2007年12月9日付け東奥日報に、カマキリには積雪量の予知能力があり、高い所に産卵すれば大雪になる、という俗説は誤りであるという記事が載っていました。弘前大学の安藤名誉教授が検証したとのこと。
カマキリにそんな「予知能力」があったなんてそもそも知らなかったのですが、記事によれば、新潟県の民間研究者がカマキリの産卵位置のデータを収集した結果、俗説が本当であることを突き止め、4年ほど前に本にも書いているのだそうです。「俗説」って、けっこう科学的にも裏付けられるものが多いようですが、これもその一例ということだったのでしょう。
カマキリは、秋に産卵すると親は死に、木の枝に産み付けられた卵だけが冬を越して春に孵化します。雪が多い地方では、雪の重みに卵が耐えきれず、窒息状態となって孵化しなくなってしまう。そのことを知っているカマキリは、この冬、雪がどのくらい降るのかを予測して、雪に埋もれない高さに卵を産み付ける…。
なんか都合のいい話のようにも思えますが、もしこれが本当なら、何世代もにわたって受け継がれてきた子孫繁栄のDNAのなせる業としか言いようがありません。
ところが、今回の記事は、逆にその俗説に信憑性がないこと、つまり「俗説」が結局俗説でしかなかったことを明らかにしたというものです。安藤氏は、そもそも雪に埋もれると卵は本当に死んでしまうのか、というところから検証しています。実験の結果、約4ヶ月間雪に埋もれていた卵を暖めてみたら、なんと97.9%が孵化したのだそうです。この俗説は、その前提から誤っていたことになります。
百歩譲って、それでもカマキリは「安全」のため雪に埋もれないように卵を産むとしましょう。これについても安藤氏は検証していきます。2005年の冬、雪が降る前に、弘前市周辺で卵238個の「産み付け状態」を調べてみた。その結果、産み付けられていた場所の高さは、
ニレ(卵9個) 平均高さ179.9cm
ススキ(卵20個) 平均高さ59.4cm
ナワシロイチゴ(卵47個) 平均高さ17.9cm
つまり、「木の種類」によって産み付けられる高さはまちまちだったのです。ニレの木は大きいので高いところに、イチゴはほとんど地面すれすれといってもいいくらいの高さ。では、この年の弘前市の最深積雪はというと、139cmですから、ススキやナワシロイチゴに産み付けられた卵はすべて雪の下にあったということになります。もし、この俗説が正しいとすれば、青森のような豪雪地域では、カマキリはそもそもススキやナワシロイチゴといった樹高の低い木には卵を産まないはずですね。
さて、その記事の1週間後の2007年12月16日付け朝日新聞be on Sundayの「日曜ナントカ学」の記事を見て驚きました。この説を「立証」したという、くだんの「新潟県の民間研究者」の方が紹介されていたからです。彼は「子どものころ父からこの言い伝えを聞」き、昭和38(1963)年の豪雪のあたりから毎年カマキリの卵の産み付けられる高さの調査を続けているという。相当年季の入った研究ですね。「少しでも子孫を残すため、選ぶ産卵場所は必死のたくらみの結果です」と彼は言う。だから、カマキリの産卵場所から、その年の雪の深さを推測することができるのだと。そういった彼の研究を、安藤氏は、推測を裏付ける調査に基づいていないとしています。
朝日の記事は、「カマキリの積雪量の予知能力」から、天気の長期予報の発達という本題に話を発展させていますが、降雪にまつわる言い伝えについても触れています。動物の動きや植物の育ち、風や雲の流れなど、降雪の予知に関することわざは全国に100以上もあるという。「ポプラの葉が全部落葉すれば根雪となる」(北海道)といったわかりやすいものから、「イカのたくさん獲れる年は小雪」(新潟)、「シカが早くなきやむ年は雪が多い」(広島)など、いわゆる「風が吹けば桶屋が儲かる」的に、順繰りにたどっていかないと理由がわからないようなものまで。でもどれも、突き詰めていけば、何らかの根拠がありそうです。
気象庁の長期予報も、もちろん最先端の科学を活用した方法を用いているのでしょうけど、なんとなーく、「当たらない」方が多いような気もします。昨年の異常な少雪も、長期予報では言ってなかったような…。
むしろ、かつて人間がもっと自然に近い生活をしていた時代から伝わる言い伝えやことわざの方が信憑性があるのかもしれません。「カマキリの積雪量の予知能力」も、あながちデータ観察だけで「誤り」とは決めつけられないのかもしれませんね。
てゆーか、そっちの方が夢があって楽しいじゃないですか~! ある晴れた秋の日、カマキリがカマをもたげて、目を閉じて、空気中の水分量をじっと測っている。あっちでもこっちでも。…そんな姿想像したらかわいいじゃないですか。観測が終わると、カマキリたちは一斉に動き出す。産卵する木を求めて、ある年はこずえの方へ、またある年は根元の方へと…。
