カクレマショウ

やっぴBLOG

「バーン・アフター・リーディング」─いや、きっとまだ何かあるはずだ。

2009-05-11 | ■映画
"BURN AFTER READING"

2008年/米国/93分
【監督・製作・脚本】 イーサン・コーエン ジョエル・コーエン
【出演】 ブラッド・ピット/チャド ジョージ・クルーニー/ハリー・ファラー ジョン・マルコヴィッチ/オズボーン・コックス フランシス・マクドーマンド/リンダ・リツキ ティルダ・スウィントン/ケイティ・コックス J・K・シモンズ/CIA上官

2009/05/02 青森コロナシネマワールドにて鑑賞

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ノー・カントリー」でアカデミー賞作品賞に輝いたコーエン兄弟の最新作とあっては見逃すわけにはいかない。出演者もこれ以上はないというくらいの豪華な顔ぶれだし…と思って、楽しみにして映画館のシートに腰を下ろしました。

「ノー・カントリー」とはうって変わって、全編がコメディ仕立て。前宣伝では、あのブラピが初めて見せるおバカぶり、という触れ込みが話題になっていましたが、確かに彼の演ずるチャドのおちゃらけぶりは徹底している。ブラッド・ピットは、「12モンキーズ」での「キレ」ぶりが印象的でもありましたが、ここではまた別の一面が見られてそれはそれで楽しい。

でも、この映画には、ブラピをしのぐような「キャラが立つ」人間が、これでもかというくらい登場します。「出会い系」にはまる女狂いのハリー(ジョージ・クルーニー)、アル中でCIAをクビになったオジー(ジョン・マルコヴィッチ!)、その妻にして、ハリーの愛人でもある、常に冷静な医師ケイティ(ティルダ・スウィントン)、彼らが次々と引き起こしていくけったいな出来事に戸惑いながらも的確な(?)対処法を部下に指示するCIA長官(J.K.シモンズ)…。

そして、なんといってもこの映画の主人公は、リンダ・リツキ(フランシス・マクドーマンド)。チャドと同じフィットネス・ジムに勤め、全身整形手術をして生まれ変わろうとしている、さえない女性。フランシス・マクドーマンドは、監督ジョエル・コーエンの妻で、これまでのコーエン兄弟の作品の多くに登場しています。特に印象深いのは、あの名作「ファーゴ」の女性警察署長役。臨月のおなかを抱えながら、凶悪犯の前に静かに、強く立ちはだかる女性を演じていました。あのとぼけた表情が何とも言えない。

そもそも、ジムの更衣室で拾った1枚のCD-ROMの内容をチャドが読んでしまったことから物語は急展開していくのですが、それに拍車をかけているのがリンダなのです。彼女の目的はただ一つ、保険のきかない整形手術の費用を得ること。まったく、ジムに勤めているんだから、フィットネスで体の改造をすればいいのに、と思うのですが、リンダはそんなことは微塵も考えていないようです。

基本的なストーリーはごく単純で、CD-ROMにファイルされていた「国家機密」をネタに、一般市民がCIAやロシア大使館を相手にゆするというもの。「読んだら焼却」しなくてはならないモノには、うかつに手を出してはいけないのです。

しかし、ストーリーが単純な割には、話が入り込みすぎていてよくわからないまま終わってしまったという声も耳にします。バラバラのように見える登場人物たちがどこかでつながっているだけでなく、それぞれが抱える様々な問題もさりげなく紹介しているからなのでしょう。そして、確かにはぐらかすようなラストシーン。コーエン兄弟の思惑にまんまとハメられたような思いが残ります。

この映画には、「ノーカントリー」のような殺人鬼への恐怖もなければ、「ファーゴ」に流れる虚無感もない。ましてや「バートン・フィンク」が醸し出す不条理もない。あるのは、「おちゃらけた市民」たちの無責任ぶりと金への執着。

もちろん、そこかしこに(リンダのデート風景の対比とか、ハリーが地下室でひそかに作っていたとんでもないシロモノとか、クローゼットの中の恐怖とか)、いかにもコーエン兄弟っぽい仕掛けを看て取ることはできるのですが、何となく物足りなさを感じたことも確かです。なぜだろう? 

まだきっと何かあるはずです。映画館では見逃してしまったコーエン兄弟のマジックを、今度はDVDでじっくり探してみようと思います。それにしても、コーエン兄弟は、実にいろんな角度・手法で、いつも私たちをおちょくってくれますね。

 
 

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