
50代のコスプレ女王、松任谷由実の新譜「そしてもう一度夢見るだろう」を聴く。
1 ピカデリー・サーカス
2 まずはどこへ行こう
3 ハートの落書き
4 Flying Messenger
5 黄色いロールスロイス
6 Bueno Adios
7 Judas Kiss
8 Dangerous tonight
9 夜空でつながっている
10 人魚姫の夢(Album Version)
同世代付近の人間にとっては、まずこのタイトルがたまりませんね。若い頃に抱いていた夢ははかなく消え去り、現実の厳しさも十分わかった。「でも」、「もう一度夢を見る」じゃないんですね。「そして」、なんです。この違いは大きい。しかも、「夢見る」じゃなくて、「夢見るだろう」という曖昧含みでね。
ジャケットも出色。1950年代くらいの米国っぽい、品のいいスーツに身を包んだユーミンが、いくつものスーツケースを抱えているイラスト。場所は空港。どこかに旅に出るのでしょう。旅の目的は、「もう一度夢見る」ためなのか…。そんなイメージをふくらませてくれるジャケットです。
先日、NHKの「SONGS」で、松任谷由実の特集を2週連続で放映していました。長野県の中学生と「卒業写真」を一緒に歌うやら、かつて長崎県のある島の高校生に頼まれて作ったという「瞳を閉じて」にまつわるエピソードの紹介やら、時を超えて彼女の歌が愛され続けていることを改めて感じました。先日の朝日新聞でも、デビューアルバム「ひこうき雲」の誕生秘話が詳しく紹介されていました。「ひこうき雲」はユーミンが18歳の時に出したアルバム。しかもほとんどの曲は16歳の頃に作っちゃってるのです。その早熟ぶりには恐れ入ります。私も、高校生の頃に友人に勧められて、「ひこうき雲」のLPレコードを買いました。友人の死をモチーフにした表題曲はもちろん、「ベルベット・イースター」とか「雨の街を」とか、瑞々しい感性には今聴いても圧倒されます。私が一番好きなのは、「空と海の輝きに向けて」ですが、このダイナミックな世界観を、高校生にして抱いていたというのは驚くべきことです。
遠い波の彼方に 金色の光がある
永遠の輝きに 命のかじをとろう
朝日新聞の記事によれば、「ひこうき雲」という曲は、最初雪村いずみ(!)が歌うことになっていたらしい。ユーミンは、決して歌がうまいわけではないのですが、歌唱力云々を超えたところで「聴かせて」くれる不思議なミュージシャンだと思います。「ひこうき雲」も、作った彼女自身が歌っているからこそ心に残る。
さて、「ひこうき雲」から30数年を経たユーミンは…。
NHKの番組で、スタジオで歌っていたのは、アルバムから、「まずはどこへ行こう」と「ハートの落書き」の2曲。どりらも、大人にしか作れない歌であることには間違いありません。一点の衒いもなく、あの格好でにこやかに歌い上げるユーミンはやっぱり素晴らしいと思いました。
このアルバムの白眉は、なんといっても、最後の曲、「人魚姫の夢」でしょう。この曲は、ユーミンのコンサート「シャングリラⅢ」のイメージソングで、今回初めてアルバムに収録されたのだとか。PVでは、フランスのシンクロナイズドスイミングのオリンピック選手ヴィルジニー・デデューが華麗な舞いを見せてくれます。
なんて 淋しさは果てしなく 私をひとりにする
あなたを待ち続けるために
明日 やさしいうでの中で 私は泣いているのよ
哀しい夢だったと
なんて切ない歌なのか。「待ち続ける」ことがどんなにつらいことか。ことによったら永遠に「待ち続ける」ことになるかも知れず、それでも人魚姫は待つことしかできない。「明日 やさしいうでの中で 泣いている」ことを夢見ることしかできない。切なすぎますね。
人魚姫に限らず、人の「思い」は、すべてかなうとは限りません。いえ、かなわないことの方が圧倒的に多い。かなわない夢を持ち続けながら、それでも生きていくしかない。いつしかそんな夢を持っていたことも忘れ、そして、新たな夢を見る。何度もそれを繰り返しながら人は生きて、死んでいく。死んで、次の生へと受け継がれる魂には、前世で持っていた夢もこびりついているのでしょうね。永遠にかなわぬ夢を追い続ける生命の連鎖…。
ユーミンの世界は、今も、とてつもなく大きく、そして哀しい。
『そしてもう一度夢見るだろう』≫Amazon.co.jp
1 ピカデリー・サーカス
2 まずはどこへ行こう
3 ハートの落書き