どういうメカニズムが働いているのかはわからない。その方がいい時だってある。
カマキリにそんな「予知能力」があったなんてそもそも知らなかったのですが、記事によれば、新潟県の民間研究者がカマキリの産卵位置のデータを収集した結果、俗説が本当であることを突き止め、4年ほど前に本にも書いているのだそうです。「俗説」って、けっこう科学的にも裏付けられるものが多いようですが、これもその一例ということだったのでしょう。
カマキリは、秋に産卵すると親は死に、木の枝に産み付けられた卵だけが冬を越して春に孵化します。雪が多い地方では、雪の重みに卵が耐えきれず、窒息状態となって孵化しなくなってしまう。そのことを知っているカマキリは、この冬、雪がどのくらい降るのかを予測して、雪に埋もれない高さに卵を産み付ける…。
なんか都合のいい話のようにも思えますが、もしこれが本当なら、何世代もにわたって受け継がれてきた子孫繁栄のDNAのなせる業としか言いようがありません。
ところが、今回の記事は、逆にその俗説に信憑性がないこと、つまり「俗説」が結局俗説でしかなかったことを明らかにしたというものです。安藤氏は、そもそも雪に埋もれると卵は本当に死んでしまうのか、というところから検証しています。実験の結果、約4ヶ月間雪に埋もれていた卵を暖めてみたら、なんと97.9%が孵化したのだそうです。この俗説は、その前提から誤っていたことになります。
百歩譲って、それでもカマキリは「安全」のため雪に埋もれないように卵を産むとしましょう。これについても安藤氏は検証していきます。2005年の冬、雪が降る前に、弘前市周辺で卵238個の「産み付け状態」を調べてみた。その結果、産み付けられていた場所の高さは、
ニレ(卵9個) 平均高さ179.9cm
ススキ(卵20個) 平均高さ59.4cm
ナワシロイチゴ(卵47個) 平均高さ17.9cm
つまり、「木の種類」によって産み付けられる高さはまちまちだったのです。ニレの木は大きいので高いところに、イチゴはほとんど地面すれすれといってもいいくらいの高さ。では、この年の弘前市の最深積雪はというと、139cmですから、ススキやナワシロイチゴに産み付けられた卵はすべて雪の下にあったということになります。もし、この俗説が正しいとすれば、青森のような豪雪地域では、カマキリはそもそもススキやナワシロイチゴといった樹高の低い木には卵を産まないはずですね。
さて、その記事の1週間後の2007年12月16日付け朝日新聞be on Sundayの「日曜ナントカ学」の記事を見て驚きました。この説を「立証」したという、くだんの「新潟県の民間研究者」の方が紹介されていたからです。彼は「子どものころ父からこの言い伝えを聞」き、昭和38(1963)年の豪雪のあたりから毎年カマキリの卵の産み付けられる高さの調査を続けているという。相当年季の入った研究ですね。「少しでも子孫を残すため、選ぶ産卵場所は必死のたくらみの結果です」と彼は言う。だから、カマキリの産卵場所から、その年の雪の深さを推測することができるのだと。そういった彼の研究を、安藤氏は、推測を裏付ける調査に基づいていないとしています。
朝日の記事は、「カマキリの積雪量の予知能力」から、天気の長期予報の発達という本題に話を発展させていますが、降雪にまつわる言い伝えについても触れています。動物の動きや植物の育ち、風や雲の流れなど、降雪の予知に関することわざは全国に100以上もあるという。「ポプラの葉が全部落葉すれば根雪となる」(北海道)といったわかりやすいものから、「イカのたくさん獲れる年は小雪」(新潟)、「シカが早くなきやむ年は雪が多い」(広島)など、いわゆる「風が吹けば桶屋が儲かる」的に、順繰りにたどっていかないと理由がわからないようなものまで。でもどれも、突き詰めていけば、何らかの根拠がありそうです。
気象庁の長期予報も、もちろん最先端の科学を活用した方法を用いているのでしょうけど、なんとなーく、「当たらない」方が多いような気もします。昨年の異常な少雪も、長期予報では言ってなかったような…。
むしろ、かつて人間がもっと自然に近い生活をしていた時代から伝わる言い伝えやことわざの方が信憑性があるのかもしれません。「カマキリの積雪量の予知能力」も、あながちデータ観察だけで「誤り」とは決めつけられないのかもしれませんね。
てゆーか、そっちの方が夢があって楽しいじゃないですか~! ある晴れた秋の日、カマキリがカマをもたげて、目を閉じて、空気中の水分量をじっと測っている。あっちでもこっちでも。…そんな姿想像したらかわいいじゃないですか。観測が終わると、カマキリたちは一斉に動き出す。産卵する木を求めて、ある年はこずえの方へ、またある年は根元の方へと…。
どういうメカニズムが働いているのかはわからない。その方がいい時だってある。
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