あんなこと こんなこと 京からの独り言

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神様は食べてはいけない

2015年03月30日 | うんちく・小ネタ


古い横断歩道に設置されている音響装置付き信号機は、青信号メロディとして童謡「とおりゃんせ」を使用するタイプが多いそうです。
由縁はよく知りませんが、「とおりゃんせ」という曲名が良かったのか、はたまた「行きはよいよい帰りは怖い」という歌詞が、交通安全の啓蒙に適していたのか・・・。

本質は、やはりあのおどろおどろしい曲調にあるのではないでしょうか。暗いマイナーコードにせかされ、歩調を早める。

明るくおおらかな曲でのんびり横断歩道を渡るより、不安できょろきょろの方が安全なのでしょう。



以前、あるテレビ番組の駅ホーム発車メロディ特集で、専門の作曲家たちが創作テクニックを披露していたのですが、横断歩道同様「あえて中途半端な終わり方の曲に作り込み、不安をあおる」と語っていました。
落ち着いた曲だとのんびり乗り遅れてしまうそうなのです。




怖いながらもとおりゃんせと歩む天神様の細道。さぞかし心細いに違いないのですが、心細いから細心の注意を払うのでしょう。

話は変わりますが、私にとっての「天神様」は、梅干しの種を割ると出てくる白くて柔らかい核。仁とも呼ばれるそれは、学術的には杯乳かもしれないのですが、私の周りでは「天神様」と呼ばれていたのです。



子供の頃、親がまな板の上で種を割り、よく天神様を食べさせてくれました。
「これがうまいんだ」。暗い台所で赤い梅干しから出てくる白い天神様は少し妖しく、その柔らかさもまた神秘的でした。

しかし、青梅の天神様にはアミグダリンという青酸配糖体が含まれているのです。
青酸配糖体は胃の中で毒性の高い青酸になります。
梅干しになれば消失するらしいのですが、ちょっと怖い・・・。

「梅の種の中には神様がいらっしゃるので食べてはいけない」と親に言われて育った知人もいました。

それを食べていた私。
アミグダリンでナムアミダブツになるところでした。

横断歩道も梅干しも注意が必要。
天神様の警告は、なかなか効果的なのですね。