あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

北斗七星

2010年05月17日 | うんちく・小ネタ

1         
                                                                北斗七星は時を測る天然の時計の針のようなもの。

「斗」は元々は酒を汲むための柄杓のような道具の呼び名。北斗七星の柄杓型の並びを思い出してもらえば、「北斗」の名が付いたのも頷けると思います。さて、北斗があればありそうなのが南斗(残念ながら、東斗・西斗はありません)。現在なじみのある星座でいえば、射手座の弓の部分に当たる星を南斗六星(なんとりくせい・なんとろくせい)と言います。

3

古代中国の星座でいえば「斗」という星座。月の位置から季節の動きを読み取るために使われた二十八宿の一つ「斗宿」に当たります。
面白い話・・・と思っていたら一つ思い浮かびました。三国志演義に登場する、「卜占神のごとし」と呼ばれた占いの名手、管輅(かんろ)にまつわる話です。

                                          B3111

ある時、管輅が田仕事をしている若者に目をとめました。年齢を聞けば彼は十九歳。管輅はため息をつき、「かわいそうだが、君の寿命は間もなく尽きる」と言いました。
言われた方はビックリ。                                                  どうにか命を永らえる方法は無いかと管輅に尋ねるとしばらく思案した後、「あるとすれば・・・」と秘策を授けました。

「明日南山の麓の大きな桑の木の下で、老人が二人碁を打っている。上等の酒一樽、鹿肉一塊を持って出かけ、ただ黙ってその酒と肉を二人に勧めなさい。くれぐれも口をきいてはならない」

 9b2_2 

言われたとおりに出かけると、確かに夢中になって碁を打つ老人が二人。酒と肉をおくと、二人は何も言わず、その酒と肉に手を付けます。しばらくしてようやく若者に気づいた北の方の老人が、

「そんなことをしても、おまえの寿命は決まっている。どうにもならん」

と言う。  南の老人は取りなすように、

「そうは言っても、酒と肉に手を付けて何もしないわけには行くまい」

といって、懐から一冊の帳簿を取り出しページをめくると、そこには若者の名前と十九歳という寿命が書き込まれていました。なるほど、これを延ばして欲しいというわけだなと老人はつぶやくと、十九の前に「九」という文字を書き加え、九十九としました。
そのあと、「管輅には、軽々しく天機を漏らすなと言っておけ」というと、老人は二人とも鶴に姿を変えて飛び去ってしまったと言います。

2

帰って管輅にその顛末を語ると、

「北側の老人は北斗七星の精で人の死を、南側の老人は南斗六星の精で人の生を司っている」

と若者に教えてくれたと伝えられています。
北斗は死を、南斗は生をという考えは、北は植物の枯れ尽きる冬を、南は生命を育む夏(太陽)を連想させるところからの対比でしょうか。

また北斗も南斗もいずれも暦と関係があり、時を測るために使われた星座ですから、その点から人の寿命を計る神を考えついたのかも。そういえば星座の名の元となった「斗」は酒を汲む道具である一方、酒の量を量る道具でもあります。二重の意味でものを計(量)る星座といえますね。

   B32_2 

暦から大幅に脱線したこぼれ話でした。
なお、ご紹介したお話は三国志演義にあるストーリー。三国志演義は史実ではなく小説ですが、中国の民衆には広く親しまれたもの。この北斗と南斗の話が書かれたのは民衆の間に

 「北斗と南斗・死と生」

という連想をする土壌があったから組み込まれた話だと思います。

B33_2 

56

コメント (134)