをやっても憎めませんでしたし、洋楽のカバー曲を演奏しても、本格的なノリが出せたのでしょう。

それはB面に収録された「赤いドレスの女の子」を聴けば納得!

A面と同じく、橋本淳の作詞を得て、かまやつひろしが書いたメロディは、完全に当時流行のモータウン♪♪~♪ それを徹底してノーザンダンスナンバーを意識したアレンジは大野克夫ですから、たまりません。

ノッケからアップテンポでブッ飛ばす加藤充エレキベースは完全にモータウンがモロ出しの潔さですし、中間部で炸裂するホーンのリフがそれに追従すると、今度はスタックスあたりの南部系グルーヴへと転じる芸の細かさが、もう最高ですよっ!

また大野克夫のジャズロックなエレピが卓越した隠し味♪♪~♪

ですから堺正章の歌いっぷりも十八番のソウル味が何時も以上にスカっとしていますし、こんな素敵なモータウン歌謡は、昭和の宝物だと思いますねぇ~~♪

ということで、自分の嗜好は昭和40年代に形作られたというのが、本日の結論です。実際、この1965~1975年っていうのは、全ての事象がジャストミートしているんですねぇ、サイケおやじには♪♪~♪

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アルバート・キングのでかい顔

2009-07-24 10:35:03 | Blues

悪い星の下に / Albert King (Stax / 日本グラモフォン)

クリームを聴き、エリック・クラプトンにシビレていた昭和44(1969)年のサイケおやじが、とても気になっていたのがアルバート・キングという黒人のブルースマンでした。

どうやらエリック・クラプトンが大きな影響を受けているらしいとか、クリームのヒット曲「Strange Brew」が、アルバート・キングの某曲を元ネタにしているとか、なによりもクリームがアルバート・キングの代表的な演目「悪い星の下に / Born Under A Bad Sign」をレコーディングしていたのですから、さもありなんとご理解下さい。

しかし、実は告白すると、当時の私は黒人ブルースなんて自主的に聴いたこともなく、その本質についても、ジャズやR&Bやロックンロールの源流だろう、と思い込んでいたのですから、ブルースロックもなにも全然、分かっていなかったのですが、ただ単にエリック・クラプトンみたいなギターが聴きたいというのが、本音だったのです。

そしてレコード屋には本日ご紹介の、でっかい顔したアルバート・キングのシングル盤が売られていたんですねぇ~♪ もちろんA面はクリームにカバーされた自身の代表曲ですし、B面にも同じくヒットしたという「Crosscus Saw」が入った徳用盤!

まずA面の「悪い星の下に」は、結論から言えばクリームとは全然別のアレンジというか、本当はこっちがオリジナルなんですが、そのブラスや重いビートを強調した演奏と歌には正直、最初っから違和感がありました。

しかしギンギンにエグイ音色で歌に切り込んでいくエレキギターの響きには、確かにエリック・クラプトンがクリームで聞かせてくれたのと同じ味わいがあるのです。

う~ん、これってブラスを外したら、ほとんど「Strange Brew」だよなぁ~~♪

間奏のギターのチョーキングも、最高にイカシていますし、ヘヴィなドラムスとキメまくりのペースは、ジンジャー・ベイカーとジャック・ブルースがロックジャズに解釈した元ネタだと納得出来てくるのです。

そしてB面の「Crosscus Saw」に至っては、ゴキゲンに飛び跳ねるリズム隊のラテン系ブルースビートに乗って、合いの手のブラスとエグ味の強いチョーキングが冴えまくりのギター♪♪~♪

ただし、エリック・クラプトンのような流麗で息の長いフレーズは出ないのですが、アルバート・キングのブツ切れのブルースリック、その間合いの絶妙なフィーリングが最高! あぁ、これってブルースロックだよなぁ~~♪

と気がつくのは、もう少し後の話なんですが、しかし実に気持ち良く聴けたんですねぇ。

ちなみにアルバート・キングは1953年頃から本格的にブルースを歌い始め、左利きでエレキギターを弾くという印象深い個性は、やがてR&Bやゴスペルをも包括したエレクトリックなアーバンブルースのスタイルへと昇華され、様々な黒人音楽の専門レーベルに多くのレコーディングを残しています。

