最初のきっかけはトイレだった。掃除機の音がうるさかった。集中しようと、全身の細胞に呼びかけた。いつの間にか掃除機の音が止み、頭から足の先まで、細胞の一つ一つを想像した。応えてくれたような、気がした。
次に雑誌ムーの記事だった。新書紹介の中に「底なしの闇の癌ビジネス」があった。ガンは既に何十年も前に、原因も発見され、治療法も確立されているという。にもかかわらず、その治療法が公認されないのは、癌ビジネスに巨大な利権がからんでいるからだ、という。たとえそれが真実でなくとも、現代医療、特に西洋医学に関しては、莫大な金が動いているはずだ。それは製薬会社や医療関係者にとっては、患者が多いほど、病気が多いほど、ありがたいに違いない。いったん病院に入ったら、その人は「患者」と認定される。患者には病名が与えられ、薬が投与され、治療が開始される。治療が患者を消耗させ、体力を奪い、死に至らせる。ガンは人体の正常な免疫反応だ、と著者は言う。エイズの場合も、初期の大量の薬が逆に有名人の死期を早めてしまった。
ひるがえって自分の今の状況を考えてみた。向精神薬がなければ、心臓に来て、からだが動かなくなってしまう。そう思い込んでいる自分がいる。ゆうべ9時半に眠くなり、電気を消して寝た。久々、明るくなるまで布団の中にいることができた。いつもは足が布団からはみ出して、冷たくなるのに、きょうはそうならなかった。朝の恒例行事、雪かきも慎重にこなした。もうちょっと抵抗を続けてみる。前は幻聴に悩まされ、舌が過敏になってシソの葉の入ったものは食べることができなかった。さて、今回はどうだろう。
中略。あれから4時間。薬を止めるのを止(や)める。何か食わなきゃと、ご飯を入れたら、苦しくって意識が飛びそうになった。心臓も、ドキンと不整脈が出て、素直に薬を飲んだ。今回も失敗に終わった。またいつか、チャレンジする。