カクレマショウ

やっぴBLOG

「過去」と「未来」から地震を予知する。

2010-05-14 | ■環境/科学
地震の規模は、時代が違っても変わることはありません。地震を起こす巨大な地球のメカニズムに比べたら、人間の歴史なんて微々たるものでしかない。

しかし、昔と今とで決定的に異なるのは、被害をできるだけ抑えるすべを、人間がだんだん身につけつつあるという点。地震予知、避難訓練、建造物の耐震対策、家庭での災害への備え、ボランティアを含む被災時の救援体制など、いざというときの防災対策は、少なくとも日本では結構進んでいるのではないかと思います。

先日の地元紙に、「史料分析 防災の一助に」という大きな見出しがありました(2010年5月10日付け東奥日報)。

弘前大学で、江戸時代の津軽の地震の研究をしている研究員の方(文系)が、理工学研究科が学内で開いた勉強会で自分の研究成果を報告し、理系の教官と意見交換をしたという。これがなぜ新聞記事になるのかというと、「歴史地震」について、「文系と理系の学部の枠を超えて検証し、津軽地域の防災に役立てるための取り組みを始めている」という点にあります。

この研究員の方とは、つい最近お話をする機会があり、彼女の書いた研究報告(弘前大学地域社会研究会「地域社会研究」第2号)も読ませていただいたのですが、江戸時代に津軽地方を襲ったいくつかの大地震について、古文書や古地図などの史料に基づいて被害状況を研究しているのだそうです。

たとえば、1766年に起こった「明和津軽大地震」は、震源が現在の弘前市と五所川原市の中間付近で、震度は5~6と推定され、さほど大きくはないものの、津軽地方一帯で全半壊した建物約6,000棟、死者は1,200名~1,600名を数える大きな被害をもたらしたという。史料によれば、死者の中でも、潰死者(かいししゃ)の割合が非常に高いのだそうで、それは、地震の起きたのが冬であったことと関係しているらしい。つまり、この年の津軽地方は豪雪に見舞われており、屋根に降り積もった雪の重みで倒壊した家屋が多かったのだという。地震被害と積雪が関係しているとは、考えもしませんでした。

一方、理系の研究者は、地震を地球物理学や地震発生物理学の観点から研究する。彼らの研究の目的は、地震のメカニズムを明らかにすることであり、その究極は「地震予知」でしょう。時期的、位置的に地震の発生を正確に予想できたら、被害はもっと食い止められるはずですから。

過去の地震を史料からたどり、未来の地震を科学で突き止める。「文理融合型研究」の成果に大いに期待したいところです。

それにしても、「文理融合」と殊更に言わなければならないこと自体が、考えてみれば奇妙な話で、改めて、文系・理系という、「大学受験用」の区分の弊害を感じます。ほとんどの普通高校では、2年次から文系・理系にクラスが分けられ、ほとんどの人は、そこで振り分けられた大学の一つに進み、ことによったら、就職先も限定されてしまう。よく、自分は「文系アタマ」だから、とか言う人がいますが、それは本当なのでしょうか? そう思いこんでいるだけかもしれませんね。

本当は、文系と理系に関係なく、たとえば、歴史学と地球物理学、教育学と情報工学、社会学と農学など、「文理」がクロスオーバーするところに大事な答えがあるのではないでしょうか。クロスオーバーが、個人では難しければ、今回の取組のように、人と人とのネットワークに期待するという手もある。

今回紹介した取組等をとおして、地域の防災意識がもっともっと高まっていくことを願います。

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