そして1966年からの十数年間ほどが、南部ソウルの名門レーベルだったスタックスに在籍し、白人にもウケたブルース&ソウルなヒット曲を連発した全盛期でしょう。エリック・クラプトンをはじめ、多くの白人ギタリストやブルースロックのミュージシャンから尊敬され、コピーされまくったのも、この時代の演奏だったと思います。

そしてサイケおやじは本質的に好きだったブルースロックの世界から、もうちょっと背伸びした本物の黒人ブルースを聴く覚悟を決めたのが、このシングル盤だったのです。

皆様がご存じのように、アルバート・キングはフレディ・キング、そして B.B.キングと並び立つ、所謂「三大キング」のひとりであり、もちろん3人はギターのスタイルから歌い方、ライブでの所作までもが、白人ロックミュージシャンに真似された偉人なのですが、その中で特にアルバート・キングのエグイ個性が、私には合っているようです。

ただし当時の日本では黒人ブルースは聴こうとしても、そもそもレコードが大して発売されておらず、それが突然、昭和50年頃に大ブームとなるのですから、世の中はわかりません。

ですから、私はこのシングル盤をかなり長い間、愛聴していたのですが、これだって、きっとクリームの人気が無かったら、発売されなかったでしょうねぇ……。

やっぱり、クリームって、凄い! というのが、本日の結論なのでした。

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クールで熱いバド・シャンク

2009-07-23 10:52:21 | Jazz

The Bud Shank Quartet (Pacific Jazz)

バド・シャンクはウエストコースト系モダンジャズの白人アルトサックス奏者で、1950年代からの大スタアですが、ちょうど同じ頃、しかも同じ地域で活躍していたアート・ペッパーという天才プレイヤーが存在していた所為でしょうか、正直、やはり人気も実力もイマイチ及ばないのは否めないと思います。

しかし私はバド・シャンクも同等に大好きで、特に西海岸ジャズの本領とも言うべきバンドアンサンブルから飛び出す短いアドリブソロやブレイクでの閃きのあるお洒落系フレーズ、歌伴セッションにおける上手いフェイクでの絡み、そしてアルトサックスの他に得意だったフルートでの演奏も魅力がいっはい♪♪~♪

ですから当然ながら作られていたリーダー盤にも素晴らしい作品がどっさりあって、中でも本日ご紹介のアルバムは如何にも二枚目の流し目イラストがクールで高得点! まず、これが中身のクールで熱い演奏をズバリと表しているのですから、たまりません。
(p)、ドン・プレル(b)、チャック・フローレンス(ds) という、所謂ワンホーンのカルテットです。

A-1 Bag Of Blues
 ブルースという題名とは裏腹に爽やかで浮遊感に満ちたグルーヴが、如何にも西海岸派の面目躍如でしょうか。しかもテーマが終わって飛び出すバド・シャンクの最初のアドリブフレーズが、もう黄金の瞬間です♪♪~♪
 あぁ、これが私の好きなバド・シャンクの真骨頂で、この歌心とノリの良いリズム感はアート・ペッパーに勝るとも劣らないものと確信するほどです。もちろん続くアドリブパートもフワフワと空中バレエを演じるが如き軽妙さと全てが「歌」というフレーズがいっぱいですし、溌剌としたリズム隊のコンビネーションも最高! 仄かな翳りとツッコミ鋭いフレーズの対比も超一流の証だと思います。
 またリズム隊のハッスルぶりも好ましく、パド・パウエルの白人的解釈からハンプトン・ホーズっぽいハードドライヴな表現までも演じてしまうクロード・ウィリアムソン、エネルギッシュなドン・プレルのペースワーク、そして味な「ケレン」も叩くチャック・フローレンスが憎めませんねっ♪♪~♪

A-2 Nature Boy
 お馴染みのスタンダードメロディを思わせぶりにフルートで演じるバド・シャンク、それに寄り添いながらミステリアスな雰囲気を醸し出すドン・プレルのペースという最初のパートから、それを絶妙に膨らませていくカルテットの妙技が流石の名演です。
 もちろんバド・シャンクのフルートは原曲メロディをフェイクしつつも、相当に思い切った表現も聞かせてくれますし、一瞬ですが、エリック・ドルフィー!? と思わせられる場面さえあるのです。
 そしてクロード・ウィリアムソンが味わい深い伴奏から、幻想的な雰囲気を貫きとおすアドリブパートまで、絶妙のサポートが、これまた光っているのでした。

