【第90回天皇杯決勝 鹿島 vs 清水】鹿島側プレビュー:決戦前日に漂う緊張感。一体感を持続する鹿島は、いざ国立へ(10.12.31)
F東京との120分の激闘から中1日で迎えた前日練習は、心地良い緊張感に包まれていた。いつもどおり1時間ほどのミーティングを行ったあと、ボールを使った軽めのメニューをこなし、恒例のPK練習で締めくくる。それをグランド脇に備え付けられた観客席から多くのサポーターが見つめ、選手たちに激励を送っていた。決勝のチケットもすでに全席完売。
「みんな気合い入ってるね」
練習から引き上げてきた新井場徹の顔は充実感に溢れていた。
シーズン最後の対戦相手は、今季2戦して1分1敗の清水となった。120分の激闘を戦った次の試合が、攻撃に特徴を持つ相手ということで、今回も難しい試合となることだろう。準決勝ではガンバ大阪から先制点を奪い一気に飲み込んでいる。まずはしっかりとした守備で先制点を与えないことが重要になるだろう。それもあってか、鹿島の選手たちからは口々に「ヨンセン」という名前が聞かれた。サイドからの攻撃に特長を持つとは言え、一度、ヨンセンに当ててからサイドへ展開していくことが多いだけに、ポストに入った時にどれだけ激しくプレッシャーにいけるかが勝負を分ける。センターバックでプレーすることが予想される中田浩二も「ヨンセンのところで潰したい」と狙いを定めていた。
本来であれば、岩政大樹がヨンセンをマークすることで相手の武器である高さを消してきた。しかし、どうやら岩政は決勝にも間に合わない様子だ。ボランチに入る青木剛を含め、中田浩二と伊野波雅彦の3人にかかる負担は大きい。ただ、伊野波は「とりあえず俺と青木さんと浩二さんがいれば守れる」と胸を張る。確かに、準決勝の後半からこのメンバーが守備の中心となったわけだが、安定感は初めて組むコンビとは思えないほど。さらに攻撃の組み立てにもひと工夫加えられるようになったのも大きい。右利きの伊野波が右、左利きの中田が左に並ぶことで、最終ラインのパス回しはスムーズとなり、ボールを保持しながらラインを押し上げることができていた。小笠原満男の後ろに中田が控えている布陣は、自然とパス回しに深みを生んでいた。興梠慎三と大迫勇也の2トップは2戦連続でアベック弾を決めチームを牽引している。守備を安定させてボールを保持することができれば、必ずチャンスを迎えることができるはずだ。
これまでも報じられてきた通り、この試合を最後に大岩剛は現役を退く。しかし、鹿島を去る選手は大岩だけでない。「剛さん以外にも優勝することがみんなにとってベストな形。色んな思いを持って明日は出し切りたい」と新井場。ベンチメンバーの船山祐二も「アップの時から声を出していきたい」と全員で戦うことを誓っていた。疲れがないはずはないが、F東京戦で見られた一体感は消えていなかった。
以上
2010.12.31 Reported by 田中滋
【第90回天皇杯決勝 鹿島 vs 清水】試合前日の選手コメント(鹿島)(10.12.31)
●曽ヶ端準選手(鹿島):
「清水はタレントもいますし、個人でも違いを出せる選手もいる。注意しないといけないと思います。3トップと中盤の選手が流動的に動くが、ヨンセンを中心にそこでポストをt使ってくる。最後ですからしっかりやりたいと思います。剛さんも良い形で送り出せればと思います」
●興梠慎三選手(鹿島):
「清水は守備より攻撃力に特長がある。そこに注意を持ってやればいいと思う。前のFC東京戦ではセンターバック2枚が強かったのでちょっとやりづらかった。ただ、モトさん(本山)が入ってセンターバックと中盤の間に入って起点になってくれた。でも、清水もまた違うと思う。ヨンセンとかに入った時に激しくいかないといけない。
(大迫選手とのコンビネーションは?)
あいつとも合ってきたし、この間は僕が足を痛めていたのでサコとモトさんに動いてもらって、僕は前で待ってるしかできなかった。まだ、距離が遠い時もあるけれど、1試合ごとによくなってきてると思う」
●伊野波雅彦選手(鹿島):
「疲れは意外と山を越えた。この間の120分で山を越えた。ここまで来たら中二日も中三日も関係ない。気持ちしかない。浩二さんは経験もあるし、流れを読む力がある。とりあえず俺と青木さんと浩二さんがいれば守れる」
●宮崎智彦選手(鹿島):
「点を決めたいですね。ああいう舞台で。
(相手の高い選手には?)
センターバックの二人とも直接話して、高い選手がいるから、この間のFC東京にも平山選手がいましたけど、カバーしてくれと言われました。
(相手のサイドからの攻撃については?)
藤本選手は右足でもクロスを上げていた。でもどっちかというと恐いというより楽しみですね。代表にも選ばれている選手とやれるのは楽しみです。足がつるまで全力でやりたいと思います」
●新井場徹選手(鹿島):
「元日まで来たね。勝つしかないでしょ、ここまで来たら。
(剛さんをはじめとしてチームを離れる選手が多いが?)
たまたま今回が多いだけで、毎年いる。その前にチームとしては勝たなあかん。色んな思いを持って明日は出し切りたいと思います。剛さん以外にも優勝することがみんなにとってベストな形。みんな気合い入ってるし大丈夫でしょう
(最終ラインの組み合わせが変わるかもしれないが?)
今更やることもない。全くやってない選手でもないし、思い切っていきたい。自分たちの持ってるもんが出し切れるかどうかだと思う」
●大岩剛選手(鹿島):
「素晴らしいチームメイトにここまで連れてきてもらった気持ちは大きいです。タイトルに挑戦できる場を与えてくれたことに感謝してます。勝つつもりでやりますし、みんな喜び合いたいと思います。
(明日は泣きますかね?)
この間、あれだけ泣いたからもうないでしょ(笑)。泣いてたら引かれそうだし。でも泣けるくらいになれるように良い結果を出したいと思います。
(清水の印象は?)
(小野)伸二が中心で、攻撃陣は素晴らしいタレントを持っている。個で決められる選手がいる。相手も何人か(チームを)去る選手がいるようなので、そういう抜きにして、良い試合ができるようにしたい。
(明日で最後という実感は?)
あんまりないんだよね。今日もいつものルーティンをやって、ロッカーを整理して、みんなと話しをして、いつもと変わらない。あんまり実感が無い。でも、喜ぶことがみんなのことをふり返ることになると思う。勝ってみんなと喜びたいですね」
以上
[第90回天皇杯決勝]前日練習の様子(鹿島)
シュート練習をする中田浩二選手。先日のFC東京戦では後半からセンターバックに入りクレバーな守備を見せていました。明日の試合でも活躍が期待されます。
[第90回天皇杯決勝]前日練習の様子(鹿島)
このところ、2試合連続でゴールを決めている大迫勇也選手。興梠選手とのコンビネーションも試合ごとに深まっており、2トップの出来が鍵を握りそうです。
岩政は間に合わず、FC調布戦後半の布陣で挑む様子。
ここは、屈強な欧州の攻撃陣に相対しておったユダに期待したい。
青木とイノパンのトライアングルで清水を抑えるのだ。
完封をすれば、好調のFW陣が結果を残してくれるであろう。
期待しておる。