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チック・コリア/スリー・カルテッツ

2007年11月03日 21時01分22秒 | JAZZ-Fusion
 1969年のRTF以降、結果的にフュージョンと呼ばれるようななったジャズのメインストリームを歩んできた、チック・コリアのフュージョン期のほぼ最後を飾る1981年の作品である。ややテクニカルさを過剰にエスカレートさせたRTFを解散させた後、こんファンタジックなコンセプト・アルバムやスペイン指向などにも色目を使いつつ、徐々にポップで耳あたりの良い音楽に変貌してきたチック・コリアだが、ここでは一転してある意味シリアス、ゴリゴリとした感触の、非常に硬派なフュージョンといった仕上がりになっている。メンツはチックにスティーブ・ガッドのドラムにエディー・ゴメスのベース、それにマイケル・ブレッカーを加えたワン・ホーン・カルテットのみで編成され、曲によってゲスト陣を使い分けるようなことも一切なく、レギュラー・バンドの如き雰囲気にタイトに仕上げられている。

 前半を飾る3つの四重奏曲は、そのあたりをよく物語っていて、前述の通り、これまであったスペイン趣味やファンタジックなムード、曲芸的なソロの連打といったところはあまりなく、ソリストはむしろブレッカーにゆずり、全体は合金のようにタイトなアンサンブルでシリアスに進んでいく。非常に重厚かつ充実した演奏だが、やや息苦しさがあることも確かで、これまでの指向でいえば、チックのバルトークっぽさが全面に出ているといえるかもしれない。特に第1番と第3番はその傾向が強い。第2番はふたつのパートに分かれ、前者はエリントン、後者はコルトレーンへのトリビュートになっていて、こちらはフュージョンという枠から伝統的なジャズへ回帰しつつあることを匂わす内容となっている。ことにパート2はほとんどエレクトリック・バンドやアコスティック・バンドを予告するような、変幻自在なリズム・チェンジを駆使したモダンな4ビート作品になっている。
 ちなみにボーナス・トラックとして収録された4曲は、このアルバムの直後にスタートするヴィトウスとヘインズとのアコピ・トリオを先取りしたようなオーソドックスなピアノ・トリオに近づいた作品だ。
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