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エルガー ヴァイオリン協奏曲/ハーン,デイヴィス&LSO (SACD)

2009年03月21日 00時50分53秒 | クラシック(20世紀~)
 一昨日に書いて以来、しつこくエルガーの協奏曲を聴いている。昨日今日だけでもかれこれ7,8回は聴いていると思うが(通勤や移動中のWalkmanってのも多いのだが)、大分馴染んではきた。とはいっても、これでよーやく各楽章の主題、形式がおおよそ識別できた....という程度である。小説でいったら、荒筋がおおむね了解でき、登場人物の何人かに親しみを感じてきたというところで、登場人物のセリフの良さに感服したり、筋書きの巧みさに感服する....例えばブラームスのように「その良さをしみじみと味わう」みたいなところまでは行ってない、前回も書いたようにエルガーという人の作風は、とてもブラームス的なところがあるので、ブラームスのように楽しめそうなのに、なかなかそうならないというのは切ないところだ。まぁ、こういう人の音楽って、そもそも短期間でどうこうしようと思わずに、長いこと付き合うべき音楽なんであろうことは分かっているだけれど、つい焦ってしまう、悪いことである。

 クラシック、特に古典派からロマン派くらいまでの音楽を聴く時、どうしても行き当たるのが形式という問題だ。例えばソナタ形式(楽章)、これはたいてい序奏があり、第一主題があって、それとは対照的な第二主題が提示されると、そこからこのふたつの主題をあれこれこねくり回して展開させていく文字通り展開部があって、それがたいてい大きく盛り上がったところで、第一主題と第二主題が再現される....みたいな構成をとっている。なぜ作曲家がこういう形式をいちいち採用するのかということは長くなるので省くけれど、少なくともリスナーにとって、形式というのは、長い曲を聴く上である種のガイドラインにはなることは確かだと思う。まぁ、少なくとも私にとってはそうだ。
 「音楽には理屈も形式もいらない、心で聴くものだ」みたいにいう人もいるけれど、その言い分は建前としては正論だとしても、例えばこの曲のようにどの楽章も15分以上あるのような大規模な曲の場合、白紙の心で魂にうったえかけるような表現、心に琴線に触れるような旋律やハーモニーを、やみくも探して聴いてみたところで、途中でくじけてしまうのが関の山ではないだろうか。

 なんだか話が妙に説教臭い方向になってきたが(某巨大匿名掲示板風にいうと「オマエ、誰と戦ってんだ?」ってところか-笑)、話を戻すとこの曲の第1楽章は約18分という長大なものだけれど、さきほどのソナタ形式を構成するパーツという風に考えてみるれば、主題の提示部(オケだけ)は2分半、再提示(ここでヴァイオリンも入る)が6分、展開部が2分半、再現部が7分 という風に、各パートがだいたいロックやポップだの一曲分に相当するくらいの長さに分解というか、音楽のメリハリとして考えることができる。で、この曲の場合、まず第1主題がふたつに分かれていて長大、おかげで第2主題がとても地味になってしまっていて、あんまり鮮やかに対照していない。後半の展開部と再現部の区別が全然つかない(笑)、再現部とは名ばかりで、ほとんど展開部の続きといった感じで主題を延々とこねくりまわしている感がある....などの理由で、各パートをなかなか判別できなくて、聴いていて迷子になってしまう訳だ。また、この楽章はハイライトに向かってストレートに盛り上がっていくようなものではなく、いたるところで立ち止まって、瞑想するような趣になっていて、そのあたりも迷子になりやすいところだと思う。

 などと、本当はヒラリー・ハーンが巨匠コリン・デイヴィスとロンドン響をバックを得て、2003年に収録された同曲の演奏について、その感想を書こうとしたのだけれど、話があらぬ方向にいってしまって全然出てこないまま終わってしまいそうなので、少しだけ書いておく。この演奏、キョンファとショルティが組んだものに比べ、ソロ、オケともに落ち着き払っている。ハーンは全く激することなく、しかし終始緊張感を持ちつつも、彼女らしい低い温度感と細部に至るまで明晰なプレイでこの曲を弾ききっている。またデイヴィスとロンドン響の方だが、「エルガーというものはこういうものだ」といわんばかりの、やや暗く、くすんだ響きでもって、この大作を壮麗に演奏していて充実感満点である(リアルなオケの量感はSACDならではのクウォリティだし)。ただ、正直いうと、現段階ではキョンファとショルティの演奏にあった、白か黒か的なメリハリ、昂ぶるるようなテンションのようなものが、この曲に慣れ親しむにはけっこう頃合いかも?などと思わないこともない。つまり、目下、同曲を修行中の身としてはハーンとデイヴィスの演奏はちと渋すぎる感じがした....といったところだろうか。

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