A-3 All This And Heaven Too
 あまり有名ではないスタンダード曲ですが、個人的には、これが大好きなメロディと演奏で、スローバラードにおけるバド・シャンクの素晴らしさが完全に満喫出来ると思います。
 それは素直な心情吐露と思わせぶりなメロディフェイクの妙技であり、そのバランスの良さは極めて秀逸♪♪~♪ このあたりは決してアート・ペッパーに劣るものではありませんし、それとは別の、まさにバド・シャンクだけの境地じゃないでしょうか。
 そして私は、この曲と演奏ゆえに、A面ばかりを聴いていた時期が確かにありました。
 鋭いツッコミと唯一無二の浮遊感は、何時、如何なるところで聴いても、最高だと思います。如何にも白人らしいアルトサックスのソフトな音色も魅力ですよ♪♪~♪

A-4 Jubilation
 一転してノッケから流麗なアドリブフレーズで演奏に入っていくバド・シャンク! このスピード感とシャープなフィーリングが、アップテンポのバンドアンサンブルとアドリブハードの充実に繋がるのですから、たまりません♪♪~♪
 リズム隊のテンションも高く、ドラマーのチャック・フローレンスは十八番のバスドラを使いまくりますが、このあたりは局地的にイモ扱いもあったりして賛否両論が昔っからありましたですねぇ。う~ん、どうなんでしょうか……? 個人的にもちょいと判断が難しい気分です。しかしこれはVSOP期のトニー・ウィリアムスにも云えたことですし、ねぇ……。
 閑話休題。
 それにしてもバド・シャンクのスピードに乗ったアドリブは爽快ですよっ♪♪~♪ チャーリー・パーカーのフレーズを白人的に解釈したようでもあり、とすれば、クロード・ウィリアムソンが直線的なパド・パウエルを演じたあげく、ハンプトン・ホースっぽい黒っぽさに転じるのも、また納得です。
 それとドン・ブレルのペースのアドリブも、なかなかに高得点!
 LP片面を締め括るには絶好の名演だと思います。

B-1 Do Nothin' Till You Hear From Me
 ご存じ、デューク・エリントン楽団のヒットメロディですから、如何にも白人らしい軽妙な演奏となっても、そのジャズの本質は隠しようもありませんし、それを百も承知のバド・シャンクも見事なアルトサックスを聞かせてくれます。随所にハッとするアドリブフレーズの閃きと歌心が、大いに魅力なんですねぇ♪♪~♪
 しかし、それゆえに手慣れた雰囲気も強く、そのあたりがアルバムを通して聴いた時にマンネリと感じるか否かは、十人十色かもしれません。
 個人的にはファンキーなクロード・ウィリアムソンが流石だと思います。

B-2 Nocturne For Flute
 そのピアニストが書いた秀作オリジナルで、もちろんタイトルどおりにバド・シャンクのフルートを想定したバラード曲♪♪~♪ ゆったりしたテンポで幻想的なムードが全篇を支配していますが、バド・シャンク本人の力強いジャズ魂は不変であり、同時にジェントルなメロディ優先主義は決して崩れません。
 短い演奏ですが、アルバムの流れの中では強い印象を残しています。

B-3 Walkin'
 さて、これがアルバムB面のハイライト! 場合によってはバド・シャンクが生涯の名演とされることもあるほどです。もちろん曲はマイルス・デイビスのハードバップ宣言となった歴史的なモダンジャズのブルースなんですが、ここでのバド・シャンクとバンドの演奏も、実に強烈です。
 まずドン・プレルのペースが強靭にして、最高にしなやか! リズム隊をリードしつつ、完全にバンドのグループを掌握している感じです。
 そしてバド・シャンクのアルトサックスは、これまた緩急自在に鋭いフレーズを積み重ね、あくまでも自分なりのハードバップを追求していくのですが、これは当時としても相当にアグレッシブだったと思いますねぇ~~。スリル満点に浮遊しながら、粘っこい黒人ブルースの雰囲気も並立し、さらにグリグリに突っ込んでいくモダンジャズ最先端のフィーリングが、なかなかに進歩的じゃないでしょうか。
 またクロード・ウィリアムソンにしても、自分の主張を大切にしつつ、自然にそうしたムードに感化されたようなファンキーさを強く打ち出していく展開が、ズバリ、良いです!
 まあ、正直言えば、ここはハンプトン・ホーズに弾いてもらいたかったというのが本音ではありますが、それは言わないのが美しい「しきたり」ってやつでしょうねぇ。その部分をカバーしてあまりあるのがドン・プレルのペースワークでもありますし、終盤のソロチェンジの緊張感とか全体のハードなグルーヴの盛り上がりは、白人ジャズが最も黒人ジャズっぽくというよりも、時代の先端に行ってしまった瞬間かもしれません。
 白人ジャズは和み優先とばかりは、決して言えないのが、この演奏の姿なのでしょうか?

