決勝は鹿島vs広島/天皇杯
前半、競り合う川崎F森(左)と鹿島・本山(共同)
<天皇杯>◇準決勝◇29日◇国立ほか◇2試合
今季J1優勝の鹿島と、来季J2に降格する広島が勝って来年1月1日の決勝(国立)に進んだ。
鹿島はMF本山のゴールで川崎Fを1-0で下し、5大会ぶり5度目の決勝進出で2冠を目指す。広島は3-1でG大阪に勝ち、8大会ぶり13度目の決勝進出。前身の東洋工業以来、38年ぶりの日本一を目指す。両チームの決勝での対戦は初めて。
[2007年12月29日18時22分]
鹿島MF本山が11冠王手弾/天皇杯
川崎F対鹿島 後半27分、技ありのキックで決勝ゴールを決めた鹿島MF本山
<天皇杯:鹿島1-0川崎F>◇準決勝◇29日◇国立
鹿島MF本山雅志(28)が、11冠へ王手をかける決勝弾を決めた。川崎F戦の後半27分、鮮やかな右足ボレーシュートを決め、チームを1―0の勝利に導いた。今季Jのベストイレブンにも選出されなかったが、チーム内では「事実上のMVP」の呼び声高い大黒柱が、5年ぶりの決勝進出に貢献。今季2冠にあと1勝に迫った。
仲間を信じて、本山はゴール前に走った。後半27分。自陣ゴール前からのロングボールをFW田代が競り勝ち、さらにFWマルキーニョスが相手DF箕輪にプレッシャーをかけ、中途半端なクリアを誘う。弧を描いたボールに対し、本山が直接右足ボレーで振り抜くとゴール右上隅へ。「有三(田代)が競った時点でサポートしに行くつもりだった。前半から、ものすごくシュートを外していたから決めてやろうと」。この日5本目のシュートが決勝弾となって実った。
今季公式戦47戦出場で7得点。突出した数字ではないが、欠場はわずか1試合と安定して試合に出続けた。以前は代名詞だった得意のドリブルは、今や本山の武器の一部にしかすぎない。戦況を把握し、守備に奔走する泥臭さ、献身的な姿勢が加わった。ベストイレブンに選出されなくても「優勝しただけで十分」と涼しい顔だったが、唯一選ばれた岩政は「モト(本山)さんが選ばれるべき」と力説する。MVP級の働きをしたことは、チーム内の誰もが認めている。
FW柳沢の後を受けて、来季の選手会長に就任することが決定。副選手会長などの人事を指名できるが、岡田ジャパンの代表候補選手を外す気遣いを見せている。「オフの日に集まりとかあるので、代表選手にとっては負担になる。自分が代表選手だったころの経験もあるので、なるべくサポートしてあげたい」とチーム全体のことを考える
今季2冠目、通算11冠目のタイトルに王手をかけた。「最近は毎年、元日に自分たちがどうしてできないのか、テレビを見ながら思っていた」と5年ぶりの決勝戦を素直に喜んだ。もちろん舞台に立つだけで満足はできない。「最近サポーターに『元日、行こうね!』と言われたから『元日は勝とうね!』と返しておきました」。07年度最後の戦いも勝利で締めくくる。【広重竜太郎】
[2007年12月30日9時18分 紙面から]
背番号10が輝いた!本山の芸術弾で鹿島が今季2冠に王手!
後半27分、本山がスーパーゴール。川崎GK川島が飛びつくも、及ばず(撮影・塩浦孝明)
天皇杯準決勝(29日、川崎0-1鹿島、国立競技場)リーグ王者・鹿島は、MF本山雅志(28)=写真=の決勝弾で川崎に1-0勝利。5大会ぶり5度目の決勝進出で、今季2冠に王手をかけた。
◇
国立に今季初登場の鹿島。日本サッカーの聖地で、背番号10が輝いた。
本山だ。0-0の後半27分、GK曽ケ端の自陣からのFKを日本代表候補FW田代が頭でつなぎ、相手DFが浮かしたクリアボールを右足でたたき込んだ。ボールが一度も地面に触れることなく決まったスーパーゴールに2万2457人の観衆がどよめいた。
「守備ができなかったので後ろの人に負担をかけていた。ボールが田代に入った時点でサポートにいこうと思っていたし、前半かなり外していたから今度は決めてやろうという気持ちで打ちました」
93年のチャンピオンシップ、ジーコ(現フェネルバチェ監督)の“つば吐き事件”の舞台となった因縁のピッチで、本山の、そして鹿島イレブンの笑顔が弾けた。
昨年8月、左ふくらはぎを肉離れ。人生初の経験に、食生活への意識を変えた。自宅ではほうれん草やひじきなどを積極的に食べ、不足しがちな鉄分を摂取。シーズンを通して戦える体を作った。今季はチームでただ1人、リーグ全34試合に先発。歴史的な逆転優勝の原動力となった
悲願の10冠を達成し、新たな挑戦も見据えている。長年の夢だったスペインリーグ移籍だ。
「今年で契約が切れるし、来年が最後のチャンスだと思っている」クラブには、オファーが届いた場合の移籍許可を求めている。「まだオファーはきていないが、本人から話は聞いている」とクラブ幹部。現時点で具体的な進展はないが、夢への気持ちは揺らがない。
