【第90回天皇杯準々決勝 鹿島 vs 名古屋】レポート:引退する大岩のために結束を強める鹿島。名古屋との3度目の対戦も制し準決勝進出を決める(10.12.26)
12月25日(土) 第90回天皇杯準々決勝
鹿島 2 - 1 名古屋 (13:00/カシマ/14,564人)
得点者:7' 興梠 慎三(鹿島)、76' 小川 佳純(名古屋)、78' 大迫 勇也(鹿島)
12月の空は青く澄み渡り、とても高く、冷たい風が肌を刺した。しかし、ピッチに立つ鹿島のイレブンには半袖姿の選手が3人いた。
「みんなでやろうと言ってたんですけどね」
岩政大樹が少し恥ずかしそうに振り返る。冬でも半袖のユニフォームに手袋をつけてピッチに立つのは大岩剛のトレードマーク。試合後に引退セレモニーが控えていたこともあり、特に思い入れの深い岩政大樹、伊野波雅彦、新井場徹の3人は、大岩への思いを込めて半袖で試合に臨んでいた。
ただ、半袖を着用していなくとも、試合に勝ってセレモニーを迎えたいというのは、鹿島の全ての選手に共通した思いだったに違いない。試合開始直後、こぼれ球にいち早く反応した小笠原満男が思い切りの良いシュートを見舞うと、5分には中田浩二が相手陣をドリブルで切り裂いてミドルシュートを放つ。この試合にかける意気込みの強さがうかがわれた。
それが結果となって表れるのも早かった。7分に、ハーフウェイラインより自陣側でボールを受けた野沢拓也が、名古屋のDF陣の裏にスルーパスを通す。これに興梠慎三が快足を飛ばす。増川隆洋の背後から一気に抜き去り、飛び出してきた高木義成をワンタッチでかわすと、体を捻りながら無人のゴールに先制点を流し込んだ。
ケネディや玉田圭司、ダニルソン、田中マルクス闘莉王といった中心選手がおらず、戦ったことのない布陣を強いられた名古屋はペースを掴めない。そこを見逃さずに一気に襲いかかる見事な先制点だった。その後も、鹿島はハイペースでボールを追いかける。ピンチを招いても全員の帰陣が早く、チーム全体でゴールを守っていた。
対する名古屋はFWに入った金崎夢生が少しポジションを下げてボールタッチ数を増やす。すると、パスの回りも良くなり、徐々に互角の展開に持ち込んでいった。
25分、鹿島をアクシデントが襲う。岩政大樹が足の裏の筋肉を痛めてしまい退場。大岩剛が急遽出場することとなった。「まさかの」と本人も笑う突然の出場ながら、そこは大ベテラン。急な出番にもまったく慌てることなく試合に入り、危ない場面を作らなかった。
ただし、後半に入ると流れが変わる。ストイコビッチ監督は、左サイドで積極的に仕掛けていた橋本晃司を下げて、前線に巻祐樹を入れて高さの勝負に出た。するとこれに鹿島が苦戦。最終ラインを下げられてしまうと、中盤の運動量が落ちたこともあり、なかなかラインを元の位置まで戻せなくなってしまう。ただ、守備の集中力は落ちず決定的な形をつくらせなかった。
そこで名古屋はさらに攻撃に出る。61分、それまで激しい守備を見せていたボランチの吉村圭司が警告を受けたこともあり、花井聖と交代させる。それに伴い、小川佳純がポジションを1列下げるも、攻撃的な選手の枚数が増えた。これが奏功する。76分、巻がヘディングで折り返し、そこに飛び込んだのは小川。名古屋が同点に追いついた。
しかし、小川が高いポジションを取ったことで守備のバランスも崩れる。78分、鋭い反転で相手のセンターバックと正対することに成功した大迫勇也が、ステップでマークをはずし左足で振り抜くと、ゴール右隅へ。これが決勝点となり、鹿島が今季3度目の対戦も制し、準決勝進出を決めた。
試合終了後には、大岩剛の引退セレモニーが行われ、ほとんどの観客が席を立たずに見守った。
「あそこまでたくさんの人が残ってくれるとは思っていなかったので、すごくうれしかったですし、僕の中では引退のさみしさよりもうれしいと言ったら変ですけど、みんなにあのように送り出してもらえる喜びを感じてます」
誰からも尊敬を集め、慕われていた大岩らしい引退セレモニーだったと言えるだろう。ただ、あと2試合残っている。
「グランドでは1月1日までと言いましたけど、その前に29日に勝たないといけないですから、しっかりリカバリーして、次の試合に全力で臨めるように準備したいです」
29日のF東京戦も、大岩剛の出番がありそうだ。
以上
2010.12.26 Reported by 田中滋
開始早々の満男のミドルも、ユダの豪快なドリブルからのシュートも、この試合に掛ける思いの表れであったであろう。
結果的には押し込まれる時間帯に追いつかれはしたものの、勝ち越し弾を決め要理を掴み取った。
2TOPが揃い踏みし攻撃的MF二人がアシストした現実を見るに、準備した戦術が正しかったと言って良かろう。