B-4 Carioca
 そしてオーラスは、これもバド・シャンクが十八番としていたラテン風味のモダンジャズ演奏で、曲は早いテンポでエキゾチックなメロディが冴えていますから、バンドの楽しさ優先主義がジャストミート!
 チャック・フローレンスのドラミングも痛快ですし、なによりもバド・シャンクのスピード違反疑惑まであるアルトサックスが痛快至極♪♪~♪ 部分的にアート・ペッパーに近くなっている感じ微笑ましく、しかし渾身のアドリブが憎めません。
 するとクロード・ウィリアムソンが思いっきりスイングしまくって、これまた凄いと思うのですが、これはリズム隊が一丸の勝利でしょうねぇ。ドン・プレルのペースもノリノリですよ。

ということで、ここでのバド・シャンクはアドリブひとつに命をかけたというのは大袈裟かもしれませんが、何時ものセッションよりは自分が中心の世界を見事に築きあげてくれました。それゆえにファンとしても絶対の1枚なんですが、それをやればやるほどに、アート・ペッパーと比較され、あとは……。

このあたりは本当に痛いパラドックスですよねぇ。

ちなみにバド・シャンクには同時期に、もうひとつの「The Bud Shank Quartet」というアルバムがあって、そちらは幾分ソフトなフィーリングと歌心が尚更に優先された仕上がりだと思うんですが、どちらが好きかは、これも十人十色でしょう。

正解は両方とも、好き!

こう言い切るのがジャズ者の本分なんでしょうけどね♪♪~♪

ジャズ喫茶的には、こちらが本命かもしれません。

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幻の10年の現実

2009-07-22 10:32:18 | Rock

幻の10年 / The Yardbirds (Columbia / 東芝)

クリームによってエリック・クラプトンを知った私の前に屹立したのが、ヤードバーズというイギリスのロックバンドでした。

これはご存じ、クラプトン、ペック&ペイジという所謂ブリティッシュロックの三大ギタリストが順次在籍した名門グループとして、我が国でも昭和40年代半ば頃から伝説が独り歩きしていたわけですが、若き日のサイケおやじにしても、そんなに凄いのならば、絶対に聴く他は無い! と心に決めていたのです。

ところが例によって既にロックもアルバムで聴く時代に入っており、実はリアルタイムではシングルヒットを出そうと躍起になっていたヤードバーズにしても、前述した三大ギタリストが確固たる名声を得た後になっては、LPばかりが優先して発売される始末でしたから、小遣いの乏しいサイケおやじには聴くことが叶いません……。

しかし諸々の音楽マスコミによって、ジェフ・ベックとジミー・ペイジがツインリードギターを聞かせる曲がある事を知り、それが本日ご紹介の「幻の10年」です。そして勇んでレコード屋へ出向いた私を待っていたのが、B面にはエリック・クラプトンが在籍していた時代のヒット曲が収められた本日ご紹介のシングル盤だったのです。

つまり一粒で二度も三度も美味しいという徳用盤に思えたんですねぇ~♪

もちろん、これは昭和45(1970)年に売っていた再発盤なのですが、ヤードバーズが現実的に我が国で、どの程度の人気があったのかは、知る由もありません。少なくとも私はラジオのヒットパレードでも、あるいは他の番組でも聞いたことがなかったのですから、如何に三大ギタリストの存在が強烈な印象になっていたか、ご理解願えると思います。

そのヤードバーズはブリティッシュビートを代表する実力派グループとして、主にブルースやR&Bを演奏していた初期から、エリック・クラプトンが正式加入しての本格的なブレイクに繋がるわけですが、当時のメンバーはキース・レルフ(vo,hca)、エリック・クラプトン(g)、クリス・ドレア(g,b)、ポール・サミュエル・スミス(b,key)、ジム・マッカーティ(ds) という5人組でした。

そして彼等はR&B系の演奏を得意として人気を得るわけですが、バンドの方向性はマネージメントサイドの意向もあり、大衆的なヒット曲を狙うところへシフトし、そのきっかけが、このシングル盤B面に収められた「For Your Love」でした。そして結果は大成功!

