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ワルター・ワンダレイ/キー・カ・ルー

2009年08月17日 06時33分51秒 | Jobim+Bossa
 67年発表ヴァーブ期最後の作品。ワンダレーはこの後、他のボサ・ノヴァ系のアーティスト同様CTIに移籍して従来路線にほぼ準じた作品をリリースし続けることになる訳だけど、このヴァーブ最後の作品は、まさに67年という時代のせいか、様々な同時の時流に乗ったとおぼしき試みを行っており(単に日和っただけかもしれないが?)、中々興味深い仕上がりとなっている。そもそも、プロデュースがクリード・テイラーでなく、エズモンド・エドワーズという人なのである、ライナーによれば彼はプレステッジでオルガン・ジャズなどをプロデュースしてきた人らしいなのだが、こういう人が出てくる事態は、音楽にせよ、なんにせよ、価値観の大変動が起きていた67年という時代をよく物語っているのではないか。

 さて、アルバムは1曲目こそいつも通りともいえる「アマゾナ」で始まるものの(ジョアン・ドナートのオガーマン共演盤でもおなじみ)、2曲目はアーシーなブラス隊を交えた8ビート作品で、そのブルージーな味わいはこれまでにはなかったものである。4曲目のワンダレーの自作曲「恋はリズムにのせて」は、ワンダレーらしいボサノバ系の作品ではあるが、エレピを多用しているのは目新しさを演出しているのだろう。5曲目は当時流行っていたボブ・クリューの大ヒット曲「ミュージック・トゥ・ウォッチ・ガールズ・バイ 」はエレクトリック・ギターとエレピをフィーチャーして取り上げているし。これまた当時ヒットしていたマンシーニの「暗くなるまで待って」をいち早く取り上げているあたりも、一段落したボサ・ノヴァ・ブームの後、なんとか音楽のアップ・トゥ・デートさを保持しようと躍起になっていたのがよくわかろうものだ。

 ちなみに、残りの曲はおおよそ従来路線の曲だが、このアルバムでは前述のとおりオルガンより、むしろエレピが目立ったり、ハープ・アルバート風なブラスが聴こえてきたりして、はたまたラストの「センスオウス」あたりが特にそうだが、ジョージ・シャーリング風なユニゾンがあったりして、オルガンをフィーチャーした曲はあまり目立たないのが、本作の難点といえば難点だろうし、このアルバムのおもしろさでもあると思う。音楽的にはプロデューサーが変わったせいか、今まで書いてきたような、豊富な音楽的ヴァリエーションとともに、ワンダレーのテンションも中々高い。けっこう「穴」的なアルバムだろうが、中々の佳作である。
コメント
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