20世紀フォックスはこのところ、1940~50年代の名作サントラをシリーズで積極的に復刻し続けているが、これもその1枚。内容は「ローラ殺人事件」と「ジェーン・エア」のカップリングというファンにとってはまさに待望のアイテムだ。
一応、知らない方のため書いておくと、どちらの作品も映画そのものの評価もさることながら、映画音楽としてはハリウッド黄金期の名作中の名作である。前者はデビッド・ラクシン作なるテーマ曲が非常に有名であり、欧米では映画音楽というカテゴリーを超え完全にスタンダード化した結果、現在でもジャズ・ミュージシャンに良く取り上げられている作品であるし、後者はおそらく復刻、再録を含め、一番CD化されているおそらくバーナード・ハーマン最初期の名作でなのある。
それにしても、両作品ともオリジナル・サウンド・トラックという形で今の世に甦ったのは、実は意外であった。なぜならば、これらの作品はいずれも40年代の前半に制作されており、サウンド・トラックそのもの存在が危ぶまれまれていたの加え、仮に現存していたとしてもレコーディングが40年代前半とあっては、音質的には到底期待できないことから、私も含めファンとしてはスコアによる再録音で、その音楽を楽しむ他はないと思っていたからだ。
ところが、この復刻盤を一聴して、まず驚いた。「これが、ほんとうに40年代の録音なのか?」とちょっとばかり度肝を抜かれたくらいに音質が良いのだ。近年の技術の進歩とは凄いものだ。マスターには多数存在していたであろうノイズもきれいになくなり、深々とした低音にささえられ、壮麗なオーケストラサウンドが見事に聴こえてくる。40年代のモノラル録音とはいえ、これなら音楽に没頭できようというものだ。
さて、内容をついて少々書いておこう。まず「ローラ殺人事件」だが、これまで存在したスコアによる再録音は数分間のテーマ部分しかなかったので、サントラ全体から約30分にわたって再構成された(らしい)組曲は貴重だ。しかもうれしいことに、この組曲、例のテーマと変奏という形で構成されており、あの優雅で、どことなく世紀末的な情緒を湛えたテーマを、りシャンソン風、キャバレー風なジャズ、ワルツ、子守歌、緩徐楽章風などなど様々なアレンジにのって次々に演奏されていく様はけだし絶品である
続く、ハーマンの「ジェーン・エア」は、近年、マルコポーロからほぼ全曲に近い形でデジタル録音されたアルバムも出ているし(アドリアノ指揮&スローヴァーク放送響)、ハーマン自身が60年代にロンドン・フィルを振った組曲(デッカ)も存在しているが、前者は音質的は万全だし、オケもうまいのだが、あまりにさらりと流れるように演奏しているため、いまひとつハーマン流のニューロティックさだとか、ドラマ的な起伏みたいなものが希薄だし、後者は演奏、雰囲気、録音共に揃ってはいたものの、10分余りと短いのたまにキズだったのだが、本命のサントラを聴くと、予想通りに濃厚な歌い回しに、時代がかったドラマティックなメリハリなどが感じられた、まさにコレだという感が強い。
それにしても、約30分14曲の演奏で現れては消える「ジェーン・エア」の旋律は魅力的だ。癒しがたい恋愛感情と、それに同居する不安な情緒をこのくらい見事に表した旋律も他に類例がないのではないたろうか。ハーマンはこの種の分野では、その後「めまい」や「マーニー」そして「愛のメモリー」などで、さらに一歩高みに上り詰めた表現を見せることになる訳だが、この作品の持つ、若書き故のナイーブさみたいな感触もやはり捨てがたい魅力があり、このオリジナル演奏によって、その魅力を再認識したというところである。(2003年1月4日)
一応、知らない方のため書いておくと、どちらの作品も映画そのものの評価もさることながら、映画音楽としてはハリウッド黄金期の名作中の名作である。前者はデビッド・ラクシン作なるテーマ曲が非常に有名であり、欧米では映画音楽というカテゴリーを超え完全にスタンダード化した結果、現在でもジャズ・ミュージシャンに良く取り上げられている作品であるし、後者はおそらく復刻、再録を含め、一番CD化されているおそらくバーナード・ハーマン最初期の名作でなのある。
それにしても、両作品ともオリジナル・サウンド・トラックという形で今の世に甦ったのは、実は意外であった。なぜならば、これらの作品はいずれも40年代の前半に制作されており、サウンド・トラックそのもの存在が危ぶまれまれていたの加え、仮に現存していたとしてもレコーディングが40年代前半とあっては、音質的には到底期待できないことから、私も含めファンとしてはスコアによる再録音で、その音楽を楽しむ他はないと思っていたからだ。
ところが、この復刻盤を一聴して、まず驚いた。「これが、ほんとうに40年代の録音なのか?」とちょっとばかり度肝を抜かれたくらいに音質が良いのだ。近年の技術の進歩とは凄いものだ。マスターには多数存在していたであろうノイズもきれいになくなり、深々とした低音にささえられ、壮麗なオーケストラサウンドが見事に聴こえてくる。40年代のモノラル録音とはいえ、これなら音楽に没頭できようというものだ。
さて、内容をついて少々書いておこう。まず「ローラ殺人事件」だが、これまで存在したスコアによる再録音は数分間のテーマ部分しかなかったので、サントラ全体から約30分にわたって再構成された(らしい)組曲は貴重だ。しかもうれしいことに、この組曲、例のテーマと変奏という形で構成されており、あの優雅で、どことなく世紀末的な情緒を湛えたテーマを、りシャンソン風、キャバレー風なジャズ、ワルツ、子守歌、緩徐楽章風などなど様々なアレンジにのって次々に演奏されていく様はけだし絶品である
続く、ハーマンの「ジェーン・エア」は、近年、マルコポーロからほぼ全曲に近い形でデジタル録音されたアルバムも出ているし(アドリアノ指揮&スローヴァーク放送響)、ハーマン自身が60年代にロンドン・フィルを振った組曲(デッカ)も存在しているが、前者は音質的は万全だし、オケもうまいのだが、あまりにさらりと流れるように演奏しているため、いまひとつハーマン流のニューロティックさだとか、ドラマ的な起伏みたいなものが希薄だし、後者は演奏、雰囲気、録音共に揃ってはいたものの、10分余りと短いのたまにキズだったのだが、本命のサントラを聴くと、予想通りに濃厚な歌い回しに、時代がかったドラマティックなメリハリなどが感じられた、まさにコレだという感が強い。
それにしても、約30分14曲の演奏で現れては消える「ジェーン・エア」の旋律は魅力的だ。癒しがたい恋愛感情と、それに同居する不安な情緒をこのくらい見事に表した旋律も他に類例がないのではないたろうか。ハーマンはこの種の分野では、その後「めまい」や「マーニー」そして「愛のメモリー」などで、さらに一歩高みに上り詰めた表現を見せることになる訳だが、この作品の持つ、若書き故のナイーブさみたいな感触もやはり捨てがたい魅力があり、このオリジナル演奏によって、その魅力を再認識したというところである。(2003年1月4日)
ローラ も 好きな曲なんですが
ちゃんと組曲であったんですね・・・
ジャケットの写真も当時の極彩色ーむりやり色付けみたいで
いいじゃないですか(笑)
華やかなりしロマンティックな年代だったんだろね~