カクレマショウ

やっぴBLOG

「選択理論」を学校に取り入れる。

2012-01-03 | ■教育

先日、五所川原市立三輪(みつわ)小学校で行われた「選択理論」の学習会に参加してきました。 

 

講師は、選択理論を日本で初めて取り入れた学校(クォリティ・スクール)である神奈川県立相模向陽館高等学校の校長・伊藤昭彦さん。参加者は、三輪小学校の教職員、PTA、その他一般参加者を含めて約60人。伊藤さんから、実践・演習をとおして「選択理論」の基本と実際を学びました。 

 

今回の学習会は、先日の「ドリプラ」で知り合った方からの紹介でした。「選択理論」という言葉については、これまであちこちで漠然と耳にしていたのですが、よく分かっていなかったので、こりゃいいチャンスと思いました。驚いたことに、この学習会を企画した三輪小学校の校長先生は、前から社会教育畑でよく知っている方でした。わ、この人ならこういう企画をするのも分かる分かるという感じ。また、講師の伊藤さんについては、つい最近、教育雑誌に甲陽館高校のことを書かれていて、それも読んで、面白いなと思っていたところでした。さらに、今回お会いしてお話ししてみたら、伊藤さんは以前神奈川県教委の生涯学習課にも勤務されていたことがあるとのこと…。記憶を手繰り寄せてみたら、なんと、その頃、東京にいた私がずいぶんお世話になった方だったのです。そんな感じで、いくつものつながりが重なったうれしい学習会となりました。

 

 「選択理論」というのは、心理学の分野における療法理論の一つです。「選択」って、何を選択するのかと思えば、自分の「行動」を選択することなのだとか。選択理論心理学では、人は外側の刺激によって反応するのではなく、内側から動機づけられて行動を「選択」すると考えます。そして、内側から動機づけるものが、「基本的欲求」と呼ばれる5つの欲求(生存、愛・所属、力、自由、楽しみ)です。これらの欲求が満たされている状態を「上質世界」と呼びます。脳は、自分の上質世界にあるものを得ようとして、特定の行動を起こすようになっています。たとえば、コーヒーを自分の好みに合う味にするために、砂糖やミルクを入れるという行動を選択する。

 

上質世界は、当然、人それぞれに異なるのですが、それを理解せずに自分の上質世界にあるものを相手に押しつけようとするところから、人間関係に問題が起こる。相手の好みを理解しようとせずに、コーヒーに勝手に砂糖やミルクを入れられたら、そりゃヤめてくれってなりますよね。相手の上質世界にあるコーヒーの好みを変えることはできないのだから、砂糖やミルクを入れる(あるいは入れない)という自分の「行動」を変えるしかないわけです。つまり、「相手は変えられない。だから自分を変える」ことが大事ということになる。 

 

この考え方は、ホ・オポノポノととてもよく似ています。自分がこうありたいという願いを明確にし、それに向けて潜在意識に働きかける。自分の潜在意識は自分にしか操作できません。自分は自分にしか変えられない。

 

さて、その、自分が選択する「行動」ですが、選択理論心理学の創始者である米国の心理学者、ウィリアム・グラッサー博士は、人間の行動には4つの要素があるとしています。行為、思考、感情、生理反応です。この4つの要素は「全行動」と呼ばれて車の4輪に例えられます。このうち、前輪に当たるのが行為と思考。この2つを自分で制御しながらクルマを走らせる。ハンドルを握るのは、あくまでも自分自身の願望というわけです。

 

クルマを走らせる時には、他のクルマと衝突しないように、自分の行為と思考をコントロールする必要があります。これを人間関係に置き換えてみると、「人間関係を壊す習慣」をやめて、「人間関係を築く習慣」を心がけなければならない。それぞれ7つずつあるのだそうです。

 

≪人間関係を壊す7つの習慣≫

・批判する

・責める

・文句を言う

・ガミガミ言う

・脅かす

・罰する

・ほうびで釣る

 

≪人間関係を築く7つの習慣≫

・傾聴する

・支援する

・励ます

・尊敬する

・信頼する

・受容する

・交渉する

 

で、こうした選択理論を教育にも応用しようというのがクォリティ・スクールです。「質の高い学校」とは、「落伍者を一人も出さない学校」のこと。つまりは、すべての子どもたちにとって、学校が居心地のいい居場所であるということなのでしょう。クォリティ・スクールでは、教師と子どもたちの関係も「人間関係」としてとらえます。そして、先生自身が、子どもたちに対して「人間関係を壊す7つの習慣」をやめて、「人間関係を築く7つの習慣」を意識した接し方をする。あくまでも、子どもたち一人一人が持つ「上質世界」を尊重し、そこにアプローチしようとするやり方。これを徹底して続けたら、確かに、子どもたちは変わると思います。何より、自己肯定感とか自己有用感が高まることは、容易に予想がつきます。ただ、一人二人の先生がこういう取り組み方をしても、限界があります。やるなら学校挙げて取り組むこと、もちろん保護者の理解も得た上で進めることが何よりも大事でしょうね。

 

米国では既にクォリティ・スクールが何校もあるということですが、日本では、20104月開校の新設校、神奈川県立相模向陽館高等学校が、初めて当初から選択理論を取り入れた学校経営に取り組んでいます。その中心となったのが、今回の学習会の講師、伊藤校長先生でした。同校の取組については、次回紹介したいと思います。

 

ところで、伊藤さんも紹介してくれていた、『選択理論を学校に―クォリティ・スクールの実現に向けて』(柿谷正期・井上千代著、ほんの森出版、2011年)は、学校での選択理論の実践例がたくさん載っています。教員の皆さんにオススメ。

 

 


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2 コメント

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すばらしい解説に感動! (井上 千代)
2012-02-06 00:03:37
実は、三輪小学校の山谷校長先生からメールをいただき、とても感動しましたので、伊藤校長先生をご紹介しました。そのときの講演の様子が伝わってきて、しかも、選択理論をこのように分かりやすくまとめていていただき、とても感動しています。
小学生、中学生にできるだけわかりやすく話したいと願っている私にとって、とても参考になりました。感謝申し上げます。
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ありがとうございます! (やっぴ)
2012-02-07 00:04:04
井上千代様

コメントいただき光栄です。今回いろいろなご縁で選択理論に初めて触れることができて、こちらこそ深く感謝申し上げます。

先生のご著書を通して学校での具体的なアプローチの方法について大変勉強させていただきました。これからもう少し勉強してみたいと思っています。
ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
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