4 Flying Messenger
5 黄色いロールスロイス
6 Bueno Adios
7 Judas Kiss
8 Dangerous tonight
9 夜空でつながっている
10 人魚姫の夢(Album Version)
同世代付近の人間にとっては、まずこのタイトルがたまりませんね。若い頃に抱いていた夢ははかなく消え去り、現実の厳しさも十分わかった。「でも」、「もう一度夢を見る」じゃないんですね。「そして」、なんです。この違いは大きい。しかも、「夢見る」じゃなくて、「夢見るだろう」という曖昧含みでね。
ジャケットも出色。1950年代くらいの米国っぽい、品のいいスーツに身を包んだユーミンが、いくつものスーツケースを抱えているイラスト。場所は空港。どこかに旅に出るのでしょう。旅の目的は、「もう一度夢見る」ためなのか…。そんなイメージをふくらませてくれるジャケットです。
先日、NHKの「SONGS」で、松任谷由実の特集を2週連続で放映していました。長野県の中学生と「卒業写真」を一緒に歌うやら、かつて長崎県のある島の高校生に頼まれて作ったという「瞳を閉じて」にまつわるエピソードの紹介やら、時を超えて彼女の歌が愛され続けていることを改めて感じました。先日の朝日新聞でも、デビューアルバム「ひこうき雲」の誕生秘話が詳しく紹介されていました。「ひこうき雲」はユーミンが18歳の時に出したアルバム。しかもほとんどの曲は16歳の頃に作っちゃってるのです。その早熟ぶりには恐れ入ります。私も、高校生の頃に友人に勧められて、「ひこうき雲」のLPレコードを買いました。友人の死をモチーフにした表題曲はもちろん、「ベルベット・イースター」とか「雨の街を」とか、瑞々しい感性には今聴いても圧倒されます。私が一番好きなのは、「空と海の輝きに向けて」ですが、このダイナミックな世界観を、高校生にして抱いていたというのは驚くべきことです。
遠い波の彼方に 金色の光がある
永遠の輝きに 命のかじをとろう
朝日新聞の記事によれば、「ひこうき雲」という曲は、最初雪村いずみ(!)が歌うことになっていたらしい。ユーミンは、決して歌がうまいわけではないのですが、歌唱力云々を超えたところで「聴かせて」くれる不思議なミュージシャンだと思います。「ひこうき雲」も、作った彼女自身が歌っているからこそ心に残る。
さて、「ひこうき雲」から30数年を経たユーミンは…。
NHKの番組で、スタジオで歌っていたのは、アルバムから、「まずはどこへ行こう」と「ハートの落書き」の2曲。どりらも、大人にしか作れない歌であることには間違いありません。一点の衒いもなく、あの格好でにこやかに歌い上げるユーミンはやっぱり素晴らしいと思いました。
このアルバムの白眉は、なんといっても、最後の曲、「人魚姫の夢」でしょう。この曲は、ユーミンのコンサート「シャングリラⅢ」のイメージソングで、今回初めてアルバムに収録されたのだとか。PVでは、フランスのシンクロナイズドスイミングのオリンピック選手ヴィルジニー・デデューが華麗な舞いを見せてくれます。
なんて 淋しさは果てしなく 私をひとりにする
あなたを待ち続けるために
明日 やさしいうでの中で 私は泣いているのよ
哀しい夢だったと
なんて切ない歌なのか。「待ち続ける」ことがどんなにつらいことか。ことによったら永遠に「待ち続ける」ことになるかも知れず、それでも人魚姫は待つことしかできない。「明日 やさしいうでの中で 泣いている」ことを夢見ることしかできない。切なすぎますね。
人魚姫に限らず、人の「思い」は、すべてかなうとは限りません。いえ、かなわないことの方が圧倒的に多い。かなわない夢を持ち続けながら、それでも生きていくしかない。いつしかそんな夢を持っていたことも忘れ、そして、新たな夢を見る。何度もそれを繰り返しながら人は生きて、死んでいく。死んで、次の生へと受け継がれる魂には、前世で持っていた夢もこびりついているのでしょうね。永遠にかなわぬ夢を追い続ける生命の連鎖…。
ユーミンの世界は、今も、とてつもなく大きく、そして哀しい。
『そしてもう一度夢見るだろう』≫Amazon.co.jp
ごぶさたしています。
ユーミン、行かれるのですね。うらやましいです。私はユーミンは行けませんが、7月には東京まで拓郎のラストツアーを見に行く予定です。
適当にトランジットが必要なお年頃ですね、お互いに。