しかし、そうした路線に反発したエリック・クラプトンは脱退し、以後の活躍は皆様がご存じのとおりですが、こうした経緯あって新参加したのがジェフ・ペックであり、また当時はスタジオミュージシャンをやっていたジミー・ペイジだったのです。

今日の歴史では、このジェフ・ペックが在籍していた時代を全盛期としているとおり、確かに1965年春頃から1966年末にかけて残された歌と演奏は、全く古びていないと感じるほど、斬新で永劫性が強く打ち出されています。

中でも本日ご紹介の「幻の10年 / Happenings Ten Years Time Ago」は、既に述べたようにジェフ・ペックとジミー・ペイジのツインリードのエレキギターが完全なニューロック! というよりもハードロックの花形はギタリスト! と高らかに宣言した名演でしょうねぇ~♪

まずイントロからして当時の流行だった東洋趣味が隠し味! 正直言えばストーンズの「黒くぬれ」みたいなんですが、叩きつけるようなテンションの高いリズムのキメとか、バンドが一丸となった突撃的なアタックが刺激的! しかもボーカルには神秘的なエコーが効果的に使われ、ブリブリにドライヴするエレキベースが、これまた味わい深いのです。

そして気になるツインリードのギターに関しては、モノラルミックスの所為もあるんでしょうが、どっちがどっちということもなく、低音域で終始、曲の根本となるメロディを弾いているのがジミー・ペイジ、破天荒なリズムギターと間奏の乱れたようなソロを聞かせているのがジェフ・ペックでしょうか? しかし曲と演奏の終盤になって細かいフレーズを入れてくるのがジミー・ペイジというお楽しみもあるんですが、ちょっと確証がありません。

ちなみにこの演奏に関しては、既にポール・サミュエル・スミスがプロデューサーに転向していたために、スタジオミュージシャンのジョン・ポール・ジョーンズがベースで参加していたと言われていますが、すると当時のステージではベースを弾いていたクリス・ドリアがリズムギターをやっている可能性もあり、これはなかなか興味深々です。

しかし、この曲の本当の魅力は、全体のサウンド作りがサイケデリックど真ん中の魅力にあると感じます。幾分、薄味なキース・レルフのボーカルも結果オーライでしょう。

正直、サイケおやじは最初、ペック対ペイジのギター合戦を期待していたのですが、結論から言えば、それは無く、ちょっと肩すかしだったのです。ただ、それでも「幻の10年」が気に入ったは、例えば間奏のところでの「笑い声」や「つぶやき」を効果的に使ったサウンドイメージの鮮烈さにあって、またエコーを効果的に使ったあたりも、まさにサイケデリックロックの本命でしたから、全く後悔していません。

またB面の「For Your Love」についても、既にシャリコマ曲だという話は知っていたので、ちょっと潜入観念が強かったのですが、ポップなメロディを存分に活かそうという意図が強いハープシコードの使用や中間部のロックンロールなノリは痛快至極! まさにヒット曲の王道を行く仕上がりになっているのは、流石だと思いました。

ところが後で知った事なのですが、お目当てのエリック・クラプトンは、このセッションに怒って不参加だったとか!? とすると、ギターパートはクリス・ドレアが演じているわけですから、あの「スローハンド」なギターソロが聞けないのも納得……。

ということで、煌めくギターの饗宴を聴くつもりが、ますます危ないサイケデリックの泥沼天国へと導かれた十代のサイケおやじは、長いアドリブやお経寸前のようなサイケプログレとか、モダンジャズという禁断の奥の細道を辿りはじめます。

と同時に、限りなく色彩豊かなポップスやメロディ優先主義の世界へも導かれていたのですから、結論はお金が……。

結局は、これも罪作りなシングル盤だったというわけです。

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