透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「日本の覚醒のために」

2017-09-09 | A 読書日記



 内田樹(うちだたつる)氏には著作が多く、何冊か読んだ。中でも『日本辺境論』新潮新書は日本が辺境の地にあるという地理的状況を踏まえた日本人論で、大変興味深く読んだ。

『日本の覚醒のために 内田樹講演集』晶文社を読んでいる。講演録ということもあり、読みやすく、理路明快で分かりやすい。そしてオリジナルな指摘は鋭い。

**「対米従属」という「ペニー銅貨」を放り込むと、「ごほうび」という「ガム」が出てくる。(中略)そういう単純なものとして日米関係を構想する習慣が定着してしまった。(中略)でも、「面従腹背」のポーズも二世代三世代と続くと、いつのまにか「家伝の芸風」のようなものに変質してしまう。(中略)日本の政治家も政治学者も、どうやら外交戦略において対米従属以外の選択肢については、その合理性や利害得失についてシミュレーションすることさえしていない。これはあきらかに病的症候です。(027~029頁)** 以上「資本主義末期の国民国家のかたち」と題する講演録から引用。

本書には6つの講演が収録されているが、そのテーマは多岐にわたっている。「ことばの教育」という講演も次のようななるほど!な指摘があり、興味深い。

**コミュニケーション能力というのはコミュニケーションを順調に前に進める能力というよりはむしろコミュニケーションが不調になって、意思疎通がうまく成立しなくなったときに、コミュニケーションを蘇生させるための能力ではないかと僕は考えているからです。(中略)コミュニケーションの回路が壊れているとき、その回路を修復し、そこに言葉が通るようにする能力のことなんです。**(199、200頁)


さて、今日は久しぶりの東京。


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