準決勝も岩政抜きという緊急事態を踏まえ、準備して挑みたい。
12月25日(土) 第90回天皇杯準々決勝
鹿島 2 - 1 名古屋 (13:00/カシマ/14,564人)
得点者:7' 興梠 慎三(鹿島)、76' 小川 佳純(名古屋)、78' 大迫 勇也(鹿島)
12月の空は青く澄み渡り、とても高く、冷たい風が肌を刺した。しかし、ピッチに立つ鹿島のイレブンには半袖姿の選手が3人いた。
「みんなでやろうと言ってたんですけどね」
岩政大樹が少し恥ずかしそうに振り返る。冬でも半袖のユニフォームに手袋をつけてピッチに立つのは大岩剛のトレードマーク。試合後に引退セレモニーが控えていたこともあり、特に思い入れの深い岩政大樹、伊野波雅彦、新井場徹の3人は、大岩への思いを込めて半袖で試合に臨んでいた。
ただ、半袖を着用していなくとも、試合に勝ってセレモニーを迎えたいというのは、鹿島の全ての選手に共通した思いだったに違いない。試合開始直後、こぼれ球にいち早く反応した小笠原満男が思い切りの良いシュートを見舞うと、5分には中田浩二が相手陣をドリブルで切り裂いてミドルシュートを放つ。この試合にかける意気込みの強さがうかがわれた。
それが結果となって表れるのも早かった。7分に、ハーフウェイラインより自陣側でボールを受けた野沢拓也が、名古屋のDF陣の裏にスルーパスを通す。これに興梠慎三が快足を飛ばす。増川隆洋の背後から一気に抜き去り、飛び出してきた高木義成をワンタッチでかわすと、体を捻りながら無人のゴールに先制点を流し込んだ。
ケネディや玉田圭司、ダニルソン、田中マルクス闘莉王といった中心選手がおらず、戦ったことのない布陣を強いられた名古屋はペースを掴めない。そこを見逃さずに一気に襲いかかる見事な先制点だった。その後も、鹿島はハイペースでボールを追いかける。ピンチを招いても全員の帰陣が早く、チーム全体でゴールを守っていた。
対する名古屋はFWに入った金崎夢生が少しポジションを下げてボールタッチ数を増やす。すると、パスの回りも良くなり、徐々に互角の展開に持ち込んでいった。
25分、鹿島をアクシデントが襲う。岩政大樹が足の裏の筋肉を痛めてしまい退場。大岩剛が急遽出場することとなった。「まさかの」と本人も笑う突然の出場ながら、そこは大ベテラン。急な出番にもまったく慌てることなく試合に入り、危ない場面を作らなかった。
ただし、後半に入ると流れが変わる。ストイコビッチ監督は、左サイドで積極的に仕掛けていた橋本晃司を下げて、前線に巻祐樹を入れて高さの勝負に出た。するとこれに鹿島が苦戦。最終ラインを下げられてしまうと、中盤の運動量が落ちたこともあり、なかなかラインを元の位置まで戻せなくなってしまう。ただ、守備の集中力は落ちず決定的な形をつくらせなかった。
そこで名古屋はさらに攻撃に出る。61分、それまで激しい守備を見せていたボランチの吉村圭司が警告を受けたこともあり、花井聖と交代させる。それに伴い、小川佳純がポジションを1列下げるも、攻撃的な選手の枚数が増えた。これが奏功する。76分、巻がヘディングで折り返し、そこに飛び込んだのは小川。名古屋が同点に追いついた。
しかし、小川が高いポジションを取ったことで守備のバランスも崩れる。78分、鋭い反転で相手のセンターバックと正対することに成功した大迫勇也が、ステップでマークをはずし左足で振り抜くと、ゴール右隅へ。これが決勝点となり、鹿島が今季3度目の対戦も制し、準決勝進出を決めた。
試合終了後には、大岩剛の引退セレモニーが行われ、ほとんどの観客が席を立たずに見守った。
「あそこまでたくさんの人が残ってくれるとは思っていなかったので、すごくうれしかったですし、僕の中では引退のさみしさよりもうれしいと言ったら変ですけど、みんなにあのように送り出してもらえる喜びを感じてます」
誰からも尊敬を集め、慕われていた大岩らしい引退セレモニーだったと言えるだろう。ただ、あと2試合残っている。
「グランドでは1月1日までと言いましたけど、その前に29日に勝たないといけないですから、しっかりリカバリーして、次の試合に全力で臨めるように準備したいです」
29日のF東京戦も、大岩剛の出番がありそうだ。
以上
2010.12.26 Reported by 田中滋
開始早々の満男のミドルも、ユダの豪快なドリブルからのシュートも、この試合に掛ける思いの表れであったであろう。
結果的には押し込まれる時間帯に追いつかれはしたものの、勝ち越し弾を決め要理を掴み取った。
2TOPが揃い踏みし攻撃的MF二人がアシストした現実を見るに、準備した戦術が正しかったと言って良かろう。
準決勝も岩政抜きという緊急事態を踏まえ、準備して挑みたい。