UGUG・GGIのかしこばか日記 

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徴用工問題の韓国最高裁の判決書を読んでみるの記(その三)

2019-12-23 00:57:05 | 日記
韓国徴用工問題について12月15日の日記12月20日の日記にダラダラと書きましたが、辛抱強くおつきあいくださった方々に感謝申しあげます。最後にまとめみたいなものを記しておきます。内容はこれまでに書いたことと重複していますが、よろしければご一読ください

《裁判の前提》

この裁判は財産や未払い賃金や債権などに関する物的な損害を対象にした賠償請求、いわゆる損害賠償請求ではなく、戦前に日本企業による人権侵害行為により元徴用工らが強いられた精神的・肉体的苦痛に関する慰謝料請求の裁判です。これは大切な点なのですが。この点が日本ではあまり報じられおらず重要視されていないようです(単なる物的損害の賠償請求であれば、請求権協定の条文には物的な損害について明記されていますから、日韓請求協定の対象に含まれることになり、そのため請求権協定の条文にしたがい解決されているということになります)

《韓国でのこの裁判(大法院における再上告審)では、日本企業による韓国徴用工に対する人権侵害の有無は争点とはなっていません》
 
原告の元徴用工らは自分たちの日本企業における体験を具体的に証言することにより徴用工に対する人権侵害行為が存在していたことを立証していますが、被告側(日本企業)は上告理由として五つの点を挙げているものの、人権侵害行為は存在していなかったとすることを上告理由の一つとして挙げてはいません。このため、被告側(日本企業)は人権侵害行為の存在を、積極的には肯定していないかもしれませんが、結果的には否定していないことになります。したがって、人権侵害の有無は裁判の争点とはなっていなかったと言うことができます。

《国ではなく個人に請求を行う権利があるか否かということも争点にはなっていません》

日本では個人による請求権があるか否かがあたかも争点であるかのように論じられたり報じられたりしており、請求権協定では個人による請求は認められていないと主張されることがあります。しかし、韓国最高裁の再上告審では、原告も被告も大法院も、個人による請求権の可否に関しては言及していません。したがって個人による請求権は争点とはなっていないと言えます。すなわち、被告である日本企業は個人による請求であることが問題であるとして上告の理由に一つに挙げることは行っていません。このためあたかも個人による請求そのものが問題であるとする日本側の主張はためにする議論に過ぎないと言えます。

《慰謝料の請求権が請求権協定の対象に含まれる否かが裁判における最も重要な争点です》

安倍首相など日本の政権関係者は慰謝料請求権が請求権協定の対象内であると強硬に主張していますが、ただ請求権協定の範囲内であるとの主張をくり返すだけであり、なぜ請求権協定の範囲内と考えることができるのか、その明解な具体的論拠を示していません》。
 
請求権協定の条文では財産、債権などいわゆる物的損害については明示的に言及されていますが、人権侵害に対する慰謝料請求が請求権協定の対象に含まれるか否という点は、協定の条文の文言において明示的には言及されていません。

すなわち慰謝料請求権が請求権協定の対象であるか否かは直接的には示されていないのです。しかしながら。被告側は(安倍首相などの日本政府の関係者も)慰謝料請求は協定の範囲内であるため協定条文にしたがい解決済みであると強く主張しています。この主張に対して、大法院は、協定締結にいたるまでに交わされた日韓間の一連の議論のなかで、日本側は終始、韓国の植民地支配は合法であったと徹底して主張しており、人権侵害などを認めることがなかったのであるから、人権侵害の存在を自ら認めることになるような行為をおこなうはずがない、すなわち慰謝料請求の権利を日本側が協定内に含めるようなことを行うことは考えられないとして、協定の範囲内であるとする被告側の主張を退けました。

このような結果になったのは、被告側がただ単に協定内であると主張するだけに留まっており、協定の範囲に含まれているとは考えられないとする大法院の判断に対して、協定の条文には慰謝料についての明示的な言及が認められないのになぜ慰謝料が協定の範囲内であると考えられるのか、具体的論拠を示して反論することができなかったためです。その結果被告による上告は棄却されました。

