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ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番/五嶋、アバド&BPO

2009年03月17日 00時08分36秒 | クラシック(20世紀~)
 五嶋みどりは、14歳の時、タングルウッドで演奏後にかのバーンスタインがひれ伏したとかいう伝説をつくった日本の誇る女性ヴァイオリニストだが(ヴァイオリンを弾く驚異の神童伝説はその後に登場したサラ・チャンも凄いものだったらしいが)、天才少女といわれた彼女も、早いもの今ではもう30歳後半になるそうだ。これはそんな彼女が21歳の時に挑んだショスタの協奏曲のライブ・パフォーマンス。バックはアバドとベルリンという鉄壁の布陣で録音されている。この曲もかなりの演奏を聴いたせいで、曲自体もかなり身体に馴染んできたような気がするが、はてさて、日本が誇る世界的なヴァイオリニストの演奏はどんなものだろうか....?と、最初に収録されたチャイコの協奏曲の方はすっとばして、さっそく聴いてみた。

 演奏の方は一聴してかなり早めで実にあっさりとした印象だ。やはり日本人なせいなのか、全体に淡彩、細やかな美しさがあり、濃厚さとかアクといった形容とは対象的な演奏という感じがする。身も蓋もないいい方をすると、サラ・チャンの優等生的な破綻のなさに、ムローヴァのような女性らしい角のとれたしなやかさをプレンドしたような感じだろうか....。
 奇数楽章については、あまり深刻になったり、瞑想に深く沈み込んだりしない、いわば文学性を排除したような演奏で、ヴァイオリンという楽器の持つしなやかなで、滑らかさを全面に出したきわめて美しい演奏だと思う、弱音部の美しさなど特筆ものである。
 偶数楽章については、他の若手の演奏同様、このあまりに技巧的な楽章を華麗なるショー・ピースとして、全く危なげなく颯爽と弾ききっている。この演奏は客席のノイズがけっこう聴こえるし、最後には盛大な拍手も聴こえてくるから、文字通りライブ盤なのだろう(おそらくほとんど編集などもしてないのではないだろうか)、それでこの瑕疵のない出来というのだから、全く恐れ入ってしまう。

 ちなみに伴奏のアバドとベルリンだが、なにしろコンビだからして、ほぼ十全に完備した演奏だとは思うのだが、どうもこの時期のアバドとベルリンの演奏って、マーラーなどもそうだったけど、今ひとつこのコンビならでは売りというか、「コレだっ」という決め手に欠くような気がする(木管が妙に浮き上がって聴こえるのは相変わらずアバドらしいのだが)。
 そのせいだろうか、この演奏の場合、五嶋みどりのけっこうあっさり系な演奏に対し、オケの方もほぼそんな線でフォロウに回っているため、オケとソリストの「調和の美」はいいとしても、協奏曲のもうひとつの側面である、闘争的な迫力、ダイナミズムは、どうもひまひとつのように感じた。ここでのオケが例えばロストロが伴奏した時のような馬車馬のようにどでかい音であるとか、ヤンソンスのみたいな現代的なドライブ感でぐいぐい進むような感じなら、彼女のヴァイオリンももっと引き立ったかと思うのだが....。

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