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カクレマショウ

やっぴBLOG

「縄文と現代」─青森県立美術館よ、どこへ行く?

2006-12-09 | ■美術/博物
青森県立美術館の企画展「縄文と現代 ~二つの時代をつなぐ『かたち』と『こころ』」。文字通り、縄文と現代のそれぞれの「美」を通して、何千年かを隔てた人間の本質を探ろうという企画です。

開館記念の「シャガール展」が予想をはるかに上回る入場者数だったのに対して、報道によれば、今回の第2弾のそれは予想をはるかに下回っているのだそうです。テーマ自体が地味なので、さもありなんという感じですが、行った人によれば「よかった」という声も聞くので、終了日前日に駆け込み的に見てきました。

エレベーターで地下2階に降りると、目の前にいきなり『GIANT TORAYAN』(ジャイアント・トらやん)(ヤノベケンジ)がお出迎え。腕をブラブラさせてます。しかも定期的に吠える。高さ7.5mの
真鍮製の巨体がまるで生きているようです。

岡本太郎や小谷元彦、草間彌生といった現代美術の作品を間近で見つつ、ふと後ろを振り向くと、同じフロアの真ん中に縄文の火炎式土器や土偶が並んでいる。でも不思議と違和感はなく、両者はすんなりと溶け合っています。なかでも、やっぱり岡本太郎です! 彼の作品はそれ自体に縄文的なものを感じるものが多いので、今回のテーマにもっともふさわしいアーティストではないかと思いました。彼の墓標にもなっているという「午後の日」なんか、土偶そのものです。シンプルで表情豊かで。1962年に彼が撮影した恐山の写真も興味深いものがありました。イタコの顔をなんと素敵に切り取ってみせてくれていることか。

展示スペースは、A~Eの5ヶ所に区分されていて、それぞれにテーマが設けられていますが、実は隠された展示品もあるようで、残念ながら見逃してしまったものもあるようです。とにかくこの美術館は配置がわかりにくい。企画展は「B2F」(こういう表記もどうかと思う。どうして「地下2階」と表現しないんだろう)で開催されているのですが、受付で渡される案内図を見ても、どうもよくわからない。

そもそも、コピーで作られた案内図(表紙には「マップ+解説」と書いてあります。しつこいようですが、「マップ」じゃなくてもいいでしょ。たかが「会場案内図」なんだから…)は最悪です。たとえば、建物の見取り図の肝心の「仕切り線」が薄くて見にくいことこの上ない。意味不明のカタカナ語が何の説明もなく使われている(「インスタレーション」、「ファルス」)。作品の解説はまったく載っていない(今回は余計な「解説」なしで、それぞれの「感覚」で鑑賞しろということなのかもしれませんが、シャガール展の時も作品解説は一切なかった)。かと思うと、ほとんど意味がないと思われる「縄文の時代区分」(何年前から何年前までが「前期」とか)が載っていたりする。

「インスタレーション」をgoo辞書で引いてみると、「installation 現代芸術において、従来の彫刻や絵画というジャンルに組み込むことができない作品とその環境を、総体として観客に呈示する芸術的空間のこと」だそうです。展示会場にいるときには、いったい何が「インスタレーション」なのか皆目理解できませんでした。芸術に詳しい人ならわかるのでしょうが、フツーの人が知っている言葉とは思えない。わからない人は勝手に調べろということか。

なぜにかくも来場者を突き放すようなことをするのでしょうか? 美術館にはレストランも設置されていて、これは聞いた話ですが、たとえばメニューに「りんごカレー」みたいなのがあって、「青森に来たらぜひ」みたいなコピーがついているのだとか。…県外客向けなのですね。結局…。前にも書きましたが、県立美術館が、「県民」をまず相手にしなくてどうするのでしょう? レストランはもっと値段も安くして、地元の人が気軽に入れるようなメニューにするべきなのではないでしょうか。レストランしかり。今回行ってみて、どうも、県立美術館は、「県外」や「芸術通」の人ばかりを意識しているような危惧をますます強くしてきました。このままでは地元の「リピーター」が育つとはとても思えません。次回の企画展の案内もまったく見あたりませんでした。

企画展そのものは、確かに縄文と現代の「遠くて近い」つながりを十分に感じることができる展示でした。しかし、見終わってからふと考えました。縄文と対比されるのがなぜ「現代」なのか? 縄文の息吹は、現代に至るまでの長い歴史の中で深く潜航していて、「現代」に突如よみがえったのでしょうか? そうだとすればなぜ「現代」によみがえったのか? 私たちからすれば「現代」ですが、たとえば100年後の人々も私たちの生きている今の時代を振り返って、縄文との共通点を見い出すのでしょうか。

今回一番よかったのは、もしかしたら、順路の最後のほう、廊下の片隅にひっそりと展示されていた、「黒石商業高等学校情報デザイン科」の生徒17人が描いたポスターだったかもしれません。なぜか順路とは逆順に見る羽目になるので、最初は地元の高校生が描いたものだとはまったく気づきませんでした。作品の下に「○年生 誰々」とあったので、どこかの芸術系の大学か専門学校生の作品だと思っていました。最後まで見て初めて地元の高校生の作品だと知り、びっくり仰天。あわてて戻って再度じっくりと見てきました。あのセンスの良さ、デザイン力には脱帽です。青森県の高校生もなかなかやるじゃん!と思いましたね。なんだか、最後にとてもうれしい気分になりました。

 

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (エミ・ボルサラ)
2006-12-13 19:06:05
やっぴさんお返事ありがとうございました。
ごはんのおかずにところてんも合いますヨ♪

私は草間彌生が好きです。あのものすごーく気持ち悪くて衝撃的ですごい作品の数々が、縄文とどんなふうにつながるのだろうと思いました。

やっぴさんの文章を読んでいて、MOA美術館にいったとき、小学生の図画二作品が一番心に残ってしまったのを思い出しました。ひとつは青森県の小学生のものでした。美術館に飾られるなんてすごいですネ!!
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ところてん (やっぴ)
2006-12-14 23:59:51
エミ・ボルサラさん

大竹伸朗全展でも彼の小学生の頃の図画が展示してありました。その小学生も行く末はきっと…。個性はできるだけ伸ばしてあげたいですよね。

ところてんですか!? ムム、ごはんに合いますかねー。
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