最後に日本政府の反論とその問題点ならびにGGIの若干の感想について記しておきます

安倍首相ら日本政府関係者の主な主張は次の2点です

1 原告らの要求(慰謝料請求)は請求権協定の範囲内であり、そのため請求権協定の条文に従い解決済みである。したがって、請求権協定に照らして原告らの請求が解決済みであることを否定して元徴用工らの請求は妥当であるとした大法院の判決は国際協定違反であり、韓国はこの決定を撤回すべきである。

2 個人による請求権は請求権協定において認められていない。

このうち、個人による請求権に関する日本政府の主張は、上記のとおり実際の裁判ではまったく争点にはなっていないため、日本側の主張自体が無意味かつ的外れであると言わざるを得ません。また、請求権協定に関して、当時の日本の外務省関係者が国会で個人による請求権はあると発言している事実(1991年8月27日の参議院予算委員会での、外務省の柳井俊二条約局長(当時)の答弁)が存在していることを考えますと日本政府の主張は説得力に欠けています。また、請求権協定の条文には個人による請求の可否についての明示的文言は認められません。つまり、個人による請求の可否について直接的に言及している文言は認められません。したがって、ただ単に「協定において個人による請求は認められていない」と主張するだけでは説得力に欠けており、なぜ認められていないと考えることができるのか、その論拠を示す必要があるのですが、日本政府は論拠を示していません。

慰謝料請求権が協定の範囲内であるか否かに関しては、協定の条文中に明示的な文言が認められないため、協定の文言だけからは、請求権があるとも無いとも確証的なことをいうことはできません。しかし、大法院は、確証的とまでは言えないものの、先に述べてように協定締結にいたるまでの日韓間の議論に際しての、植民地支配は合法であったとする、当時の日本政府の発言や主張を考慮すると慰謝料請求権を日本側が協定の範囲内に含めることは考えられないとして、範囲外であることの具体的論拠を示しています。このため、日本政府が協定の対象に含まれていると主張するならば、単に「国際協定に違反している」と声高に主張するだけではまったく不十分です。協定の範囲内であることの論拠を具体的に明確に示した上で大法院の判決に反論すべきです。しかしながら、日本政府は「協定の範囲内である」と頑なに主張を繰り返すだけあり、この裁判の被告と同様に、その具体的論拠を示していません。

日本政府がこの判決を国際協定違反であると考えようとも、韓国は日本と同様に(あるいは大統領制のもとで日本以上に)三権が分立している国家ですから、安倍首相がいくら国際協定違反であると韓国の政権を強く非難しても、大統領といえでも司法の判断に口をはさむことは許されません。行政府による司法への干渉になり、三権分立の原則を侵害することになるからです。

ですから安倍首相ら日本の政権による韓国政府非難はまったく的外れです。つまり韓国政府をいくら非難したところで法的にはまったく無意味なのです。どうやら安倍首相は三権分立という初歩的な事柄を理解できていないようだと言わざるを得ません。

この問題は国家間の法的な争いですから、韓国の司法による判断に不満であれば、韓国政府を非難するのではなく国際司法裁判所などの国際機関に訴え出て、ことの是非については判断を仰ぐのがまっとうな問題解決の筋道です。怒りにまかせて韓国への輸出を意図的に規制するといった手段に訴えることはまったく筋近いです。ただ混乱を招き日韓関係を一段と悪化させるだけであり、問題の解決にはまったく結びつきません。

韓国内でこの問題に解決に向けていろいろな動きがあるようですが、日本政府もいつまでも執拗に韓国非難を繰り返すという次元の低い政治行為をやめ、建設的な解決策を模索すべきであると考えらえます。まずは正攻法で国際司法裁判所に訴え出るべきでありませう。しかし、安倍政権の下ではその可能性は期待できそうもないと言うべきでありませう・・・

【参考】

韓国大法院で元徴用工訴訟の勝訴が確定した原告 32人(遺族を含む)

同様の訴訟の原告:約千人

韓国政府が認定した「強制動員被害者」のうち元徴用工など労働者:約14万9千人

なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ・・・

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