徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

驕れる経営者たち―本当に悪いのは誰だ?―

2009-01-08 23:15:00 | 寸評

「派遣切り」で失職した、非正規労働者や労組のメンバーが、日本経団連など経済三団体主催の新年祝賀会の会場に現れ、御手洗会長に公開質問状を提出しようとして断られた。
「アポなし」との突然の訪問とあって、主催者の拒否は当然のことかも知れない。

今回の一連の「派遣切り」について、
 「経営トップからの謝罪」
 「解雇や寮追い出しの中止」
 「企業の内部留保金の使用」などを求めた、質問状を用意していたのだった。
参加者たちは、門前払いにあって、
 「酒を飲んでいる場合か。紙切れ一枚受け取れないのか」と、不満を露わにしていた・・・。

企業が困ったときの、非正規社員切りである。
寒空の下、日比谷公園のテントで年を越した人たち・・・。
その一方で、億単位の法外な報酬を手にしている経営者らは、自らの責任をとることなく、ひたすら企業防衛のみに汲々としている。
弱者の首切り(解雇)は、罪にならないのか。

想像以上の急激な景気の悪化で、トヨタの神話は崩壊したのか。
自動車生産台数世界一に目がくらんで、舞い上がってしまったトヨタは、謙虚さをも失い、ついに傲慢不遜な驕りの猛者の正体を現した。
その口火は、他のメーカー各社にも、またたく間に波及した。
期間従業員、派遣社員の使い捨てで、全国規模の企業不安を引き起こした。
このトヨタの責任は、とてつもなく重いはずだ。

1999年10月、雑誌文芸春秋に、「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」と題する記事が掲載されたことがあった。
記事中の発言の主は、当時のトヨタ自動車と日本経団連の会長を務めていた奥田碩氏だ。
早いもので、あれからもう10年がたった。
日本を代表する、大手企業16社(キャノン、シャープ、ソニー、東芝、パナソニック、日立、富士通、リコー、NEC、いすゞ自動車、すずき、デンソー、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ)の、去年9月末現在の内部留保額は、02年3月期から倍増して、空前の約33兆6000円にも達しているそうだ。
そして、16社の人員削減数は、4万に上り、リストラは今後さらに加速していくだろう。

日比谷公園の派遣村で、ボランティア活動に従事した人は、1700人に及ぶ。
民間人の努力で、生活保護の斡旋、立会いまで行い、資金カンパを受け、移転先に至るまで、細やかな対応で感謝されている。
人の、善意の温かさを感じさせる活動だった。
本当にご苦労様と言いたい。
これに呼応するように、市や町は迅速な対応を見せた。
東京都の千代田区役所では、病気の生活保護申請者については、直ちに認可した。
一般人が、ここまで果敢に動き、そのことが市や町を動かした。
しかし、待ったなしのリストラを敢行した、大企業の経営トップは何をしたか。
今回の派遣村の実体を見て、何を感じたか。
彼らは、企業として何をしたか。
どっちを向いても、家臣の首を切っても、自分の腹を切る経営者はいない。

余談になりますが・・・。
NHK大河ドラマ「天地人」が、スタート早々から好評らしい。
妻夫木聡演じる主人公の直江兼続は、上杉家筆頭家老として、上杉景勝を支えた人物だ。
関が原合戦後に、上杉家は、徳川家康によって会津120万石から米沢30万石に減封された。
このとき兼続は、家臣たち6000人を召し放ちにしないよう、景勝に進言し、景勝は自ら蓄えていた金を家臣に配り、石高こそ4分の1になったが、家臣の俸禄は3分の1を守ったと言われる。

要するに、この時に及んで、一人のリストラもしなかったのだ。
兼続という人物は、クビ切りをした結果、残った家臣の士気が低下するのを恐れたのだ。
実際に家臣たちは、一致団結して、上から下まで新領地の開拓に乗り出した。
その結果、30万石を60万石まで高めたというではないか。
ここに、人間の見事な忠誠心を見ることが出来る。
忠誠心がなくなれば、企業内の士気は落ちるばかりだ。
直江兼続の、‘義’と‘愛’に学ぶところはないだろうか。

企業が困ると、まず人を切ってしまい、株主の顔色ばかりをうかがうようになる。
リストラに耐えた会社は、評価が高まる。
いつの時代も、人を大切にしない企業は滅んでいく・・・。
この世のならいである。
33兆円の内部留保があっても、正社員の首まで大胆に切ってしまう。
雇用より、株主優先がまかり通る。

「派遣法」には、もともと問題があった。
厚労省の広島労働局長は、労働者派遣法について、「派遣法は間違いだった」と謝罪しているのだ。
行政実行のトップが、現行制度の誤りを認めたのだ。
このような発言は、異例中の異例だそうだ。

いま、日本中を蔽っている暗雲のもとで、リストラの大嵐が吹き荒れている。
企業の責任は問われないのか。
非正規のみならず、正規社員の大量解雇が現実となってきたいま、その罪と罰は何処に・・・?

経団連は、雇用の安定を最優先目標に掲げていながら、これを努力目標へと格下げした。
その結果、今多くの労働者が苦しんでいるのだ。
苦界からの脱出は容易なことではない。
A級戦犯は、誰なのだ?


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2 コメント

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誰でしょう。 (茶柱)
2009-01-08 23:30:10
いずれにしても難しいとは思います。何にしても、経営者たちとて「別に不法行為を働いている訳ではない」ので。彼らにしてみれば「法令遵守の中で、最大限の努力は払っている」といういい訳も立ってしまう。

困った事ですが。

いずれにしても、人は城、人は石垣、ですよ。
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ある経営者は・・・ (Julien)
2009-01-09 20:17:08
「リストラは、いかなる理由があっても、経営者の経営の失敗の結果である。それは、経営者として最も恥ずべきことなのだ。企業が、景気とか、いろいろな影響を受けるのは当たり前のことで、それを考えながら経営するのが経営者の仕事だ。いかなる事態になっても、経営者が首切りはしないと決意すれば、方策はいろいろ考えられるはずだ。私は、首切りは絶対にしない。そう自分に言い続けて、人一人を採用することは、その人の面倒を一生見ると決意をすることだと思って、これまでも、幾つもの難局を乗り切ってきた。試練の時こそ、経営を変革するチャンスとすべきではないか。安易な経営が企業も国も滅ぼすのではないのかと危惧する。」と言う記事を新聞で読みました。
社員500人の会社の、67歳の社長さんの弁に、一理も二理もあることを感じ、ため息が出ました・・・。
経営が苦しくなって、首切りが、当然の風潮となってしまうことこそが、確かに企業を弱体化させている要因なのかも知れません。
この‘信念’を非凡と見るか、当然と思うか・・・。
人は城、人は石垣ならば・・・。
さて?
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