再生医療と言われる分野は、成長著しい。iPS細胞の山中教授を先頭に、これから期待される分野だ。ある心臓外科の医師は、自分の担当する子供たちが救われずに倒れていく現状を憂い、15年前から、置き換える心臓の研究に没頭している。患者の細胞で作る心臓は拒否反応がない。細胞を培養してそれを3Dプリンターで高速で積み上げていく。1秒間に何千個という単位だ。細胞を壊さずに、生きたまま臓器を作るには、スピードを上げていくしかない。この方法で、5年後には血管を作って移植することを目標にしているそうだ。NHKのニュースでは、画期的だと褒め称える。
少しづつ我々は神の領域に近づいている。これで救われる人々は増えるだろう。しかし医学の進む道は、これでいいんだろうか。自分は両親(りょうおや)を最新の医療にゆだね、その結果を見てきた。家族を呼んで、癌細胞の検査結果を見せ、ステージツーとかスリーと言って、悪性腫瘍に間違いない、という。そして余命半年と告げる。すると治療が始まる。治療の副作用に耐えられる人もいるが、衰弱する一方の人もいる。自分の経験も踏まえて、これでいいんだろうか、という疑問がいつも頭をよぎる。ガン細胞は自分自身の細胞だ。良いも悪いも、自分の細胞に変わりはない。ほんとに悪性なのか。誰にも分からない。その証拠に、医者に見放された患者が温泉療法で治ったりする。もしかして体の免疫力を高めるほうが、全体として一個の人間にとって、最も近道なのじゃないか。これはエイズや他の病気についても言える。エイズはアフリカの貧しい栄養不足の人達をむしばむ。彼らに栄養をつけさせ、充分な抵抗力がつくと、エイズは治ってしまう。ということがある。
日本にとって、再生医療は大きな第3の矢に成り得る。しかし一方で、患者の免疫力を高める方法も、試してみる価値がある。自分の細胞と会話を交わしている私には、その方法が合っている。ように思う。