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マーラー 交響曲第9番/若杉弘&NHKSO

2010年02月07日 22時55分30秒 | マーラー+新ウィーン
 昨年の7月に亡くなった若杉弘への追悼番組としてアンコール放送された第1575回N響定期の映像である(これが彼の最後のN響出演らしい)。若杉弘という指揮者はメジャーなレコードやCDに恵まれなかったせいで、私は彼の指揮した演奏というのにほとんど接したことがないのだが(ArteNovaに残したベートーベンの交響曲第3番くらいか)、もともとドイツ・オーストリアの歌劇場を本拠として活動し、ワーグナーを筆頭に後期ロマン派を得意としていたらしい....ということは、私がクラシックに耽溺していた80年代でも、海の向こうから聞こえてきたことであり、晩年の彼が振ったマーラーの9番(もう一曲はウェーベルンの「パッサカリア」)ということで、興味津々という感じで視聴してみた。

 マーラーの9番はマーラーのおそらく最高位の傑作のひとつで、4つの楽章の両端に緩徐楽章を置き、中間部にふたつのスケルツォ的な楽章が挟まった、いささか特異なスタイルをとっている訳だけれど(チャイコフスキーの「悲愴」の前例に倣ったのかも)、若杉の指揮は明らかに最終楽章にハイライトを置いた演奏だった。この曲は第一楽章を全体のハイライトにする演奏もけっこうあるのだが(その代表格はカラヤンとBPOだろう)、彼の場合、第1楽章はあくまでも壮大な導入部、第2楽章のレントラー風の音楽、そして第3楽章のロンドと、徐々に緊張感を高めていき、告別的な第4楽章でもって最大のクライマックスを築くといった流れだったように思う。さりげないといってもいいくらいの第1楽章に比べ、第4楽章はあまり激しさはないが、気合いの入った指揮振りといい、はりつめたようなテンションはなかなかの熱気、情熱を感じさせた。

 ただ、なんていうか。「日本人指揮者と日本のオケによるマーラー演奏」という、当方の先入観も大きいのか。全体にあっさりして、あまりにも淡泊な演奏というきらいがあったのも事実だ。これは小澤のマーラーにも往々に感じるのだけれど、マーラー的なしつこさ、くどさ、そして振幅の激しさといったものが後退し、やけにお行儀の良くスマートだが、ちと食い足りないような演奏になっているような気がした。実際視聴している時は、こういう角を丸めた純音楽的な演奏というと、クーベリックあたりに近いかな....とか思って、さきほどクーベリックの演奏を聴いてみたが、若杉に比べれば遙かに肉食的でこってり感があったと感じたくらいだ。そんな訳で、全体としては、第4楽章は熱演なのだが、それまでの3つの楽章がとち低カロリーすぎたといったところだろうか。

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2 コメント

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Unknown (通りすがり)
2010-02-10 14:55:48
80年代のはすっきりスタイリッシュな演奏してたんですがね。
晩年はけっこう枯れてしまってたかな・・・・と。
re:Unknown (BlogOut)
2010-02-10 23:12:29
> 80年代のはすっきりスタイリッシュな演奏してたんですがね。
> 晩年はけっこう枯れてしまってたかな・・・・と。
そうなんですか。まぁ、今回視聴した演奏も端正なものではあったと思います。これにもう少しスポーティーさのようなものがあったということなんですかね。いずれにしても、この人はもう少しアルバムを残して欲しかったという気がして仕方ないです。私のようなコンサート・ホールにあまり縁がない人間だとなおさらです。

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