徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「告白」―静寂と喧騒の、実験的(?)衝撃作品―

2010-06-08 15:45:00 | 映画
本屋大賞に輝いたベストセラー、湊かなえの原作を中島哲也監督が脚色、映画化した。
実験的エンターテインメントだ。
告白小説の映画化ということもあって、製作にかなり困難のあとがうかがわれる作品だ。
自分の娘を殺された女教師の告白から始まり、殺人事件に関わった登場人物たちの、独白形式で構成される物語だ。

女教師・森口悠子(松たか子)には3歳の一人娘愛美がいた。
その娘が、悠子の勤務する中学校のプールで、溺死体となって発見された。
数ヶ月後、悠子は終業式後のホームルームで・・・。
彼女は、「私の娘は、1年B組の生徒二人に殺されたのです」と、衝撃の告白をする。

悠子は、語り始める。
・・・そして、ある方法で、娘を殺した二人の生徒に復讐する。
4月、クラスはそのまま2年生に進級する。
犯人のひとり生徒Aは、クラスのイジメの標的となっていた。
そしてもうひとりの犯人Bは、登校を拒否し、自宅に引きこもっていた・・・。

虚実が入り混じって、驚愕、戦慄、唖然の連続は、一種ホラーじみている。
この映画の主人公は、森口悠子を演じる松たか子しか考えられないと、中島監督からの熱烈なラブコールで、彼女は難役に挑戦している。
また、熱血過ぎてかなりウザい新人教師役には岡田将生、殺人者の過保護すぎる母親役には木村佳乃といった演技陣で、1年B組生徒たち37人は全国から1000人以上のオーディションから選ばれた。
騒々しいほど、賑やかである。
さらに言えば、賑やかなほどに、どうしようもなく退屈なのだ。

ストーリーにはかなり無理もあるし、告白体の映画構成自体、映像よりも長々と続く、退屈な登場人物たちのセリフはどうにかならなかったのだろうか。
心の内面を吐露する独白が、一心に語りかけようとする努力に徹していて、誰に何を、どのように言おうとしているのかは痛いほどに伝わっては来る。
しかし、あくまでも作品の出来不出来は賛否両論があるだろうが、実験映画の域を出ていない。
独創性ある労作までは認めても、成功作とは思えない。
率直な感想だ。

このドラマでは、女教師と生徒の間には、十分な意志の疎通がない。
先生と生徒が、バラバラの感じがする。
登場人物たちの独白は、いずれも真に迫って空疎であり、教室にはいいようのない閉塞感が漂っている。
そういう空気は、よく撮られている。

中島哲也監督のこの作品「告白は、暗鬱なテーマを扱っているだけに、ドラマから浮かび上がってくるイメージは切れ切れの復讐劇でも、結局、散りばめられた少ない映像のカットと、饒舌な独白にたよる負の連鎖を通して、何を言いたかったのか。
暗い内容の物語であるだけに、作品の成功のためには、、まだまだ映画表現において力量の不足が惜しまれる。

一家言ある専門家はともかく、映画庶民の目線で言わせていただくと、やたらと多い挿入歌やBG音楽にも、どれほどの効果があるのか、素朴な疑問を持つ。
それも、どういう選曲か、ポピュラーで勇壮なクラシックなんかがジャカジャカ聞こえてくると、くどくどとウザい。
実に鬱陶しい。かえって何ももないほうがよろしい。
陳腐で安っぽい、ホラー映画でもあるまい。
まあ、これも、お叱りを覚悟の、あくまでもほんの個人的な見解に過ぎないのだが・・・。