徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「後妻業の女」―おかしくてばかばかしくもおもしろくやがてあざときかなしさよ―

2016-09-03 12:00:00 | 映画


 愛とお金と男と女、虚実を超えてこれがこの世のすべてだと・・・。
 日本は、いま婚活大国だそうだ。
 五十代以上の熟年婚活も活発で、それはそれで大いに結構なことだ。
 平均寿命が男女とも80歳超となって、還暦を過ぎてのパートナー探しとて、決して珍しいことではない。

 そこに目をつけ、金持ちで高齢の男性の後妻に入り、相手から財産をそっくりいただく。
 それが“後妻業”だ。
 直木賞作家・黒川博行原作を、「愛の流刑地」 (2007)の鶴橋康夫監督が映画化した。
 超高齢化社会の現実と欲にまみれた人間の業を、喜劇仕立てにして描き切った。
 善人はいない。
 悪人ばかりのドラマである。





大阪の結婚相談所が主催するパーティーで、淑女然と愛らしく自己紹介する武内小夜子(大竹しのぶ)の魅力に、独身の老人たちはイチコロになっている。
彼女に魅了されたそのひとり、80歳になる中瀬耕造(津川雅彦)は小夜子に惹かれ、二人は結婚する。
二人は幸福な結婚生活を送るはずだったが、2年後耕造は亡くなる。

小夜子は葬式の場で、耕造の娘・朋美(尾野真千子)と尚子(長谷川京子)に、遺言公正証書を突きつけ、全財産の相続を主張して譲らない。
朋美は納得がいかないので、探偵の本多(永瀬正敏)に調査を依頼する。
すると、小夜子は後妻に入り財産を奪う“後妻業の女”であったことが、発覚する。
しかもその背後には、結婚相談所の所長・柏木(豊川悦司)がいて、その周辺で老人たちが次々と不審な死を遂げていることがわかってきた。

朋美は、次から次と“後妻業”を繰り返してきた小夜子と柏木を追求する。
一方、老人を次々と手玉に取る小夜子は、タフな悪女ぶりを発揮して、次のターゲットである不動産王の舟山(笑福亭鶴瓶)を、本気で愛してしまうのだった・・・。

どこにでも咲く、高齢化社会のあだ花か。
少しでもいい暮らしをしたいと、金持ち老人に寄生を繰り返す小夜子は天性の悪女だが、柏木には妙に親切だし、所詮人間はひとりでは生きてゆけない。
金銭を最大のよりどころとする現代の社会のひずみと同時に、それでも夫婦や家族の絆を求めずにいられない、人間の愛おしさや業を感じさせる、ピカレスク・ロマンである。

とにかく、ひとくせもふたくせもあるクセ者揃いの戯画画面に、女の嘘と男のしたたかさがぶつかり合い、おぞましいドラマが展開する。
ときにハチャメチャな展開を見せ、欲と欲の一筋縄ではいかないドラマは、小夜子と朋美の取っ組み合いもなかなかリアルだし、作品中の脇役陣までにも存在感がある。
賑やかな映画だから、退屈はしない。

登場人物たちが関西弁をまくし立てるこのドラマは、人間臭さとユーモアに溢れていて、意外とあっさりとしている。
大竹しのぶの怪演にも圧倒されるが、テンポのよい演出に乗った結婚詐欺師の話は、観客にはバカ受けのようで、館内のあちらこちらから乾いた失笑と爆笑が絶え間なく・・・。

悪事を働いている悪い奴らなのだが、この欲の塊みたいな登場人物を何故か憎めない。
どうしようもない悪党ばかりなのだが・・・。
男と女、女と男、きつねとたぬきのばかし合いだ。
鶴橋康夫監督映画「後妻業の女」は、人間の弱さ、愚かさ、いとおしさをにじませた、愛とお金と欲望の痛快なエンターテインメントだ。
まあ、忌憚なく言えば、敢えて良識や品性を欠いたB級映画の怪作(快作?)だ。
原作小説がよいせいか、人物描写が巧みだし、俳優陣の演技バトルも見どころだ。
ラストシーンは原作と違った描き方だ。
かなり漫画っぽいが、この映画の最後のシーンには、まあびっくりだ。
      [JULIENの評価・・・★★☆☆☆](★五つが最高点
次回は日本映画「花芯」を取り上げます。


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2 コメント

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実際にも (茶柱)
2016-09-03 22:07:48
ありましたねえ、報道では保険金殺人でしたけれども。

お金の元が財産ならば後妻業なんですね。
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「後妻業」とは・・・ (Julien)
2016-09-10 12:27:21
いやまたよく言ったものですね。
不動産やらお金やら、財産を持っていて、さらに病気がちのお年寄りの男性は、女性が甘い言葉ですり寄ってきたら、要注意です。はい。
命だって危ないですからね。はい。
お気をつけになって下さい。
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