ムリキ、世界で一番平和なサル。

夏休みなので、昨日に続いて、動物の話である。ブラジル東部、大西洋岸沿岸に広がるマタ・アトラテイカの森に、南米最大のサル、ムリキがいる。ムリキは５０匹ほどの群れを作って暮らすが、多くの他のサルの群れが、序列を作り、一匹のボスを中心に暮らしていくのに対し、ムリキは一切、そのようなものがない。だから、ムリキは世界で一番平和なサルと呼ばれている。オス同士で、メスを奪い合うということもない。温かな夫婦生活が営まれているのである。ある日、乾季が続き、森に、恵みの果実が減っていた。母ザルは満足に食べることができず、子供に与える乳の出も細った。子供は泣き、それを見た父ザルは、妻の乳房に軽く触れ、栄養の足りないことを知った。そして、行動を起こす。この森には、固い殻に包まれているが、栄養価の高い果実がある。誰もが、その果実を食べたいと思うが、殻は固く、熟さなければ、食べられない。父ザルはこの果実のもとへ、家族を連れていく。そして、必死の力で、この固い殻を破りにかかったのである。どれくらいの奮闘の時間があっただろうか。わずかに、殻が割れ始め、実が表に顔を出した。父ザルはそれを見て、その場所を母ザルに譲った。母ザルはうれしそうに、その実を食べた。満腹になった母ザルの乳房からはおっぱいが出てきた。子ザルはそれを飲み、安らかに、眠りについた。母ザルは、そっと、父ザルに近づき、彼のほほにキスをした。

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