1945年8月6日に、何が起きたでしょうか。
この映画は、この問いかけから始まる。
何と、街角のインタビューで、正解を答えられる若者はいなかった。(!!)
アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞の受賞歴のある、スティーヴン・オカザキ監督が、25年の歳月をかけて完成させた、渾身のドキュメンタリー映画だ。
れっきとしたアメリカ映画で、DVDにもなっている。
これまでも、上映の機会はそう多くはなかったようだ。
重い映画であることは百も承知で、遅ればせながら、観る機会があった。
白い閃光と黒い雨・・・。
原題は「WHITE LIGHT/BLACK RAIN」だ。
毎年暑い夏がやって来ると、“日本人”は、どうしても60余年も前の8月を想い起こすことになる。
広島、長崎の原爆投下から、半世紀以上を経たいま、その記憶も薄れつつある。
しかも、その被爆の実態について、どれだけ知っているだろうか。
被爆者の現実について、何をどう知っているだろうか。
原爆の被害に対する認識と関心を、世界に呼び起こしたいと考えたオカザキ監督が、被爆者たちが高齢化していくなかで、実に500人以上の被爆者に会い、丹念な取材を重ねた。
そして、14人の被爆者の生きた証言と、実際に被爆に関与した4人のアメリカ人の証言を軸に、貴重なニュースフィルムの映像や資料を交え、ヒロシマ・ナガサキの真実を直視した力作である。
・・・被爆者の、想像を絶する苦悩と向きあう観客は、人間として生きる、彼らの勇気と生命の尊厳を深く受け止め、胸を締めつけられる。
数々の、リアルな証言が胸を打つ・・・。
スティーヴン・オカザキ監督は、1952年ロサンゼルス生まれの日系三世だが、英訳の「はだしのゲン」を読んで、広島、長崎の原爆投下に関心を深め、1981年に広島を初めて訪れた。
このとき、被爆者を取材した第一作「生存者たち」(82)を発表、のちに日系人強制収容所を描いた作品「待ちわびる日々」(91)で、アカデミー賞ドキュメンタリ-映画賞を受賞した。
アメリカでは、原爆投下が「戦争を早く終わらせ、日米両国民の命を救った」との認識が強いようだ。
この映画は、核の脅威を訴えている。
日本が、戦争に突き進んでいたあのとき、アメリカのニュースフィルムのナレーションは、こう伝えていた。
「日本人は、思考回路が完全に狂った人類だ。」・・・
白い閃光、黒い雨、忘れることの出来ない夏の日の記憶である。
それは、かつて経験したこともない、人類史上最大の“地獄”を、唯一この日本が経験したことであった・・・。
いまなお世界には、広島に落とされた原子爆弾の、40万個に相当する核兵器があると言われている。
日本人は誰もが、日本の近・現代史の中で、日本に起こった“真実”を知らなくてはいけない。
この映画は、アメリカでは25年間上映が許されなかったという。それは分かる。
アメリカのドキュメンタリー映画「ヒロシマ ナガサキ」はアメリカのみならず、世界中の人々に、核兵器の脅威に対する、強い警鐘を鳴らす注目すべき作品と言えるだろう。