イタリアの人気作家で詩人でもあるマルコ・ロドリのエッセイを、ジュゼッペ・ピッチョーニ監督が映画化した。
マ ルコ・ロドリは、高校教師の経験もあり、この作品もローマの公立高校を舞台にしたヒューマンドラマだ。
風爽やかな春から、緑豊かな夏へ、教師と生徒の学校生活を通した交流を描いて、人生の温かさを感じさせる。
冷静な女性校長、熱血漢の補助教員、皮肉屋の老教師と、三人三様の教師が、個性的でときには手に余ることもある生徒たちと、自分なりのスタイルで向き合うのだが、この作品では先生が生徒に教えるだけの一方通行ではない。
先生も教わり、変容し、成長していく。
イタリア版金八先生みたいだ。
登場人物たちは、先生も生徒もそれぞれ人間味が溢れている。
ローマの公立高校・・・。
新しく赴任してきた国語補助教員のジョヴァンニ(リッカルド・スカマルチョ)は情熱的で、授業中に教室を出ていってしまう女子生徒に事情を聴き、クラス全員で彼女を支えようと動く。
校長のジュリアーナ(マルゲリータ・ブイ)は、生徒の人生までは救えないと否定的だが、母親が失踪した男子生徒が入院するの見て信念が揺らぐ。
そして、教師への情熱を失った美術史の老教師フィオリート(ロベルト・エルリッカ)は、俗っぽくとくに気難かしく孤立している男だ・・・。
タイプも経験も全く異なる主だった三人の教師が、手に余るような生徒たちと関わり合って、教師は教師として、生徒は生徒として悩みながら、教育の奥深さや人生の真実に気付いていく。
人生は晴れ、時々曇り、なかなか一息に思い通りにはならぬものだ。
笑いあり、涙あり、それもため息交じりで、でもみんな輝いている。
それはそれでよいではないか。
教育現場のエピソードが、ピッチョーニ監督の確かな観察力と詩情あふれる演出とひとつになって、みずみずしいアンサンブルを見せている。
教育現場となるといろいろ解決の難しい問題もあるが、イタリア映画「ローマの教室で~我らが佳き日~」は、演出にも膨らみがあり、平明で豊かな暗示に富んでおり、適度のユーモアもある。
教育とは、決して停滞することなく、日々変化していくもので、何年か先に振り返ってみれば、どんな経験も生きていく上での糧になっていたと気づかされることだろう。
気持ちよく観ることのできる小品だ。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
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日本の学園ドラマの代名詞ですものね。
先生もいろいろ、生徒もいろいろ、ドラマになる要素は、あれやこれやいっぱいありますものね。
はい。