カクレマショウ

やっぴBLOG

「先生」文化の日本。

2007-06-28 | ■教育
世の中に、「先生」と呼ばれる人たちはどのくらいいるのでしょうか。

学校や大学の教員、医者、弁護士、議員…。日本には至るところに「先生」がいます。

「先生」という言葉は、もともとは字面のとおり、「自分より先に生まれた人/年長者」という意味です(この場合、「せんしょう」とか「ぜんじょう」とも読む)。それが転じて、「学問・技芸などを教える人、また、自分が教えを受けている人」という意味になり、さらに転じて、教えを受けていなくても、「敬称」として名前のあとにつける言い方が生まれました。「敬称」としての「先生」を揶揄して、「センセイ、ずいぶんご執心のようで…」のような皮肉めいた使い方もされますね。

世の中、「先生」と呼ばれて、いい気分になる人と、嫌な気分になる人、2種類のタイプがあるのではないでしょうか。いい気分になるのなら、いくらでも「先生」と呼んであげてもいいのですが、どっちにしても、節操なく「先生」という言葉を使うのはどうなんだろうと思います。

たとえば、学校では、教員同士が「○○先生」と呼び合うのが普通です。それは「自分が教えを受けている人」という意味の「先生」ではなく、単なる「敬称」にすぎません。中には、目上の教員には「○○先生」で、年下には「△△さん」と器用に使い分ける人もいますね。そこまでして「先生」と呼ばなくてもいいのではと思うのですが、確かに学校では、年上の同僚の呼び方は難しい。役職があれば「○○課長」とか「□□係長」とか言えますが、学校の役職は、基本的に「校長」か「教頭」しかありませんので。

私は、あえて、学校の中での教員同士の「先生」はやめましょう、と言いたい。子どもから見たら「先生」であることには間違いないわけですので、子どもが「○○先生」と呼ぶのはもちろんかまわない。でも、子どもとの関係を引きずる格好で、「大人」同士までが、先生、先生と呼び合う姿は、冷静に考えればかなり滑稽です。

行政の教育委員会事務局でも同じです。なぜ、指導主事や社会教育主事だけが「先生」と呼ばれたり、呼び合ったりするのか。別に「先生」としての仕事をしているわけではないのです。行政事務職の職員と同じ「行政」の業務をしているのに、「学校で先生をしていた」(あるいは今後また学校に戻る)というだけで「先生」と呼ぶ/呼ばれるのは、どうにも合点がいきません。

それから、学校の教員はよく、子どもたちに向かって話すときに、自分のことを「先生」と言います。「先生はこう思うんだけど…」、「はい、先生のあとについてきて~」。まあこれは、教員に限らず、日本の大人が子どもに対して話す時によく見られる、相手の立場に立って自分を呼ぶという特徴です。母親が子どもに向かって「おかあさんの言うこと聞きなさい」、祖父が孫に向かって「おじいちゃんと遊ぼう」。「自分」の呼称だけでなく、たとえば、母親が次女に向かって「おねえちゃんにもあげなさい」というように、「あくまで相手の立場で呼ぶ」習慣は徹底しています。「先生」が自分のことを「先生」と呼ぶのも、そういう意味では自然といえば自然…なのかもしれませんが、これも冷静に考えると、どこか妙です。

弁護士とか医者は、単に「敬称」というだけでなく、「頼りにしてます」といった意味合いの「先生」なのかなと思います。議員を「先生」と呼ぶのも、同じ意味合いなのかもしれませんが、議員の場合は、揶揄的な意味合いもたぶんにあったりして…。(こんなこと言うと叱られますね)

「先生」という呼び方は、あくまでも「一対一」の間に成り立つもので、しかもその関係は一義的には、「教える─教えられる」という師弟関係です。教員同士や同僚同士で「先生」と呼び合うのは、「敬称」として使っているだけ、と捉えるにしても、実際には、「敬称」の域を超えているような気がします。単にその方が「呼びやすい」から「○○先生」と呼んでいるだけで、必ずしも、「尊敬」とか「頼りにしてます」という思いが込められているとは限らない。

大学を出たての新米教員でも、勤務初日から「先生」と呼ばれます。子どもが呼ぶのはともかく、上司である校長・教頭や先輩の教員からも「先生」と呼ばれ続けることが、「一職業人」として、果たして本当にいいことなのでしょうか?教員としての技術も心構えもないままに、毎日毎日「先生」と呼ばれ続けることで、「自分は“先生”なんだ」という感覚だけが先行していく。「先生」としての自覚は、「先生」「先生」と呼ばれることによってではなく、授業での実践や子どもたちとの関わりの中でこそはぐくまれるものであることは言うまでもありません。

安易に「先生」と呼び合う「文化」が、何か大切なものを置き忘れてきているような気がします。今国会での学校教育法の改正案成立によって、学校に副校長、主幹教諭という新しいポストを置くことができるようになります。学校運営の効率化が目的、とのことですが、その前に、「先生」と呼び合わないようにすることの方が意外と必要かもしれない。


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