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日本作曲家選輯/大澤壽人

2007年11月02日 23時15分35秒 | クラシック(20世紀~)
 大澤壽人は1907年生まれだから、伊福部先生より7歳年長である。神戸に大ブルジョア家庭に育ち、青年期から海外へ音楽留学など度々行ってきた恵まれた環境にあった人らしい。私はこの人の名前は全く初めて聞くのだが、おそらく一般的にもほとんど無名の存在だろう。CDの帯に「知名度の高さを分母に、未知の音楽との出会いの喜びを分子にとれば、恐らくは最も高い数字が出る邦人作曲家」とあるのはそのあたりを逆に売りにしているような気配すらある。収録曲は2曲、ピアノ協奏曲第3番「神風協奏曲」と交響曲第3番でどちらも1930年代の後半に作られた作品である。とりあえず、ざっと聴いてみた印象をメモっておきたい。

 まず、ピアノ協奏曲第3番だが、一聴してモダンな響きに満ち満ちた作品になっている。多分、大澤の海外留学の経験がものをいっていると思われるが、第1楽章はプロコフィエフのダイナミックさとラベルの流麗さが混在したような趣があり、第2楽章はガーシュウィン的なジャズ風味とやはりラベル的な叙情がある。また、第3楽章はバルトーク風なテクニカルさとプロコフィエフ風なバーバリックな野趣が横溢しているという感じで、とにかく「1938年の日本」という時と場所では、あまりに早すぎた作品という感じだったのだろう。当時全く評価されなかったのもよくわかろうかというものだ。ちなみにこの作品、朝日新聞社所有の飛行機神風号にあやかったって作曲されたらしい。ある種のメカニック賛美みたいなところは、この時代の様相だったのだろう。

 一歩、交響曲第3番は、橋本國彦の交響曲第1番同様、戦前の皇紀2600年を記念した作られた作品だが、こちらは「皇紀2600年」というトラディショナルなムードはにわかに想像しがたいモダンな仕上がりになっている。第1楽章はオネゲル風な音響やショスタコ風な諧謔味をベースに多少日本的な風情が入り混じっている程度、短い中間の2楽章では日本的な雅の感覚を非常にモダンに表現しているという印象で、時にバルトークの緩徐楽章の妖しさや印象派に衣替えした童謡風なところがあったりする。最終楽章はバルトークのオケコンの最終楽章を思わせる明るさとダイナミックさを縦横に展開しつつ輝かしく終結するといった感じだ。
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