男鹿の友人に、アサガオの鉢を届けに行ったあと、漁港へ回った。人通りの少ない店の前でも朝、通勤の人が通るから、見ていく人もいるらしい。何年も続けているうち、最近では手入れが上手になって、たくさん花を咲かせている。
真山丸が停泊して、人がいるのを見つけた。機関長だった。エンジンをまわし始めた。これから出るらしい。
顔を忘れられたか心配だったが、覚えていてくれた。彼らにはいつでも会いたいが、エライ人がいると行く気がしないので、学校へは訪ねていったことがない。そのうち船長が来て、チョーサーが来た。一等航海士の事だ。
集魚灯が並んでいるのを見て、イカは釣れているか聞いてみた。「なんも、全然!ほとんど行ってない」「何で?」「先生方、忙しくて」と言う。ダイビング・コンテストの話をしていたので、また順番が回ってきたのだろう。
仕事の合間、彼らの部屋に行くのは、気が休まる。まるで時間のテンポが違うというか、やっぱり海の男なのだろう。細かいことは気にしない。難しい会計の仕事から、一刻、解放してくれる。
救命胴衣を着けながら、「一緒に行くか?」と一応声を掛けてくれた。暑かったせいか、楽しそうでもなく、めんどくさそうな顔をちらっと見せて、出て行った。仕事だもんね、当然か。