カクレマショウ

やっぴBLOG

ユーミンの「サンダル」

2011-09-07 | ■私の好きな歌
5月のことですから、もうずいぶん前のことですが、思いがけず、ユーミンのコンサート“ROAD SHOW”に行くことになりました。

初めてユーミンのステージを見て、まず思ったのは、そもそも拓郎のコンサートとは根本的に違うんだなあということ。シナリオがしっかり作られていて、凝った舞台装置がそれに沿ってあつらえてあって、しかも、装置が次々と入れ替わる。今回の大きなテーマは「映画」らしく、レトロ風だったり、和風だったり、「青春」だったり、ラテン系だったり、最後はSFまで登場。もちろん、曲目もそれぞれに合わせて選曲されています。

コンサートというより、こりゃミュージカルだニャ、と思いました。主役のユーミンは、次々と衣装を替えて登場し、歌い、踊る。コーラスのメンバーたちとの掛け合いがあったり、かと思うと、彼女たちと一緒に撮影したモノクロのミニ映画がバックに流されたり、最後のSFバージョンでは、宇宙人だかロボットだかの衣装で熱唱。これでもかというくらいのエンタテイメント満載でした。

曲は、今年発売された2年ぶりのニューアルバム「ROAD SHOW」の曲がほとんどで、私が高校生の頃聴いていた昔々の曲は、会場との掛け合いが楽しかった「少しだけ片想い」、それから「たぶんあなたはむかえに来ない」、そして、「静かなまぼろし」から「私のフランソワーズ」のメドレー、くらいでしょうか。私にとっては、学生時代の思い出がよみがえる「DESTINY」をダンス付きで歌ってくれたのも楽しかった。

で、コンサートが終わってから、その余韻のままに、よーし、ユーミンのベストCDをつくろうと思い立ち、曲を選んでいたら、40曲近くがピックアップされてしまいました。結局、堂々2枚組になってしまった…。もちろん、ユーミンのCDすべてを持っているはずがないので、手持ちのCDと、何曲かはネットで購入しての、完全な私家版ベストですが、だからこそ、「あの時代」を感じるフレーズに心が震えるだけでなく、「あの時代」に生きていた「あの頃の自分」に帰ってゆける。

改めて名曲の数々を聴いてみて、ちょっと一つ気付いたことがあって、それは、「サンダル」という言葉。「DESTINY」と「潮風にちぎれて」という曲の2つの歌詞に出てきます。

「DESTINY」
冷たくされて いつかは
みかえすつもりだった
それからどこへ行くにも
着かざってたのに

どうしてなの 今日にかぎって
安いサンダルを はいてた
(今日わかった) 空しいこと
むすばれぬ 悲しいDestiny




「潮風にちぎれて」
泳ぐにはまだはやい
よせくる波 くるぶしまで
あなたの好きな このサンダル
なぜはいてきたんだろう




「DESTINY」は、おそらくは、裕福で「シティボーイ」を気取ってる男に振られた女性の話。想いを吹っ切れなくて会いに行って、「緑のクウペ」に「True love,my true love」って落書きしたのに、「あなたは 気にもとめずに走りだした」。わたしが受けた心の「傷あとも知らないで」、サ! 悔しくて見返すつもりで、いつもおしゃれして遊びに行ってたのに、あなたに会いに来た「今日」に限って、なぜか「安いサンダル」をはいてくるなんて。ま、これも運命(destiny)なんだろな。しょせん結ばれぬ運命にあったことを、サンダルが教えてくれた。

…てな感じかな。

一方の「潮風にちぎれて」。こちらも昔から大好きな曲なのですが、こちらも女性視点の、別れの歌です。最後に、思い出の海岸にやってきた二人。あなたには既に別の彼女がいるらしい。わたしは、精一杯強がって見せる。「かわいい彼女」を「これから自由に愛しなさいよ」とさらりと言い放つ。国道に停まっている車で恋人が待っているからとウソをついて背中を向ける。だけど、いくら強がって見せても、本心は淋しくてたまらない。そもそも、「あなたの好きなサンダル」をはいてきてるし。そのサンダルで砂浜を歩いて、「あなたと歩いた年月を けちらしてみたかった」なんて言っても、泣けないのはなぜと自問してみても、やっぱり、「ひどく淋しい」。「今ふりむいたなら 心くじける」んです。ああ、なんていじらしい。でも、わたしは、まぶたを閉じて、潮風を感じながら思う。「あなたと来なくたって わたしはもとからこの海が好き」。かっこいいね。

「サンダル」が、どちらの曲でも極めて象徴的に使われています。誰でも持っているサンダル。でも、それぞれのサンダルには、履いている本人にしか分からない意味があったりするわけだ。サンダルにちゃんとそういうストーリーを演じさせているからすごいよなあ。別にサンダルでなくても構わないんだろうけど、ここはやっぱり「サンダル」がぴったりと思わせるあたりが、ユーミンがユーミンたるゆえんなのでしょうなぁ。

コンサート会場で、2階席からはるかに眺めたユーミンは、まだまだ若く溌剌として見えました! これからも、ユーミンの世界をもっとおじさん世代に見せて欲しい。

 

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