ブリリアントから出たブラームスのピアノ作品全集から晩年に作曲された4つのピアノ曲をまとめたディスクを聴いた。リストの「ピアノ・ソナタ」を異例な遅さで弾いたアファナシエフについて興味を持ったものだから、今度は私の大好きなブラームスを聴いてみようと、彼が出した2枚のブラームス作品集を購入し、それが数日前に届いたので(一緒に「展覧会の絵」も購入した)、それを聴く前の予習として-昨夜のG.オピッツに続いて-聴いている訳である。
ブラームスはこれらの曲を1892年に書いたといわれている。ブラームスの有名な引退宣言が1890年で、亡くなったのは1897年で64歳の時だったから、この作品は50代後半の頃だったことになる。この年のブラームスは近しい人を何人か亡くし、自分の晩年を実感して遺書を記す一方、クララ・シューマンとの関係修復、そしてとある女性歌手にほのかな恋をしたりして、それなりにいろいろなことがあった年でもあった。この4曲はまさにこうした最中に書かれていた作品でもある。
・七つの幻想曲 作品116
幻想曲と命名されているだけあって、晩年の作品群の中では一番「遠くを見つめている」感じの曲が多い。1曲目がいきなり昔を思い出したような男性的なスケルツォ風、3曲もなかなか情熱的なところを見せる、7曲目は1曲目のムードに戻ってけっこう精力的だったりするのだが、その間に入っている4曲はどれも寂しげな諦念がただようもので、総体的にはブラームス晩年の様々な思いや葛藤が封じ込められた曲という感じだ。
・三つの間奏曲 作品117
晩年のピアノ曲の中でももっとも有名な作品といったら、やはりこれではないか。この作品についてブラームスは友人に「我が苦悩への子守歌」と呼んだらしいが、瞑想的で枯れきった風情、表向き子守歌のようななだらか趣の中に、複雑な想念がひっそりと交錯する味わい深い曲になっている。ブラームスの晩年のモットーは「孤独だが自由だ」というものだったらしいが、その裏には様々な葛藤や苦悩だってあったはずで、それらも含めストイックな音の流れの中で実に複雑な感情を表現しているのが素晴らしい。
・六つの小品 作品118
4つの間奏曲とバラード、ロマンスからなる小品集。これ以上ないくらいにストイックだった「3つの間奏曲」に比べると、いくらか伸びやかさ、ピアニスティックな響きがある作品が揃っている。また全体に平穏な感情を表向き表現しているような曲も多いが、簡素な佇まいの中に、単一の感情表現では割り切れない複雑な思いが綾をなして音楽に封印されているのは他の曲と同様である。なお、7曲目の一瞬印象派と見まごうような音の連なりと、その深い幻想美にはしばし圧倒される。
・四つの小品 作品119
3つの間奏曲とラプソディーからなる。前3曲に比べ更に散文的な趣きが強くなり、一筆書きのような簡素さと異様なまでにストイックな趣きがある。4つの作品の中ではブラームス晩年の諦念と追憶のようなものが、ひときわ強く感じられる。老境に達した人間に去来するさまざま思いというのは、しばし「永遠の時」のように感じられるのではないか。この音楽はそうした瞬間をそっと映し出しているようにも思える。
ブラームスはこれらの曲を1892年に書いたといわれている。ブラームスの有名な引退宣言が1890年で、亡くなったのは1897年で64歳の時だったから、この作品は50代後半の頃だったことになる。この年のブラームスは近しい人を何人か亡くし、自分の晩年を実感して遺書を記す一方、クララ・シューマンとの関係修復、そしてとある女性歌手にほのかな恋をしたりして、それなりにいろいろなことがあった年でもあった。この4曲はまさにこうした最中に書かれていた作品でもある。
・七つの幻想曲 作品116
幻想曲と命名されているだけあって、晩年の作品群の中では一番「遠くを見つめている」感じの曲が多い。1曲目がいきなり昔を思い出したような男性的なスケルツォ風、3曲もなかなか情熱的なところを見せる、7曲目は1曲目のムードに戻ってけっこう精力的だったりするのだが、その間に入っている4曲はどれも寂しげな諦念がただようもので、総体的にはブラームス晩年の様々な思いや葛藤が封じ込められた曲という感じだ。
・三つの間奏曲 作品117
晩年のピアノ曲の中でももっとも有名な作品といったら、やはりこれではないか。この作品についてブラームスは友人に「我が苦悩への子守歌」と呼んだらしいが、瞑想的で枯れきった風情、表向き子守歌のようななだらか趣の中に、複雑な想念がひっそりと交錯する味わい深い曲になっている。ブラームスの晩年のモットーは「孤独だが自由だ」というものだったらしいが、その裏には様々な葛藤や苦悩だってあったはずで、それらも含めストイックな音の流れの中で実に複雑な感情を表現しているのが素晴らしい。
・六つの小品 作品118
4つの間奏曲とバラード、ロマンスからなる小品集。これ以上ないくらいにストイックだった「3つの間奏曲」に比べると、いくらか伸びやかさ、ピアニスティックな響きがある作品が揃っている。また全体に平穏な感情を表向き表現しているような曲も多いが、簡素な佇まいの中に、単一の感情表現では割り切れない複雑な思いが綾をなして音楽に封印されているのは他の曲と同様である。なお、7曲目の一瞬印象派と見まごうような音の連なりと、その深い幻想美にはしばし圧倒される。
・四つの小品 作品119
3つの間奏曲とラプソディーからなる。前3曲に比べ更に散文的な趣きが強くなり、一筆書きのような簡素さと異様なまでにストイックな趣きがある。4つの作品の中ではブラームス晩年の諦念と追憶のようなものが、ひときわ強く感じられる。老境に達した人間に去来するさまざま思いというのは、しばし「永遠の時」のように感じられるのではないか。この音楽はそうした瞬間をそっと映し出しているようにも思える。
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