「決勝で負けたら2位というだけで何も残らない。2日しかないけど、しっかり調整して決勝に臨みたい」
5大会ぶりの決勝進出。結果を出し続けることが夢につながると信じている。08年を希望に輝く年にするためにも、立ち止まれない。目指すは今季2個目、通算11個目のチームタイトルだ。
(千葉友寛)
◆闘志あふれるプレーで勝利に貢献した鹿島MF小笠原
「リーグの優勝パーティーとかがあって気持ちがフワッとしたけど、勝ったことでまたいい雰囲気になった」
■データBox
●…鹿島はJリーグ創設後、最多となる5度目の決勝進出。これまでの決勝成績は2勝2敗。
●…来季、J2に降格する広島が決勝進出。J2降格決定チームの決勝進出は2001年度のC大阪以来2チーム目。C大阪は決勝で清水に2-3でVゴール負けした。
●…広島の決勝進出は1999年度大会以来、8大会ぶり、Jリーグ創設後4度目。過去3度の決勝はいずれも敗れている。前身の東洋工業時代に66年度、68年度、69年度と3度優勝している。
●…決勝での鹿島-広島の対戦は初めて。今季、両チームはリーグ、ナビスコ杯で4度対戦し、鹿島の3勝1敗(うちリーグ戦は鹿島の2勝)。
◆天皇杯を視察した日本サッカー協会・川淵三郎キャプテン
「きょうはU-15の試合(準決勝前に行われた全日本ユース選手権決勝)が印象深かった。あんなハイレベルなプレーが15歳でできるのかと思った。たくましく育ってくれれば楽しみ。そういう試合を見た後だけに、大人はしっかりしてほしいね。鹿島は勝負どころをよく知っている。攻撃のスピード感は1枚上手だった。ただ(決勝で)広島は柏木が(累積警告で)出られないのが残念。ひのき舞台で活躍してほしかったので」
本山芸術ボレー!鹿島11冠王手
<川崎F・鹿島>後半27分、決勝点となる豪快ボレーを決めた鹿島・本山
【鹿島1―0川崎F】鹿島MF本山が“らしい”芸術弾で5年ぶり5度目の決勝に導いた。後半27分だ。GKからのフィードに鋭く反応。FW田代が相手DFと競りに行った時、本山は田代を抜いてゴール前に躍り出た。こぼれたボールはいったんDFに当たって軌道が変わったが、左後方からの難しい球を右足ダイレクトでシュートする。右隅に突き刺さった強烈な先制点は、そのまま決勝点となった。
「軽く打つとふかしちゃうので、しっかりミートすることと、振り抜くことを心掛けた。打った瞬間、入ったと思った」。逆転Vを決めた1日の清水戦に続く殊勲の芸術弾。自然と笑みがこぼれた本山の、今季の変ぼうぶりが集約されたゴールだった。
昨季までは守備をするタイプではなかったが、今季は開幕から守備にも積極的に参加するようになった。リーグ優勝をたぐり寄せる劇的な勝利を飾った11月24日の浦和戦では、退場者が出た後、人生初のサイドバックも務めた。「ようやくチームのためにやるということが分かってきた」。プロ10年目。高い才能を評価され続けた本山が、あらためて「今はサッカーがものすごく面白い」と話すほどだった。
今季2冠にあと1勝。鈴木満取締役強化部長は「リーグのタイトルを獲ったことでプライドを取り戻し、また優勝を味わいたいという欲が出てきた。これがジーコのいう、勝者のメンタリティー」と話す。海外移籍をクラブに要望した本山も「決勝にいっても、負けたら2位で何も残らない。しっかり調整して、絶対に11冠を達成したい」と意気込みを語った。これこそが、勝者のメンタリティー。今季の鹿島は、10冠で終わるつもりはない。
[ 2007年12月30日付 紙面記事 ]
本山が決勝ゴール…天皇杯準決勝
川崎―鹿島 後半27分、決勝点を決め、田代(左)と喜ぶ鹿島・本山
◆第87回天皇杯準決勝 鹿島1―0川崎(29日・国立競技場) 鹿島は、後半27分GK曽ケ端のロングキックを田代が頭で競り合い、相手DFがクリアしきれなかった浮き球を、本山が豪快にボレー。ドライブがかかった鮮やかなシュートはゴール右上隅へ突き刺さった。「こぼれ球がいい形で落ちてきた。ボールをよく見て打てば簡単だった」と本山は嬉しそうに話した。
GK曽ケ端を中心に川崎の攻撃を完封し5大会ぶりに決勝に進んだ。
10月10日のナビスコ杯準決勝第1戦で敗れて以来、すべての試合で勝ち続けている鹿島。2000年度に3冠を独占して以来となる1シーズン2つのタイトル獲得が見えてきた。
(2007年12月29日22時48分 スポーツ報知)
当然と言えば当然であるが、本山一色である。
ただ一つ言わせて貰えれば、圧倒的な攻撃力を誇る川崎を完封したDF陣、決定的ピンチをセーブした曽ケ端へももっとスポットを当てて欲しかった。
袖のヤタガラスが金色になるまで残り一つ、改めて気を引き締めたい。