備忘録として

タイトルのまま

坂の上の雲ミュージアム

2007-08-16 19:19:11 | 松山
13日に松山の”坂の上の雲”ミュージアムへ行った。30年も前、学生の時に読んで以来なのだが、あらすじのかなりの部分は覚えていた。それだけ読み応えのある印象深い小説だったということだ。読後すぐ、司馬遼太郎作品に触れると称して回った四国一周旅行で、子規堂や梅津寺パークの秋山好古(真之?)の銅像を見学した。俳句の素養も興味もなかったのに子規の本を買ったのもそのころだ。人にも一押し本として熱心に勧めていた。この本の面白さは、田舎町で育った秀才たちが抱く野心が国家の発展とシンクロしていたところを司馬が壮大に描いた点だと思う。明治時代に西洋に追いつこうとする国家の躍動感とその中で大望を抱く若者の気概が伝わってくる。壁いっぱいに貼り付けられた新聞連載のオリジナル版は毎回の挿絵が面白く、この挿絵の付いた”坂の上の雲”が出版されたら購入してもいいと思った。

子規堂も秋山兄弟記念館も司馬遼太郎記念館もある中で、一小説でミュージアムを成り立たせようとしているのだから無理もないのだが、建物に比べ展示品が少なすぎる。空間を贅沢に使うと言えば聞こえは良くなるが、安藤忠雄の無機質で巨大で近代的でお得意のコンクリートむき出しでガラス張りの建築物はあまり好きではない。街を走る坊ちゃん電車や道後温泉の昔風の建物に似合った建物が正解ではなかっただろうか。例えばミュージアムの展示写真にもあった旧愛媛県庁のような木造建築や明治時代に流行った赤レンガ造りはどうだろうか。時は松山まつりの最中で、浴衣着物を着た野球拳踊りのグループが夜の街を練り踊っていた。祭りも明治・大正の古き良き時代を懐かしむ風情があり、しつこいようだが、やはり安藤建築は違うような気がする。

もうひとつ”坂の上の雲”は藤岡信勝が自由主義史観を唱えるきっかけになった作品という話があるが、”この国のかたち”や”街道をゆく”に散見される司馬の歴史観からは、自由主義史観に通ずるものがあるとは到底考えられない。一方、明治時代は近代化を軍事力と勘違いしていた時代だと思うのだが、明治時代を賛美する司馬史観も少し違うように思う。

”坂の上の雲”は近々NHKでドラマ化されるらしい。楽しみだが、CGあればこその作品になるのだろう。

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