■ 「研精覃思」と書かれた書碑、左端に彫られている秋艸道人はこの書を書いた會津八一の号。この碑は長野県朝日村の中央公民館の前庭にあります。なぜ朝日村に會津八一の碑が?
先日、塩尻短歌館の受付で見かけた「短歌のふるさと」という短歌館通信に會津八一の特集号がありました。本稿はその特集号「塩尻短歌館通信 短歌のふるさと VOL.34(平成20年9月25日)」を参考に書いています。
會津八一は当代一流の歌人、書家、美術史家、教育者(早稲田大学教授)として知られています(同特集記事)。
八一は地方ではあまり講演をしなかったそうですが、窪田空穂らの口添えもあって朝日村での講演会が実現したそうです。昭和5年のことでした。随分昔の出来事です。
講演はその年1回限りのはずが、村の聴講者の情熱に打たれ4年間、4回も続いたそうです。手元にある別の資料によると、講演は毎年秋に行われたそうです。こんな田舎にこれほど熱心に講演を聴く人びとがいるとは・・・、八一はそう思ったのでしょう。
講演記念として八一が贈った書額「研精覃思」、けんせいたんしの意味は詳しく調べて内容を深く思索することだそうです。書碑は朝日村會津八一先生の会によって昭和50年に建立されたと碑の裏にありました。
**朝日村が會津八一の学術講演を受容するにふさわしい土地であり、八一の学術的生涯を育てるポイントになったと言えるのではないか。**と記事は結ばれています。
市町村役場の前庭などに書碑が建っているのを見かけることがありますが、今まであまり注目したことなどありませんでした。でも、このように由来を知ると興味がわいてきます。
同じ場所にもう一つ気になる歌碑があります。それについてもいつか調べてみたいと思います。
■ 昨日(6日)仕事帰りにこの映画を観ました。夜8時40分から始まるレイトショーで、料金は1200円。
松本市内にある「シネマライツ」というシネコンがオープンしてもう1年以上になるのかな? でも行ったのは今回が初めてです。
単純明快なプラン。広いロビーは壁面に鏡をうまく使ったデザイン、直線状に伸びる広い廊下の両側に並ぶ映画館が8館。壁面から持ち出された大きな数字で目指す映画館がひと目で分かります。やはり分かりやすい空間構成が大切ですね。
さて映画、文庫化された原作を先月読んだばかりです。
中学卒業と同時に家を出て都会へ。インド人の恋人にふられて家財も声も失った倫子(りんこ、母親自ら、あんたは不倫の子だから倫子などと説明します。)は母親が暮らす山村に戻ります。で、古い物置小屋を改装して「食堂かたつむり」を始めます。知人の手を借りて自分で改装するんですが、なかなかいい雰囲気のお店になりました。まあ、そこは映画ですから。
お客さんは一日一組に限定。希望のメニューを作ります、って後は省略。ストーリーはこの映画のサイトでどうぞ。もっとも原作は50万部以上売れたベストセラーですから読んでご存知の方も多いのでは、特に女性は。
映画にはおっぱい山(豊かなおっぱいの形をしたふたつの山が寄り添うように並んでいます)や豚のエルメスも原作通り登場。舞台は小説でイメージしていた以上に山の中の村でした。
「食堂かたつむり」で食事をすると願い事が叶うと評判になって、いろんなお客さんが来ますが、江波杏子演じるお妾さんが凄かったです、存在感が、演技が。黒い喪服姿で牡蠣と甘鯛のカルパッチョや地鶏を丸ごと煮込んだサムゲタンスープ、カラスミのリゾットなど(料理の名前は原作をカンニング)、次々に出される料理を食べるシーンはどこかフランス映画を思わせるような雰囲気でした。
この映画の女性監督はアニメーションも手掛けているそうですが、ときどきアニメーションがスーパーインポーズされています。私は映画ではこのような映像表現はなじみがありません。でも、まあ、こういう表現もありかな、と。
この映画は「母と娘の和解の物語」だと思います。原作通り、ラストでは病死した母親(おかん)が残した手紙を倫子が読みます。そして母親がいかに倫子を大切に思っていたかを知るのです。倫子という名前の意味も。
**あなたは料理を作ることで、誰かを幸せにすることができる**と手紙に書かれているメッセージ。
この映画、料理好きの女性にはおすすめです。