備忘録として

タイトルのまま

裏窓

2011-09-03 20:42:38 | 映画

 ヒッチコックの「裏窓」を観た。主人公のJeff(ジェイムズ・スチュアート)といっしょに裏窓から今では陳腐な隣人の私生活をのぞき見しながら、彼ののぞき見趣味と妄想にあきれ、看護婦Stellaの”のぞきは6か月の禁固だ”という忠告にもっともだと思い、ただJeffを訪ねてくるLisa(グレース・ケリー)を観るためだけにがまんして鑑賞を続けた。(上の写真はいつものIMDbより拝借した。)そのうちセールスマンの妻がいなくなり、犬が殺されるあたりからサスペンスが深まり、映画の終盤は、セールスマンThorwaldの部屋に忍び込んだLisaに向かって”はやく部屋から出て!!!”と叫んでしまいたくなるほど映画に没入した。JeffやLisaと同じ傍観者から当事者のような気持ちにさせられるところが、ヒッチコックが名匠と言われる理由なのだろう。

以下、ネタバレしてるので、このブログを不幸にものぞき見した人はお気の毒様です。

 Jeffの推理から始まった妻殺しをセールスマンが実際に犯したかどうかが最後までよくわからなかった。友達の刑事Doyleが、”逮捕状をとった”とか”The East Riverに(死体を)探しにいく”と言ったので、おそらく犯人だとは思うのだけれど、映画ではきちんと説明されていない。Jeffの推理通りなら結局、何のどんでん返しもないサスペンスになってしまう。ヒッチコックがまさかどんでん返しのない映画を作るはずがないという先入観があるので、自分勝手に悩んでしまっただけかもしれない。それに、セールスマンが妻殺しなら、Jeffが眠てたときにセールスマンが部屋から連れて出た女は誰だったのかもわからない。セールスマンのアリバイ工作かもしれないが。

 ネットでネタバレを探してみたが、それでもよくわからない。そのうち、加藤幹朗という人が書いた「ヒッチコック『裏窓』ミステリーの映画学」なる”殺人が起きたとする証拠はどこにもない”と主張する本もあるというネタにも遭遇した。切羽詰まったので、アメリカのWeb-siteを探したら、映画の筋書きを、台詞ごと解説するサイトに出くわした。http://www.filmsite.org/rear.html ここのThe storyを追っていくと映画の最後近く、

Jeff sarcastically asks Doyle: "You got enough for a search warrant now?" The police yell down that Thorwald has confessed that he distributed his wife's body parts in the East River: "Thorwald's ready to take us on a tour of the East River."With morbid curiosity, Stella whispers a question to Doyle and learns that because the dog got "too inquisitive," Thorwald dug up Mrs. Thorwald's body parts from the flower bed and moved them to a hat box in his apartment. Asked if she wants to take a look, Stella replies: "No thanks, I don't want any part of it."

訳: Jeffは刑事に”捜索に十分な証拠を手に入れたね”とたずねると、刑事はうなずき、セールスマンが妻のBody partsを川にばらまいたと白状したので、”セールスマンを連れてEast Riverに(捜索に)行く予定だ。”と答える。看護婦は、犬が”知りすぎた”ので、セールスマンは花壇から妻のBody partsを掘り出し、部屋の帽子箱に詰めたのねと刑事に問いかけるのに、刑事が見たいかというのに対し、看護婦は”結構です。そんなもの(妻のpart of body)は見たくない”と答える。

という行にあるように、セールスマンが妻殺しであると断定している。” ”内は、映画の中の台詞だが、台詞だけに注目すると、加藤幹朗が言うようにセールスマンが妻殺しだとは断定できないかもしれないし、このサイトが映画の脚本家の認めた公式サイトかどうかも不明なので台詞以外の説明に信憑性があるかどうか保証の限りではない。それでも、セールスマンが犯人でないとするのは懐疑的すぎるように思う。結局、ヒッチコックは大どんでん返しの代わりに不明瞭な結末にして観客を煙に巻いたというのが本当のところだという気がする。「めまい」のキム・ノバックも良かったけど、グレース・ケリーはさらに美しいので、観終わったあとのすっきりしない感覚には目をつぶり、星ひとつおまけして、★★★★☆

 今回の機中映画は、「50 First Dates」のアダム・サンドラーのコメディーを2本観た。

「Just Go with It」2011、監督:デニス・デューガン、出演:アダム・サンドラ―、ジェニファー・アニストン、妻帯者だと偽って後腐れのない関係を求め独身貴族を謳歌する整形外科医が、素晴らしい女性に会い嘘を重ねるうちに、実は自分を一番理解してくれている人は身近にいたということに気づくというコメディー。アダム・サンドラ―の整形外科で働く子持ちのバツ1看護士(ジェニファー・アニストン)の二人の子供たちは、妻帯者と偽る外科医の子供にさせられる。外科医と仲のいい親子を演じる子供たちの演技が抱腹絶倒である。★★★★☆

「Click(邦題:もしも昨日が選べたら)」2006 監督:フランク・コチラ、出演:アダム・サンドラ―、ケイト・ベッキンセール、クリストファー・ウォーケン、この邦題は内容にそぐわず変だ。人生を早送りしたり、飛ばしたり、一時停止したりできるリモコンを手にした男の話。仕事のために都合よく時間を弄んだ末に家族との大事な時間をすっ飛ばしてしまい取り返しのつかない悲惨な結末を迎えるという教訓的なコメディー。★★★☆☆