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野良犬(黒澤明 監督作品)

2009年08月24日 23時09分11秒 | MOVIE
 これは初めて観る作品。しばらく前に観た「酔いどれ天使」と先日の「羅生門」のだいたい真ん中くらいに位置する(醉いどれ天使→静かなる決闘→野良犬→醜聞→羅生門の順)1949年の作品である。当時は東宝争議から映画芸術協会設立の時期だったので、東宝ではない製作だが、新東宝で作られたせいか、主演の三船敏郎と志村喬の他、他のメンツも当時のレギュラーメンバーといえる布陣で作られているせいか、大映でつくられた「羅生門」のような京マチ子だとか森雅之といった意外な配役はなく、全体に「酔いどれ天使」などと同じくまっとうな「黒澤が作る東宝系な作品」というタッチである。

 ストーリーは終戦後の東京を舞台に、三船扮する若い刑事が真夏の暑い電車の中で拳銃をすられ、その後、その銃(コルト)によって引き起こされる強盗殺人が発生、責任を感じた刑事が、志村扮する老刑事とともに犯人をじわじわと追いつめる....というもので、三船の訳は同じアプレゲールでも「酔いどれ天使」とは全く対照的な聡明な若者という設定だが、映画そのものの雰囲気は、終戦後の風俗を克明に描写している点からして「酔いどれ天使」と非常に似通っている。
 また、この作品、いわゆる「刑事物」のはしりでもあるのだろう、リアルな捜査のプロセスや警察内での描写など、-いまからするといかにもいかにもだったりしないでもないが-その後の映画や手本となっているようなシーンが随所にあり、徐々に犯人に突き止めていくプロセスは、夏の暑い描写が妙にリアルなせいもあって緊迫感が漲り、実に見応えある作品であった。個人的には破滅的な「酔いどれ天使」より、こちらの方が好みかもしれない。

 印象的なシーンは、なんといっても前半の女スリを執拗に尾行するシーンと拳銃の売人を探してドヤ街を延々と彷徨うシーンだろう。この長いシーンで描かれたリアルな風俗描写は主人公の焦燥感とともに一緒に歩いているような生々しさがあって素晴らしく映像的な快感がある。途中出てくる野球場のシーン(後楽園?)では、川上哲治に青田昇といった当時のスター選手が登場するのはおもしろい。私の世代だと、川上は巨人の監督、青田は野球解説といったイメージだが、まだ彼らが現役としてやっていた頃の映像などをみると、「こんなに古い映画だったのか」と妙に感慨深くなったりもする。というわけで見応えがあった一本。さて、お次は何を観ようか?。
コメント (4)
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